『アサシン クリード シンジケート』特設サイト更新! 偉人を描く理由とは? 続“ヒストリアン”インタビュー

アサシン クリード』シリーズと言えば、時代背景を徹底した歴史考証で再現した、オープンワールドの舞台も大きな魅力のひとつ。この緻密な歴史表現の秘密は、シリーズ独特の開発スタッフ“ヒストリアン”の存在にありました。前回にひき続き、開発を担当したユービーアイソフト、ケベック・スタジオのヒストリアン、ジャンヴァンサン・ロワ氏のインタビューをお届けします。後編となる今回は人物についてのお話です。

公開日時:2015-11-21 12:00:00

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▲歴史考証を担当するヒストリアンを担当する、ジャン=ヴァンサン・ロア氏

1868年という時代設定と偉人達

−−19世紀ロンドンの歴史、といえば。街以外にも、ヴィクトリア朝の偉人達についても深い考証が必要になりますよね。

ジャン ええ。じつのところ、『アサシン クリード シンジケート』の舞台を1868年に設定したのは、当時のロンドンでは多くの歴史上の人物が活躍した非常に興味深い時期だったからなのです。

−−そうだったのですか!

ジャン 彼らのようなこの時代に生きた偉人達は、ストーリーや、『シンジケート』の遊びのテーマに関わってくるからです。もちろんわたしはヒストリアンなので、歴史や人物に関する情報は提供しましたが、ストーリーを書いたわけではありません。ストーリー担当のスタッフが、彼ら偉人達をどう描くかを決めていきました。

−−歴史考証を踏まえたうえで、偉人達をストーリーに組み込んでいくのですね。

ジャン はい。1868年に生きていた偉人たちは有名な人ばかりです。作家“ディケンズ”、進化論の“ダーウィン”に電話を生んだ“ベル”、社会主義の父“マルクス”、看護という概念を確立した“ナイチンゲール”、そして“ヴィクトリア女王”。いずれも非常に重要な歴史上の人物ですよね。しかし、彼らはゲームの中では……ある意味で象徴的に使われているのです。プレイされた方ならわかると思いますが、少し意外な形でストーリーの中に描かれて、組み込まれている。その理由は、『アサシン クリード シンジケート』では、彼らひとりひとりの歴史的貢献にフォーカスしているわけではなく、“人物としての個性”にフォーカスしているからです。

アサシン クリード シンジケート ヒストリカル・トレーラー(公式)

偉人達の個性にフォーカスする

−−偉大な功績についてではなく、パーソナリティにフォーカスするということでしょうか。

ジョン そうです。ヴィクトリア朝のロンドンを誰よりも知る作家と言われたディケンズは、『オリバー・ツイスト』や『クリスマス・キャロル』といった名作を生み出しました。ですが、本作で彼に出会った際には……会話の中で、彼の文学について触れる部分もあるかもしれませんが、それよりも“自分たちはディケンズが通うパブで、実際に彼と話している”という体験を表現する方に、より興味があるのです。

−−ディケンズも、同じロンドンで生きていると感じられるようにですね。

ジョン ええ。他の偉人達についても、同じようなことが言えます。大事なのは、こうした重要な偉人達を通じて、プレイヤーを“1868年のロンドン”という世界に引き込むということです。例えばダーウィンのミッションは、ダーウィンの科学者としての貢献には直接関係したものではありません。その代わりに、彼がその時に興味を持っていることは何だったのかを調べて、それをストーリーの中に組み込むのです。それらは少し変わった
ことだったり、ユーモアのあることだったりする。

−−偉人もひとりの人間で生きていたんだ、というリアリティーを感じました。

ジョン そうだとうれしいです。ディケンズと出会うところも、きっとすでにプレイされてご覧になったかと思いますが、彼とはパブの角でぶつかるんですよね。そのときに、彼は作品のためのメモを落としてしまって、拾い集める。こんな何気ない場面でも、ディケンズという人物の個性を感じさせる視点だと思います。こうしたエピソードの数々を、偉人との関わりを通じて体験することで、プレイヤーは、徐々にロンドンという大都市のストーリーに親しみを持ってくれるようになると思うのです。

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ヒストリアンの歴史ロマン

−−ジョンさんは、それだけ歴史を考証されて、偉人達を身近に感じられているんですね。

ジョン そうかもしれませんね……。ヒストリアンという仕事を担当していると、つい1868年のロンドンで「この人に会ったらどうしよう」などと考えてしまうのです(笑)。

−−ヒストリアンという職業ならではのお話ですね。

ジョン ええ、わたしだけかもしれませんが(笑)。でも、もしも自分があんな風にパブでディケンズに出会ったら、きっとい緊張してしまうだろうな……とか、考えてしまいます。わたしも当時のロンドン市民のように、ディケンズが好きなので。

−−そうなのですね(笑)。でも、わかります。

ジョン そうですよね。ああ、ディケンズにも会いたいですが、ダーウィンにも会いたい。……と、こんな風にどんどんと考えてしまって。しかも、こうして考えていくと、会いたい人というのは偉人達だけだけではとどまらなくなるのです。

−−そ、そうなのですか。

ジョン 1868年のロンドンでは、下水道のシステムが整備され始めたタイミングでもありました。この下水道を整備するために、当時のロンドンの政府機関にフランス系のジョセフ・バタルジェという人がいたのです。彼がいなければ、下水道整備はさらに困難なものとなっていたでしょう。彼は、今回のストーリーにはうまくかみ合わないように思われたために、ゲーム中には登場してはいないのですが、彼は壮大な都市エンジニアリング計画の責任を負う人物で、とても興味があるのです。

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▲下水道が整備されるまでは、汚水はすべてテムズ川に注がれていた。悪臭問題はかなり深刻だった。

−−ジョンさんは、ヒストリアンとして、当時のロンドンの地図を子細に検討されたからこそ、きっと都市整備をされたジョセフさんに会ってみたいと思われたのでしょうね。

ジョン そうかもしれません(笑)。そういう意味では、カール・マルクスにも会いたいです。ロンドンの市民や、働く子どもたちに会うことで、将来について何を思ったのかを聞いてみたい。そして、やはり会いたいというのであれば……ヴィクトリア女王にも会ってみたい。こんなことを想像するだけでも大変ですが!(笑)

−−『アサシン クリード シンジケート』では、女王に謁見できる……チャンスもきっとありますからね(笑)。

ジョン そうですね。彼女は、その名のとおりこの時代を象徴する存在ですから。だからこそ、当時の貧しい状況で、さらに寿命も短い中で、どんなことを思って生きていたのか……。しかし多くの人々にとっては、1868年という時代は、ゆっくりではあるが状況は良くなっていったときでもあったのです。その過程で、苦しんだり犠牲になったりした人たちもたくさんいた。こうした人たちの状況も、わたしはヒストリアンとして、『アサシン クリード シンジケート』で表現したかったのです。

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『アサシン クリード シンジケート』特設サイト “Inside Syndicate 1868”

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