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『人喰いの大鷲トリコ』上田文人氏インタビュー

2009/6/12

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●『人喰いの大鷲トリコ』上田文人氏インタビュー

 2009年6月2〜4日(現地時間)に、アメリカのロサンゼルスで開催されたゲーム見本市、E3での公開以降、多くのゲームファンを虜にしている『人喰いの大鷲トリコ』。反響に応え、本作のゲームデザインとディレクターを務める上田文人氏のインタビューを掲載(週刊ファミ通2009年6月19日号(2009年6月5日発売)のインタビュー記事を転載)。


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●動物が持つ奥深いかわいさの表現

――巨大な生物に目を奪われますが、アイデアとしてこれが最初にあったのでしょうか?

上田文人(以下、上田) チーム内では大鷲と呼んでいる、この巨大な生き物が最初にあったアイデアですね。『ワンダと巨像』で連れ添ったアグロとの関係性をもう少しメインに据えてゲームデザインできないかなと考えて。また、最近の日本発のビデオゲーム、プレイステーション3ともにあまり元気がないので強度の高いものをテーマとして選択しました。プレイヤーが操作するのは少年です。基本ゲームデザインとして、少年は幼いので体力的な能力は低く、その分大鷲で吸収するバランスのゲームにしようと思っています。少年が敵から隠れるシーンがありますが、少年ですので腕力で解決することは苦手なんです。でも、その場所に大鷲を連れてくることができれば一網打尽にできるという、抑圧と解放、静と動の緩急をつけています。

――大鷲のデザインが非常に独特ですよね。

上田 実在するそのままの猫や犬の表現、たとえば口まわりの粘膜質の表現とか、そういった表現は不可能ではないですが、実際に猫や犬を飼っている人からすると、どうしても自然さより不自然さが際立ってしまうと思うんですよね。またゲームデザインに絡んでくる要素との整合性を考えつつ不自然と感じさせないギリギリの線を模索し、いまのデザインに行き着きました。いろいろな動物の要素を混ぜているのですが、自分で見てもチグハグだとは思います。でも、それは狙ったところなんです。“へんないきもの”であることが重要なので、あえてバランスを取り過ぎないようにしました。愛らしいキャラクターが出てくるゲームはたくさんありますが、そのほとんどがデフォルメされた記号的な愛らしさだと思うんです。だけど、本物の動物が持つ魅力というのはもっと複雑です。それをビデオゲームならば、プレイステーション3だからこそ表現できるんじゃないかと思っています。生物としての表現、たとえば眼球の動きや目の開きかた、動きの間や毛を逆立てたるといったことにより、生物が持つ感情を表現できると考え、チャレンジしています。

――大鷲の仕草が本当に自然ですが……。

上田 僕は幼いころから犬や猫はもちろん、猿やアヒルなどさまざまな動物を飼っていたので、無意識のうちにいろいろな動物の仕草や動きが頭に入っているんです。また『ICO』、『ワンダと巨像』も言葉が少ないゲームでしたけれど、動物はしゃべらないですから、いままでの設定をより活かせると思っています。

――少年と大鷲の出会いというのは?

上田 ふたりの馴れ初めはまだ秘密で(笑)。

――少年が大鷲にご飯をあげているような映像もありましたが……。

上田 餌をあげるほか、大鷲の体に刺さっている槍や銛を抜いてあげることもできます。いつでも自由に触れ合えるのですが、ケアすることに終始してしまうと面倒だと感じでしょうから、そのあたりのバランスは取るつもりです。育成やステージパズルなどの要素も重要ですが、動物は見ているだけでも間が持つんですよね。きまぐれで何を考えているのかわからないミステリアスな部分があることも、動物をテーマにした理由のひとつでもあります。ほかにもいくつか新しいことに挑戦しているので、徐々にお見せできればいいなと。


●トリコという言葉の意味

 

――つかむ、しがみつく、よじ登るという要素は本作にもあるのでしょうか?
 

上田 あります。ほかにも大鷲をなでることができたり、どこにつかまっているかによって大鷲のリアクションが異なったり。これまでの作品と違って本格的な物理計算も導入していますが、単に新しい技術を導入することが目的ではなく、技術を組み合わせてどんなテーマを表現するのかがより重要だと考えています。たとえば、大鷲がタルをくわえて喉に入れるシーンではモーションを再生しているのではなく、実際に樽と口に接触判定があり、口ではさみ慣性をつけて喉に入れる……ということをマジメにやっています。『ICO』で培ったAI処理、『ワンダと巨像』で培った変形コリジョン。このふたつを融合させてそれをプレイステーション3のレベルで再現する。そして、『ICO』や『ワンダと巨像』のときに感じていただいた、「この世界が心地いい、この世界に行ってみたい」という空間を表現したいなと。

――タイトルも挑戦的ですよね。

上田 トリコには、虜になる、囚われている、鳥の子供、鳥と猫という意味もあります。リアルな動物を表現するにあたり、かわいさだけではなく、動物本来の生理現象や野蛮さも含めてきちんと表現したくて、このようなタイトルにしました。

――ステージの移動は、シームレスなのでしょうか? また、大鷲と少年という大小の対比が強いキャラクターですから、ステージ構成に苦労されたのでは?

上田 読み込みがなく移動できるのでシームレスという意味ではシームレスですが、訪れる場所に順序はあります。レベルデザインには毎度ながら苦労していますね。ただ、大鷲は命令に従順に従うだけではなく、興味があるものを投げることで移動してくれたりとか、どちらかというと命令する、協力するというよりは、生き物としての生態を利用するという感じですね。大鷲がジッとしていればクリアーできるんだけれど、動いてしまったり。大鷲の知能はそれほど高くはなく、プレイヤーに都合よく動いてくれるとは限らないので。

――なるほど。風、空気感の演出も目を見張るものがありますが……。

上田 本作の環境表現でいちばんこだわっている部分ですね。風によって大鷲の羽が揺れ動くのですが、羽の動きをそれぞれ個別に計算して動かしているんです。たくさんの情報を分散処理できるプレイステーション3の能力を活かし、映像としての情報密度を上げ、臨場感を上げたということですね。これまでハードウェアの制約的にできなかったこともプレイステーション3によって可能になったということもあるので、より雰囲気と臨場感のあるステージが表現できてきています。

――鎧姿の兵士は人なのでしょうか?

上田 人っぽい、人型……。煙の敵キャラクターでは不可能な表現をするための形……というところですね。詳細はまた秘密です(笑)。

――オンラインへの対応や発売時期は?

上田 実現可能かは明言できませんが、オンラインを使ってやりたいことはありますね。発売時期も明確なことは言えませんが、このタイミングで発表したことには理由があって。『ICO』や『ワンダと巨像』を楽しんでくれた人たち、僕らの新しいゲームを期待してくださっている人たち、プレイステーション3を持っている人たちの日々の生活に、新たに楽しみなことがひとつ増えればいいなと。『人喰いの大鷲トリコ』がそういう存在になればと思っています。ぜひ期待していてください。
 

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ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン
上田文人
Fumito Ueda



 

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