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『428 〜封鎖された渋谷で〜』と『極限脱出 9時間9人9の扉』について聞く、ロングインタビュー完全版

2009/7/15

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●週刊ファミ通誌面に載らなかった話題を漏らさずお届け!

 

 チュンソフトが2種類の新作を発表した。『428 〜封鎖された渋谷で〜』(以下、『428』)のプレイステーション3版&PSP版と、『極限脱出 9時間9人9の扉(くじかん くにん きゅうのとびら)』である。しかも、驚きの発表はそれだけでなく、これらの作品をスパイクから発売するという。週刊ファミ通2009年7月17日号では、この2作品の情報とともに、チュンソフトの中村光一社長を始めとする開発スタッフへのインタビューを掲載。しかし、同インタビューはいろいろと伺った内容の一部を抜粋したもので、まだまだ深い情報が残っている。そこで、ファミ通.comにてインタビューの完全版を掲載する。スパイクとタッグを組んだ理由から、各作品の詳細な内容についても伺っているので、ぜひじっくり読んでほしい。


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中村光一 Nakamura Koichi(写真中央)

チュンソフト代表取締役。『弟切草』などのサウンドノベル、『不思議のダンジョン』シリーズなど数々のソフトを生み出してきた。『428』ではプロデューサーを、『極限脱出 9時間9人9の扉』ではエグゼクティブプロデューサーを務める。

イシイジロウ Ishii Jiro(写真左)

代表作は、『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』や、『428』など。『428』では総監督を、『極限脱出 9時間9人9の扉』ではプロデューサーを務める。

打越鋼太郎 Uchikoshi Kotaro(写真右)

代表作は、『Ever17 -the out of infinity-』、『12RIVEN the Ψcliminal of integral(トゥエルブリヴェン ザ サイクリミナル オブ インテグラル)』 などの『Infinity』シリーズ。『極限脱出 9時間9人9の扉』ではシナリオ&ディレクションを担当する。

 
 

●スパイクとチュンソフトが組んだ理由

 

――チュンソフトのゲームをスパイクが販売することになった経緯を教えてください。

 

中村光一(以下、中村) これまでは“セガ×チュンプロジェクト”と題して、セガさんに販売していただいていたのですが、販売契約をしていたタイトルが『428 』で契約満了となりました。その後の展開として、チュンソフトで販売するという選択肢もありましたが、同じゲームズアリーナグループのスパイクが、精力的に営業展開をしているので、お願いすることになりました。

 

――『風来のシレン』などのチュンソフトの看板タイトルも、今後はスパイクとタッグを組んで発売していくと。

 

中村 はい。今後、チュンソフトが作るタイトルは、当面のあいだスパイクで販売する予定です。

 

――ということは、『風来のシレン』シリーズの発売が予定されているということでしょうか!?

 

中村 予定がないということはありませんので、楽しみにしていてください(笑)。

 

――今後、スパイクが開発するゲームにチュンソフトが絡むということはありえるのでしょうか?

 

中村 まだ具体的にそういう話はありませんが、今後そういう機会があれば可能性はあると思います。

 

――スパイクと組むことによる大きなメリットはどこになりますか?

 

イシイジロウ(以下、イシイ) スパイクは、PSPで『喧嘩番長3』と『侍道 ポータブル』を発売して、どちらも好評な売上を記録していますので、どういったユーザーさんにPSPソフトが売れているのかといったノウハウを伺いつつ、『428』のプロモーションに対してアドバイスをもらえるのが大きいですね。『428』はすでにできあがったゲームですが、今回発表させていただいた『極限脱出 9時間9人9の扉』は、タイトル名からどんなメインビジュアルにしてどうユーザーに訴えていくかいったところまで相談しながら進めています。


 

●新たなプレイ感覚を生む、プレイステーション3&PSP版『428』

 

――まず『428』がプレイステーション3とPSPに移植されることになりましたが、この2機種を選んだ理由を教えてください。

 

イシイ ユーザーさんから「『428』を移植してほしい」というリクエストが多かったんです。そのリクエストは2種類あって、ひとつが「キレイな画面で遊びたい」というハイビジョン化(HD化)を求めるご意見で、もうひとつは「携帯機で遊びたい」というご意見。このふたつがWiiでは実現できないものでしたので、そのユーザーさんの要望に応じなくてはいけないという思いがありました。移植するにあたって、HD画質にするとブルーレイディスクにしかデータが入らないという理由がありまして、HDにするならプレイステーション3しか選択肢がなく、携帯ゲーム機にしても容量の問題でPSPしか実現できなかったんです。Wii版はハイビジョンではないSD画質でしたが、それでもDVDいっぱいの容量を使っていましたので、DVDなどでHD画質を再現するには2枚組、3枚組にする必要がありました。ですが、ディスクを分けると、いまの10時間のタイムチャートを自由に行き来できるゲーム性を捨てる必要が出てしまいますので、今回はその2機種になったんです。

 

――移植の要望はかなり多かったのでしょうか?

 

イシイ 発売時はもちろんのこと、『428』を発表した時点から要望がありましたね。プレイステーション3で『忌火起草』を、PSPで『かまいたちの夜2 特別編』と『街 〜運命の交差点〜 特別編』を出していたのも理由のひとつかもしれません。とくに『街』をプレイされたPSPユーザーさんから、「サウンドノベルは持ち運んで遊ぶのに向いているのに、なんで『428』は携帯ゲーム機で出さないの?」というご意見は多く聞こえてきました。

 

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――サウンドノベルと携帯ゲーム機の親和性の高さについて、イシイさんはどう思われますか?

 

イシイ 携帯ゲーム機との親和性は高いと思いますよ。とくに最近はテレビが大型化しているので、家族と暮らしている方は、居間の大型テレビでサウンドノベルを遊ぶのはなかなか落ち着いてできないなと(苦笑)。これがひとり暮らしの方だったり、個人の部屋にHD環境がある方ならばプレイステーション3で遊ぶのに向いていると思うんですけれど、家族で暮らしている方ですと、やはり携帯ゲーム機のほうが遊びやすいですよね。僕も『428』の企画を考えるときに、ファミレスでコーヒーをお代わりしながらPSPで『街』を遊んでいたのですが、本当に遊びやすいんです。そのゲームの世界に入り込めることもありますし、PSPではスリープモードにしていればいったん中断してもすぐに再開できますので、本にしおりを挟むような感覚で遊べると思います。

 

――では、プレイステーション3版のプレイ感覚はいかがでしょう?

 

イシイ プレイステーション3版は、HD画質化とともに、サウンドをリアル5.1ch化していますので、テストプレイでは新作のように思えました。『忌火起草』の場合はHD画質で作っていて、Wiiに移植するときにSD画質にしましたが、あまり違和感がなかったんです。それが、初めてHD画質で『428』を遊んでみたら、「これはすごい」と驚きまして。渋谷の街がキレイに再現されすぎていて、こんなに見えたらマズイんじゃないかという部分も出てきてしまったので、看板などに書いてある電話番号を書き直したりしています(苦笑)。もともと『428』は、“写真をハリウッド映画のような見えかたにする”というコンセプトがあったのですが、そのコンセプトがより強く伝わるようになりましたね。『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『ターミネーター4』のような、クッキリした画質で出ていますので、1枚1枚の絵が別物に見えると思います。

 

――撮影の時点で、そういった画質になるように想定されていたのでしょうか?

 

イシイ そうですね。もともとフルHDより大きなサイズの解像度で撮影していたんです。できるだけ撮影時の解像度を再現するため、プレイステーション3版は写真も挿入されるムービーも1080pのフルHDで出力しています。

 

――ほかにWii版から変更された部分はありますか?

 

イシイ Wii版でご意見をいただいた部分、とくに操作まわりのインターフェースなどは改良しています。具体的に言うと、オートプレイ中に一時停止せずにTIPが読めるようになっていたり、読み戻しからタイムチャートへ行けるようになったりと、より遊びやすくしています。あと、すでにWii版を遊ばれた方はご存知かと思いますが、いくつかの隠し要素は、その登場場所を変えたり、内容を変えたりしていますので、すでに遊んでいただいた人も楽しめると思います。

 

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――予約特典である映像の内容について教えてください。

 

イシイ じつはこれから撮影するのですが、とくに人気の高かった御法川実役の北上史欧さんと磯千晶役の右手愛美さんを案内役に、『428』のロケ地をメイキング映像とともに巡る内容になります。おふたりにはキャラクターになりきって渋谷を案内してもらう予定です。

 

――イシイさんと、『428』の脚本を担当された北島行徳さんの対談も収録されるということですが?

 

イシイ Wii版のときは、役者さんをフィーチャーしたプロモーションになりましたので、北島さんに出ていただく機会があまりなかったんですね。たとえば、御法川というキャラクターがどういう風に生まれたのかといったお話は、完全攻略本の『428 〜封鎖された渋谷で〜 オフィシャルガイドブック』の中でしか語られなかったんです。ですから、北島さんと発売から半年強を振り返りつつ、もう少し深いキャラクターの造形について話をできればいいなと。たとえば、カナンというキャラクターが、じつは北島さんのお知り合いから取った名前だったなんて、攻略本のインタビューをするまで聞いたことがありませんでしたし(笑)。

 

――それをイシイさんが聞き役としてフォローされていくと。

 

イシイ そうですね。あと、当時撮影していたメイキング映像が40時間あるのですが、Wii版の予約特典やスタッフロールで流れたものはその中の数十分程度なんです。まだまだいい映像がありますし、前回はマジメな映像を多くピックアップしましたので、今回はもうちょっと楽しい映像をピックアップしながら、俳優さんの素顔を観ていただきたいと思っています。


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――中村さんは『428』の移植について、どう思われましたか?

 

中村 ユーザーさんの要望に応えられるものですので、とてもいいと思います。あと、じつは私自身も移植にともなって、収録をし直してる部分があるんです。

 

――ああ、声で出演されている部分ですね!

 

イシイ もう一度スタジオに閉じ込めて収録し直しました(笑)。

 

中村 やはりユーザーさんからいろいろな意見があったようで、声優としてはまだまだだなと。

 

一同 (笑)。

 

――では、今回は迫真の演技に?

 

中村 がんばったんですけど、実際にどういう評判になるか……。

 

イシイ 今回は僕が直接演出をしたんです(笑)。

 

中村 前回のも、自分としてはけっこうよくできたと思っていたんですが、ユーザーさんからはいろいろと言われてしまいました(苦笑)。

 

――2009年7月4日からは、『428』のボーナスシナリオが原作のアニメ『CANAAN(カナン)』が始まりましたね(※放送日は地方によって異なります)。

 

イシイ はい。『428』の2年後の物語になるのですが、じつはカナンを主人公にしつつも、御法川とマリアが出ていたり、そのほかのキャラクターもちょこちょこ顔を出しているんですよ。

 

中村 マムル(『風来のシレン』の敵キャラクター)もね(笑)。

 

イシイ チンタラ(同じく『風来のシレン』の敵キャラクター)も出ています(笑)。アニメの監督さんが、『428』のボーナスシナリオだけでなく、実写部分もすごく気に入ってくれていて、アニメの中に『428』と同じようなシーンや、似たシチュエーションを採用してくださっていて、非常にゲームをリスペクトしてアニメの制作をしてもらえているんです。

 

――主人公のカナンをベースにしつつも、さまざまなキャラクターの物語が観られるわけですね。

 

イシイ そうですね。カナンとアルファルドの物語でもあり、マリアの物語でもあるんです。さらに、御法川の物語も……。彼の恋が『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』で語られたように、りん子先生以来ご無沙汰だった御法川の恋が語られるかもしれませんよ。そんなこんなで『428』ファンにも楽しんでもらえる内容になっていますので、ぜひ観てほしいですね。

 

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●ユーザー驚愕のサプライズが潜む『極限脱出 9時間9人9の扉』

 

――ここからは『極限脱出 9時間9人9の扉』についてお話を伺います。まず他社のゲームを作られていた打越さんが、チュンソフトに入った経緯を伺いたいのですが……。

 

打越鋼太郎(以下、打越) もともと携帯電話で遊ぶ、『かまいたちの夜 ニワンゴ版』というメールゲームのような作品のシナリオを書いていたので、チュンソフトさんとはつながりがあったんです。当時はフリーで仕事をしていたのですが、そのときにイシイから誘いを受けまして、1年半まえに入社をしました。

 

イシイ 打越のことは、『Never7 -the end of infinty-』発表のときから注目していました。そして『Ever17 -the out of infinity-』では、たいへん衝撃を受けました。そのころから「いつかいっしょに仕事をしたいな」と思っていて。あるときに仕事仲間のツテで1度お会いしたことがきっかけで、たまに飲みに行くような仲になり、その流れで『かまいたちの夜 ニワンゴ版』のシナリオを書いてもらったんですね。ですが、そのころは打越もいろいろな仕事をしていたので、「何かお願いできることがあったらまたお願いしますね」程度のお話だったんです。それが、1年半まえにほかの仕事がひと段落したと聞いたので、すぐに「つぎが決まっていないなら、チュンソフトに来ませんか?」と口説いて、なかば強引に来てもらいました(笑)。本当は、タイミングが合えば打越にも『428』に参加してもらいたかったんです。『428』のボーナスシナリオで我孫子武丸さんと、奈須きのこさんに参加していただいていますが、僕としてはここに打越が加わることで、テキストアドベンチャーとして集大成になると思っていました。残念ながら『428』には間に合わなかったのですが……。そんな中で、この『極限脱出 9時間9人9の扉』をオリジナル企画として打越が立ち上げることになったんです。

 

――打越さんは、もともとチュンソフトの作品でお好きなものはありましたか?

 

打越 『街』や『かまいたちの夜』も好きなんですが、じつは『トルネコの大冒険』がいちばん好きでした。学生のころに、それこそ1000回遊ぶぐらいの勢いで遊んでいたので、チュンソフトは憧れの会社のひとつだったんです。もう社内の人間になっているので、自分の会社をあまり褒めるのもどうかと思うのですが……(苦笑)。

 

――イシイさんが、打越さんにお願いしたいという強い意向があったのは、チュンソフトにないものを作れる人材だと考えてらっしゃるということでしょうか。

 

イシイ そうですね。テキストアドベンチャーというジャンルで、パイオニアとして尖ったものを作り出す人なので、僕としてはうらやましいなと思っていたんです。ただ、これまで打越が作ってきた作品は、ジャンルとして“ギャルゲー”の枠で語られる側面があったんですね。もったいないと言ったら失礼なのですが、とくに『Ever17』などのコンセプトは『かまいたちの夜』ぐらい広く受け入れられてもいいのではと思えるものでした。そこで、チュンソフトと打越が組むことで、『かまいたちの夜』のような広いイメージを持ちつつ打越のテイストが入った作品ができるんじゃないかと思って、彼をチュンソフトに誘ったんです。

 

――なるほど。皆さんは、このソフトへどのように関わっているのでしょうか?

 

打越 私はディレクションとシナリオ、イシイがプロデューサー、中村がエグゼクティブプロデューサーです。

 

中村 そんな感じです。私は、ときどき顔を出す程度で(笑)。

 

イシイ まぁ、中村は某所に閉じ込められていますので(笑)。

 

――(笑)。キャラクターデザインが西村キヌさん(『ストリートファイター』シリーズなどを手掛けたイラストレーター)というのも驚きです。

 

イシイ チュンソフトのオリジナルゲームに、なかなかキャラクターが立ったゲームが作れていないのですが、今回はなるべくキャラクターを立たせたゲームにしたいと、いろいろなデザイナーさんとお話していたんです。そこで、『風来のシレン DS』でパッケージを描いていただいた、あきまんさん(イラストレーターの安田朗氏)から「西村さんに仕事をお願いできるかもしれない」というお話をいただいて、それを受けてすぐに電話をしてダメもとでお願いしたところ、快く引き受けていただけました。

 

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――西村さんからデザインのアイデアが出されることもあったのでしょうか。

 

イシイ 極限状態で一度に9人もキャラクターが出てきますから、打越のほうである程度わかりやすいステレオタイプのキャラクター設定にしてデザインをお願いしたんです。そうしたら、すごい変化球のデザインなども出てきて「こういう解釈なのか」と、いい意味で驚くものが仕上がってきましたね。じつはこのデザインを見て、萩尾望都さんが描いた『11人いる!』のような古きよきSF少女マンガの空気が出ているなあと思って喜んでいまして(笑)、きっと女性にも喜ばれるキャラクターデザインになっていると思います。

 

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打越 西村さんのこだわりが満載のキャラクターになっていますね。このイラストを見てシナリオに手を加えた部分もありますので、いい相乗効果になっていると思います。

 

イシイ キャラクターはすごくアニメーションしますし、ニンテンドーDSとは思えないほど多くのイベントシーンも用意しています。


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――この作品のコンセプトについて、教えていただけますか。

 

打越 僕自身が、Web上などで有名な“脱出ゲーム”という思考型のパズルゲームが好きだったんです。Web上の脱出ゲームはあまりストーリー性がなく、なぜかひとりで閉じ込められている状態から脱出するというものが多いのですが、そこに深みのある物語を加えたらもっとおもしろくなるんじゃないかなと。私もこれまでテキストアドベンチャーを作ってきた経験がありましたので、脱出ゲームとその深いシナリオを融合させたら……というのがコンセプトですね。そのシナリオの内容は、なぜ彼らが閉じ込められているのか、閉じ込められている場所がどこなのかといった謎が展開されるものです。そこへ、各キャラクターの秘められた過去や、突如発生する殺人事件の犯人捜し、そもそも閉じ込めた人物は誰なのか? といった連鎖した謎を解き明かしていくミステリー要素を加えています。

 

――ジャンルとしては、サウンドノベルなのでしょうか?

 

中村 サウンドノベルほどノベル部分は多くない内容ですね。

 

イシイ ただ、サウンドノベルの形をすごくうまく使って、新しいアドベンチャーゲームを作ったなと思っています。『428』でサウンドノベルの究極的なものを目指したのですが、打越はこの作品でニンテンドーDSでしかできないノベル要素を持った、新しいテキストアドベンチャーゲームを目指しています。あと特徴的なのが、脱出ゲームに複数人キャラクターが出てくるということです。だいたいの脱出ゲームが個人で閉じ込められてひとりで悩むのに対し、複数人で閉じ込められて、映画の『キューブ』のように「そっちに行くと死んじゃうよ」とか「多数決で決めようよ」という会話をしながら脱出を目指すのは、新たな化学変化を起こすゲームだと思います。

 

――物語としてもシステムとしても重要になりそうな“ノナリーゲーム”は、どこから発想されたのでしょう?

 

打越 このゲームの企画を考えているときに、“脱出ゲーム”だけでは要素として弱かったので、登場人物のあいだで駆け引きをさせようと考えたのがきっかけです。そのためには特殊なルールを作って、それをもとに駆け引きさせればおもしろくなるかなと思ったんですね。そのときには主要登場人物が9人になることが決まっていたので、9人にひとつずつ1〜9の数字を割り当てて、その数字を使って数字が書かれた扉を開けていって脱出を図るというシステムを考えました。

 

――3〜5人でパーティーを組んでいくということですが、脱出できなかった人たちはどうなるのでしょう?

 

打越 ひとつの空間に複数の扉がありますので、残った人たちどうしでパーティーを組んで数字扉を開ければ、そのあと合流する可能性はあります。そして合流したメンバーがシャッフルされて、またパーティーを組み、先へ進むことになりますね。1回エンディングを迎えたとしても、主人公が潜り抜けていない扉がいくつもあり、その数だけ物語の展開がありますので、じっくりとくり返し遊べるようになっています。

 

――通る扉によって物語が変わっていくと。

 

打越 そうです。ノベルパートに出てくる選択肢でも物語は変わっていきますが、選択肢による分岐は従来のサウンドノベルほど比重は高くなく、誰とどの扉を通るのかを選択することが重大な分岐ポイントになっています。

 

――複数の扉があるというお話ですが、その中からなるべく多くの人数が助かるルートを選んでいくのが、ゲームの目的となるのでしょうか。

 

打越 最後のほうはそうなるのですが、序盤は主人公たちも状況がわかっていない状態なので、誰と組んだら有利になるか、誰と組みたいかという単純な動機で分かれていきます。

 

イシイ 全員を助けるというよりも、主人公にとっては幼なじみの“紫”を助けることがイチバン優先される目的となります。全員を生還させるというのは、そのつぎのさらにつぎくらいの難易度の高い目的ですね。

 

――なるほど。主人公は自分と彼女の身を守ることで精いっぱいになると。

 

中村 そうです。ですので、基本的に彼女と行動をともにしようとするのですが、自分と彼女のバングルナンバーを足して、さらに誰を加えれば目の前の扉を通れるのかと考えているところに、ほかのメンバーが勝手な行動を取ったりしてしまうので、思いどおりにならなかったりするんです。そういった、人間どうしの心理的な駆け引きのあるドラマも魅力ですね。


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――ノナリーゲームはちょっと難しそうな印象を受けますが……?

 

打越 誰と誰が組むといくつになるという数字はビジュアルで表示されますし、計算するというよりは人を選んでいくものなので、物語を読み進んでいただくだけで大丈夫だと思います。プレイヤーが扉を前にして、都度都度数字を計算する、ということはありません。

 

イシイ ルールとして数字が出ていますが、それよりは「こいつらが毎回パーティーを組んでいるのは怪しい」といった、『かまいたちの夜』の犯人を捜すような楽しみになりますね。『かまいたちの夜』にはとくに時間制限はありませんが、本作には時間制限に加えて、扉を前にパーティー分けをする場面もあるので、待っているだけではいけない局面に多く出くわします。そのため、それぞれのキャラクターの思惑が見え隠れして、みんなが怪しく見えてくるんです。極限状態に置かれた人間の駆け引きと、それが引き起こす物語と新たな謎、それぞれが相乗効果となり、存分に楽しんでいただけると思います。

 

――ノナリーゲームの説明に、最後の扉は“9の扉”と数字を出されていますね。9という数字から、主人公との組み合わせで誰が脱出しそうなのか、ある程度予想もつくと思うのですが?

 

打越 そうですね。最後の扉までのルートはどのようになるのか、そして「誰と誰ならその扉を突破できそうだ」など、いろいろと予想しながら発売まで楽しんでほしいと思います。ゲームに登場する9人のメンバーのプロフィールも、今後公開していきますので、期待していてください。

 

――脱出パートは、いろいろな怪しい箇所をタッチして探っていくのでしょうか?

 

打越 たとえば暗号の書かれた紙を見つけて、それを解読して入力するといったものや、キャラクターの過去にまつわるアイテムが見つかって話が展開するなど、連鎖された謎が登場していきます。

 

――そのアイテムを見つけられるかどうかで物語が変わることもありますか?

 

打越 そういうものもありますね。

 

――脱出までの物語ということを考えると、ゲームのボリュームが少ないようにも思えます。

 

打越 じつは削るのがたいへんなぐらいボリュームがあるんです。

 

イシイ 打越が出した最初の構想のまま作っていたら、アドベンチャーゲームなのに40〜50時間かかるものになっていたかもしれません(苦笑)。しかも、物語を読んでいるだけでなく、脱出のために推理して、捜索してと、非常に濃い時間になりますので、それは重すぎるだろうと削ることにしました。


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――タイトルにもある“9時間”は、ゲームのプレイタイムが9時間限定ということではないと。

 

打越 ゲームプレイのリアルタイムではありません。物語として9時間以内に閉じ込められた場所から脱出しなければならないので、徐々に時間がなくなっていく。ゲームとして時が過ぎるほど、プレイヤーが焦るようなものになります。

 

――打越さんが手掛けられた『Infinity』シリーズには毎回サプライズの要素が入っていますが、本作にも打越さんのファンが期待するサプライズはありますか?

 

打越 それはものすごい自信があります。『Ever17』を超えた驚きを用意していますので、ご期待ください。

 

イシイ シナリオが更新されるたびにどんでん返しが起こっているので、開発スタッフは何度もサプライズを受けていますよ(笑)。

 

打越 最初の読者は会社の人間になるので、初めて読んだ人たちに「おもしろい」と言わせるために、いろいろと考えています(笑)。

 

――ご自身の最高傑作になるという手応えは?

 

打越 どの作品も全力で作っていますので、毎回最高傑作だと思っているんです(笑)。ユーザーさんがどのように思われるかはわかりませんが、最後のオチは歴代の中でもトップクラスのものになっていますね。

 

イシイ 打越が「やった人が必ず驚く」と言うほどの、ニンテンドーDSでしかできない作品になっていますよ。

 

――“ニンテンドーDSでしかできない”というのは、ハードの構造がゲームに関わっているということでしょうか。

 

打越 これ以上は言えませんが(笑)、やっていただければわかっていただけますし、驚いていただけると思います。

 

――ちなみに、ちょっと長めのタイトルですが、本作のオフィシャルとしての略称はありますか?

 

打越 『999(きゅうきゅうきゅう)』と呼んでほしいですね。覚えやすいし、インパクトもありますので。

 

イシイ 『428』、『999』と並ぶとちょっといいですね(笑)。


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●『428』と『999』、それぞれへのメッセージ

 

――では最後におひとりずつ、各作品への意気込みをお願いします。

 

打越 これまでにニンテンドーDSでいろいろなアドベンチャーゲームが発売されていますが、『9時間9人9の扉』はその中で経験したことのない楽しさや、衝撃を与えられると思いますので、ぜひご期待ください!

 

イシイ 『428』は究極のサウンドノベルを目指して作ったゲームですので、この移植版の発売を機に、まだ触れていない方は遊んでほしいですね。Wii版を遊んだ方は、HD画質や携帯機でのプレイ感覚が違ったものとして味わえますし、予約特典の映像もぜひ観ていただきたいと思います。『9時間9人9の扉』は、これからのチュンソフトを担う新世代の作品として打越が作っていますので、ぜひご期待ください。

 

中村 この2作品以外にも、スパイクとのタッグでどんどん新作を出していきますので、よろしくお願いします。

 

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(取材・文:世界三大三代川)


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