『ストリートファイターIV』開発者インタビュー
●家庭用にはまだ見ぬ隠しキャラクターが!?
家庭用『ストリートファイターIV』の発売を記念し、同作のプロデューサー小野義徳氏のインタビューを敢行した。週刊ファミ通の2009年2月20日号に掲載した同インタビューの全文を、ファミ通.comで掲載しよう。また、ファミ通.comでは『ストリートファイターIV』の攻略記事も掲載しているので、そちらと併せてチェックしてしほしい。
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プロデューサー |
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株式会社カプコン、『ストリートファイターIV』プロデューサー。これまで、『ストリートファイター』シリーズの開発には、『III』や『ZERO』などにサウンドスタッフに携わってきた。 |
『ストリートファイター』→『ストI』 |
──今回は『ストリートファイター』シリーズ全般についてのお話をお聞きしたいのですが、シリーズ中でいちばん思い入れのある作品は何ですか?
小野 いちばんは『ストIIダッシュ』ですね。あとは、『スパIIX』かな。『ストIIダッシュ』稼働当時はまだカプコンには入社していませんでしたが、あのときがいちばん対戦が盛り上がっていましたから。『ストII』から選択できるキャラクターが増えたり、同じキャラクターどうしも対戦できるようになったりと、元祖『ストII』から、より対戦向きに進化した作品ですね。いまやってもおもしろいんですよ。『ストIIダッシュターボ』はゲームスピードが早すぎると感じてしまいますが……歳なのかもしれませんね(笑)。『ストIV』を作るときも『ストIIダッシュ』を意識して作っています。
──当時は、知らない人と対戦することが新鮮でしたね。
小野 そうですね。あのころは、ふたりでプレイするゲームと言えば、シューティングゲームやアクションゲームの協力プレイくらいでしたから。同じゲームを向かい合って競い合うという、アミューズメントセンターのシステムは大胆な発想でしたね。プレイが白熱すると、いつでもリアルファイトに発展しそうな雰囲気もありましたが (笑)。そこまでいかなくても、当時のアミューズメントセンターは照明も暗くて、反対側の見知らぬ人が筐体にガツーンと蹴ったりされてビビッたり。
──当時の雰囲気は、いまでは考えられませんよね(笑)。
小野 気持ち的に“接待プレイにしなきゃ”というような空気にさせられたりしましたね。店によって”当て投げ禁止”、”ベガ禁止”みたいな張り紙がしてあったり。
──『ストIIダッシュ』のベガの”サイコ投げ”(サイコクラッシャーをガードさせたあと、すぐ投げ技に移行する戦術)はプレイヤー間でも議論になりましたね。
小野 禁止になるくらい強い戦術もいろいろありましたね。でもそれをどうにかして打ち勝とうとする人もいて……。“ゲーメスト”(当時発行されていたアーケードゲーム雑誌)でも、”○○対策”という記事が多かったと記憶しています。
──“ベガクラッシュ講座”とか懐かしいですね(笑)。
小野 雑誌で盛り上がったのと、あちこちで大会が行われたおかげで、一触即発なイメージからオープンなイメージに変わってきて、アミューズメント業界自体を活性化させたと思います。思い返せば、『ストII』や『ストIIダッシュ』こそが、“コミュニケーションツールとしてのゲーム”の始まりだっんだと思います。
──格闘ゲームを通じて、アミューズメントセンターの見知らぬ客どうしが会話をする光景が見られるようになりましたよね。
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小野 店舗ごとのコミュニティーが生まれたのもあのころですね。“マイコンBASICマガジン”(当時発行されていたパソコン雑誌。アーケード関連の記事も多く掲載されていた)やゲーメストで、ハイスコアーを競うコーナーがあったんですが、あれは個人単位でのランキングでしたよね。『ストI』のころは、まだ対戦がメインではありませんでしたから、「隣り町のゲーセンで波動拳を出しまくってる奴がいるぞ!」という噂が広まると、みんなで見に行ったりしていましたね。『ストII』や『ストIIダッシュ』になってからは、「えっ、あの技からこの技がつながるの!?」と、そのアミューズメントセンターの常連客どうしが会話を始める。常連どうしのつながりができると、今度は“あの地域のアミューズメントセンターのチームと闘いに行く”といった、それまでになかった交流が生まれましたね。
──そうでしたね(笑)。話は変わりますが、小野さんの好きな『ストリートファイター』シリーズのキャラクターは誰ですか?
小野 『ストリートファイター』シリーズのキャラクターの魅力は、”奇人変人大集合”であることだと思うんですよ。手足が伸びたり、電気が出たりと、強烈なイメージのキャラクターが多いですね。使えるキャラクターすべてが主人公に成り得るのも手伝って、人々の脳裏に焼きつきやすかったですね。でも、現在だと各国代表として作るのは難しいキャラクターだったかも。下手すると、国を侮辱しているようにも取られかねませんから(笑)。『ストIV』でも彼らは出てきますが、『ストII』当時のキャラクターとして出ていたから許されるのかもしれません(笑)。ちなみに、私が好きなのは、1作目からいるリュウです(笑)。
──やっぱり、リュウが基本ですか?
小野 西谷さん(当時『ストII』の開発に携わった西谷亮氏)と昔『X-MEN』を作っていたころ、雑誌のインタビュー中に「ゲームの開発は、どこから始めました?」とポロッと聞いたことがあったんですよ。西谷さんは「思いつきで(笑)。基本は、やっぱりリュウだよね。」と言われて、「ああ、やっぱり開発側から見てもリュウは扱いやすいんだ!」と感じました。
──対戦格闘ブームが巻き起こったときのエピソードなどを聞かせてください。
小野 とにかく「全部勉強しなきゃ、覚えなきゃいけないな」と思わされましたね。でも、その“勉強”が純粋に楽しめました。まずは、相手の気持ちを考えることを重視していましたね。コンピューターが操作する敵と違って、“このキャラクターは、どのようなコマンドを入力すると、あのような動きになるのか?”ということを考え、そのうえで、相手のプレイヤーのクセや性格を読むところまでいくと、より『ストII』が持つ楽しさの根底に到達できると思います。ひと通りのキャラクターでプレイして、改めてリュウ(メインのキャラクター)で対戦すると、新たな発見がありますから。たとえば、「この春麗は頭を踏みつけようとしてるな!」という予測が瞬時にできて、さき読みで反応できるとか。さらに上級者どうしになると、その読みを逆手に取られたり。
──『ストIV』も、当時の読み合いを意識して作られているのですか?
小野 そうですね。C.ヴァイパーというキャラクターは、必殺技のモーションを途中で強制停止することができるんです。このキャラクターを使っている人を見ると、必殺技を出す素振りを見せて止めて、さらに出す素振りを……と、「この人たちは心理戦を楽しんでいるんだな」と感じますね。
──そういうところが対戦格闘ゲームのおもしろいところですよね。
小野 はい。ロボットアニメにたとえると、鉄人28号の動きだけでなく、それを操縦する正太郎君の気持ちまで読まないといけない(笑)。練習の積み重ねと、読み合いによって成り立つという絶妙なバランスを、『ストII』にはまざまざと見せられましたね。
──それでいてシンプルだから、万人が楽しめますよね。
小野 そうですね。過去の対戦格闘ゲームの多くは、ボタンを順番どおりに押さなければいけないとか、特定のタイミングに合わせなければいけないといった、自己満足の連続技を追及したプレイをメインに楽しむものもありました。しかし、『ストリートファイター』シリーズはそういう方向ではないと思うんですよ。すごい連続技を出せる人が絶対的に強いのかというと、心理戦なども考えると決してそんなことはないという、奥ゆかしさがありますね。
──全国大会も、昔からものすごい盛り上がりを見せていましたね。
小野 それまでになかったというのもありますが、やっぱり「練習の成果を発表する場がほしい」というファンの要望が強かったと思うんですよ。「俺は対11キャラクターの戦略を練った。ゲーメストも読んだ!」と(笑)。そうなると、本当に自分のキャラクターの強さを試したくなる。そして、全国レベルの壁にぶつかったときに「ああ、ここがわかってなかった!」と反省して、またつぎの大会を目指したくなる……と。スーパーファミコン版の『ストII』が発売されたときのキャッチフレーズで「俺より強い奴に会いに行く」というのがありましたが、当時の『ストII』プレイヤーすべてに突き刺ささる言葉だと思いましたね。その勢いで当時、『ストII』から『スパIIX』まで、プレイし続けてくれたことは、カプコンにとってありがたいことだったと思います。
──『スパIIX』後も、各社から対戦格闘ゲームが作られていましたね。
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小野 いろいろ出て盛り上がるまではよかったんですが、どんどんシステムが複雑なものが出てしまって、それが逆にブームの寿命を縮めてしまったのかもしれません。やはり“ルールブック”のページ数は、ユーザーに許される限界があると思うんですよ。それでもついていけるヘビーユーザーはともかく、ほとんどのユーザーは娯楽の範囲内でプレイしていますから。娯楽だけでは楽しめない厚さのルールブックになってしまうと、読むまえにあきらめてしまう。それでも、ひと握りのヘビーユーザーは残っていたんですが、新たなユーザーが増えなかったのは失敗だったと思います。とは言え、カプコンがあまりアーケードで対戦格闘ゲームを作らなくなってからも、『鉄拳』や『バーチャファイター』、『ギルティギア』など、他社さんが作った対戦格闘ゲームが稼働し続けて、わずかでも対戦好きのプレイヤーが残っていたことは大きいんですよ。残ったかがり火を焚きつけるのと、消えてしまった火を最初から起こすのでは、後者のほうが断然たいへんですから。
──小野さんにとって、『ストリートファイター』シリーズをひと言で表すと何ですか?
小野 さきほども言いましたが、コミュニケーションツールですね。野球やサッカーなどのスポーツみたいに、A店の常連客がB店に遠征に行って手合わせするというように、プレイヤーどうしが気軽に遊んで、交流するための手段です。画面に映っているのは同じリュウというキャラクターでも、それを操作しているプレイヤーによって、難度も遊びかたも変わってきますよね。どんなにAIが発達しても、個人個人のクセを再現するのには絶対に限界がありますから。
──『ストIV』の話になりますが、コンセプトや苦労した点などを聞かせてください。
小野 原点回帰ですね。わかりやすく言うと同窓会みたいなものです。とにかく、『ストII』や『ZERO』シリーズ世代のプレイヤーにもう一度帰ってきてほしいという思いで作りました。ただ懐かしむだけではなく、格闘ゲームをやめてしまった方々にも安心できる敷居の低さを用意することを重視しています。単にリアルにしたり、ドット絵を再現するのではなく、当時『ストII』を見たプレイヤーが頭の中で想像していたとおりのものを再現しようと思いました。ただ、『ストIII』から10年くらいブランクが空いているので、“昔に戻す”ということに対して社内で反発がありました。「もっと革新的なものを入れていかないと!」っていう意見があって。でも、そこは頑としてゆずれなかった。なぜなら、システムを複雑にして、ルールブックを厚くするとライト層が離れてしまうから。ニンテンドーDSで『NEWスーパーマリオブラザーズ』が大成功を収めたのも目の当たりにして、いま必要なのはこういうことだと思いました。とにかく、1回『ストII』に戻らせてほしかったんですよ。
──『ストIV』の家庭用新キャラクターは、どのようにして選別されましたか?
小野 アメリカのほうで、ユーザーを相手に投票を行ったんですよ。それもライト層とコア層を別々に。ライト層は、キャミィやフェイロンなどのキャラクターが上位にきましたね。コア層の要望が強かったのは、ローズと元ですね。「こういうテクニカルなキャラクターをやっていました」という主張が表れていますね(笑)。とくに元は、ふたつの流派を切り替えながら闘うスタイルがヘビーユーザーに受けたと思うのですが、作り手側としてはたいへんでしたね。ふたりのキャラクターを作るのと、ほぼ同じ労力を要しますから。それでも、ユーザーの声は大切にしたいので、一生懸命作りました。
――個人的には『ZERO』シリーズに登場していたロレントを期待していたのですが……?
小野 そういう声もあったんですけどね。でも、『ファイナルファイト』(’89年に登場した横スクロールアクションゲーム)のキャラクターだし、そこまで入れちゃうと完全に『ZERO』になっちゃうんで。今回は外させていただきました。
──意外なキャラクターはいましたか?
小野 ダンを要望する声が多かったのに驚きでした。この男(ダン)は、ここまで市民権を得ていたのかと(笑)。しかも、おもに要望を出していたのはライト層なんですよ。
──キャミィとフェイロンが出たということは、T.ホークとディージェイも……!?
小野 欲しいですよね(笑)。でも、投票結果には影も形もなくて……。開発スタッフからは、「彼らも入れたい!」という意見もあって。じつは、テクスチャーを貼るまえのモデリング段階までは作っていたんですよ。『ストIV』で、いかにしてT.ホークが闘うのかという設定まで作ってありました。
──え!? モデリングや設定までできてるんですか!? では、今後登場する可能性が高い?
小野 そうですね。ユーザーの声があればいつでも復活させる準備はできていますよ。
──それは楽しみですね。ユーザーのみなさん、ぜひ復活希望を小野さんに!(笑) そういえば、先日アーケード版の『ストIV』の全国大会(2009年1月18日開催)が開かれましたが、これは稼働するときにすでに予定されていたのでしょうか?
小野 制作する際に、私が会社に全国大会を開催するということを条件にしたんですよ。作りっぱなしで放っておいては、コミュニティーを広げるきっかけを失ってしまうから。もちろん、一部の熱狂的なファンがイベントを立ち上げてくれるということも大きいのですが、やはり作り手側が大きな花火を上げないと。こういうことをやったからこそ、初めてコミュニケーションツールとしての『ストIV』を作ったと、誇りを持って言えます。稲船さん(『ロックマン』シリーズなどを手掛けた稲船敬二氏)が、『ロックマンエグゼ』などを作るときも、つねに大会に結びつけて考えて、子供たちのコミュニティーを絶やさないようにしていたことから学びました。発売後のサポートをしっかりまっとうすることが、コミュニケーションツール作成者としての最低限の責任なのではないかと思っています。
──ということは、今後も公式大会を開催する予定はあると?
小野 やりたいですね。2009年1月18日に開催した全国大会のときも、参加していただいた全国のアミューズメントセンターからも要望がありましたから。”闘劇(エンターブレインが主催する全国規模のゲーム大会)”にもノミネートされたことだし、2009年夏は闘劇、2009年冬はオフィシャルの大会といった感じで盛り上がれることが理想ですね。家庭用でも、オンライン対戦モードを入れたので、どうにかしてオンラインの全国大会を開催したいと考えています。
──オンラインを使えば、世界規模で開催することも可能ですよね?
小野 そうですね。でも、やっぱり対戦格闘ゲームは面と面を向かってやりたいので、決勝大会は会場を用意してオフラインでやりたいですよね。そのためにも、日本のユーザーの皆さんも家庭用を買ってプレイしてください(笑)。あと、すでに発表していますが、オンラインアップデートで“チャンピオンシップモード”というのを2009年春に配信予定です。『ストIV』に長くつき合っていただければ、改めて“いい発表”ができるかもしれません。
──“いい発表”!? ということはもしかして『ストIVダッシュ』!?
小野 本当に、私個人としては作りたいんです! ですがやはり、ユーザーの皆さんからの声が必要です。というわけで、応援をよろしくお願いします!
──最後に、本作を心待ちにしている読者にひと言お願いします。
小野 まずは、「お待たせしました!」。製作できたのは、ファンの皆様のおかげですので、とても感謝しています。初回特典のDVDも、アニメ60分にメイキング60分、豪華声優陣のインタビューなど、やりすぎたくらいに詰め込みましたので、こちらもがんばって入手してください(笑)。また、『ストII』を知らない方も、間口はとても広いので、ぜひ気軽にプレイしてみてください。とくに、オンライン対戦はラグも少ないと思いますので、ぜひ挑戦してください。
※『ストリートファイターIV』公式サイトはこちら
※『ストリートファイターIV』攻略記事はこちら
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