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gamescomの会場でグラスホッパー・マニファクチュアへ独占インタビュー

ゲーム インタビュー
ハンガリーのゲームメーカー、デジタルリアリティーとグラスホッパー・マニファクチュアが業務提携。『SINE MORA(シネモラ・仮題)』の共同開発が電撃発表された。ファミ通.comでは、グラスホッパー・マニファクチュア代表の須田剛一氏らに独占インタビューを敢行。業務提携のきっかけや、今後のタイトルに関して話をうかがった。

2010-08-19

 ドイツのケルンで開催されているgamescom期間である、現地時間8月18日、ハンガリーのゲームメーカー、デジタルリアリティーとグラスホッパー・マニファクチュアの業務提携と、2社によるPlayStation NetworkおよびXbox LIVE アーケード向けのタイトル『SINE MORA(シネモラ・仮題)』の共同開発が電撃発表された。ファミ通.comでは、グラスホッパー・マニファクチュア代表の須田剛一氏、デジタルリアリティーのチーフエグゼクティブオフィサー、アンドラス・ペラー氏、そして、『SINE MORA(シネモラ・仮題)』のディレクターを務めるテオドール・レイケル氏に独占インタビューを敢行。業務提携のきっかけや、『SINE MORA(シネモラ・仮題)』の詳細、さらには今後のタイトルに関して話をうかがった。

01

▲インタビューに応じてくれた3人(写真左から、アンドラス氏、須田氏、テオドール氏)。
非常にアットホームな雰囲気を漂わせていたことが印象深い。

――まず、知らない方も多いと思いますので、最初にデジタルリアリティーがどのような会社なのかご説明いただけますか?

須田剛一氏(以下、須田氏) デジタルリアリティーさんは、ハンガリーのブタペストを拠点にされて、もう20年の会社になるんですけれど、これまでデベロッパーとしてやってきた歴史があり、これからパブリッシャーに乗り出すにあたり、日本の会社とパートナーを組みたいということを伺い、あることをきっかけに業務提携、共同開発をさせていただくことになったんです。2社はこれから長期的にパートナーとして組んでいくのですが、共同開発の第1弾として今回『SINE MORA(シネモラ・仮題)』を発表させていただきました。

――ハンガリーの会社と提携されたことに驚いている方も多いと思うので、“きっかけ”も含めてご説明いただけますか?

須田 もともとハンガリーというのは名作を生み出している国でもあって、有名なのは1993年にメガドライブで発売されたアクションゲーム『エコー・ザ・ドルフィン』です。デジタルリアリティーさんのスタッフの中には、『エコー・ザ・ドルフィン』のクリエイターが何人かいらっしゃるんですよ。弊社は現在、エレクトロニック・アーツさんと組んでゲーム制作を行っていますが、デジタル配信系タイトルを作っていきたいという強い思いが以前からあり、パートーナーを探していたんです。そんな中、たまたまデジタルリアリティーさんも日本の会社と組みたいと考えていらっしゃって……。

――お互いが求めていた相手だったんですね。

須田 カンファレンスでもお伝えしました通り、ある女性がふたりのあいだをつなぐ、キューピット役を担っていただいて……。外国人の女性……ゲーム業界に関係されていらっしゃる方なんですが、その女性の尽力があり、2010年のE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)でアンドラスさんと会うことができて、そこから業務提携、共同開発の話が一気に進んでいったんです。デジタルリアリティーさんはデベロッパー時代を経験されていて、パブリッシャーからのプレッシャーなど、パブリッシャーとの関係について苦労されたそうなんです。そのため、自分たちがパブリッシャーになるときには、もっと自由な環境、自由な発想をデベロッパーに与えていっしょにやりたいという思想を持ってらして。弊社はとくにイノベイティブなものを作りたいと考えていましたので、デジタルリアリティーさんが掲げている思想、“クリエイティブ フリーダム”という考えと合致したわけです。

――アンドラスさんは、グラスホッパー・マニファクチュア、そして須田さんに関してどのように思われていたのですか?

アンドラス・ペラー氏(以下、アンドラス) 欧州では日本のクリエイターで知られている人は意外と少ないんです。須田さんはその中でも数少ない、欧州で知られているクリエイターのひとりなんです。とてもクリエイティブなマインドを持っている人だと思っています。『Killer7(キラー7)』や『ノーモア・ヒーローズ』は欧州でも人気を博していましたので、日本人クリエイターの中でも、とくにリスペクトされている人だと存じていました。須田さんとお会いしたあと、須田さんの名刺を会社のスタッフに見せたときは、みんな驚いていましたから。

須田 光栄です(笑)。今回、改めて申し上げたいのは、『SINE MORA(シネモラ・仮題)』1本だけのパートナーではなくて、この関係がずっと続くようにしたいと考えているということです。当然、ビジネスパートナーとしての利害が一致したという部分もあります。デジタルリアリティーさんは、日本のパートナーを探していた。一方、我々はデジタル配信タイトルを作りたいと考えていたということですね。ですが、人と人とのつながりと言いますか、アンドラスさんとお話を交わして誠実な方だと感じましたし、「この人とだったら新しいことをやりたい」と思いましたので。そういった結びつきを大事にしながら関係を続けたいと思っています。

06

――『SINE MORA(シネモラ・仮題)』ですが、ジャンルがシューティングということに驚いたのですが……。

アンドラス 『SINE MORA(シネモラ・仮題)』は、弊社のテオドールがずっと構想を暖めていたタイトルなんです。

テオドール・レイケル氏(以下、テオドール) 私はマニアックなゲームファンなのですが、20年以上ジャーナリストとして働いていて、そのあいだに自分がプレイしたいというゲームがなかったのでゲーム開発に携わるようになりました。昨今、シューティングというジャンルは、ポピュラーではないということもよくわかってはいますが、自分なりのアイデアがあったので、それをアンドラスに伝えたところ、制作の許可を得られたんです。シューティングのジャンルは欧州でもマーケットがあると思います。さらに、『SINE MORA(シネモラ・仮題)』はただのシューティングではなくて、哲学的な要素も取り入れたものになっています。日本のゲームファンにもアピールできるものを制作したかったこともあり、日本のパートナーを探していたのですが、ふつうのゲームを作っている会社ではなくて、追加要素をちゃんと行ってくれる会社で、ストーリー表現に優れた会社を求めていたんです。今回の共同開発は単なる業務委託ではなく、コラボレーションとしてやりたかったわけです。

――つまり、最初にテオドールさんが手掛けたプロトタイプがあり、それをグラスホッパー・マニファクチュアがチューンアップする、ということなのでしょうか?

須田 そうですね。アートディレクション、サウンド、ゲームデザインの監修をさせていただきます。サウンドは弊社の山岡晃が担当しますし、かなり密接に組ませていただく形になりますね。テオドールさんは日本のゲーム、アニメが大好きで、スチームパンク、ディーゼルパンクのような世界を表現したいと聞きましたので、グラスホッパー・マニファクチュアが最大限のサポートをしてあげたいと思っています。(テオドール氏に向かって)あ、感銘を受けたシューティングゲームはなんでしたっけ?

テオドール 『バトルガレッガ』。

――(笑)。本当に日本のゲームに詳しいですね。ところで、カンファレンスで『SINE MORA(シネモラ・仮題)』は時間操作をテーマにしているとおっしゃられていましたが……。

テオドール ごめんなさい。現時点では、ゲームの詳細はお伝えできません。イメージビジュアルを見て想像を膨らませてください。プレイをジャマしない、しっかりとしたストーリーも用意していますので、シューティングというジャンルに捕らわれず、楽しみしていてください。

――『SINE MORA(シネモラ・仮題)』というタイトルは、造語なんでしょうか?

アンドラス ラテン語です。“Without Delay(遅れなし)”という意味があります。SINEはなし、MORAは遅れです。ただ、MORAには“死”という意味もあるんです。ですので、“死なない”という意味も持っています。

――なるほど。“死なない”というのは、時間操作というテーマに関係しそうですね。ちなみに、今後の共同開発タイトルに関してお伺いしたいのですが……。

アンドラス 簡単な質問ですが、答えるのは難しいですね(笑)。いまは何もお答えできず……。申し訳ありません。

須田 デジタルリアリティーさんの技術力はスゴイですから、いろいろな作品が作れると思いますので、楽しみにしていてください。

――海外に目を向けますと、PlayStation NetworkおよびXbox LIVE アーケード向けのタイトルには、新たな人材、新たなタイプのゲームが多数登場していますよね。今回の業務提携、共同開発によって、そのようなことを実践していただけると非常にうれしく思いますが……。

須田 カンファレンスでも触れましたが、2009年に弊社からタイトルを出せなかったことについて、大きなショックを受けていたんです。1年間何もタイトルを出さないと、ゲームファンから忘れられてしまいますし、自分だけのディレクション作品ではなくて、弊社の若手のタイトルですとか、他社のクリエイターさんと組んでのタイトルですとか、弊社からどんどん新たなタイトルを発表する。そういった流れを作りたいと思っていますし、その際にPlayStation Network、Xbox LIVE アーケード向けのタイトルの存在は強く意識していたんですが、なかなかきっかけがなかった……。これはグラスホッパー・マニファクチュアの代表ではなく、いちクリエイターとしての意見ですが、EAさんとのタイトルが終わったら、1本作りたいと思っています。

――おお! それは楽しみですね。では、最後に日本のゲームファンへメッセージをお願いします。

テオドール 日本のファンの方へ言いたいのは、日本のゲームは本当にすばらしいので、日本の開発者の方々に日本のゲームを作るように勧めてほしいですね。日本のデベロッパーはよくないという人もいらっしゃいますが、そんなことはぜんぜんないと思いますので、日本のゲームを応援してあげてください。

アンドラス メッセージとして妥当かはわかりませんが、欧州では日本のタイトルが少ないですので、日本のゲームカルチャーをもっと欧州に広めていきたいと思っています。また、そのお手伝いが今後できればいいなと思っています。

須田 ファンの方が驚かれているのは、ハンガリーの会社と組んだということだと思いますけれど、これが何を示すかというとビデオゲームに国境はないということです。ゲームを愛する人は世界中にいて、グラスホッパー・マニファクチュアがやるべきことは、世界中の皆さんにイノベイティブなゲームを届けること。これからデジタルリアリティーさんが、そこをサポートしてくれるわけです。日本とハンガリーは、国の距離は遠いですけれど、心の距離はまったく遠くはありませんし、ビデオゲームはどこの国の会社ともパートナーを組めるということを証明できると思います。皆さんに期待してほしいのは、僕がディレクションをしたいという希望もありますし、弊社の飯田和敏や山岡晃が今後タイトルを手掛ける可能性もありますし、そういったことが今回の業務提携から生まれてくるということですね。また、若いクリエイターたちが作るゲームも生み出していきたいと思っていますので、そういった部分も楽しみにしていてください。

02

▲握手を交わす須田氏とアンドラス氏。今後のタイトルにも期待が高まる。

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