『トロピコ5』発売後インプレッション――いまどきの独裁者は好き勝手やってるだけじゃダメ!?

公開日時:2015-05-08 00:00:00

 ゴールデンウイークも終わり、次は夏休みを楽しみにされている気の早いあなた。そんなあなたにオススメなのは夏を先取りした南国が舞台の『トロピコ5』はいかがでしょうか。ただし、本作はバカンス気分というよりは独裁者気分が味わえるという少々毒っ気のある作品となっていますので、GW終わりのやさぐれた心にピッタリでございます。ここでは、そんな本作のメインである“キャンペーン”を中心にプレイした、インプレッションをお届けしましょう。

■清濁併せ呑む政治が生々しく描かれる

「ドミニカ共和国のラファエル・トルヒーヨ大統領は、息子を3歳で大佐に任命し、10歳になると将軍に昇進させました」
「赤道ギニア共和国の大統領だったフランシスコ・ングマは、自分の祖先が呪医だったため、国内の病院をいくつも閉鎖しました」
 以上、『トロピコ5』でロード中に表示されるインフォメーションからの引用でした。いかにも独裁者らしく、好き勝手やってるエピソードですよね。

 でも、小さな国のプレジデンテ(大統領)とその一族が、大国に揉まれながら世界大戦を乗り切り、冷戦時代を潜り抜け、現代までに至る長期独裁政権を築くには、わがままだけじゃムリでした、やっぱり。逆に、きれいごとだけでもダメ。どちらもほどほどに……といったバランス感覚や、清濁併せ呑む政治的手腕を求められる点が、妙に生々しく感じられてたまらない、それが『トロピコ5』です。

■遊んで身に付く! 実践型独裁者養成セミナー

 一見、小難しそうな内容ですが、充実したチュートリアル要素に助けられます。操作の基本やゲームの流れを手取り足取り教えてくれる、文字通りの“チュートリアル”のほか、シナリオに沿って進む“キャンペーン”もその一環と言っていいかもしれません。“キャンペーン”は本作のメインとなるモードですが、いわば“独裁者養成セミナー 実践編的”な構成。政権を握る上で必要なことを、補佐官たちのナビゲートでひととおり体験できるんです(もちろん、裏金作りなどの不正行為も)。都市経営シミュレーションって、できることが多すぎて何から手を付ければいいのやら……なんてことになりがちですが、その心配はありません。

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 こうして独裁者としての訓練を積んでから、自由に遊べる“サンドボックス”モードで国家運営に臨めば、誰の指図も受けずに延々と長期政権を維持していく“本番”もグンとラクになるハズ。そうそう、本作の新要素である“マルチプレイ”に挑戦するのも、“キャンペーン”でゲームに慣れてからのほうがよさそう。協力プレイでもスピード勝負のタスクが課せられ、いかに素早く的確な指示出しができるかがポイントになる印象でしたから。

■あちらこちらの顔色を窺う独裁者!?

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 さて、どんな独裁者体験ができるのか、“キャンペーン”を例にお話ししますと……ワリとまともな政治家を演じることになります。というか、ニュースで見聞きする民主主義国の政治家より、よっぽど道徳的に思えるほど。プレイヤーによって差は出るでしょうが、クリアー条件の定められた“キャンペーン”では、あまり大きく逸脱できないって感じです。

 まず内政ですが、独裁国家でも国民第一。住宅や配給を十分に用意するだけでなく、雇用のために産業を、健康のために診療所をと、国民が不満を抱かないようにせっせと働きます。また、反体制派や資本主義者、環境活動家などなど、それぞれが勝手な主張をはじめますが、国民みんなにいい顔をするよう努めるんです。というのも、実は選挙戦をにらんでの支持集めを目的としていて、これは『トロピコ』シリーズならではのスパイス。独裁者らしく、選挙を行わないのも、票数を操作するのもアリなんですが、反感を買って自分の首を絞めることになりかねないですからね。

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 次に外交ですが、大国の顔色を窺うことが多くなります。“植民地時代”は、宗主国の機嫌を損ねないように。また、“世界大戦時代”は連合国と枢軸国の間で、“冷戦時代”はアメリカとソビエトの間で、どちらかに肩入れしすぎないようにうまく立ち振る舞います。大国に侵攻されて損失を被ってはかなわないというワケですが、加えて、自国民の顔色も見なければならないのが奥深い。たとえば“植民地時代”、国内では独立を主導しているというのに、外交政策で宗主国の言いなりとあっては、国民の支持を失いますものね。



 と、あっちこっちに気を配りっぱなしのプレジデンテとなりますが、大丈夫、独裁者らしさは十分発揮できます。どこに何を建てようと、どんな憲法を制定しようと自由。独断で国づくりを進められるゲーム性そのものが、独裁者的なんです。

■時代の変化による島の変遷が楽しい

 本作には新要素として、時代の変化が盛り込まれています。“植民地時代”にはじまり、“世界大戦時代”、“冷戦時代”、“現代”へと移行し、それに合わせて柔軟な対応が求められるのは、外交の説明でもチラッと触れたとおり。“キャンペーン”では、たとえば“冷戦時代”には核保有国になることなど、その時代に即したシチュエーションを実感できるクリアー条件が設定されていて、バラエティに富んだシナリオを楽しめました。

 時代が進むにつれ、建設できる施設が増えていくのはモチベーションにもなります。たとえば住宅なら、簡易的な住宅やアパートからはじまって、最終的にはタワーマンションを建てられるように。また軍事施設は、はじめは監視塔や砦といった原始的なものですが、やがて空母や宇宙研究施設など大掛かりなものになっていきます。

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 これ、アンロックの過程も、島の見た目の変遷も楽しい! とくに、観光施設を建設できるようになってからはリゾートアイランドとしての陽気なイメージが際立ち、港にカリブ海クルーズの豪華客船を寄港させてはニンマリしてしまいます。しかし、美観に優れた一等地に観光客向けのキャビンを建てたそばから、すぐ隣にバラックが自然発生して……。その明るさと暗さ、表と裏とのコントラストに、『トロピコ』シリーズが象徴されていると感じたのでした。

文:櫛田理子(ライター)

※『トロピコ5』公式サイト

※『トロピコ5』公式wiki

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※画面はプレイステーション4版のものです。

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