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【CEDEC 2010】『FFXIV』のキャラクター制作手法を公開!

ゲーム
スクウェア・エニックス社のデザイナー、馬場敬一氏と石井晴也氏によるセッション。同社の『FF』シリーズ最新作でありMMO(多人数同時参加型オンライン)RPGである『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)における、キャラクター制作の理念や手法が語られた。

2010-09-01

●『FFXIV』の目標

 2010年8月31日〜9月2日の3日間にわたって、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて開催中のCEDEC(CESAデベロッパーズカンファレンス)2010。社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)主催によるこの講演会は、ゲーム開発者の技術交流などを目的に開催されており、今年で12回目。その模様をリポートする。

 開催初日のセッションのひとつとして行われたのが、スクウェア・エニックス社のデザイナー、馬場敬一氏と石井晴也氏による"ファイナルファンタジーXIVにおけるキャラクター制作〜品質を支えるワークフローと制作手法〜"。全世界が注目するMMORPG『FFXIV』、そのゲーム中でプレイヤーの分身として躍動するキャラクター、この制作のノウハウが明らかに。

PH01

株式会社スクウェア・エニックス
開発部
デザイナー/キャラクターモデル制作チーフ
馬場敬一氏

PH02

株式会社スクウェア・エニックス
開発部
デザイナー/キャラクターテクスチャ制作チーフ
石井晴也氏

 最初に登壇したのは馬場氏。まず『FFXIV』がシリーズでは『FFXI』に続く2作目のMMORPGで、プラットフォームがWindowsとプレイステーション3ということ。日英独仏でワールドワイドに展開される作品であることを踏まえたうえで、

・『FFXI』のアバター(キャラクター)を引き継げるビジュアルの実現
・長期の運営に耐えうる高品質なグラフィック
・限られた容量の中での膨大なバリエーション

をキャラクター制作班の目標としたと語った。

PH03

『FFXI』のアバターを元に新たなデザインが描き起こされた。

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豊富な感情表現を実現するため、目元と口元のポリゴン数を増やし、他の部分で極限までポリゴン数を最適化したとのこと。

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体のモデルも、プレイステーション3での運用を考慮し、少ないポリゴン数で作られている。

そして基本的な理念として「世界的にゲームキャラクターはよりリアルに、という方向に向かっているが、自分たちは単なるリアルではなく"手作り感"のある魅力的なキャラクター作りを重視し大事にしている」(馬場氏)ことを強調した。

●新たにフィーチャーしたもの

 次に『FFXIV』で新たに導入された"部族"についての解説が行われた。ここでもっとも興味深かったのは、ヒューラン種の部族ハイランダーに込められた想い。馬場氏曰く「ハイランダーは従来の『FF』シリーズでは主人公にはなりえないいかつい外見だが、これは海外のプレイヤーを意識したもの。開発当時、『FF』シリーズのキャラクターが海外でバカにされているのを見聞きし、自分たちはこんなキャラクターも作れるんだというところを見せたかった。開発内でも人気があり、愛情をたっぷりと受けて生まれた部族になっています」とのこと。まさに制作秘話といった感じの裏話を披露してくれた。

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筋骨隆々とした体躯で、見た目も猛々しいヒューランのハイランダー。

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新たにフィーチャーされたものとして、ほかにも髪型や髪の色、肌の色といった部分だけでなく、さまざまな特徴もプレイヤーが選択できるようになっている。『FFXI』からキャラクターメイクの自由度が大幅に増している。

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『FFXIV』で新たにフィーチャーされた"部族"。

●高度なグラフィックとバリエーションの両立

限られた容量で高度なグラフィックとバリエーションの両立を実現した手法についても「もっとも顕著に表れているのがキャラクターの装備」(馬場氏)として、これを例に解説された。まず短期間で膨大な量の工程をこなすために「徹底的な分業化と工程の管理を行った」(馬場氏)。そしてこの体制を軸として「それぞれの班の連携が重要になるため、詳細なワークフローを作成した」(馬場氏)とのこと。また、「今回の『FFXIV』ではアイデアに秀でたプランナーと仕様を理解した現場のモデラーがタッグを組むことで、お互いの能力を補完し明確なビジョンを描くことで、停滞していた装備制作が一気に進んだ」(馬場氏)と、その秘訣を明かした。

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班編成の図。ここで使われている色分けをその他の部分(ワークフローなど)でも共用することで、視覚的に仕事の分担をわかりやすくしているとのこと。

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実際の装備制作の流れ。かなりの数の工程を必要とすることがわかる。また、最初に作られるのはヒューラン男性の装備だそうだ。

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詳細なワークフローを組んで、連携と作業効率のアップを図る。

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装備だけでなく、モノ創りは言葉でなく絵で方向を示すのがなによりもわかりやすく有効な手段(馬場氏)。

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全員が共有する共通の"装備デザイン・テンプレート"も作成された。

 ここで講師が石井氏にチェンジ。分業化と綿密な工程管理に加えて、実際に装備を作る過程で、どのような工夫が施されているかを解説してくれた。まず「装備に豊富なバリエーションを持たせようとすると、やはりデータの巨大化とコストの増大が問題点となる」(石井氏)とし、「これを解決するために採用した手法のひとつが、素材の質感によってバリエーションをつけること」(石井氏)であると説明した。

PH22

形は同じだが、素材の違いで大きく印象が異なることがよくわかる。

 また、ひとつの装備モデルを作り上げたら、このモデルの特定パーツの表示・非表示、そして特定のパーツの形状を変化させることで、豊富なバリエーションを実現していることも解説された。「MMORPGにおいて、自分のアバターを着飾る装備のバリエーションは非常に重要。言うまでもなくバリエーションは豊富なほうがいいが、当然容量との戦いになる。そこでどう工夫するかが大事」(石井氏)とは、現場で知恵を絞っている人ならでは。冒頭で「自分たちのやり方をお見せすることで、集まって頂いた皆さんにとって何かキッカケやヒントになれば」(石井氏)との挨拶もあったが、この講演を聞いた人はきっとなにかを掴んでいったことだろう。

PH23

特定パーツの表示・非表示、形状変化でバリエーションを増やす。

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例として挙げられた帽子。これはすべてひとつのモデルを元にしているとのこと。ひとつのモデルから50種類ものバリエーションが生み出されるというから驚きだ。

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「肌は別パーツではなく、装備の一部として扱うことでデザインの自由度が上がる」(石井氏)。

●今後の課題

最後に、馬場氏から今回の講演のまとめ。その中で「今回は分業制という形が限られた期間で高いクォリティを実現するために有効だったが、もちろん弊害もある。人はつねに向上心を持っているもので、これにより"同じことをしていると飽きてくる"という部分がどうしてもある。もちろんこれを解決する方法は今現在はどこにもなく、試行錯誤している途中。もし機会があれば、この後の自分たちがどうだったかをご報告できればと思います」という言葉が印象的だった。

PH26.

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