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【CEDEC 2010】サイバーコネクトツーの松山氏が隠さず語る「開発には覚悟と作戦が必要!」

ゲーム
サイバーコネクトツーの松山洋氏が講演。自身が手掛けるソフトの内情について包み隠さず語ってくれた。

2010-09-01

●こんな時代だから……企画の通しかたお教えします!

 CEDEC(CESAデベロッパーズカンファレンス)2010が、2010年8月31日〜9月2日の3日間にわたって、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて開催中だ。社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)主催によるCEDECは、ゲーム開発者の技術交流などを目的に開催されている講演会で、今年で12年目。ゲームの知が集結するCEDEC 2010の模様をリポートする。

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▲松山氏

 CEDEC 2010では数多くのセッションが組まれ、開発者に向けて惜しげもなくノウハウを披露しているサイバーコネクトツー。なかでもメインホールで開催されもっとも大きな注目を集めたセッションが松山洋代表取締役社長らが登壇しての“小さくまとなるな!〜構想10年、制作3年、サイバーコネクトツー流 NDSビッグタイトルのつくりかた〜”。講演では松山氏に加えて、ゲームデザインマネージャーの磯部孝幸氏とゲームデザイナーの夏村久司氏が参加。2010年10月28日にバンダイナムコゲームスから発売予定のニンテンドーDS用ソフト『Solatorobo(ソラトロボ)それからCODAへ』の開発経緯が語られた。「いまどこの開発者と話しても、どこのパブリッシャーに企画を出しても通らないし、果ては何を作ったらいいかわからない……という弱気な発言を耳にします。おそらく内作タイトルも事情はいっしょではないかと思います」(松山)という現状の中で、いかに作りたいものを作るようにするかが講演のテーマだ。

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▲セッションでは磯部氏より“2.5Dの立体的なイラスト表現”についても説明。モーションやパースマップでは、イラストをパーツごとに制作。それをツールを使って配置することで、奥行きのある表現を実現しているのだという。これにより、迫力あるダイナミックな絵作りが可能になるとのことだ。

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 「ニンテンドーDS用ソフトに“構想10年、制作3年”は、バカな!と思われるかもしれませが、残念ながら事実です(笑)」と口火を切った松山氏。話はサイバーコネクトツーの設立にまで遡る。1996年に10名で始動した同社は(設立当初の社名はサイバーコネクト)、当時リリースされたニンテンドー64用ソフト『スーパーマリオ64』やセガサターン用ソフト『ナイツ』に刺激を受け、“フルポリゴンによる箱庭アクション”の企画をバンダイナムコゲームス(当時バンダイ)に持ち込み絶賛を受ける。その企画は1998年にプレイステーション用ソフト『テイルコンチェルト』として結実するのだが、「30万本行けるのでは?」という関係者の期待を裏切り、97000本という販売結果に終わってしまう。「それでも利益は出たので、必ずしも失敗とは言えないのですが、“売れなかったイメージ”だけが残り後々までついてまわることになりました」と松山氏は苦笑する。

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 その後、サイバーコネクトツーは『テイルコンチェルト2』の企画を走らせようと、1999年と2000年の2度にわたって企画をバンダイナムコゲームスに持ち込むがあえなく一蹴される。2000年の再提出に際しては、企画書を見もせずにゴミ箱へ捨てられたという。松山氏は「こいつだけは一生許さんと思った」のだとか。ちなみにそのときのプロデューサーが『.hack』シリーズや『NARUTO‐ナルト‐ナルティメットヒーロー』などでサイバーコネクトツーと組んでいた内山大輔氏。松山氏は内山氏とは「ケンカができるプロデューサー、ゼロ距離で殴り合える」とのことで、今回の講演についても、前日にバンダイナムコゲームスの社内で予行練習をした際に内山氏から「実名を出してもかまわない」というお墨付き(?)を得ていたのだとか。蛇足ながら、そこまで気が許しあえる仲というのは、モノづくりにおいて貴重な関係と言えるのかもしれない。

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▲磯部氏。

 さて、2度にわたって企画を蹴られた『テイルコンチェルト2』だが、「それでも我々は諦めきれなかった」と松山氏は言う。社外でも続編を望むファンからの熱烈な声が多数あり、さらに社内でも“作りたいゲームランキング”1位に2度輝いたことなどから、「じゃあ、作ろう!」(松山)と決意したのだという。ちなみに、“作りたいゲームランキング”とは、サイバーコネクトツーが社内で行っているアイデアコンペのこと。全スタッフが提出したコンペは全員が匿名で審査、2003年、2004年と2年連続で1位になったのが『テイルコンチェルト2』の企画だったという。企画を提出した磯部氏は「大空を駆けるアクションを作りたくてたまらなかったので、自分のしたいことを絵にして提出しました」のだとか。

 こうして“作る”ことを決意した『テイルコンチェルト2』だが、当然このままでは企画は通らない。そこで松山氏は前作の『テイルコンチェルト』が売れなかった理由を分析。その理由を解消することを考えた。前作の“対象年齢が低そう、奥が浅そう”という指摘に対しては、“シナリオと世界観を深く掘り下げ、中高生以上に向けて各媒体で展開する”ことで、“見た目に反して操作が難しい”という指摘に対しては、“複雑な操作がいらないシンプルなアクション”を心掛けたのだとか。ただし、“犬・猫の擬人化やロボットなどがニッチ過ぎる”という指摘に対してだけは、「ここは譲れない!」と押し通したのだとか。なぜなら、この企画に関しては、スタッフのみんなが犬・猫の擬人化が不可欠だと判断していたし、ロボットが好きだったから。売るためとはいえ、一方では作り手がこだわらなければいけない一線もある、ということを知る好例と言えるだろう。

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 そして松山氏は、構想を練ると同時にいくつかの綿密な下準備も行った。『テイルコンチェルト』のホームページを定期的に更新して過去の作品として埋もれさせない、2004年に福岡市の“防災キャラクターまもるくん”の起用により『テイルズコンチェルト』の世界観を広げるなどといった取り組みがそれだ。ちなみに、『テイルコンチェルト』の舞台となるプレーリー王国も、“まもるくん”の舞台であるニホン国も、“リトルテイルブロンクス構想”で同じ世界に属している。“リトルテイルブロンクス構想”では、それぞれの国は現実の世界とつながっており、プレーリー王国はベルギーとニホン国は日本の九州とつながっている。当然、『Solatorobo(ソラトロボ)それからCODAへ』も“リトルテイルブロンクス構想”に連なるものであり、現実の世界とつながっているとのことだが……。などと世界観を膨らませているうちに『2』でなくてもこの世界観を活かせることに気付いた松山氏は、プロジェクトを完全新作として再出発することを決意する。

 ここからがまさにクリエイターの“熱意”なくしては語れない話だが、製作総指揮・松山洋氏、キャラクターデザイン・磯部孝幸氏に世界設定担当の岡部寛正氏の3名で、1年をかけてテレビアニメ2クール分におよぶ膨大な設定資料を作成したのだとか。しかも、通常の業務とはまったく関係のないところで! 「妄想を絵や文章にして貯めました。設定資料の数は2000点を超えるんじゃないのかな。バンダイナムコゲームスの担当には、キリがいいので1000点にしましょうと言われましたけど」と松山氏は笑うが、まさに、すさまじいまでの“熱意”だ。そしてハードは当時ワールドワイドで7000万台を突破していたニンテンドーDSを選択。“市場にない本格的ビッグタイトルを”との意気込みで企画をスタートさせた。

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 企画をスタートさせるにあたって松山氏が立てた作戦は以下の3つだ。

作戦1:同時期にパブリッシャー、A社、B社、C社に企画売り込む
 これにより各社間の競争を煽る
作戦2:企画書とはべつに2種類の設定資料を作成して提出する(A3サイズ)
 企画書だけだとファイルの中に入れて忘れられてしまう可能性があるが、A3サイズの設定資料だと机の上に置かれて同僚や上司に注目してもらえる可能性がある。
作戦3:作戦3:2007年夏契約前にもかかわらず、週刊ファミ通に求人広告掲載
 これによりニンテンドーDS用ソフトの開発経験を持つスタッフが入社した。

 まあ、要約すれば企画を通すためにできるだけの手は打った……といったところなのだろうが、その結果、バンダイナムコゲームスの代表取締副社長、鵜之澤伸氏から「サイバーのあれ、オレにちょうだい」との連絡が入ったのだという。その後、同時に売り込みをかけていたほかの2社には丁重なお断りの連絡を入れたことは言うまでもない。

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 こうして2008年にめでたく開発が本格的にスタートするが、そこで松山氏は第2段階の作戦を立てる。それがつぎの3つ。

作戦1:少人数での長期間開発
作戦2:著名なクリエイター陣を起用し商品力を高める
作戦3:定期的にモニター会を実施しゲーム内容を調整

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 作戦1の少人数での長期間開発に関しては、「ハナから開発に3年かけようと思っていた」(松山)とのこと。各時期、必要なだけの人数に抑えてコスト削減を図ったのだという。いまマスターアップの段階でスタッフは3人というから驚きだ。「こうでもしないと儲からない」と松山氏は経営者としての一面を見せる。

 作戦2の著名なクリエイター陣に関しては、キャラクターデザインに結城信輝氏、メカニックイラストレーションに谷口欣孝氏、オープニングアニメ制作にマッドハウスという各界の一流どころを起用。ここで驚愕すべきはその納期の長さ。結城氏はイラスト全15点納品まで2年、谷口氏はイラスト全14点納品まで1年、マッドハウスはオープニングアニメ2種類納品まで1年をかけたというのだ。「一流どころということで、時間がかかることは想定内でした」と松山氏は事もなげに言うが……。

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▲夏村氏。

 作戦3の定期的にモニター会に関しては、担当の夏村氏によると2008年はコンセプトと要素について確認のために小学生を集めて3回、2009年は問題点の発見と修正のために20歳前後の専門学生を集めて3回、2010年はバランス調整のために2回実施したとのことだ。モニターに来た子どもを緊張させないなど、細やかな心配りも心掛けたのだとか。

 いま、『Solatorobo(ソラトロボ)それからCODAへ』は完成が近づいているわけだが、「ここまで充実させるには3年が必要でした」と松山氏は断言する。講演の冒頭で松山氏は、“皆様が思いつくであろう疑問”を3つ提示することで、それに対する返答が開発のヒントになるのでは?と問いかけていたのだが、最後にその3つの疑問に対する答えを改めて紹介して、講演のまとめとした。疑問とそれに対する答えは以下のとおり。

疑問1「(この企画ができたのは)サイバーコネクトツーとバンダイナムコゲームスの仲がすごくよかったからでは?」
答え:NO。むしろ“ダメ”と言われ続けたが作戦を立てて実行したからこそ承認された。

疑問2「『NARUTO‐ナルト‐ナルティメット』シリーズや『.hack』シリーズで儲かっているからでは?」
答え:NO。プロジェクト単体で利益を出すことが大前提。少人数で細く長く開発し、工数を抑える。

疑問3「時間をかけすぎたから大作にならざるを得なかった?」
答え:断じてNO! 時間をかけたのは作戦。だからこそさまざまな要素を作り込めた。

疑問4「なんだかんだ言って、サイバーコネクトツーだからできたのでは?」
答え:YESでありNO! サイバーコネクトツーだからこそのやりかたを思いつき、実践できたのは事実。でも、すべてを紹介したいまとなっては、これらの作戦は特別なものではないはず。

 「やりたいことがあって作りたいものがあるのなら、覚悟と作戦が必要です!」と松山氏。サービス精神溢れる松山氏のこと、講演は規定の時間をオーバーするほどの熱を帯びたものとなったが、本当にやりたいことがあれば必ずや実現できる、という松山氏の言葉は来場したクリエイターに極めて力強く響いたのではないかと思われた。

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▲講演のあとに公開された設定資料集にはたくさんの人だかりが。講演に対する反響の大きさをうかがわせる。

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