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水口哲也氏が語る『Child of Eden』で得られる新たな体験【TGS2010】

ゲーム インタビュー プレイステーション3 Xbox 360
キューエンタテインメントの水口哲也氏が手がける、ユービーアイソフトの新たなゲーム『Child of Eden』。そんな『Child of Eden』について、水口氏みずからの口からお話を伺うことができた。

2010-09-18

●「ゲームと音楽の融合という、僕らのアプローチのひとつ」

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 キューエンタテインメントの水口哲也氏が手がける、ユービーアイソフトの新たなゲーム『Child of Eden』。海外でのリリースはすでに発表されており、日本での発売は未定という同作だが、当然日本でも多くの注目を集めている作品である。そんな『Child of Eden』について、水口氏みずからの口からお話を伺うことができた。『Child of Eden』とは、いったいどんな作品なのか……!?

――久々にゲームシーンに帰ってきて、いまの心境はいかがですか?
水口哲也(以下、水口) 心はずっとここにあって、ややハレー彗星のように回遊していたような状態でしたね。でも、そのあいだにいろんなものを仕込んでいました。元気ロケッツ(※水口氏と玉井健二氏がプロデュースする音楽プロジェクト)なんかもそのひとつです。ある意味、このゲームのイメージがどこか頭の中にありつつ、元気ロケッツの活動も続けてきていました。いろんなものが揃って、やっと人前に見せることができた、という感じですね。

――元気ロケッツを立ち上げたときに、こういう企画をやろうというイメージがあったということですか?
水口 ありました。僕のテーマはつねに、音楽と映像とゲームの融合ですので。ゲームがこれだけ世界に出て、音楽も世界に出ていけるはずだと思っているし、そこにいろんなストーリーやドラマ性を乗せたものを考えています。RPGやアドベンチャーではないですけれど、そういう要素をすべて組み込んだ体験型のゲームを作ってみたいという気持ちが、ずっとあったんです。それはもう、僕の人生においてはライフテーマになっていますから。そのための、いろんな準備が必要だったんです。

――準備期間がだいぶ長かったですよね。ずっとこの作品に力を注いでいたわけですか。
水口 そうですね。『Child of Eden』自体は2年前の“東京ゲームショウ”でUBIのプロデューサーたちと会って、彼らが『Rez』や『スペースチャンネル5』、『ルミネス』という作品の流れを見てくれていて、新しいプラットフォームで新しいゲームをやろうよ、とすごく熱意を持って言ってくれたんです。だから2年前の東京ゲームショウから、2年を経て日本の皆さんに紹介できるようになったのは、とてもうれしいですね。

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――ゲームを実際に見てみると、「ああ、水口さんのゲームだな」とすごく感じるんですが、そこにストーリー性とか、メッセージ性というものが現状では感じられなかったんですけれど、やはりそういったものは込められているんでしょうか?
水口 すごくあります。いまの時点では、まだそこまで出すのは時期が早すぎるかな、と思って出してはいないんです。目指すところは音楽と映像とゲームの融合。映像や音楽の表現力が上がったので、どうやってドラマチックに最後に感動させるかということをいろいろと試行錯誤しました。『スペースチャンネル5』などでやろうとしたことと、『Rez』が持っているフィジカルな気持ちよさと、あとは元気ロケッツといったものが、いろんな意味で融合していくような、自分にとっては節目の作品になると思いますね。いままで僕がいろいろ試してきたことを、ぶつけてみたいという気持ちです。

――こういうタイプのゲームだと、ストーリーっておまけみたいなものにも感じてしまいがちですが。
水口 もちろん、RPGでもアドベンチャーでもないので、そういう意味でのストーリーとはまた違った体感があるとは思います。でも、僕はやっぱりゲームでも映画でもストーリーって大事だと思っているので、これにはこれのストーリーを用意しています。その使いかたは『Rez』のようでもあり、『スペースチャンネル5』のようでもある。でもやっぱり、『Child of Eden』の新しいアプローチというのを考えています。

――新しいアプローチというのは、どういったものになっているんでしょう? それは、ゲームをプレイすればすぐにわかるようなものなんでしょうか?
水口 僕はそのつもりで作っています(笑)。やっぱり僕の目指しているゲームというのは、一回遊んで終わりというものではないんですよ。『Rez』もそうだし、『ルミネス』もそうだし、何回も何回も遊んでいくうちに自分の感覚が変化していくのを楽しむというか。『Rez』もいまだにやっていますっていう人がいたりして。やればやるほど、いろんなものを感じていくという欲求があります。単純にお話の結果がわかったから終わり、というものではなく。

――それが音楽ゲームなどに合っているというわけですか。
水口 そうですね。もし、遊ぶたびにハッピーな、ポジティブな気持ちになれるゲームがあるんだったら、それはやりたいと思いますもん。やっぱり自分がやりたいものを作りたいですから。

――ちなみに、ネットワークはどのような使いかたをされるんですか?
水口 それについては、18日(土)におもしろいことを発表しようと思っていますので。ネットワークを使ってみんなを巻き込んでいこうと。独特な使いかたになると思います。マルチプレイというものはあまり意識をしていなくて、いっしょに遊んでどうか、ということよりも、プレイしている人を横で見ていても楽しめるものだとこのゲームについては思うんです。そういう意味では、ほかのゲームでやっていることをそのままやるっていうことは考えていないですね。

――いま、ゲームの内容がまだ漠然としたイメージしかないんですけれど、『Kinect(キネクト)』を使ったシューティングゲームという感じなんでしょうか。
水口 実際にはじつはふつうのコントローラーで遊んでおもしろいものを作っているんですよ。『Kinect(キネクト)』専用タイトルではないので、まずは“ふつうのコントローラーでおもしろい”ということを大前提としています。ただ、『Kinect(キネクト)』とか、いろんな新しい技術やインターフェースにとても興味があるので、3Dにも興味がありますしね。そういったものを取り込んでいきながら、新しい体験を作っていきたいという気持ちはありますね。そういうものを使うとなおさらおもしろい、という作品にしたくて。実際に、ふつうのコントローラーで遊んでも気持ちのいいものに仕上がっています。

――それが『Kinect(キネクト)』を使うことで、もっと違う体験ができるということですか。
水口 そうです。僕がずっと“シナスタジア”と呼んでいる“共感覚性”、映像と音がシンクロするような、ゲームの中でひとつに絡まっていくような感覚。たとえば、まるで音に色があるとか、形があるとか、動きがあるとか、そういう感覚とゲームを絡めて、どんな化学反応を作るかということをずっとやってきていて。これだけ技術が進化して、表現力が上がってくると、やれることとやりたいことがどんどん増えてくるんですよ。それを実現できるプラットフォームや技術が出てきているので、まずはプレイステーション3とXbox 360のベーシックなコントローラーで遊んで楽しいものを作っているですけれど、いろんなプレイスタイルを意識したいな、と思っています。

――今回、『Child of Eden』というタイトルにメッセージ性を感じるのですが。
水口 タイトルとしては、新しい、チャレンジなタイトルだと思うんですけれど、なんとなく雰囲気としてメッセージ性を感じてもらえているということであれば、僕は正解だったのかな、と思います。そのタイトルの先に何があるのか、というのは追々お伝えできると思います。少しずつお伝えできる情報が増えていくと思いますので、待っていていただければ。

――どれぐらい待てばいいですか?(笑)
水口 (笑)。一応、世界発売で2011年春とは言っています。日本での発売は未定ですが。

――そうは言っても、もうけっこうできているんですよね?
水口 時間がある限り、いろいろやりたいし、詰めたいですしね。納得のいくものを作りたいと思っていますからね。

――では、まだまだいじっている最中?
水口 もちろん。やりたいこともやらなければならないことも、まだまだたくさんあるので。

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――ゲームの目的というのは、どんなものなんでしょう?
水口 僕らはステージのことを“アーカイブ”って呼んでいるんですけれど、“Eden”というのは未来ネットワークの総称なんですね。人類にとってのいろんなデータが入っているアーカイブなんです。それがウィルスに侵されてしまったので、浄化していくということが、このゲームの目的なんです。英語で言うと“purify”、“pure”の動詞版なんだけれど、“浄化”をしていくということになります。浄化していくとアーカイブにもともと入っていたデータが開放されて、いろんなものが弾けて、モノトーンでウィルスに侵されていたデータが、オーガニックになっていく。単細胞からどんどん進化していった過程をたどっていくように、ウィルスを浄化していって気持ちのいい世界に変えていくわけです。それ自体が僕らのメッセージでもあるんですけれど、いかにポジティブでハッピーな気持ちにゲームでなれるか、ということを音楽や映像の力を使って表現したい。そこにLumiっていう主人公の女の子がいて……。

――それは元気ロケッツのボーカルの?
水口 そうなんです。

――そこでつながってくるんですか? さきほど仰られていた、これまでの活動が融合していくという意味なんですね。楽曲は、全部元気ロケッツなんですか?
水口 そうです。そのために書いている曲もたくさんあるので、いままでに発表している曲もそうだし、この作品用に書き下ろしている曲もあります。これまでの曲については、この作品のテーマに合っているものや、そのインスピレーションで書いているものは入れています。

――元気ロケッツの歌詞は全部水口さんが書かれているんですか?
水口 歌詞は、全部書いています。僕だけではなくて、ほかのスタッフといっしょに練り上げていくんだけれど、歌詞は全部やっていますね。今回のお話も全部自分で作っています。

――元気ロケッツの曲以外のものを入れようと思ったことはないんですか?
水口 ないです。必要なものがあったら作る! そのために数曲新曲を書いていますし。

――手間をかけられていますね。
水口 かけてます。命懸けてます。

――ヒットしている曲を使ったほうが手軽だし、売れそうじゃないですか。
水口 そういうことではないんですよね。本当の意味でゲームに音楽とか、歌詞とかを絡めてひとつのものにしようとするなら、全部自分でやらないとダメだっていう風に思ったので、そのために時間をかけてきたんだけれど。構想自体はずいぶん前からやっていますから。

――そうすると、ゲームシステムのコアになるものは、けっこう前からできていたわけですか?
水口 基本的にシューティングの体をなしているので、オーソドックスなものはありました。あとは音がクオンタイズしていくとか。クオンタイズというのは、音楽の世界ではバラバラに押しても、気持ちのいい拍にズラされるといった意味があります。このクオンタイゼーションというのは僕らが得意な部分でもあるので、適当にやっていても音楽を奏でているような気持ちになるという要素はもちろん入っています。そういった音楽のコール&レスポンスを、ゲームのコール&レスポンスと絡めたときに、気持ちよさのループが起こるんです。そのループが気持ちよく上がり続けて、何かが変化し続けるというのが、きっとゲームの世界でも音楽の世界でもおもしろいものだと思うんです。それがゲームと音楽の融合という、僕らのアプローチのひとつだと思っています。

――水口さんの中では、ひとつの完成形である、と。
水口 ……完成させたいです。まだ、途中なのでね。春までにできる限りやりたいですね。これからが本番です。

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