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『侍道3』のダブルプロデューサーにインタビュー

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●週刊ファミ通に掲載されたインタビューを全文公開

 

 シリーズファン待望の最新作となるプレイステーション3用ソフト『侍道3』。週刊ファミ通2008年6月27日号(2008年6月13日発売)では、本作のプロデューサーを務める寺澤善徳氏と渡辺一弘氏のインタビューを掲載した。ここでは、誌面では掲載しきれなかった部分も含め、インタビューの全文を公開しよう。

プロデューサー
寺澤善徳
Yoshinori Terasawa

プロデューサー
渡辺一弘
Kazuhiro Watanabe

 
――おふたりの役割をお聞かせください。

寺澤善徳(以下、寺澤) スパイク初のダブルプロデューサーです。僕自身、シリーズを通してやってきているので、どうしても固定観念が大きくなっています。そんなときに客観的な意見を効果的に出してもらって意見を言い合える関係です。僕がアメで渡辺がムチという感じで、バランスを取りながらふたりで全体を見て判断をしています。

渡辺一弘(以下、渡辺) もともと寺澤はアクワイアさんとつき合いがありまして、僕は昔、ソニー・ミュージックにいた時代に『天誅』というゲームでアクワイアさんとつき合いがありました。それから僕はゲーム制作から離れていたのですが、スパイクに入って、そういう経緯があるならいっしょにやろうかと声を掛けていただきました。

寺澤 渡辺が『天誅』、『天誅 〜忍凱旋〜』を、僕がそのあとの『侍道』シリーズ、『忍道』シリーズをアクワイアさんとずっとやってきて、奇しくも今回、そのふたりがいっしょにプロデュースをしている最新作が『侍道3』になります。

 

 

――プレイステーション3で『侍道』の発売が決まったのはいつごろですか?

寺澤 プレイステーション3が発売されるときにはタイトル名を仮で出していました。『侍道2』が終わったときから、次回作はどうしようかという検討はしていて、そのあと『忍道』シリーズをアクワイアさんと作っていたんですよ。2005年11月発売の『忍道 戒』の終わりくらいには動き始めていたから、期間は3年ぐらい。構想段階を含めると実質5年くらいになります。

――プレイステーション3だからできることは?

寺澤 本作は登場キャラクターすべてにAIを実装しているのですが、彼らの行動が、プレイヤーの行動によって変わっていくという部分が、いままでよりも強化されています。より複雑なAIを組むことができるようになっているのは、プレイステーション3のパワーのおかげですね。

――グラフィックに関しては?

寺澤 もちろん、前作に比べて飛躍的に進化はしていますが、僕らも、そしてアクワイアさんも次世代機らしい絵やグラフィックを突き詰めるというよりも、ゲーム性をどれだけおもしろいものにできるかというところに注力したいと考えてます。グラフィックよりむしろ、見えないところに大きな手間暇をかけていますね。もちろんキレイなグラフィックを否定する気はありませんが、ゲームの本質的なおもしろさに直結するものではないと個人的に思っていますので、ゲームとしてのおもしろさを最大限に追求し、表現したいと考えています。

  

 

――世界設定を江戸から戦国へと移した理由は?

寺澤 アクワイアさんの開発スタッフと話をしていて、単純に同じ時代でやりたくないなというのが、まずありました。じゃあどこにしようかということになり、『侍〜SAMURAI〜』から『侍道2』では時代をさかのぼっているので、さらにもう一段階時代をさかのぼろうと。より侍らしい時代で、侍の生きかたを表現したいと考えたんです。

――今回公開されているイメージショットで主人公が戦で傷ついているものがありますが、時代としては関ヶ原くらいになるのでしょうか?

寺澤 関ヶ原よりもちょっとまえ……50年くらいまえの設定です。これに関して、ゲーム中では何も語られません。『侍道』シリーズの例に漏れず、主人公に何があったかは何も語られずにスタートします。そのまえに何があったか、そしてこれから何をするかという部分を含めてユーザーさんに想像していただきたい。そこはどういう風に考えてもらってもかまわないと思っています。

――3タイプの主人公がいますが、性能差は?

寺澤 ありません。見た目が異なるだけで、どれがいちばん感情移入できるかどうか、それだけです。そこはユーザーの皆さんに委ねています。今回、主人公でメインに推しているのは壮年タイプなんです。僕はいままでどおり青年タイプを推していたのですが、渡辺がどうしても壮年タイプにしたいということで。

渡辺 『侍道3』は、大きな戦に敗れたというところからスタートしているので、となると、壮年のような憂いがあるほうが世界設定に合っているかと思いまして。多少、黒澤映画のかっこよさを意識している部分もあるので、"オヤジキャラのかっこよさ"を表現していきたいですね。

――これまでのシリーズでは、時代遅れの侍を描いてきましたが……。

寺澤 今回の舞台である戦国時代は、逆に侍が活躍する時期です。ただ、これまでと同様に刀を抜くという行為に対する重みは計り知れないものがある。戦国時代だろうと、刀を抜くという行為は軽いものじゃなくて責任をともなう重いものなんだよ、というのをユーザーの皆様には強烈に感じていただけると思います。抜刀によって展開や人の反応がまったく変わりますので。

 

 

――ストーリー上でも、刀を抜くか抜かないかの選択を迫られる場面が出てくる?

寺澤 ゲームの冒頭部分からいつでも刀を抜くことができます。オープニングイベントでも抜刀できますよ。ゲームをスタートして最初のイベントで抜いていいよというアイコンが出るので、ユーザーの皆さんはそれを見たら、たいてい抜刀しちゃうと思います。でも、刀を抜くことによって消えてしまう選択肢もありますし……。プレイヤーの皆さんには、最初からそういう選択が突きつけられている。刀を抜くか抜かないかの葛藤を味わってもらうのも、このゲームの大きな魅力のひとつかと思います。

――つねに選択があるので、責任感が感じられると。

寺澤 そうですね。基本的に抜刀は、ほとんどの場面で可能です。

渡辺 一般のフィールド、町中などで刀を抜くと、キャラクターの主人公に対する印象が変わってくるんです。それによってストーリーが変わってくるので、つねに考えて行動しなくてはならない。そこには、自由だからこその枷というものがあります。

――『侍道2』では、町中で刀を抜くと追いかけられましたよね。

寺澤 岡っ引きがやって来て追い回されますね。ただ、今回はそういうことではなく、町中にいるほかの侍や浪人が斬りつけてくるとか、一般人に嫌われると蹴ってきますから(笑)。刀を持っている侍に対して素手で挑んでくる。それはそれでシュールな絵になってますよ。

  

 

――"いきなり沙汰"システムについて簡単にご説明いただけますか?

寺澤 その名のとおり、イベントだろうがフリーシーンだろうが、ほとんどの場合においていきなり刀が抜けるというシステムです。そして、刀を抜くことによってストーリーラインが変わる。逆に、いきなり沙汰システムのもうひとつの要素である土下座に関しては、抜刀より若干使用機会が少ないのですが、土下座をすることでストーリーが変わることがあります。イベント中に土下座をすると、その場にいなかったことにできるんです。僕は見てません、この場にいませんでしたという感じで(笑)。

渡辺 イベント自体をなかったことにしてしまうという荒技ですね。

寺澤 こんなストーリー展開は望んでいなかったというときに土下座をすることで、また違う勢力のイベントに進むことができます。

――戦闘時にも土下座は可能?

寺澤 そうですね。戦っていて負けそうになったら、土下座で逃げることができます。ただ、土下座をしても許してくれない相手もいるので、100パーセント有効ではありません。

渡辺 土下座をしたまま斬り続けられることも多々ありますし(笑)。

――敵が土下座をすることはありますか?

寺澤 はい。戦闘をしていて死にそうになると土下座をしてきます。そこで刀を収めると「ありがとよ!」と逃げていく。当然、そこで斬りつけることもできます(笑)。

――土下座をすると物語に影響が出てくる?

渡辺 土下座をしまくることで、物語が大きく変わってしまうということは基本的にありません。あとは、プレイヤーのプライドの問題ですね。

――そこは、さきほど話に出た責任に関わってくるということですね。

渡辺 刀を抜くか頭を下げるかという、どっちもある意味究極なんですけど、それがボタンひとつでできてしまうところがおもしろいのかなと思います。

寺澤 ネコに対して土下座をすると「ニャッ」って言ってくれます(笑)。何の意味もないんですけどね。そんな風に、すべてのキャラクターにリアクションを用意しました。話しかけたり、ぶつかったときは必ずそこにリアクションがあるという。

――"峰打ち"というシステムは?

寺澤 相手を殺さず、ということですね。峰打ちで戦うことで、相手にトドメをさすことなく勝負に勝つことができる。本来のイベントでは「こいつは殺さないとダメだろう」という場面でも、峰打ちを使えば戦いには勝ちながらも相手を生かすことができるんです。これが峰打ちの大きなポイントです。相手が生きていれば、その後の展開に影響を及ぼしますから。ちなみに、峰打ちもワンボタンで切り替えられます。誰も殺さないで進めると、いい展開があるかもしれませんよ。

――前作では殺してしまった相手から刀が奪えましたが、本作では?

寺澤 峰打ちだと刀は入手できません。ですから、レアな刀を奪いたいなら、敵は斬らないといけない。

渡辺 刀だけではなく、峰打ちでは倒した相手の懐からアイテムをいただくこともできなくなります。

――クリアーデータを更新すれば、刀を集めることもできますよね。

寺澤 もちろんです。くり返しプレイを前提としていることも、シリーズを通して変わりありません。

――いきなり沙汰システムを採用したことで、これまで以上にシナリオの分岐が多くなっている?

渡辺 前作よりも圧倒的に複雑になっています。

寺澤 シナリオ分岐部分は、シリーズを通して苦労してます。毎回一から作り直しなんですよね。デバッグがものすごくたいへんなんです。この部分は、アクワイアさんのスタッフたちが本当にがんばってくれています。

 

 

――本作でも3つの勢力が存在していますが、これにはどういった意図が?

寺澤 3つの勢力というのは、シリーズを通して採用している図式です。3つというのは非常にバランスがいいんですよね。今回はこの土地を治めている大名の藤森家と、以前にこの土地を治めていた桜井家の復興を目論む桜花党、その狭間に揺れる農民たち、そんな構図です。

――大名側につくとお上の仕事のようなものも増えていく?

寺澤 つまらない仕事から、違う勢力の頭の暗殺や、暴れ者を倒せなど、いろいろなバリエーションがありますよ。そういった仕事をこなして信頼度を上げていくと、困難でより多額の報酬を得られる仕事が受けられるようになるのです。

――エンディングの数はどのくらいでしょうか?

寺澤 いまは言えないのですが(笑)、前作『侍道2』以上の数を用意しています。

渡辺 一本道ではなくて、途中でいろいろなことをやりながら進んでいくので、結末以上にたどっていくルートは無数にあります。2回プレイしても、同じ進みかたはなかなかできないと思います。

寺澤 たとえ同じエンディングにたどり着いても、その過程はプレイヤーごとに異なっているはずです。どこかの勢力に加担したあとに裏切ることも可能ですし、いろいろな勢力のイベントをつまみぐいするように見ることもできる。どこかの勢力に片寄りすぎていると、街でほかの勢力に出会っただけで戦いをふっかけられることもあります。

――勢力ごとに難度が異なる、といったことはありますか?

寺澤 どこの勢力に荷担すると不利とか難度が高いとか、そういうことはとくにないですね。

渡辺 不利や難度、ということをしいて言うと、"刀を抜きすぎると困る"と言うことが挙げられます。いろいろな勢力の人間が集まっているところで刀を抜いてしまうと、害を与えたくなかった勢力の人間まで切ってしまう恐れがあるんです。それをきっかけに、いろいろな勢力に嫌われてしまうことになりかねない。

寺澤 そうなると、皆が襲いかかってきて街をふつうに歩けなくなりますよ(笑)。

――そういった状態に陥ったら、どうすればいいのですか?

渡辺 その勢力のミッションをひたすらクリアーして、信頼を回復するしかありません。

寺澤 ただ、そのミッション、ゲームでは"渡世"と呼んでいますが、仕事を与えてくれる人を斬ってしまっていると、信頼回復の手立てがなくなります。そういった場合は、窓口の人が生き残っている勢力に媚を売って成り上がっていくといいかもしれません。

――街の広さはどのくらいに?

寺澤 ひとつひとつのマップのサイズは、『侍道2』よりも大幅に広くなっています。『侍道2』の時は地形が平坦だったのですが、今回から立体構造を用意しています。地形に高低差があったり、中が階層式になっている建物も出てくる。『忍道』をプレイした方にはイメージしやすいかもしれませんが、お城などは上に登れるようになっています。

  

 

――マップ移動に関してはどうなっていますか?

寺澤 過去作品と同様に、メニューのマップ画面で選択した場所に移動できます。ユーザーの皆さんにはほとんどロード時間を感じさせず、マップ移動にストレスを与えないように作ろうとしています。

――ほかに本作での注目点は?

寺澤 ゲーム中の待ち時間が少ないというのがポイントです。ふつうはイベントが始まったら見ているかスキップするしかないと思いますが、本作では抜刀や土下座ができる。ボタン入力を受けつけない時間が、ほかのゲームと比べて圧倒的に少ないんです。

渡辺 逆に本作では、"見ている"というのも選択肢のひとつなんです。いきなり沙汰システムを入れたことによって、"見ている"という行為が"抜刀"と"土下座"と並ぶ大きな選択肢のひとつになりました。イベント中に介入せずにいることが、ストーリーを否定せずに進行させることになるんです。

寺澤 あとは、リアルタイムに武器を持ち替えられるようになりました。メニュー画面を開く必要がないので、走りながら武器選択ができます。ユーザーの皆さんに負担をかけないように意識して作っています。

――刀のシステムは変化した?

寺澤 今回はオリジナルの刀が作れる点が、いままでとの大きな違いです。刀は数種のパーツから成り立っていて、それぞれのパーツをいろいろなところで手に入れて鍛冶屋で組み合わせることで、自分だけの刀が作れます。好きな名前もつけられますよ。その刀にアタッチメントする技も、自分が覚えた技の中から好きなものを選択することができるんです。本来、刀のパーツを細分化すると十数種あって、ゲームでもすべて再現しようとしたのですが、さすがに無理でした(笑)。で、かなり数を絞ったのですが、それでもかなりのバリエーションの刀を作ることができます。

――二刀流に関してはどうですか? 以前は専用の刀を装備することで、二刀流のかまえが可能になりましたが……。

寺澤 今回は刀であれば、どんな組み合わせでも自由に二刀流ができます。自分で作った刀と、そこいらで拾ったネギとか(笑)。

――本作では、素手でも戦えるようになったそうですね。

寺澤 そうなんですよ。アクワイアさんとは、「もはや侍じゃないよね」って冗談を言ってますが(笑)。"無手"は、シリーズユーザーの皆さんからの要望がすごく強かったんです。シリーズファンの皆さんの声に突き動かされて導入した戦闘方法です。

 

 

――最後にファンにメッセージを。

渡辺 何事にも責任がついて回るゲームです。刀を抜くか土下座をするかという絶対的な選択肢が、それを象徴しています。何度もくり返し楽しむタイプのゲームなので、自分が選んだ行動によってできなかったことを、つぎのプレイで楽しんでいただければと思います。

寺澤 決められたことをやるだけじゃないというのが本作の魅力です。その部分を、再度ユーザーの皆さんにアピールしたいですね。思ったときに思った振る舞いをしてください。それによって、いろいろと展開が変わりますよ。どんなゲームでも、だいたい同じようなことをやっていくと思いますが、本作はユーザーなりに想像力を駆使して、それを実際に試してもらえる幅を持ったゲームになっています。ですから、おもしろおかしく、自分の都合がいいように、いろいろなことを考えながらプレイしていただけたらと思います。

 


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※本インタビューは、週刊ファミ通2008年6月27日号に掲載されたインタビューを再構成したものです。
 

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