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モントリオールで見た、ゲーム開発の最新事情(その2)
ゲーム 海外ニュースユービーアイソフト・モントリオールやアイドス・モントリオールなど大手ゲームスタジオが集まる、カナダのケベック州モントリオールから、ゲーム開発の最新事情を4回にわたってお届けする。前回に引き続き、ゲーム開発者向けカンファレンスMIGSの模様をお伝えする。
●日本と海外、その開発文化の違い
スクウェア・エニックスでワールドワイド・テクニカル・ディレクターを務めるJulien Mercelon氏は、グループの開発体制を進めるうえで見えてきた日本との違いを分析した。
最初の切り口は、Mercelon氏がかつてUbisoftに在籍していたころに来日し、スタジオの設立に努力したが、うまくいかなかった経験から。海外の会社への信用度が低くスターになる人材を雇用できなかったとのことで、欧米人として日本のゲーム業界で仕事をするのは難しいところが多いという。
「日本のゲーム業界の人たちは自分たちが動機づけが不足している、世界から5年くらい遅れているなどの自己分析をしている」が、それはすでに成熟した市場であるがゆえに、日本市場向けのタイトルを作っているからこそ、拡張が難しいのだという。だがそれほどだめなのか? 「わからない」としながらも悲観的になることには慎重だ。数字を見るだけでも利益は出ており、すばらしいゲームも開発されている。世界から隔離されていたこと、開発効率がよくないことを認識して、文化や仕事のやりかたの違いを認識して効率的にやっていく方法を模索するのが重要だと述べた。
文化の違いとは、たとえば言葉について。「日本人は非常に礼儀正しく謙虚なので、自分を低くみせるが、実際は違うので注意が必要だ」とMercelon氏は言う。「英語はわかっても完璧でないと思えば話さない。このような文化の相違およびそこからの影響を理解しないといけない」というのだが、コレは記者も頭が痛いところ(実際、普段は英語を話せないことにしている)。また、ゲーム開発文化の違いもある。欧米ではゲームプログラミングは「クールなこと」だが、日本ではそうではないため、ゲーム業界のスターの意味合いも異なっているというのだ。
ではゲームそのものはどうだろう? まずはジャンルと形式の違い。日本でRPGが意味するものは、確かにMercelon氏が言うように欧米のRPG『マスエフェクト』とは大きく異なった存在だ。次に、氏の言葉を借りれば感情移入をどう表現するかも異なる。日本ではCGのカットシーンを多用するが、これは本来処理能力が低かったために(前もってレンダリングした)CGを使うものだったのに対して、日本ではそのやりかたでうまくいっているあいだは変えない傾向があるとする。そのうえで、欧米はゲームプレイのなかで感情移入する部分を表現することが多いが、日本ではカットシーンで表現することが多いというのも異なる。
日本が明らかに進んでいるとしていた部分もあった。それは音楽とマルチメディア性。音楽については植松伸夫氏と水口哲也氏の名を挙げ、日本が最前線にいると評価。マルチメディア展開では、日本ではアニメやマンガ、フィギュア、アーケード……とあらゆる分野で活動しているのに対して、欧米はまだまだこのレベルに到達していないとした。
グラフィックスの部分は両者一長一短と評価していた部分だ。日本がグラフィックス、とくにキャラクターの質が重要視される割にアニメーション(本来の意味)にそれほどこだわっていないため“不自然の谷”に陥りがちのように見える一方で、欧米のゲームはグラフィックスの質が低いがために日本市場で成功しないのだという見方を示した。
現在は開発チームの交流を進めて、互いの文化を尊重しつつテクノロジー戦略を進めているところだという。日本のゲーム開発は多難の時代だが、欧米はコミュニティが拡大し、進化が容易になっているとし、ここから欧米人が日本のスタジオで働くようになる時代の到来と、日本のハイエンドゲームがもっと欧米に進出するという展望を示した。
●EA流:iPhone/iPod Touch向けゲーム開発のコツ
モントリオールにあるのは、ハードコアゲーマー向けのスタジオだけというわけではない。エレクトロニック・アーツのケータイ向けゲーム部門EA Mobileのスタジオもモントリオールをベースとしている。クリエイティブ・ディレクターのオリー・サイクス氏とシニア・ディレクターのオリビエ・プルー氏がアップル製品向けのゲーム開発のポイントを紹介した。
急成長を続けるスマートフォン向けゲーム市場は、リサーチ会社のガートナーによれば今後3年で4倍になると予測されているという。にわかには信じがたいほどの数字だが、EA Mobileの歴史を見ればある程度はうなずける。2001年にHEXACTOとして始まった会社が現在の前身となるJANDARTに買収されたのが2003年で、これが北米市場でケータイ向けのゲームの人気がピークを迎え始めた時期。そして2006年にエレクトロニック・アーツに買収されて以降、App Storeでサードパーティ製のアプリケーションが利用可能となり、以降もAndroidの登場などの驚異的な発展の歴史を実際に見てきているのだ。
しかし、現在のApp Storeの状況は“ゴールドラッシュ”で押し寄せた質の低いアプリが多数ひしめいており、目立つのは簡単ではないという。ハードコアゲームは一気に人気が出るがすぐ落ちると分析しており、「ブランド力は助けになる」としながらも、エレクトロニック・アーツらしいゲーム性が求められているわけではない。重要なのはあくまでユーザーのニーズに合った形のクオリティーであり、その点では「無料であっても非常に意見をはっきり言われる」ことが役に立つと述べた。
実際の内容面では、まずシンプルなコンセプトとデザインですぐに始められ、報酬(もちろんゲーム内の)がすぐに得られてプレイヤーを引きつけること、続いてゲームのメカニズムを重層的にしておいて、飽きがくるまえに「そうだったのか!」と気づかせ、プレイヤーをつないでおくことが重要と解説。これにあたって、ひきつけられたときの「おぉ」、序盤をプレイしてメカニズムがわかったときの「あぁ!」、順調にプレイしてハマりはじめる「ウィー!」、マスターしたときの「ウオオオ!!」というプレイヤーの感情を演出するようにしていくのがコツだとのこと。また、ハードコアなゲームはもっとカジュアル化が必要で、カジュアルなゲームは奥深さと挑戦的な部分が不足しがちであるという。
将来の課題もないわけではない。柔軟性を持たせるために実際のアイテム数は多くなるし、プラットフォームの進化も早く、デバイスのバージョン違いやほかのスマートフォンへの対応もあるため、QA(品証)のチェックや安定性が問題となってくる。一方でEpic Gamesなど大手が参入したかと思えば、ビジネスモデルも多様化(言及こそされなかったが『カプコンアーケード』はひとつの例だろう)している。
●開発者に聞いてみた
今度は実際に現地で働く開発者の話も聞いてみよう。2000人以上を雇用する現地最大のスタジオ、ユービーアイソフトのモントリオールスタジオでクリエイティブ・ディレクターを務めるアレックス・ハッチンソン氏に話を聞いた。ハッチンソン氏はオーストラリアからカリフォルニアに渡ってMaxisで働いたのち、エレクトロニック・アーツのモントリオールスタジオに勤務。そして最近ユービーアイソフトに移籍している。
――オーストラリア、カリフォルニア、モントリオールで仕事をされたようだが、モントリオールでゲームを作る利点はなんでしょう?
アレックス・ハッチンソン(以下、ハッチンソン) 自分は小さな町で育ったが、ここでよい仕事に出会うチャンスはあまりなかったんだ。その後Maxisで仕事が出来たことは非常に大きな機会で、恵まれていたと思うよ。モントリオールもその前のカリフォルニアも頭のよい人たち、才能ある人たち、経験ある人たちが密集しているところであり、こうした人たちと一緒に仕事が出来るのは素晴らしいことだ。
――太陽が恋しくない?
ハッチンソン ああ! カリフォルニアの気候は素敵なので恋しいけど、モントリオールは四季がはっきりしており、夏は十分に暑いので大丈夫。
――日本人がモントリオールで仕事をしたいと思ったら求められることはなんでしょう?
ハッチンソン 英語かフランス語が話せること。スキーが出来ること(笑)。それとゲームへの情熱とそれなりの経歴を持っていることだね。
――ところで会社の公用語は?
ハッチンソン あくまでもフランスの会社なのでフランス語。自分のフランス語も上達しているが、周囲が気遣って対応してくれる。ミーティングもチームによって英語だったりフランス語だったりするね。
――ユービーアイソフトに移籍したばかりですけど、EAでの経験をどう活かしていきますか?
ハッチンソン EAの強さは制作のシステムがしっかりしていて計画性に優れていることだ。ゲームには創造性が強調されるが、システムも重要な要素であり、その中では難しい決断も下せる。
――モントリオールのユービーアイソフトとEAの一番の違いは?
ハッチンソン もちろんEAはアメリカ、UBIはフランスの会社だが、個々のチーム間の違いの方が大きい。Maxis、EA、DICE、Biowareそれぞれ個性がある。
――現在かかわっているタイトルは?
ハッチンソン 初めてのプロジェクトとして『アサシン クリード』シリーズのタイトルにかかわっているんだけど、残念ながらまだ何もお話しできない。もうちょっと経って、E3にでもなれば「あれのことだったのか!」ってわかると思うよ!
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