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『タクティクスオウガ 運命の輪』プレイインプレッション

ゲーム PSP インプレッション
1995年にスーパーファミコンで発売されたシミュレーションRPG『タクティクスオウガ』。当時の開発スタッフが中心になって再構築された、PSP版『タクティクスオウガ 運命の輪』のプレイインプレッションをお届け。

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●2011年11月11日、進軍開始

 1995年にスーパーファミコンで発売されたシミュレーションRPG『タクティクスオウガ』。当時の開発スタッフが中心になって再構築されたのが、本作『タクティクスオウガ 運命の輪』だ。オリジナル版『タクティクスオウガ』が心のゲームのひとつであるライター、卵を守る雨宮が、PSPで新たに発売される『タクティクスオウガ 運命の輪』のプレイインプレッションをお届け。

●15年ぶりの『タクティクスオウガ

 バルマムッサ……。その町は、数多のゲームで町や村の危機を救ってきた自称勇者中の勇者である自分の中でも特別な場所だった。そこで起きた惨劇と友との決別、そして雨の日に起きた小さな奇跡も、目を閉じればいまもまだその光景を思い浮かべることができる。自分にとってすべて15年まえの出来事だが、それは記憶の奥底に深く刻みつけられ、消えることはなかった。あれから15年、私は再びその町を訪れることになった。

 変わらない、と第一印象もつかの間、バトルフィールドとなった町をよく見渡すと、当時の雰囲気を残しつつも、どこか綺麗になった印象を受ける。ステージの隅々まで丁寧に描き込まれたグラフィックは、思い出という形で美化されがちな記憶よりも、遥かに美しくなっていた。惨劇の事実は動かすことができなかったが、傍らにはラヴィニスという女騎士。そして、親友のヴァイスはあの当時と同じく、主人公の選択次第で違う運命をたどってゆく――。しかし、傍らにはラヴィニスという見知らぬ女騎士。そして、親友のヴァイスの顔は、運命の選択ののち、さらに凶悪な顔に! そこには15年前と確実に異なる世界があった。そう、PSPで発売される『タクティクスオウガ 運命の輪』は、単なるリメイクではなく、もはや新しい『タクティクスオウガ』なのだ。

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●もう昔の戦い方は通用しないッ!?

 クォータービューで見下ろすバトルフィールド、高低差の概念、多彩なクラス、そしてユニットの能力や身につけている装備、戦闘時の行動内容などによって、行動順番がその都度変わるウェイトターンシステムと、お馴染みの戦闘システムは健在。ただし、15年前と同じ感覚で戦うと痛い目に! 弓攻撃での近接攻撃が行えなくなるなど、オリジナル版で定番とされた攻略法が通用しなくなっているのはもちろん、本作で新たに追加されたスキルシステムが、バトルの戦略性をより深いモノにしているのだ。今回、ユニットは戦闘で得たスキルポイントを使うことでスキルを習得できる。スキルは、魔法や各種武器に関するモノからパラメータ自体を高めるモノ、スペシャルスキルと呼ばれる必殺技と様々。特定のクラスでしか習得できないスキルも存在する。その数は、チャプター4に突入した自分が現在把握しているものだけで150種類以上! また、武器の種類や魔法の属性などの一部のスキルには熟練度の概念があり、戦闘で使うほど熟練度は上がり、効果が高くなっていくスキルもある。しかし身につけられるのは、ユニットごとに最大10個まで。「剣を極めたいから“片手剣”を身につけて、反撃用に“カウンター”があると便利、特殊な技をくり出せるアクションスキルも必要だよね、敵の移動を制限できる“ランパートフォース”も……」と付けていくと、すぐに埋まってしまう。なので、ユニットごとに戦闘時の役割を明確に決めて、セットするスキルを変えていくことが重要になる。最大12人の出撃ユニットが、自分の長所を活かし、ほかのユニットの短所を補って戦う、まさに“手をとりあって”戦うバトルを楽しめるというわけ。スキルがガチッとはまり、戦闘の主導権を握ったときの爽快感は、本作ならではだろう。

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●運命の輪C.H.A.R.I.O.T.で実現した戦略の試行錯誤

 当時から手応えがあると評判だった『タクティクスオウガ』の戦闘だが、本作でもその手応えは健在。味方ユニットの死亡条件が緩和されているが、その一方で、ひとつの戦場に出現する敵の最大数が増えるとともに、ゴーレムやドラゴンなどの大型モンスターが強くなっていたり、ゾンビなどは戦闘不能後にイクソシズムを使わないと消滅させられなくなったりと、オリジナル版より戦略性が高くなっている。油断すると、すぐ味方ユニットが戦闘不能になってしまうことも。そんな時、プレイヤーを助けてくれるのが、新システム“運命の輪C.H.A.R.I.O.T.”だ。バトル中の行動を最大50手前まで記憶しており、いつでもやり直しができるこのシステム、ユニットが実際に行っていた行動を確認しながら遡れるため、ベストのタイミングからやり直すことが可能。しかも、やり直した行動自体を止めて、やり直す前の行動に戻すこともできる。正直、最初は発動に少し、いやかなり抵抗があったのだが、一度使ってしまったら最後、その便利さにもう後戻りできない自分を発見。敵がこちらの予測外の攻撃をして味方ユニットが戦闘不能になったとき以外にも、ライトニングボウなど投射型の魔法が仲間に当たったりしたときも活用。ちょっとしたミスも瞬時に解消。リセットもロードも必要ないから、簡単に仕切り直しできるという手軽さがいい。実際これで、バトルの手応えがなくなるかというと、そんなことはなく、行動を巻き戻しても敵自体の強さは変わらないので、バトルの楽しさは損なわれないというのも、大きな発見のひとつだった。もちろん、使わないという選択も可能だが、ぜひ一度は使って戦略の試行錯誤を楽しんでほしい。

 そして、本作にはさらにもうひとつの時間軸を自由に移動できる運命の輪が用意されている。それが“運命の輪W.O.R.L.D.”だ。これは、ゲーム中で一定の条件を満たすと使用できるシステムで、現在のレベルや編成を維持したまま物語の時を遡ることができるというもの。あの時救えなかった命や、物別れに終わった仲間なども、強くなった騎士団を率いて再び挑戦すれば救うことができるかもしれない。運命の輪C.H.A.R.I.O.T.と、運命の輪W.O.R.L.D.、ふたつの“運命の輪”で本作はどのように変わるのだろうか? いまから楽しみである。

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●物語、15年の歳月がもたらした変化ッ!

 人の野心と欲望に端を発する権力争いに、民族間の対立が利用され、争いが絶えなかったヴァレリア島。その争いに主人公デニムたちが巻き込まれていくという、物語の大筋自体はオリジナル版と同じ。民族紛争をベースに権謀術数うごめく人間対人間の争いを描いた骨太の物語は、世紀を跨いだ現在も色あせることなく、変らぬ面白さだ。今回初めてプレイする人はもちろんのこと、15年前にオリジナル版をプレイした人も、改めて本作をプレイすると、いろんな場面で新しい発見ができるのではないだろうか? それは、女騎士ラヴィニスをはじめ新キャラクターの参戦や、バトル中で発生する固有キャラクターどうしの会話イベントの追加、そしてオリジナル版では死ぬはずだった○○○ー○を仲間にできたりと、物語の至るところで新たなイベントが追加されている。もちろん、それも大きな要素だが、自分はプレイヤー側の15年という歳月の流れも大きいのではないかと思う。オリジナル版が発売された当時、名もなき学生、持たざる者だった自分も、いまや世間的には間違いなくいち社会人として、大人の仲間入りを果たしている。デニムはもちろん、ミルディン、ギルダスも既に年下だ。バルマムッサで、当時なかなか選べなかった選択肢もいまやそれほど躊躇なく選べる自分がいる。あの行為を正当化するわけではないが、組織を変えるためには内部から変えていくことの方が確実なことを知っているし、時には誰かが手を汚す必要性も分かる。15年という年月で自分自身が熟成されることで、物語の受け取り方が変わり、“誰も僕を責めることはできない”という言葉が、当時よりも深く心に突き刺さるのだ。だからこそ、オリジナル版をクリアーした人も、ぜひ再びヴァレリア島に平和をもたらすため、立ち上がってほしい。

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●あの名場面を保存できるッ!

 本作には、スクリーンショット機能が搭載されており、ゲーム中のあらゆる画面をSTARTボタン+Rボタンで撮影、保存できる。名場面、名台詞が多い本作の物語。「さっすが〜、スクエニ様は話が分かる!」って、セリエのイベントを早速スクリーンショット機能で保存。ほかにも、アノ人の善人顔と悪人顔を比較用にと、カシャと撮影。それも15年前にはなかった楽しみだ。現在、15年前熱中していたゲームを、15年前と同じくらい、いやそれ以上に楽しんでプレイしている。多分、それは幸せなことなのだろう。15年前の自分に自慢したい。「まだ、お前はゲームを卒業してないのかッ!」と、“すくいきれないもの”のように見られるかもしれないが。


text by 卵を守る雨宮

■筆者紹介 卵を守る雨宮

元ファミ通PS編集部の編集者を経てフリーライターとして活動。気分はデニムのまま、気づけばランスロット・ハミルトンと同じアラフォーに。規律に縛られない人生のカオスルートは、タイヘンです。

タクティクスオウガ 運命の輪
メーカー スクウェア・エニックス
対応機種 PSP(プレイステーション・ポータブル)
発売日 2010年11月11日発売
価格 UMD版 5980円[税込]
ジャンル シミュレーション・RPG / ファンタジー
備考 PS Store ダウンロード版は4980円[税込]、ディレクター:皆川裕史、ゲームデザイン/シナリオ:松野泰己、キャラクターデザイン:吉田明彦・政尾翼、作曲:崎元仁・岩田匡治
(C)1995,2010 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.

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