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【CEDEC 2010】日本のドリームチームを作って世界へ! GREEが展開するソーシャルゲームとその展望

ソーシャルアプリ
CEDEC 2010開催二日日にあたる2010年9月1日に行われた“ソーシャルゲームとその展望”と題されたパネルディスカッションで語られたGREEの今後の展望とは。 

2010-09-03

●GREEが展開するソーシャルゲームとその展望とは

 CEDEC(CESAデベロッパーズカンファレンス)2010が、2010年8月31日〜9月2日の3日間にわたって、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて開催中だ。社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)主催によるCEDECは、ゲーム開発者の技術交流などを目的に開催されている講演会で、今年で12年目。ゲームの知が集結するCEDEC 2010の模様をリポートする。

 ここでお届けするのは、CEDEC 2010開催二日日にあたる2010年9月1日に行われた“ソーシャルゲームとその展望”と題されたパネルディスカッション。このディスカッションが行われた会場は長蛇の列ができており、ゲーム業界関係者のソーシャルゲームへの注目の高さがうかがえた。パネラーは下の3人で、進行役はエンターブレイン 代表取締役社長 浜村弘一氏が務めた。
 

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GREE 
代表取締役社長 
田中良和氏

スクウェア・エニックス・ホールディングス
専務執行役員
スクウェア・エニックス
モバイル事業部長他を兼務
原口洋一氏

芸者東京エンターテインメント 
代表取締役CEO
田中泰生氏

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エンターブレイン
代表取締役社長
浜村弘一

 まずは、最近、大きく飛躍した大手ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のGREEの現状をGREE 代表取締役社長の田中良和氏が説明。それによると現在、GREEのプラットフォームでは2125万人のユーザー規模に成長。自社でも釣りゲームやペットゲームを開発し、最近ではオープンプラットフォーム化し、さまざまなサードパーティーからのゲームが提供されたことで、さらにユーザー数を伸ばしている。

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 GREEのソーシャルゲームの中でも人気のひとつに『釣り★スタ』というゲームがあるが、ユーザー数はなんと1000万以上にものぼる。また、『釣り★スタ』以外のゲームでも1000万人のユーザーを集めているゲームは数本あるという。また、田中氏はそのユーザーの年齢層と性別の割合をGREEの特徴のひとつとして挙げ、「ソーシャルゲームは子ども向けというイメージもあるかもしれないが、年齢層では30〜40代が44%を占めています」と語り、家庭用ゲーム機とさほど年齢層は変わらないというデータを示した。ただ、男女比率は半々でこちらは、男性ユーザーが多い家庭用ゲームとは異なっており、「特別の年齢や性別に向けたものに偏ってしまうと、いちばん大きなパイが取れない」という考えのもと、年齢層を限定せず、男女ともに使われるサービスを目指し、現状では狙いどうりの結果になっているといえる。

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 では、現在、GREEで提供されているゲームは何タイトルくらいあるのか? GREEが自社開発しているものが6本、それにサードパーティーのタイトルを含めると50〜60タイトルにのぼり、タイトルは日々増えている。そのパートナーなるソフトハウスの数は30〜40社で、GREEとともに大きく成長しているソフトハウスもある。そのなかのひとつ、芸者東京エンターテインメントは『おみせやさんforGREE』が好調でサービス開始から1ヵ月余りで会員数は100万人を突破。上記の会員数1000万人を獲得しているソーシャルゲームが複数本あるというのも驚きだが、100万人以上の会員数を持つタイトルも珍しくはなく、しかも短期間で100万人を達成するゲームも多い。なかには16日間で100万人に到達するゲームもあったという。

 ここで『おみせやさんforGREE』を例にソーシャルゲームの特徴をみていこう。同作は簡単な操作で手軽にお店屋さんごっこを楽しめるシミュレーションゲーム。スイーツやおもちゃ、骨董品など、さまざまなジャンルの商品を作って販売し、自分の店を人気店へと成長させていくことが目的で、基本プレイは無料でアイテム課金制を採用している。

 芸者東京エンターテインメントの代表取締役CEOの田中泰生氏は、課金のポイントとして、レアなものを作って売りたい、アバターに人とは違う衣装を着せたいといった人とつながっているからこそ、人とは違う何かが欲しくなる要素が重要だと語った。また、同氏はかつて家庭用ゲーム機を制作していた経歴もあることから、浜村氏から家庭用ゲーム作りとソーシャルゲーム作りで発想が変わったかを問われ、「ソーシャルゲームは、自由に遊べるコミュニケーションツールであって、コミュニケーション自体を楽しむもの。ミッションがあったりスコアを競ったりといった、いわゆる家庭用のゲームの文法に当てはまらないものが受け入れられる傾向にある」と回答。さらに開発に際し、ユーザーがどう遊んでいるかなどの日々のデータを蓄積しているGREEにも相談して開発するゲームの方向性を決めていったという。これに対し、GREEの田中氏は「我々のデータがすべてではありませんが、私たちも自社でゲームを開発してユーザーに提供してきているので、個々のゲームによって違いはあると思うけれど、一般的にこうすれば売れる、というものは大枠として持っています」と語り、それらをパートナーにアドバイスしていることを明らかにした。

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●ソーシャルゲームと家庭用ゲームの違い

 ソーシャルゲームの場合、家庭用ゲームとは違い、発売前からメディアに対し情報を出していくというパブリシティー展開はほとんどしおらず、宣伝費もかけてない。どうユーザーをそのゲームへと誘うのか? これには、サイト内での紹介とテレビCMを平行して行っているという。ここで田中(泰)氏がGREEに対して驚いたこととして、「最近、動員が落ちてきているという連絡がきて、「そんなときGREEの場合はバナーを変えたり、色を変えたりしている」というアドバイスをもらったんです。我々はそういうところまで考えていなかった」と語り、また、「そういうデータを取っていることにも驚いた」と付け加えた。

 GREEには、ゲームファンには馴染み深い大手のゲームメーカーもゲームの提供を始めた。その大手メーカーのひとつスクウェア・エニックスの原口洋一氏もGREEのその都度タイムリーにサイトを変えていくビジネススキームには関心した様子。ちなみに、原口氏も家庭用ゲームソフトを手掛けてきた経歴を持つ。ソーシャルゲームと家庭用ゲームの違いについて原口氏は、「家庭用のゲームは作り込むという作りかた。ですが、ソーシャルの場合は、どちらかというといろんな企画をそぎ落とし、初めてプレイする人でもチュートリアルがなくてもわかるように、なるべく単純な内容にして、実装してからお客様の反応を見て変えていくという作りかたで、家庭用ゲームとは大きく違いますね」と感想を述べた。たしかに、家庭用ゲームは長く遊んでもらうために、いろいろなシステムを取入れ、完全なものとして発売する。発売後にユーザーの反応を見て変えていくというのは、オンラインゲームは別として、なかなか難しいところだ。また、原口氏はソーシャルゲームの場合、無料で楽しんでくれるユーザーと課金もするユーザーのバランスが難しいと考える。無料で遊ぶ人がいないと、有料で遊ぶ人がいなくなってしまうという。たとえば、レアなアイテムを手に入れても披露する人がいないと満足感は薄れてしまうだろう。

 ここでまでの話を聞くと、家庭用のゲーム機とソーシャルゲームとでは、ビジネススキームやゲームの中身も似ているがまったく違うものだということがわかる。これについて田中氏も、テレビドラマと映画が似て非なるもののように、家庭用ゲームもソーシャルゲームも違うものだと考えているという。ただ、家庭用ゲームと比べ、ここまでソーシャルゲームが好調な理由に田中氏は、

・モバイルサービスであるということ。いつでもどこでもできる。ちょっとの時間にプレイできる。
・ソーシャルゲームであるということ。いつでもどこでも大人数でゲームができる(しかも十数人でもなく何百万人と)。
・アイテム課金というビジネスモデル

この3要素がうまく結合してイノベーションが大きく変化したと分析。

 続けて田中氏は、データに基づいた開発、サービスが開始されてからも、ユーザーのデータや意見で内容を変更可能で、さらにシンプルなゲームゆえに、問題点がわかりやすいという点も家庭用ゲームとは違うのではないかとも述べた。

 さらに衝撃なのが、ヒットのケタ数の違い。ソーシャルゲームではユーザー数が1000万人いないと大ヒットと呼べないという。「それほどの規模のユーザーを集めようとすると、パチンコのように片手でやるとか、ボタンを押すだけとか、単純だけどおもしろい大衆的なものにしないと、何千万人級のユーザーを獲得するようなものは生まれないと社員には話したりします」(田中氏)。

 だが、原口氏は入ってくるユーザーも多いが出て行くユーザーも多いと感じているという。ただ、出て行かない仕組みもGREEは持っているようで、このあたりは今後、田中氏と原口氏で情報の交換がなされそうだ。

●海外での成功のカギ

 これまで国内のサービスを展開してきたGREEだが、海外での展開も当然視野に入れている。

 まずここで浜村氏からスクウェア・エニックスもソーシャルゲームで海外展開というのを視野に入れているのでは? と水を向けられた原口氏は、スクウェア・エニックスも海外にスタジオを置いて、各国ごとにマーケットを作る試みを始めていると述べ、「ワールドワイドでの戦略がなければ明日はない」というくらいの覚悟と同時に期待を持って挑んでいるという。

 田中(泰)氏は海外での展開に向けては、家庭用ゲーム業界での経験がプラスになりそうだと発言。ソーシャルゲームに携わる人の多くはネットビジネス出身の人が多く、それらの人たちはシリコンバレーで流行ったものを日本で展開する受身の傾向にある。だが、家庭用ゲーム業界では、アメリカやヨーロッパの大きな海外マーケットに向けてどういうゲームを作るかと考える傾向にあるので、海外への意識はゲーム業界のほうが高いと感じるという。

 ここで浜村氏から直球でGREEの海外戦略はどうなるか問われた田中氏は、「僕らは1億人のユーザーを目指すという中期目標を立てている」と回答。ただ、世界的にみると何億人以上のユーザーを抱えるSNSはいくつもある。勝算は? 「日本のゲーム業界は国内のコンテンツ業界でビジネスの上でもグローバル化に成功した数少ない日本の産業です。これからはゲーム業界の諸先輩方の協力も得てグローバルなビジネスを展開していきたいと思っています。いわば日本のスーパースターを集めて、ドリームチームを作って海外に乗り込みたい」と意気込みを語った。実際に今後の取り組みとしては、世界的に普及しているスマートフォン版の開発を進めているという。また、田中氏は海外展開の際に、家庭用ゲームメーカーからローカライズのノウハウや風習・文化の問題を教えてもらったりなど、協力しながら「新しい時代を作っていきたい」とコメント。

 また、海外展開に合わせスタッフを増強するということにも触れ、日本の優秀な人材が集まる会社にしていかないとダメだ、という思いを語り、そこで同じような思いを持っていた、元はてなCTO伊藤直也氏がGREEに入社したということを明かすと、会場からも驚きのざわめきが起こった。

 最後にソーシャルゲームの今後に向けての期待を各氏が述べ、大盛況だった今回のディスカッションは終了した。

田中(泰)氏 
「世界の誰でもがおもしろいと思えるゲームを作っていると思っているので、今後もこのまま進んでいきたい。ソーシャルはゲームということがフィーチャーされているが、コミュニケーション自体が遊びなんだということを意識して、その可能性を追求していきたい」

原口氏
「スクウェア・エニックスは家庭用ゲームを作ってきてゲームを作るノウハウは溜まっている。無料で遊ぶ人も満足でき、なお且つ課金で遊びたくなるものを考えていきたい」

田中氏
「僕は子どものころからゲームが好きで『ドラクエ』も学校に行かないくらいの勢いで遊ぶくらいでした(笑)。ソーシャルゲームはインターネット業界、ケータイ業界、ゲーム業界の大きなイノベーションだと思う。こういうタイミングに立ち会えるということはなかなかないと思うので、その変化に出会う喜びをかみしめて、その変化を傍観するのではなく、変化を起こすんだという気持ち必要ですね」

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