『ぼくのなつやすみポータブル』作者の綾部氏に直撃!
●『ぼくなつ』の魅力に迫る!!
夏休みが題材のアドベンチャーゲーム『ぼくのなつやすみポータブル ムシムシ博士とてっぺん山の秘密!!』。週刊ファミ通7月7・14日合併号では、本作の監督・脚本・ゲームデザインを務める綾部和氏に、インタビューを敢行した。ここでは、誌面の都合上カットした部分を含め、インタビューの全貌をお届けするぞ!
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ミレニアムキッチン 代表 |
――『ぼくのなつやすみ』のアイディアが生まれたきっかけは?
綾部和(以下、綾部) 1作目が'97年の暮れから作っていますから……、いまから約10年くらいまえですね。その時点で、すでに10数年ゲームを作っていたんですけど(笑)。当時もゲームの開発会社で働いていまして、どんなゲームを自分で作りたいのかが見えてきていたんです。とにかく変なモチーフのシミュレーションゲームを作ってみたいという思いがあったのと、当時、仕事がつらくて現実逃避で思い出していたのが、幼いころに野山で遊んだことだったりしたんですよ。それであるとき、"夏休み"というキーワードでそのふたつが結びついたんです。それで近くにいた同僚に「夏休みをモチーフにしたシミュレーションゲームを作ったらおもしろいかな?」と聞いたら「オレは絶対買うよ」と即答してもらえたので、これはいけるかな、と。それが最初ですね。
――ちなみにゲームの舞台は'75年ですが、'75年当時、綾部さんはおいくつだったんですか?
綾部 じつはボクくんとほぼ同い年なんですよ。もともと1作目を作ったときは、年代設定はぼかしていました。およそ昭和40年代後半から50年代の頭くらい……、西暦で言うと'75年前後とは考えながら作っていたんですけど。そのあと公式ホームページを作るときに、年代を特定したほうがゲームに入りやすいと思いまして。それで、初めて具体的な年を設定したんです。
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――『2』を経てPSP版発売ということになりましたが、なぜPSPに?
綾部 まぁ、このシリーズはSCEがプロデュースしていますから、PSP版はいずれ作るだろうなと(笑)。あと、1作目を作り終えたときに、1作目はここが足りない、というのがハッキリ見えていたんです。物を作る人間として、少しでも自分が考える理想に近いものを作りたいと思っていまして……。その足りない部分がPSP版では実現したと思います。
――そこがPSP版の新要素になっているわけですね。
綾部 そうですね。
――ハードがPSPになったことで何か影響は?
綾部 プレイステーション版を開発していたときに、我々が画面調整用に使っていたテレビモニターの色味と、PSPの画面特性はほとんど同じなんです。PSPなら誰でも同じ環境ですし、ユーザーさん全員がクリエイターが最良と思っていた画面の状態でプレイすることができることになりますから。本作はオリジナル版以上にオリジナルと言える、まさにクリエイターズカット版ですね!
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――副題を見てわかるとおり、本作のテーマのひとつは虫ですよね?
綾部 まず、1作目が完成したときに思ったのが、ゲームとしてのやり込み要素についてです。1作目は『ぼくなつ』の雰囲気を活かすために、あまり詰め込みすぎないようにしたんです。ただ、もう少しゲームとして楽しんでもらえる間口の広さがあってもいいのではないかと思ったんです。そこでまず、虫の種類を2倍に増やしました。
――虫の種類が増えたことで、虫相撲に何か変化は?
綾部 相撲に出せる虫が増えたことで、展開のバリエーションが増し、プレイステーション版よりもバランスがよくなっています。あとは"お気に入りファイル"によって、好きな虫を次回のプレイに持っていくことができることが特徴ですね。
――最初から強い虫を持ってプレイできる?
綾部 そうですね。強い虫を育てることによって行けるようになる場所があるのですが、多くの人にそれを体験してもらうため、最大3匹の虫を次回のプレイに持ち越せます。3匹のファイルは、ワイヤレス通信で友だちと交換することも可能です。
――虫相撲が苦手な人も、データを持ち越すことで強くなれるわけですね。
綾部 ちなみにお気に入りファイルはゲーム終了後に作ることができます。ファイルは通信機能を使って友だちにあげたり、もらったりすることも可能です。
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――メインのターゲット層は、綾部さんと同じ30代ですよね?
綾部 自分がやって楽しいものを作ろうとしたので、結果的にそうなりますね。しかし、完成したものは、もっと幅広い年齢層に受けるものになってしまったみたいです。
――それはどのへんの部分が?
綾部 プレイステーション版ができた直後に実家に帰ったとき、当時小学生だった甥と姪が、かなりやり込んでくれていたんです。その甥っ子たちとドライブに行ったとき、私が覚えてないようなことまで質問攻めに遭いました。ふつうゲームを作っている人が実家に帰ったとき、親戚に仕事の中身を細かく聞かれることってそうそうないと思うんですよ。でも『ぼくなつ』の場合は、けっこう知っている方が多かったんです。なぜかおじいちゃんまで。そういう意味では、いろいろな世代の人に受けるゲームなのかと思います。
――その要因は何だと思いますか?
綾部 おそらく、夏休みを嫌いな人がいないからだと思います。知らない人もいないですし。最初はテーマが夏休みというだけで、どんなゲームかわからないと思うんですよ。でも、夏休みってだけで楽しそうだと思ってくれるみたいで……。このモチーフには、間口の広さがあるようですね。
――『2』は、いろいろな年齢層に受け入れられるようにしようと?
綾部 根幹の部分ではターゲットを絞っていますが、ゲーム性の部分で間口を広げる、という感じですかね。私は、純粋に子供向けに作ったものは、あまり子供に受けないと思うんですよ。ちょっと大人向けなんだけど、子供でもわかるというテイストがいいのかと思います。
――その考えは、PSP版にも受け継がれている?
綾部 『2』はどちらかと言うと、爽快感を求めるゲームでした。しかしPSP版は、ゲーム性の部分で満足してもらえるように作りました。シナリオで童心に帰るというよりは、虫を集めて童心に帰ってもらおうかと。
――子供のころは、昆虫とか見るとワクワクしましたからね。
綾部 田舎で育った人なら、昔、昆虫採集をした記憶があると思います。いまは都会に住んでいるけど、『ぼくなつ』で小さいころを思い出してもらって、明日からの活力にする。そうなってくれるとうれしいですね。
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――ゲームの舞台は、子供のころの記憶がもとになっているのですか?
綾部 私自身が本州で育った人間ではないので、記憶のままに作ってしまうと日本人の平均的な夏休みにはならないと思います。ですので、大人になって本州に住み始めてから経験したことや取材内容をもとに多少脚色した部分もあります。しかし、少年時代に私が、毎年親戚の家に預けられて夏休みを過ごしていたという経験が、やはりベースになっています。
――綾部さんご自身のさまざまな経験から、舞台設定やシナリオを作りあげていったのですね。
綾部 そうですね。特定の場所の夏休みではなく、いろいろな人が経験したであろう日本の平均的な夏休みを目指して作りました。ですが、『ぼくなつ』の場合、夏休みの後半になると、郷愁というか寂しい雰囲気が出てくるんですよね。
――どこで夏休みを過ごしていたのですか?
綾部 私の生まれ育った場所は北海道なんですが、夏休みの後半になると、もう少しだけ肌寒いんですよ。お盆を過ぎたあたりで夏が終わってしまう予兆が出てきて、ちょっと切ない感じなんです。その切なさが、とくにゲーム後半に無意識に入ってしまったのかな、と。以前、元都知事の青島幸男さんとお話する機会があったのですが、青島さんも「そういうことは、どう逃げようとしても無意識に入っちゃうものなんだよ」とおっしゃっていました。
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――キャラクターデザインを上田三根子さんにした理由は?
綾部 『ぼくなつ』は昔の田舎の夏休みが舞台ですので、よくも悪くもすごく和風なものになってしまう可能性があるんです。しかしプレイステーションというハードの持つイメージと、このゲームのユーザー層を考えた場合、あまり過度な"和風"テイストにならず、しかも日常の生活もきっちり演じられるようなキャラクターが必要でした。上田さんが描くイラストはおしゃれできれいなイメージですが、じつは雑誌でカラオケなんかを歌っているキャラクターのイラストを見てもまったく違和感がないんです。デザインの美しさと、日常に根ざした存在感、その両方を持っているキャラクターだと思います。
――上田さんはどこで知ったのですか?
綾部 もともと、女性誌などで活躍されていたので知っていたんです。ご本人に話を持っていったところ、すぐに引き受けてくれました。
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――PSP版では3人のキャラクターが新たに描かれ、シナリオも増えたと思いますが……?
綾部 『ぼくなつ』をプレイしていると、シナリオ的にあまり変化のない日もあると思います。そのシナリオの薄い部分にこの3人が加わって、プレイヤーを忙しくしてくれるんです。もちろん、この人たちを無視してプレイしても問題ありませんが。ちなみにこの3人が加わっても、全体の印象はプレイステーション版と変わらないと思います。それは、私を含めたスタッフが、プレイステーション版から、ほとんど変わっていないからだと思います。本作はリメイクではありますが、明らかに純正品と言える内容ですね。追加要素があっても、雰囲気はまったく変わりません。
――3人のキャラクターの中で、もっとも注目なのは?
綾部 ヨシコちゃんが目立っているかもしれませんね。ちなみにヨシコは本当は"リョウコ"という名前です。ニックネームがヨシコ。じつはこの子は『ぼくらのかぞく』にも出ています。30歳くらいのOLなんですが、その子供のころという設定です。最終的にヨシコちゃんは、私が書いたシナリオと比べて、かなり破天荒になってしまいました。キャラクターがひとり歩きしたんですね。本当はアニキくんがもっとも目立つようになる設計だったんです。
――そうなんですか。
綾部 アニキくんの秘密といえば、彼はボクくんと同じ声優が演じているんです。当時、ボクくんと同じくらいの年齢だった進藤一宏君が声を演じていたのですが、プレイステーション版の収録は'98年から'99年のお正月くらいで、それから7年後に、昔の自分と共演することになったわけです。PSP版の新しいボクくんのセリフは、ストックがたくさんあったのでそこから使いました。ちなみに進藤君はいま、ジャグリングのジュニア世界チャンピオンになっています。
――いつからですか!?
綾部 去年くらいかな? 『2』の収録のあと、彼が中学生のころにその世界に出会って、毎日練習していたみたいですね。いつのまにか世界チャンピオンになっていました。
――教頭センセの見どころは?
綾部 教頭センセは、このゲームの先生なんです。わからないことを質問すれば何でも教えてくれるという、チュートリアル的なキャラクターになっています。
――もちろんストーリーにも絡んできますよね?
綾部 当然です。オリジナル版の謎の部分にもっとも絡んでいるキャラクターですからね。あと、教頭センセは、ちょっとかわいそうな役回りでもあります。萌ちゃんに嫌われているのに、自分は仲よしだと思い込んでいますから。
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――プレイステーション版では英語の辞書と手紙が謎として残っていますが、PSP版ではその謎が解明される?
綾部 秘密です。わかる人もいるでしょうね。
――明確な答を、あえて用意していない?
綾部 作り手の回答としては、明確な答を提示しているのかどうかを提示するわけにはいかないです(笑)。当然『ぼくなつ』らしく、プレイヤーの想像力で補完してもらう部分もきっちり残してあります。
――PSP版ではイベントも増えていると思いますが?
綾部 じつは、プレイステーション版を作ったときに、いくつかカットした話もあったんです。それを新キャラクターたちを使って、復活させたものもあります。
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――『ぼくなつ』シリーズの今後の展開は?
綾部 『ぼくなつ』は、これまで各ハードで1本ずつしか発売していないんです。今回のリメイクが好評なら、今後もPSP版が出てくるかもしれませんけどね。いまは、プレイステーション3で来年の夏に向けて『ぼくなつ3』を開発しています。『ぼくなつ』はふつうに作ると、ハードウェアの性能を使い切ってしまうタイプのゲームではないので、今回はその余力を活かしていろいろなことにチャンレンジしてします。『3』もこれまでのメインスタッフが、ほぼそのまま参加していますから、現時点ですでに、どこを切っても『ぼくなつ』の匂いがする作品になってます。期待していてください。サウンドも、SCEのチームが総力をあげて取り組んでますから、かなりおもしろいことになりそうです。
――『3』の情報はいつごろ出ますか?
綾部 PSP版に『3』の予告編が入っていますので、まずはそれをご覧ください。この映像はかなりまえに作ったものですが、実際にゲーム内で使う画面や設定をちらっと見ることができます。予告編のナレーションは、1作目で詩(しらべ)、2作目では光を演じた最上莉奈ちゃんです。詩のときは小学2年生だった彼女も、今春、めでたく高校1年生になりました。
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