斎藤由多加氏に『シーマン2』の疑問と謎に鋭く迫る!
●『シーマン2』の開発秘話を聞く!!
シーマイク・コントローラを使って北京原人とコミュニケーションをしていく『シーマン2〜北京原人育成キット〜』。本作は、言葉を話す人面魚"シーマン"との会話を楽しむ、育成シミュレーションゲームの続編だ。これまで公開されている『シーマン2』の画面では、育成対象となる北京原人の存在を確認することができる。しかし、タイトルになっている"シーマン"は、いまだ未確認という状態だ。そこで、『シーマン2』のさまざまな謎について、プロデューサーを務める斎藤由多加氏にインタビュー! 聞き手は、週刊ファミ通編集長のバカタール加藤でお届けするぞ。
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株式会社ビバリウム 代表 |
ビル経営シミュレーションゲーム『THE TOWER』でクリエーターデビュー。続くドリームキャストで発売された『シーマン〜禁断のペット〜』は、プレイステーション2にも移植され大ヒット作となる。自称・文明生物考古学者で、最近はカメラにハマっているとのこと。 |
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最初はまだ何もわからない北京原人。会話をしたりつまんだりして、コミュニケーションしていこう。 |
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『シーマン2』の開発スタートは |
バカタール加藤(以下、加藤) 『シーマン2』を見させていただいたのですが、予想外な感じでした。そもそも『2』を、どういう形にしようと思われたのか、まずはそこからお聞きかせください。
斎藤由多加(以下、斎藤) ビバリウムがゲーム業界に貢献できることって、新しいことにチャレンジすることだと思います。ヒット作の続編というと、想定範囲内のものがほとんどで……。『シーマン』に関しては、新しいことにチャレンジする実験の作品だと思っています。しかし、人間というのは弱いもので、ヒットしちゃうと人面魚でまた何かと思っちゃうんですよ。それを捨てるのに2、3年かかりました。
加藤 それから『2』を作り始めた?
斎藤 『シーマン』には、いままでのゲームの逆をやろうというコンセプトがあったんです。かわいくない図太いキャラクターでいこうとか。ですが今回は閉鎖系からオープン系にしたり、シーマン側に立ってプレイしたりと、つまり『シーマン』の逆をやろうと。
加藤 1作目とはずいぶん変わるようですが、1作目をプレイしたほうがいいという前提はありますか?
斎藤 そういう前提はないですね。シリーズ作品なんですけれど、ユーザーの間口を広く持つのが『シーマン』の特徴です。
加藤 1作目ではゲームに声でコンタクトするという、新しいことにチャレンジされていましたよね。『シーマン2』というタイトルで、前作と同じ「またマイクでしゃべるんでしょ」という先入観を与えてしまうということについて悩まれたことは?
斎藤 ありません。会話のおもしろさはメディアを使って伝えていくしかないと思いました。『シーマン』も最初は誰もわからなかったものを、たくさんのメディアに伝えてもらいましたので。制作側にも外にも伝達に時間がかかるので。メディアがどこまで味方してくれるかというのは、ソフトの魅力しかないんですけれど……。丹念にやっていくしかないんですよね。
加藤 前作では、うまく伝達されていきましたよね。
斎藤 ゲームって不可解な製品で、内容を知るには買うしかないんですよね。やっぱり雑誌とかの力を借りないと、ユーザーに購買の勇気を出させることはできないと思うんです。前作と同じ内容のほうが伝達は楽なんですけどね。それを拒むメーカーがないと、みんなシリーズ作品になってしまいますよね。そうしないことが、僕らの役割だと思っています。
加藤 前作が大ヒットして、ドリームキャストを代表するソフトになりましたが、今回は、どういうソフトになってほしいと思っていますか?
斎藤 本当は終わりのないゲームを作りたいんですけれど、家庭用ゲーム機はまだそれほどネットにつながっていませんから、それはまだ早いと思うんです。だから、物語を凝縮して見せることしかできないんですけれど、せめてそのあいだだけでも自由に遊べる。ユーザーが引っぱっていく物語にしたいと思っています。『シーマン2』にもある程度シナリオっぽいものは入れていて、ユーザーがボタンを押していく。押さない限りは、何も起きないという作りになっています。キャラクターがしゃべっていても、ボタンを受けつけてくれるんです。人間相手だったら、話の途中でも止められるじゃないですか。でもいまのゲームは、ムービーが終わるまで待たなくてはいけない。それを声で「やめて」って言えるようにするには、10倍くらい苦労がかかるんです。そこがすごくたいへんなんですけれど、それをやることで表現したかったものがあって……。
加藤 というと?
斎藤 たとえば、(突然、カメラマンに向かって)「それちょっと貸して」って言ったら、驚きますよね? そこから展開が変わる。ですから、割り込みをどれだけ持たせられるかという部分で、とても苦労しましたね。ゲームのメインではないセリフが、僕らのメインの仕事になっているんです。メインのセリフなんて、2年くらいまえに終わっていたと思います。音声認識のゲームが少ないのは、つまらないからじゃなくて、作るのがたいへんだからだと思いますよ。
加藤 前作でも、シーマンが答えてくれましたけれど、水槽という限られた空間の中での話でした。それが本作では、島になって外界からの影響もある。途方もないイベントや言語のやり取りが生じますよね。いったいどれくらい増えているんですか?
斎藤 それがわからないんですよね。言葉がどれくらいあるかと聞かれても、ユーザーによって変わるので。百人一首の取りかたが何通りあるのかと言われたら、計算すれば出るんだろうけれど……。
加藤 数字では表せない?
斎藤 膨大にセリフを作っても、ユーザーが体験できるのはひとつだけ。それがゲームのサガなんです。日本人の名前が何万個入っていようが、ユーザーが聞くのは自分の名前だけなんですよね。だから、言葉の数は重要ではなくて、やっぱりどれだけおもしろいかというのが重要なんです。
加藤 呼んでくれる名前の種類だけでもそんなに!?
斎藤 プレイヤーが、自分なりの物語にできるというのが、ゲームを作るうえでいちばんたいへんなんですよね。自分の名前を呼んでくれたことに感動した、というだけでもいいんですよ。自分のことをわかってくれたという感動がありますから。
加藤 前作のシーマンもそういう存在として人気が出ましたが、今回と共通のものがありますね。
斎藤 キャラクターは変わっていますけれど、北京原人が持っている頭脳は延長上にありますからね。
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『シーマン2』の目的は北京原人を自立させること |
加藤 『シーマン2』は、文明や知恵って何だろうと思わせるゲームだと感じましたが、プレイヤーは原人に何を教えていくんですか?
斎藤 原人を自立させるという目的がこのゲームにはあります。プレイヤーが介入している以上、自立できていないんですけれど(笑)。ほかのゲームだと、死ぬというのは戦闘くらいでしかないじゃないですか。本作では、単に食べ物を捜して生きていくという体験ができるんです。他愛もないことですけれどね。
加藤 原人は絶えずお腹を空かしてしまう。しかし、食べるということは生きていくうえで絶対必要ですから。それはかなり痛感させられそうですね。食べないと死んでしまって、ゲームオーバーになる。命の大切さを知ることができるゲームなんですね。ところで、なぜ北京原人を題材にしたんですか?
斎藤 北京原人は、化石が見つかった場所から名づけられたそうですが、北京原人って言葉には独特の響きがあって……。なぜか笑っちゃうじゃないですか? 「ぷっ」と吹き出しちゃう感じがいいなと思って。ネアンデルタール人とかジャワ原人とかいろいろありますけれど、僕たちにとっては、北京原人だけ特殊なんだと思うんです。笑えるのは日本人だけで、英語圏の人にはおもしろくないんですけれどね。ちなみに、北京原人の化石って残ってないそうですよ。戦時中にアメリカ人が持っていこうとしたとき、忽然と姿を消したらしく……。
加藤 それから、化石は掘られているんですよね?
斎藤 掘っているんですが見つからないんですよ。じつは1939年といったら、『シーマン』の設定で、ちょうどジャン=ポール・ガゼー博士が失踪して5年後なんですよ。そのへんも、北京原人を題材にした理由のひとつになりますね。
加藤 その設定は、公式サイトで見ました! おかしいですよね。今回は『北京原人育成キット』なので、箱庭のようなところに原人を落として飼うような感じかと思ったんですけど、まったくそういう形ではなくって。宇宙をかき混ぜるところから始まるというのが、すごくユニークだと思いました。ゲームだから割り切っちゃっていいんじゃないというところも随所に感じられて、シミュレーションをしながらエンターテインメントだなと思いました。(ゲーム画面のプレイヤーの手のグラフィックを見て)こういう細かい部分のディテールもおかしいですよね。
斎藤 (開発中のROMで手のグラフィックを切り替えながら)いろいろな手がありますよ。毛深い人もいますし。ラジカセもあります。ラジカセってよく道端に捨てられてるじゃないですか。ほかには古井ギターやフリーペーパー……。あと、ファミ通!
加藤 ファミ通はそこのつぎにくるんだ(笑)。
斎藤 なぜかいたるところで、フリーペーパーが捨てられているんですよ。ギターやラジカセも。この3つは、ゲーム中に島に流れ着くことがあるんです。
加藤 こういう文明のミスマッチな感覚が楽しいですよね。ほかにも登場する物はありますか?
斎藤 たとえばチョコレートとか、セガさんの協力で実現しました。今回はバックアップ体勢を組んでくれていますので。1作目のときは、どちらかと言うとこんなのやめとけという感じだったのですが、今回はレッドカーペットを敷いてもらってます(笑)。
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サクッと育成を楽しめてプレイヤーが驚けるゲームに |
加藤 『シーマン2』の総プレイ時間は?
斎藤 12、3日かな。それ以上はふつうの人には重いでしょ。絶対短いほうがいいし、重厚長大なゲームには見せず、サクっと始めさせたかったんです。
加藤 いまはプレイ時間の長いゲームが多いですからね。島もサクッとできて、すぐに原人が育成できました。
斎藤 あれはね、サクサクいってるわけじゃなくて、ナレーションが入ってるからそう感じるんですよ。あれが無言だったら印象は違いますよ。
加藤 あの導入部分は、テンポよく進められました。
斎藤 ゲームが映画館から始まるというのは、最初スクリーンに出る"伊勢海老料理の大納言のCM"がやりたかっただけなんですよ。じつは、ゲームのムービーに対してすごく言いたいことがあって。映画に「そのとおり」と言われるビックリ感を出したかったんです。僕らは無視されることに慣れすぎているから、絶対に止まらないムービーを作りたくて。
加藤 なるほど。最後に、読者へのメッセージを。
斎藤 『シーマン2』が、ゲームに飽きてきたという人の清涼剤になってもらいたいし、ゲームに見向きをしなくなくなった人たちが、戻ってきてもらうための原動力になりたいと思っています。
加藤 プレイステーション2は普及しているハードですし、その気持ちはすごくよくわかります。
斎藤 そういうゲームが出てきて、ゲーム業界を活性化してほしい。セガというブランドが変動している時期だと思うんですよ。優秀なタイトルも多く出ていますし、その一端を担えたらなと思います。
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