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モントリオールで見た、ゲーム開発の最新事情(その1)

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ユービーアイソフトやアイドスなど、多くのゲームスタジオが集まるモントリオールから、海外ゲーム開発の最新事情を4回に渡ってお届けする。まずはアメリカのGDCや日本のCEDECにあたるゲーム開発者向けカンファンレンスMIGSの模様から。

●海外ゲーム開発の最新都市で明かされるゲーム開発のテクニック

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 ユービーアイソフト・モントリオールやアイドス・モントリオールなど大手ゲームスタジオが集まる、カナダのケベック州モントリオールから、ゲーム開発の最新事情を4回にわたってお届けする。

 まずお届けするのは、現地時間の2010年11月8日と9日に行われたMIGS(モントリオール・インターナショナル・ゲーミング・サミット)の模様から。これはいわばサンフランシスコで行われるGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)や、日本のCEDECにあたる、ゲーム開発者向けのカンファレンスだ。

●美は制約から生まれる!

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 初日の基調講演は、マイクロソフトで初代Xboxを始め、多くの製品を手掛けてきたエド・フリーズ氏が登壇し、ゲームの美について語った。きっかけとなったのは、「Atari 2600用のゲーム『Halo 2600』を作るとしたらどのようなゲームにするか?」ということ。制限された機能をフル活用して、マスターチーフのグラフィックをなんとか生み出し、敵をデザインしていく。ボスがいる部屋を大きく感じさせるためにはどうするか? 正解は「マスターチーフの描画サイズを小さくして、相対的に部屋を大きく見せる」。制約のなかで表現を追求するために、プログラミングやゲームデザイン上の工夫がどんどん盛り込まれていく。

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▲美術はその表現の限界を創意工夫で広げてきた……。

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 俳句やクラシック音楽、折り紙など、ほかのアートの形式では制約から生まれる美がある。一方、ゲームは制約を取り払い進化してきた。カンブリア紀で絶滅した生物のように、かつてのゲームには現在のゲームジャンルには収まらない独創的なゲームがあったが、リアルなグラフィックを追求した結果「ほとんど同じになってしまった」とフリーズ氏は語る。絵画の歴史では人物を正確に描くようになったあと、点描や印象派や抽象画が登場した。この点で言うと、『毛糸のカービィ』や『Mad World』は、制約をうまく使って新たな美を生み出す、新たな潮流を生むのかもしれないと評価。

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▲ドンキーコングを“ハイク”で説明。

▲ゲームは似てきてしまった……おっと、僕のもあるね、とフリーズ氏。

 「ゲームを3色ではなく2色で作ったら古代ギリシャ人にように素晴らしいものが作れるかもしれない。(スクリーンに壺を映しながら)こんなゲーム、作ってみたいね」もちろんこれは比喩で、単にグラフィックやゲームデザイン上のことではなく、ハッカー的な“プログラミングコードの美しさ”なども含んでいるのだが、ある種の真理をとらえているのも確かだろう。

●『デッドスペース』のVISCERAL GAMESが新作準備中?

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 ホラーアクションシューティング『デッドスペース』で一躍名を上げた、エレクトロニック・アーツのスタジオVISCERAL GAMES。新設されたモントリオールスタジオでエクゼクティブ・プロデューサーを務めるスコット・エイモス氏が、世界中に散らばるスタジオとの共同開発のコツについて語った。

 VISCERAL GAMESは、メルボルンや上海など3大陸に4つのスタジオを持っており、モントリオールスタジオは15ヶ月前に設立された。現在「数カ月後に発表」という新作を準備中で、開発にあたってはVISCERAL GAMESのスタジオ以外にもEA DICEやEAバンクーバーなどとコラボレーションしているとか。

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 『デッドスペース』のイメージからするとクレイジーな仕事をしていそうだが、そのマネージメント術はまっとうすぎるほどまっとう。「個人中心のドラマはいらない」として、全員の意見を反映し、ひとつのゴールに向かってチームがまとまること、それでいながら「これはうまくいかないよ」とか「クレイジーだ」といった“逃げ”に躊躇せず、失敗は成功のもとと認識し、それぞれの仕事の内容、だれが引率し、どこに責任があるのかを明確にして進めることを重視しているという。

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 また、各スタジオの独立性も尊重しており、ゴールの方向性や権限の系統は早期に設定するものの、各スタジオでのクリエイティビティを発揮する余地は残していた。お互いがトップクラスのプロであることを信用しているからこそ、協力と創造性のバランスが取れるのだろう。コラボレーションとは、組織を通じて全員が「自分たちのゲーム」という精神性で結ばれ、仕事を所有していると感じ、相互に邪魔をせずに決定できる環境を作ることであると述べていた。

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 エレクトロニック・アーツは近年スタジオの統合とコラボレーションによる開発体制の構築を進めており、たとえば『メダル・オブ・オナー』では、マルチプレイ部分をこの分野に長けたEA DICEに任せている。近年でもっとも成功した新たなIPである『デッドスペース』を生み出したVISCERAL GAMESの創造性をどのように活かしたゲームが登場するのか、期待して待とう。

●KINECT用のUIの作りかた教えます

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 Xbox 360の新たなゲーミングデバイスKINECT。コントローラーがなくなればゲームは変わる、それはあらゆる意味で起こる。世界を席巻する音楽ゲーム『ROCK BAND』(日本未発売)で知られるHARMONIX MUSICでさえも、KINECT用ダンスゲーム『DANCE CENTRAL』の開発にあたって困るハメになる――どんなUI(ユーザーインターフェース)にすればいいのか? 既存のUIはコントローラーに最適化されたもので、ジェスチャーに向いているわけではないのだ。エンジニアのライアン・チャリノア氏がその苦労を明かした。

 プロトタイプを設計するうえで、見えてきたのはジェスチャーコントロールの盲点。『DANCE CENTRAL』のUIは多数の曲を選択できるような設計になっていなければいけないが、ページの切り替えでは何十ページにもなってしまうし、マウスホイールのようなスクロールを手で行うようにしても、そのままだと手に完全に連動してしまう。もっと下にスクロールしようとして手を一旦上げると、それに連動してリストが戻ってしまうのだ。なにかを選択しようとしていようといまいと、プレイヤーの手はつねに存在するわけで、どこで動作させてどこで動作させないかの判定が難しい。

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▲山ほどあるプロトタイプの例。なんとなく見るだけでも試行錯誤のほどがうかがえる。ちなみに「プロトタイプで学んだこと」のリストにある「カーソルを見せるべき/見せないべき」は毎度のように変わっていた。

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▲意図せぬ反応を避けるにはどうするか? 判定を行わない緩衝地帯を設けるのだ。

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▲完成形にほぼ近づいてもまだまだこれから。自作人形“スワイプくん”の協力も得て、スワイプ動作のブラッシュアップを続ける。

 バージョン4でスライドボタンを採用することで事態は少しマシになる。意図しない項目をプレイヤーが選んでも、スライドを中断すればキャンセルが行える。ここからは改良だ。プレイヤーがいま選択しているのかいないのかを明示して、かつ次の項目の選択と判定を切り替えるまでのスレッショルド(余裕)を持たせることで、完成形に近づいていく。右端に曲のリストを表示し、選択可能な4曲は大きく表示。リストを移動したければ上下に大きくスライドさせてスクロールさせる。

 ここでおもしろかったのがチュートリアル部分の設計。サウンドを取り入れてさらにわかりやすくしたり、腕を組んだりする際に動作の判定を外すことも可能にしたのだが、「すぐにわかる人とそうでない人がいても、グループでひとりわかれば共有してくれる」のだという。これは多人数でプレイすることが多い音楽ゲームならではの発想だ。

 結果としてKINECT用のほかのタイトルと比べて、ユーザーテストで高評価を得ることとなる。プロトタイプを設計するプログラマーはデザイナーとしても考え、とにかく設計してみてアイデアを磨いていくことが重要だと述べた。

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