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【CEDEC 2010】海外ゲームのリアル志向は嘘?
ゲーム●“海外と”開発する、“海外で”開発するという、ふたつのスタイル
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CEDEC(CESAデベロッパーズカンファレンス)2010が、2010年8月31日〜9月2日の3日間にわたって、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて開催中だ。社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)主催によるCEDECは、ゲーム開発者の技術交流などを目的に開催されている講演会で、今年で12年目。ゲームの知が集結するCEDEC 2010の模様をリポートする。
ゲームの開発規模が大きくなるにつれ、国内メーカーのゲームではいまや海外のスタッフと共同開発を行うのは珍しい事態ではない。そんな海外との開発における問題を取り扱ったセッションがセットで行われた。
前半はスクウェア・エニックス技術開発部の増永哲也氏により“北米企業・欧州企業との共同開発―開発スタッフが遭遇する障害―”と題する講演が行われた。『ファイナルファンタジーXI』に長く関わってきた増永氏が海外の開発拠点と共同作業するうえで直面した問題とは。冒頭でいきなり明かされた結論は「避けた方がいい」という衝撃的なもの。
しかし、順を追って説明されてみれば、確かにもっともと言うしかない。距離・時差・言語という各レイヤーで互いに問題が増幅されていくというのがその概要だ。
まず問題となるのは、もちろん距離。共有できない情報の質量が大きく下がることにより、本来の開発業務よりもコミュニケーションの密度を埋めるための資料作成などに割かれてしまうのだという。
時差も、日本と海外が同時に活動できる時間帯が少ないことなどから、必然的に活動時間の不足は日数を増やすことで埋めることになってしまうという問題がある。時差という点ではシンガポールや中国といったアジア諸国のほうが共同開発を行いやすいとのこと。
また、コミュニケーションの問題も容易に考えられる。直接英語でやりとりするのでもなければ通訳かバイリンガルスタッフを仲介役として立てることになるが、通訳は情報の専門性が低く、また会議の時間がかかるが、バイリンガルスタッフの場合は専門性が高いものの、情報が歪みやすい傾向があると指摘されていた。
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▲意外と知らなかったのが休日の問題。日本人のほうがワーカホリックという印象があるが、じつは海外の開発拠点から「なんで日本人はそんなに祝祭日で休んでいるんだ」と言われることもあるのだとか。 |
こうして障害が複数あることによってコミュニケーションがいびつになり、さらに双方にマネージャーが立つことでマネージメントが二重化するというのも、プロジェクト運営のうえでは確かに問題になるに違いない。
結果として、本来人員コストを減らす意味合いがあったとしても、マネージメントスタッフや通訳スタッフの増加でコストが増えるということになる。
ではどういったものが海外開発に適していて、どういったものを同一拠点で開発すべきなのか。プログラム要素や仕様決定、ユーザーインターフェイスなどは同一拠点で開発すべきで、一方ワークフロー化しやすいもの、ムービーやユーザーインターフェイス以外のグラフィックデータなどは海外拠点でも開発可能だと増永氏は語った。事実として、『Deus Ex(デウスエクス)』の開発を主導しているのは旧アイドス系の海外拠点だが、トレイラームービーは日本で制作されている。コストやリスク低減の努力を行ないつつ、共同開発の必要性を考え直すべきではないか、とのことだったが、当初はもっと過激な表現だったらしい……。
●アメリカ拠点で新作開発中?
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続いて行われたのはSQUARE ENIX, Inc.の塩川洋介氏と松澤雄生氏による“はじめての日米共同開発”。現在は未公開の新規大型プロジェクトとして、海外のコアゲーマーも視野に入れたトップクラスのタイトルを、アメリカの開発チームとともに手掛けているとのこと。現地に乗り込んで開発を行っているので増永氏のケースとは異なるが、こちらでも興味深い知見を得ることができた。
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▲こういうイメージ、あるある……。 |
アメリカに乗り込んだ塩川氏と松澤氏が当初考えていたのは、“リアル志向”のゲームを作る、“トップダウンによる明確な意思決定”によって動く、“ドキュメント(仕様書やマニュアル)が充実”した開発現場。しかし、予想は裏切られることになる。
海外タイトル、とくにアクションやシューター系のタイトルでは、マッチョなキャラクターが腕づくで物事を解決していくといった印象がある人も多いだろう。これはある意味当たっていて、その裏返しとして日本的な華奢なキャラクター造形や女性が戦っていることが「リアルじゃない」と欧米のゲーマーから批判されるということもしばしば聞く。
だが、初期のプレゼンテーションを行った塩川氏は現地スタッフから「地味だ」、「おもしろみがない」と言われハメになる。リアルは求められていなかったのだ。じゃあファンタジーか? と変えてみても「確かに派手だが意味不明で理解出来ない」「おまえたちは西洋のゲーマーがわかっていない」と言われる始末。
あの海外ゲームのキャラクターたちを成り立たせていたのはなんだったのか? それは“ビリーバブル”(真実味がある)
であることだと塩川氏が明かした。単に“タフなおっさん”(塩川氏)だから壁を乗り越えられるのではなく、さまざまな背景があるのだろうタフなおっさんキャラクターだからこそ壁を乗り越えられることに真実味があるのだ。
一方、松澤氏はイメージ通りのトップダウンによる意思決定で進めていったところ、スタッフに「勘弁してくれ、つらいんだ」とこぼされてしまう。トップが強権を振るうのではなく、実際にはモチベーションや参加意識が非常に大事にされているのだとか。松澤氏がメインキャラクターなどを描いて会議に出すと議論がもりあがって言いたい放題になるそうで、その議論の空気を読んでマネージメントしていくのが重要だと述べた。
最後の仕様書などのドキュメントについては、想像以上に充実していたそうだが、ゲームプレイに関する部分だけではなく、アートワークのチームも絶対的なドキュメント“バイブル”(聖書)を用意しなくてはならず、それは線一本のルールを決めないとコンセプトアーティストが1枚も絵を描いてはいけないというレベルらしい。
“海外と開発する”と、“海外で開発する”というふたつのスタイルから行われた問題提起。もしかしたら開発現場では当たり前の内容かもしれないが、なんとなく持っているイメージを破壊するには十分の内容だったと言えるだろう。ここからどんなものが生まれてくるか興味深い。
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