IP ディレクター マーティン・フルトバーグ氏に聞く ゲームはあくまでもゲームプレイが“王様”

文・取材:古屋陽一

公開日時:2016-03-09 18:30:00

●今後も継続して遊べるプランは計画している

 2016年2月上旬にニューヨークで行われた『ディビジョン』プレスカンファレンス。カンファレンス後に、会場でIPディレクターのマーティン・フルトバーグ氏にお話を伺うことができた。『ディビジョン』というIP(知的財産)を取りまとめるフルトバーグ氏が見据える同作の魅力とは?

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――マグナスさんの話によると、『ディビジョン』の開発では、ゲームプレイが先にあって、その後にストーリーができたとのことですが、パンデミックの着想はどこから得たのですか?

マーティン 新規の『トム・クランシー』シリーズのプロジェクトがスタートするということで、事前にさまざまなリサーチを行い、どのようなストーリーにするのかを考えました。いままでにない新規IPが必要だったんですね。そこで調べていくうちに、“ダーク・ウィンター”や“大統領令51号”といった極めて興味深いトピックを見つけて、うまく活かせないか……と思ったんです。で、これまでの『トム・クランシー』シリーズは、爆発やテロを未然に防ぐという内容がほとんどだったので、「もし、未然に防ぐことができなかったらどうなるのだろうか?」と逆転の発想をしたんですね。そのアイデアを知っ発点にして、ストーリーラインを作ろうと思ったんです。

※“ダーク・ウィンター”や“大統領令51号”の詳細に関してはこちらの記事を参照のこと。
※ニューヨーク プレスカンファレンスリポート(1)現実に根ざしたリアルティー溢れる設定

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――どのようにして、『トム・クランシー』らしさを出したのですか?

マーティン ユービーアイソフトは長年にわたり『トム・クランシー』シリーズのゲーム化の権利を保持していますが、権利を持つということは『トム・クランシー』シリーズという世界観と、それを構築するためのガイドラインに敬意を表すことでもあります。準拠すべきガイドラインは、“クランシー・バイブル”と呼ばれています。ガイドラインは柔軟性がありつつも方向性が設定されていて、これをきちんと守れば『トム・クランシー』のゲームとなります。

――それは興味深いですね。ガイドラインはどのようなものが?

マーティン 5~6つある柱のうちのひとつは、“Grounded in reality”、つまり現実に根ざしていることです。これは実際にあるものを前提としつつ、“プロトタイプを作れるもの”や、“近い将来実現するもの”も含みます。誰かがガレージで作ったプロトタイプでもOKです。実現可能であること。これによって柔軟性が生まれるわけです。

――近未来兵器も “実現可能である”と判断されれば許されるわけですね。

マーティン “テクノスリラーである”ということも柱のひとつです。彼の書籍と同様に、何か秘密があってもリアリズムがなければいけないんです。勝手に作り上げたものではなくて、現実の世界に結びついている必要がある。一般的に確立された理論はありますが、それに対する異論もありますよね。そのような“異論”を使ってもいいのです。要は、しっかりと分析して正当化できればよいということです。

――ストーリーラインを構築するうえで、試行錯誤はあったのですか?

マーティン ゲームの開発に苦労はつきものですが、『トム・クランシー』シリーズのように確立したIPの場合はさらに難しいです。そのうえに特定のゲームプレイ・ゲームフィーチャーがあるので、このふたつがきちんと結びつかないといけないわけです。ここが難しい。ゲームデザイナーが「すばらしいアイデアがあるので、これをゲームに実装したいのだが、できるだろうか?」と提案してきた場合、実現がむずかしくても無碍に拒否するようなことはしなくて、「そのやりかたは難しいかもしれないが、こちらならできます」という返答をします。その後、話し合いをして折り合いをつけていくんです。
 一例を挙げると、プレイヤーを保護するシールドを導入したいと言われたことがあったんです。ほかのゲームでは、エネルギーシールドやバブルシールドの類が使われていますが、それらは現実にはないものなので、『トム・クランシー』シリーズではNGです。それで、「バリスティックシールドならば入れられるが、360度対応ではないので、ガードしたい方向にシールドを向けなくてはならない」と説明したんです。そうしたら、「それはおもしろいゲームプレイになりそうだ!」と喜んでもらえたんですね。お互いが意見のすり合わせをすることで、新しいゲームプレイのアイデアが生まれることもあるんです。

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――ということは、『トム・クランシー』シリーズの世界観を守るために、諦めたゲームプレイの要素もたくさんある?

マーティン その通りです。しかし、ほとんどの場合は解決策が見つかりますよ。ひとつ言えることは、私たちはゲームを作っているのであって、ゲームはあくまでもゲームプレイが“王様”です。まずはゲームプレイありきで、楽しいエンターテインメントを実現しなければなりません。

――日本には、RPGが好きなゲームユーザーが多いのですが、IPディレクターとしての本作のRPG要素の魅力は?

マーティン RPGにはさまざまな種類があり、それぞれアプローチが異なります。私たちが作り上げたのは、クラス(職業)に依存せず、スキルや装備がものをいうゲームです。これらの要素をうまく組み合わせることで、バラエティーに富んだすばらしいキャラクターができるようになっています。いまのRPGの多くは、最初にクラスを選ぶと、しばらくプレイした後で育成の方向性を後悔しても変更はできません。ところがディビジョン』では、いつでも即座に好みのプレイスタイルにチェンジできるんです。それだけ自由度が高いんです。

――『トム・クランシー』シリーズはシリーズ化が義務付けられていますが、『ディビジョン』も今後フランチャイズ化されていくのですか?

マーティン そう願っています。すでに1年間にわたってのダウンロードコンテンツのプランは発表していますし、数年間にわたって、継続的にサービスを継続できるようにしていくということは、すでに公表しています。それは私たちの“志”でもあります。『ゴーストリコン』や『レインボーシックス』同様に、長く遊び続けられるように、たくさんのプランを考えています。

――最後に、日本のゲームファンにひと言お願いします。

マーティン 皆さんが『ディビジョン』に興味を持ってくださっているのであれば、とてもうれしいです。日本のゲームファンの皆さんが、『ディビジョン』をどう思うのか、非常に興味があります。プレイした感想をぜひ教えてください。

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