白石稔さんの力で地獄気分は軽減できるのか? 『WoWs』ステージ発表リポート――艦船のかわいさをプレゼンする【後編】

東京ゲームショウ2015のWargamingステージで、『World of Warships』関連のネタを披露した。テーマは艦船をかわいく見るためのコツ。

公開日時:2015-10-26 17:05:00

●『WoWs』の魅力を真っ当じゃない方法で伝える

 こんにちは。ファミ通.comのPCオンラインゲーム担当ミス・ユースケです。東京ゲームショウ2015のWargamingステージで『World of Warships』(以下、WoWs)関連のネタを披露しました。

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▲僕のネタが巨大スクリーンデビューを果たしてしまった。

 ことの顛末は前半の記事を読んでいただくとして、ここからはステージで公開したスライドの再録を中心にお届けする。だいぶすべったので、いま身を切るような思いでキーボードを叩いている。

 こういうネタをお願いされたのだから仕方ない。その逃げ道だけが僕の友だちだ。

【前編はこちら】
新ジャンルの地獄と人気声優――艦船のかわいさをプレゼンする【前編】

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▲アニメ“蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-”関係者のみなさんに、『WoWs』に関するプレゼンを行った。左から、千早群像役の興津和幸さん、イオナ役の渕上舞さん、ヒエイ役のM・A・Oさん、プロデューサーの南健さん。

●戦艦・大和をどうとらえるか

 スライドのタイトルは“『WoWs』の魅力”にした。ネタ中心のプレゼンとはいえ、あらゆる人に『WoWs』の魅力を伝えたい気持ちに偽りはない。ふだんゲームをやらない人が『WoWs』に興味を持ってくれたら最高だ。

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▲まずはまっとうに『WoWs』の基礎情報を紹介する。

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▲「『WoWs』には最初から日本の艦船が多数登場します。つまり・・・」

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▲「ロシアで生まれたゲームでありながら、日本が主役級の扱いを受けているんです」


 日本の艦船が遠い異国の地で高い評価を得ている。これは日本人として、単純に誇らしいことだと思う。日本の船が出るならやってみようと考える人も多いはずだ。

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▲「オフィシャルのイメージイラストとして、浮世絵風のものが用意されていたりします」

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▲「ほかと比べて明らかに異質。それだけ日本を意識しているんでしょうね」


 日本の船はすごいんだよ、世界で注目されているんだよと、帰属意識をくすぐる作戦である。実際、世界のミリタリーファンや艦船ファンのなかには、日本の船に特別な感情を持っている人も少なくない。

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▲「しかも、『WoWs』の開発は戦艦・大和からスタートしているんです。開発には造船や機械工学の専門家も加わっていて、特別な思いや憧れを持って大和を作り上げました」


 艦船に興味がなくても、戦艦・大和の名前は知っているだろう。“詳しくは知らないけど何だかすごい”くらいの認識でいい。大和は当時の技術の集大成なので、歴史的な価値もすごく高い。『WoWs』の開発者たちは、そんな大和が本当に好きなのだ。

 どうだろう。心の奥がむずむずしないだろうか。野球に興味がなくても、母校が甲子園で活躍して褒められたらうれしいのと似た感覚だと思う。

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▲「大和そのものが、日本が世界に誇る文化であるといっても過言ではないでしょう」


 心のガードを下げたところでドーン! 我ながらこの流れは完璧だったと思う。ビジネスの現場だったら外資系の取引先から握手を求められているところだ。

 ただし、あまりにも物事がきれいに運ぶと、するっと脳内を通り抜ける可能性がある。多少の違和感を演出したほうが記憶に残ると思うので、変化球のネタを盛り込んだ。

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▲「大和と同じように、日本が世界に誇る文化はいくつもあります。僕がいまこの場で強調しておきたい文化は・・・KAWAIIです」


 みんなの頭上に“?”が出た。天は人の上に人を作らなかったがKAWAIIは“?”を作った。

 念のため説明しておくと、“KAWAII”は日本発のファッションやポップカルチャーを表現した言葉だ。日本のKAWAIIカルチャーは世界中の女子の憧れ。世界の造船関係者の憧れである大和と似た構図である。

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▲「これはもう大和=KAWAIIと言ってもいいのではないでしょうか」


 大和=かっこいい。それはわかるが、別の見方があってもいいはずだ。そう思って自信満々に宣言したのだが、会場の反応はそうでもなかった。“?”がひと回り大きくなった。

 いきなりのピンチ到来である。まだステージは始まったばかり。持ち時間はあと30分ほどある。初回からノーアウト満塁になった先発ピッチャーの気分だ。しかも、誰もブルペンで準備してないぞ。うおお。

●ポイント(1)正面から見る


 逆境を切り開くには強い気持ちと諦めない勇気が必要だ。そういうの少年マンガで読んだことある。数少ない笑っている人を見つめながら(そうすると苦痛が和らぐのだ。ふしぎ!)、艦船からかわいさを感じ取るコツを紹介していく。

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▲「乗りものは正面から見ると一頭身のキャラみたいでかわいいんです」


 電車やバス、車は正面から見ると四角くてかわいい。そういうデザインのマスコットキャラも多い。ここでゲストから「車は顔みたいに見えますね」という援護射撃。僕に気を使っている可能性はないものとする。

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▲「『WoWs』にはこの4タイプの船が登場します。さっそく、真正面から見てみましょう」

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▲「こちらは駆逐艦と巡洋艦です」


 スピード重視の駆逐艦は船体が小さくて細い。巡洋艦は立派な艦橋部分を飾りに見立てた。どちらも錨が目のように見える。

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▲「戦艦は幅が広くて、人間の顔のバランスに近いです」


 ここで虎の子の大和を投入した。これはもう完全に顔だろう。「わかるわかる」みたいな声も聞こえてきた。幻聴じゃないと信じたい。

 『WoWs』に登場する一部の艦船は、船体を改造すると外見が変化する。左端の金剛(Kongo)は改造すると金剛型戦艦二番艦の比叡をベースにしたグラフィックになるのだ。

 ステージには“蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-”でヒエイを演じるM・A・Oさんも登壇していたので、ヒエイも出てきますよとアルペジオファンに見せたかったのだ。ようやくアルペジオネタが出てきて、安心した人も多いだろう。

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▲なかなか愛嬌のある大和の顔立ち。


 大和のかわいさが十分に浸透したところで(そういうことにして話を進める)、つぎのステップへ。空母には大和級にかわいい艦船がいることを発見してしまったのだ。

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▲「まずは飛龍。泣きそうです」

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▲「龍驤。完全に笑ってます」

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▲「こちらは翔鶴ですね。吐血してます」


 いろいろな艦船を正面から見て、この3隻を見つけたときは興奮した。翔鶴はアニメだったら病弱キャラに違いない。

●ポイント(2)KAWAIIキャラとして扱う


 艦船をご当地キャラやマスコットキャラとして見たら愛着がわくと思う。キャラ好きの女子って多いですよね。そこを攻める。

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▲「キャラっぽくしました」


 デザイナーさんにお願いして、ご当地キャラっぽくしてもらった。翔鶴の吐血まで再現してくれて満足である。足は僕が書き足した。足の裏を見せて躍動感を出す。

 当初は一頭身キャラの大御所・バボちゃんをデザインしたイラストレーターの田島司先生に発注したかったのだが、勇気が出なかった。田島先生が経営するデザイン会社には知人が働いていて、その人にお願いしたら「ごめん、いま忙しいんだ」と断られた。

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▲「一般的な方法で船を紹介するとこんな感じです。分かりやすいけど、少し味気ないと思うんです」


 船が好きな人に紹介するときは上記のやりかたが効果的だ。だが、そうじゃない人に興味を持たせるのがこのプレゼンの趣旨なので、さっきのキャラを活用する。

 自治体のパンフレットとかで、難しいことをご当地キャラが説明してることってあるだろう。あのメソッドを艦種の紹介に活用したら、雰囲気が柔らかくなって覚えやすくなると思うのだ。

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▲しょうかくちゃんがオチ担当。


 今回用意した艦船キャラは3人。偶然にもステージ上には渕上舞さん、興津和幸さん、M・A・Oさんという3人の声優さんが登壇していたので(ラッキー!)、それぞれに声を当ててもらった。超ぜいたく。

 キャラに命を吹き込まれて大満足なのだが、キャラ設定を用意しなかったので、3人ともおっとりした声になったのは誤算だった。ひとりも元気な子がいないとは。打ち合わせは入念にやったほうがいい。

 Wargamingさん、このキャラを使いたくなったら連絡をください。

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▲「注目してもらいたいのが、空母の特徴にあった“RTSみたいに遊べる”という点です」

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▲「空母の役割は多岐に渡ります。偵察をしたり敵艦に爆弾を落としたり」


 キャラの親しみやすさを利用すれば、やや複雑な要素もスムーズに頭に入るかもしれない。『WoWs』では巡洋艦、駆逐艦、戦艦でプレイすると3Dシューティングだが、空母を選ぶとRTS(リアルタイムストラテジー)みたいになる。2種類のゲームが遊べるようなものだ。お得。

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▲「そんな複雑な空母も、キャラたちが説明すると一気に親しみやすくなります」


 やはりキャラものは強い。複雑さや難しさが払しょくされた。

 キャラものといえば、『WoWs』は“蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-”とコラボをしていて、TGS2015ではアルペジオ仕様の試遊スペースが用意されていた。システムボイスがイオナ(渕上舞さん)になっていたほか、コンゴウやハルナのバイナルパターン入り艦船でプレイできたのだ。

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▲こちらは開発中の画像。もっとクオリティーを高めてから、2015年12月末を目途に配布予定だそうです。


 艦船キャラネタはそこそこウケた(気がする)。もう現実の声と幻聴の区別がつかなくなっている。

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▲翔鶴は病弱じゃありませんという注釈でコーナーを締めた。

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▲だいぶダメージが蓄積されてきたよ。

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▲艦船がかわいく見えてきたらこちらをどうぞ。

●ポイント(3)女子の好きなものにする


 極論を言えば、KAWAII=女子が好きなものってことだろう。艦船は女子人気の高いものに似ていると気づかせれば「やーん、かわいいー」ってなるはずだ。

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▲「女子が好きなものと言えばス○バですよね」


 おしゃれな女子はス○バが好きだ。断言する。それが世の理である。

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▲「やまとちゃんをス○バっぽくしました」


 ス○バっぽいかス○バっぽくないかで言えば、ぎりぎりス○バっぽいのではないか。ス○バっぽく見えない人は優しさが足りないのだ。がんばって身に着けてほしい。

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▲ス○バでコーヒーを買ったと見せかけて、よく見ると大和。


 このネタの見どころは、超大規模スポーツ大会のロゴ問題で世間が揺れているときにロゴのパロディーネタを持ってくる僕の勇気。そこだけは評価していただきたい。

●ポイント(3)きらきらさせる


 KAWAIIは、ポップできらきらしたファッションやビジュアルに使われる言葉だ。艦船がきらきらしていれば、無理なくKAWAIIという発想につながるだろう。

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▲「『WoWs』はグラフィックのこだわりがすごく、そのリアルさや美しさは数あるゲームのなかでもトップクラスでしょう」


 『WoWs』は美麗なグラフィックもウリのひとつだが、きらきらとはちょっと違うかなと思う。さすがの僕もそこまで強引じゃない。

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▲万華鏡に入れた。


 こういう物理的な強引さはある。艦船の小型模型をでかい万華鏡に入れたら、いい感じにきらきらした。万華鏡は手作りだ。本番前日の深夜、なかなか万華鏡が完成しなくて焦るという生まれて初めての経験をした。

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▲空母と戦艦を取り除いて駆逐艦だけにしたら極楽みたいになった。


 空母と戦艦の影が目立ち過ぎたので取り除いたら輝きが増した。駆逐艦と万華鏡の相性のよさに気付いたのは僕が世界初なのではないだろうか。何ごともやってみなければわからないものである。

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▲きらきらとはまったく関係ないが、精霊馬も作った。お盆の時期にご先祖様が乗るやつだ。駆逐艦・睦月は万華鏡のなかでカラカラやりすぎたため、細かいパーツが取れまくっている。


 速く帰って来られるように駆逐艦を、お供えものをたくさん積んでゆっくり戻れるように空母を使用。ご先祖様も大満足なのではなかろうか。

●ポイント(4)ファッション小物に組み込む


 KAWAIIと言えばファッションである。『WoWs』をもとにおしゃれなファッションアイテムを作ったら女子からの評価はうなぎ登りだろう。

 艦船をデザインに取り入れた服(Tシャツやパーカーなど)はWargamingさんがオフィシャルで作るかもしれないので、僕は違う方向性でいく。ビジュアルだけでなく、どうにかしてゲーム性を盛り込みたいのだ。

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▲「『WoWs』は戦略性が高いゲームなので、ミニマップで全体の動きを見ながら戦うのが重要です」

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▲「ミニマップ上では船がアイコンで表示されます。敵味方の位置を把握しつつ作戦を立てるわけです。これをもとに作ったのが、作戦配置図トートバッグです」


 紺色のトートバッグを海に見立た。茶色いファーはマップ上の島だ。僕は業務用の缶バッジマシーンを持っているので、アイコンで缶バッジを作成。

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▲『WoWs』ロゴを使った缶バッジで彩りを追加。でかい缶バッジを作るための金型は別途購入した。


 このトートバッグがあれば、友だちとの外出中にいつでも作戦会議ができる。知らない人だらけのオフラインイベントに参加したときなんかは、コミュニケーションのきっかけになるかもしれない。

 アイデアは自分でも気に入っていて、もう少し時間をかけて作り込みたかったというのが本心だ。とはいえ、日常生活でも違和感なく使えると思う。自画自賛。

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▲「ふつうにバッグとして使ってもオーケーです。こちらのスナップ写真は知人の『WoWs』プレイヤーさんに協力してもらいました」


 モデルとして声優・白石稔さんを起用した。白状すると、少しでもウケる保険がほしかったのだ。白石さんを出せばある程度は間違いなく盛り上がると踏んだ。

 大々的にしないほうがおもしろいかなと思ったので、写真はしれっと出した。誰にも気づかれない危険性もあったが、来場者のみなさんは適度にざわついてくれた。白石さん、ちゃんとウケましたよ。

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▲撮影中、白石さんはずっと水曜どうでしょうの大泉洋さんのものまねをしていた。


 撮影は隅田川の河川敷で和やかに進行した。

カメラマン「そろそろ川に入ってみましょうか。魚を取ってください」
白石さん 「無理を言う前に道具を持ってきなさいよ道具を。
      あんたはいいよ、言うだけなんだから。たいへんなのはこっちなんだよ
      (大泉洋さんのものまねで)」

ユースケ 「缶バッジをアピールしながら花を愛でましょう」
白石さん 「うわっ、蜂いるじゃん」
ユースケ 「がまんしてください」

 和やかに進行した。

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▲カメラマンもノリノリ。

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▲白石さんの写真は翌日の『WoT』スライドでも使用した。こっちはオリジナル缶バッジがメイン。

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▲街中の雰囲気にもなじんでる。

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▲清純派アイドル・白石稔です。好きな食べものはマカロンです。


 こっちから依頼しておいて何だが声優もたいへんだな、と思った。あと、白石さんが本当にマカロンが好きかどうかはわからない。想像で書いた。

●ホームランかどうかはともかくフルスイングした

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▲最後は「艦船はKAWAII!」の斉唱で幕を下ろした。


 『WoT』ステージのぶんとボツネタを合わせると、作ったスライドの枚数はおよそ100ページ。このために自宅のPC用にPowerPointを買った。

 スライドは楽しく作れたし、ステージではゲストのみなさんに助けられた。ありがとうございます。ただし、スライドを見返すたびに声優さんのファンに披露するネタではないなと思っている。

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▲プレゼン終了後、来場者に声をかけられたのでアイコン缶バッジをあげた。


 つぎはビジネスの提案資料風スライドで世のサラリーマンをこちら側に引きずり込みたい。

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▲「女子が好きなものと言えば新築マンションですよね」と言いたくて、マンションのポスター風画像を作ったが、さすがに無理があったのでボツにした。

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▲少しでも艦船が気になったらこちらをどうぞ。

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