HOME> ニュース> 【CEDEC 2010】海外ゲームのリアル志向は嘘?

【CEDEC 2010】海外ゲームのリアル志向は嘘?

ゲーム
海外との共同開発はどう行うべき? 海外ゲームのリアル志向は実は嘘? スクウェア・エニックスが海外との開発における問題点をふたつのセッションで披露した。

2010-09-01

●“海外と”開発する、“海外で”開発するという、ふたつのスタイル

AK1_0067

 CEDEC(CESAデベロッパーズカンファレンス)2010が、2010年8月31日〜9月2日の3日間にわたって、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて開催中だ。社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)主催によるCEDECは、ゲーム開発者の技術交流などを目的に開催されている講演会で、今年で12年目。ゲームの知が集結するCEDEC 2010の模様をリポートする。

 ゲームの開発規模が大きくなるにつれ、国内メーカーのゲームではいまや海外のスタッフと共同開発を行うのは珍しい事態ではない。そんな海外との開発における問題を取り扱ったセッションがセットで行われた。

 前半はスクウェア・エニックス技術開発部の増永哲也氏により“北米企業・欧州企業との共同開発―開発スタッフが遭遇する障害―”と題する講演が行われた。『ファイナルファンタジーXI』に長く関わってきた増永氏が海外の開発拠点と共同作業するうえで直面した問題とは。冒頭でいきなり明かされた結論は「避けた方がいい」という衝撃的なもの。

DSCF3232
DSCF3233

▲身も蓋もない結論が出ちゃったよ……。

 しかし、順を追って説明されてみれば、確かにもっともと言うしかない。距離・時差・言語という各レイヤーで互いに問題が増幅されていくというのがその概要だ。

 まず問題となるのは、もちろん距離。共有できない情報の質量が大きく下がることにより、本来の開発業務よりもコミュニケーションの密度を埋めるための資料作成などに割かれてしまうのだという。

 時差も、日本と海外が同時に活動できる時間帯が少ないことなどから、必然的に活動時間の不足は日数を増やすことで埋めることになってしまうという問題がある。時差という点ではシンガポールや中国といったアジア諸国のほうが共同開発を行いやすいとのこと。

 また、コミュニケーションの問題も容易に考えられる。直接英語でやりとりするのでもなければ通訳かバイリンガルスタッフを仲介役として立てることになるが、通訳は情報の専門性が低く、また会議の時間がかかるが、バイリンガルスタッフの場合は専門性が高いものの、情報が歪みやすい傾向があると指摘されていた。

DSCF3235
DSCF3236
DSCF3237
DSCF3238
DSCF3241
DSCF3242
DSCF3239

▲意外と知らなかったのが休日の問題。日本人のほうがワーカホリックという印象があるが、じつは海外の開発拠点から「なんで日本人はそんなに祝祭日で休んでいるんだ」と言われることもあるのだとか。

 こうして障害が複数あることによってコミュニケーションがいびつになり、さらに双方にマネージャーが立つことでマネージメントが二重化するというのも、プロジェクト運営のうえでは確かに問題になるに違いない。

 結果として、本来人員コストを減らす意味合いがあったとしても、マネージメントスタッフや通訳スタッフの増加でコストが増えるということになる。

 ではどういったものが海外開発に適していて、どういったものを同一拠点で開発すべきなのか。プログラム要素や仕様決定、ユーザーインターフェイスなどは同一拠点で開発すべきで、一方ワークフロー化しやすいもの、ムービーやユーザーインターフェイス以外のグラフィックデータなどは海外拠点でも開発可能だと増永氏は語った。事実として、『Deus Ex(デウスエクス)』の開発を主導しているのは旧アイドス系の海外拠点だが、トレイラームービーは日本で制作されている。コストやリスク低減の努力を行ないつつ、共同開発の必要性を考え直すべきではないか、とのことだったが、当初はもっと過激な表現だったらしい……。

DSCF3244
DSCF3245
DSCF3246
DSCF3247

●アメリカ拠点で新作開発中?

AK1_0096

 続いて行われたのはSQUARE ENIX, Inc.の塩川洋介氏と松澤雄生氏による“はじめての日米共同開発”。現在は未公開の新規大型プロジェクトとして、海外のコアゲーマーも視野に入れたトップクラスのタイトルを、アメリカの開発チームとともに手掛けているとのこと。現地に乗り込んで開発を行っているので増永氏のケースとは異なるが、こちらでも興味深い知見を得ることができた。

DSCF3251
DSCF3253

▲塩川氏をクリエイティブディレクターに、松沢氏をコンセプトアーティストに進行中という新規タイトル。いったいどんなゲームになるのか?

DSCF3254

▲こういうイメージ、あるある……。

 アメリカに乗り込んだ塩川氏と松澤氏が当初考えていたのは、“リアル志向”のゲームを作る、“トップダウンによる明確な意思決定”によって動く、“ドキュメント(仕様書やマニュアル)が充実”した開発現場。しかし、予想は裏切られることになる。

 海外タイトル、とくにアクションやシューター系のタイトルでは、マッチョなキャラクターが腕づくで物事を解決していくといった印象がある人も多いだろう。これはある意味当たっていて、その裏返しとして日本的な華奢なキャラクター造形や女性が戦っていることが「リアルじゃない」と欧米のゲーマーから批判されるということもしばしば聞く。

 だが、初期のプレゼンテーションを行った塩川氏は現地スタッフから「地味だ」、「おもしろみがない」と言われハメになる。リアルは求められていなかったのだ。じゃあファンタジーか? と変えてみても「確かに派手だが意味不明で理解出来ない」「おまえたちは西洋のゲーマーがわかっていない」と言われる始末。

 あの海外ゲームのキャラクターたちを成り立たせていたのはなんだったのか? それは“ビリーバブル”(真実味がある)
であることだと塩川氏が明かした。単に“タフなおっさん”(塩川氏)だから壁を乗り越えられるのではなく、さまざまな背景があるのだろうタフなおっさんキャラクターだからこそ壁を乗り越えられることに真実味があるのだ。

 一方、松澤氏はイメージ通りのトップダウンによる意思決定で進めていったところ、スタッフに「勘弁してくれ、つらいんだ」とこぼされてしまう。トップが強権を振るうのではなく、実際にはモチベーションや参加意識が非常に大事にされているのだとか。松澤氏がメインキャラクターなどを描いて会議に出すと議論がもりあがって言いたい放題になるそうで、その議論の空気を読んでマネージメントしていくのが重要だと述べた。

 最後の仕様書などのドキュメントについては、想像以上に充実していたそうだが、ゲームプレイに関する部分だけではなく、アートワークのチームも絶対的なドキュメント“バイブル”(聖書)を用意しなくてはならず、それは線一本のルールを決めないとコンセプトアーティストが1枚も絵を描いてはいけないというレベルらしい。

 “海外と開発する”と、“海外で開発する”というふたつのスタイルから行われた問題提起。もしかしたら開発現場では当たり前の内容かもしれないが、なんとなく持っているイメージを破壊するには十分の内容だったと言えるだろう。ここからどんなものが生まれてくるか興味深い。

DSCF3255
DSCF3257
DSCF3258
DSCF3259

▲建物を描く際に使っていい線という“バイブル”。些細なレベルでもルールが決定される。

ソーシャルブックマーク

  • Yahoo!ブックマークに登録

評価の高いゲームソフト(みんなのクロスレビュー

※ ブログ・レビューの投稿はこちら!ブログの使い方

この記事の個別URL

その他のニュース

『デッド オア アライブ 5 ラスト ラウンド』が次世代機で登場! デビュートレーラーが到着【動画あり】

コーエーテクモゲームスは、『デッド オア アライブ5』シリーズの最新作『デッド オア アライブ 5 ラスト ラウンド』を、プレイステーション4、プレイステーション3、Xbox One、Xbox 360用ソフトとして発売することを発表した。発売時期は2015年春予定。

『Mighty No.9』のβテスト版が配信開始! 最新映像も公開【動画あり】

comceptは、稲船敬二氏が開発を進めている『Mighty No.9』において、βテスト版の配信を開始した。また、『Mighty No.9』プロジェクト1周年を記念して、イベント“マイティ・マンス”も開催。

舞台『ダンガンロンパ THE STAGE』の追加公演が決定! チケット先行販売は9月3日から

2014年10月29日〜11月3日に東京・日本青年館で公演される舞台『ダンガンロンパ THE STAGE 〜希望の学園と絶望の高校生〜』について、10月29日(水)と11月3日(月)に追加公演を行うことが発表。

括目せよッ! 『チェンクロ』×『刃牙道』コラボいよいよ開始ッ……!

『チェインクロニクル〜絆の新大陸〜』にて、2014年9月2日(火)午後3時よりマンガ『刃牙道』とのコラボがスタートする。

約1万人のミクファンが大阪に集結! 初音ミクの複合型イベント“初音ミク「マジカルミライ 2014」in OSAKA”リポート

2014年8月30日に行われた、電子の歌姫・初音ミクの創作文化の現在を発信するイベント“初音ミク「マジカルミライ 2014」in OSAKA”のリポートをお届け。

ガシャポン戦士NEXTプレミアシリーズ第4弾! ファーストガンダム大型モビルアーマーが登場

バンダイは、バンダイ公式ショッピングサイト“プレミアムバンダイ”にて、“ガシャポン戦士NEXTプレミア04”の予約受付を、本日2014年9月2日(火)に開始した。価格は2980円[税込](送料・手数料別途)。

『みんなのGOLF』最新作がPS4で制作決定! ゴルフを中心とした“オープンワールドエンタテインメント”を目指す【動画あり】

ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアは、2014年9月1日に開催された“SCEJA Press Conference 2014”にて、プレイステーション4用ソフト『みんなのGOLF』シリーズ最新作の制作を発表した。

【ネタバレ注意!】ホラー脱出ゲーム『SCHOOL』を完全攻略

ハッピーホッピーハッピーのホラー脱出ゲーム『SCHOOL』を、ゴールまで一気に攻略。攻略早見表のそれぞれのシーンをクリックすると、詳細な攻略法が表示される。

『World of Tanks』のコンテストが開催 入賞者はオーストラリアで開かれるゲーム見本市“PAX Australia 2014”に無料で招待!

Wargamingは、オーストラリア・メルボルンにて開催される“PAX Australia 2014”に出展することを、本日2014年9月2日(火)に発表した。さらに、“PAX Australia 2014”の出展を記念して、『World of Tanks』のユーザーともうひとりをペアで“PAX Australia 2014”に招待するコンテストを開催。

『GOD EATER 2 RAGE BURST(ゴッドイーター2 レイジバースト)』発売決定、“東京ゲームショウ 2014”にも出展

バンダイナムコゲームスは、プレイステーション4、プレイステーション Vita用ソフト『GOD EATER 2 RAGE BURST(ゴッドイーター2 レイジバースト)』を発売することを決定。本作は2014年9月18日から21日(18日と19日はビジネスデー)まで千葉・幕張メッセにて開催される“東京ゲームショウ 2014”に出展する。



もうすぐ発売!

▼各種ハード別発売情報

  • PS4
  • PS3
  • Wii
  • Wii U
  • XboxOne
  • Xbox360
  • PSVita
  • PSP
  • 3DS
  • DS