HOME> インタビュー> Wii用ソフト『スカイ・クロラ(仮題)』インタビュー全文掲載
●押井守監督×加藤正規ディレクターが語る!
作家・森 博嗣の原作小説『スカイ・クロラ』シリーズをもとに、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』などの作品で世界を震撼させた押井守監督が劇場映画化する『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』。2008年8月2日から公開される同映画とも、原作小説とも別機軸の物語が描かれるフライトシューティングゲームが登場する。Wii用ソフト『スカイ・クロラ(仮題)』を制作するのは、リアルかつ爽快なフライトシューティングで多くのゲームファンを魅了している『エースコンバット』チームだ。
週刊ファミ通2008年4月4日号(2008年3月21日発売)では、劇場映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の押井守監督と、Wii版『スカイ・クロラ(仮題)』のディレクター・加藤正規氏にインタビューを敢行。その模様をファミ通.comで映像配信もした。そのインタビュー内容の全文を、今回は掲載する。誌面でも映像でも語られていない内容もあるので、ぜひ注目してほしい。
押井 守 |
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加藤正規 |
50歳過ぎても遊べるゲーム性 |
――まず、押井監督に伺いたいのですが、Wii版『スカイ・クロラ(仮題)』をプレイしてみての感想は?
押井 守(以下、押井) オヤジでも遊べる(笑)。いままでにもフライトシミュレーターはやらせてもらったことがあるんだけれど、オヤジには無理ですね。いっぺんにやらなければいけないことが多すぎて。情報処理能力が落ちているんで、目の前で起こっていることにしか対処できないんだよ、オヤジってのは。だから、自分の視界の中で処理できることが多いほど楽なんです。「オヤジはボタンが3つ以上あるとダメ」って言われているのといっしょでさ、自分の視界に入ってくる情報だけでどれだけ処理できるか、という風に作ってくれているとすごくうれしい。そういう意味では、今回の作品はレシプロ機(※1)ならではのよさというのがあるんじゃないですかね。
加藤正規(以下、加藤) そう言っていただけると非常にうれしいです(笑)。
押井 機銃の弾がなくなるとか燃料がなくなるということがないのもいいよね。どこまでゲームとして割り切るかということだと思う。リアルと言えばリアルになっているけれど、ホントのフライトシミュレーターにしちゃうとゲームじゃなくなっちゃうからね。これだったら50歳過ぎてもやれそうな感じだよね。
加藤 まさしく我々としては、一度ゲームを離れたお父さんたちに、「再び昔のシューティングゲームの興奮を取り戻してほしいな」という思いで、このゲーム性を作り上げているんです。そこを楽しんでいただけたので、本当にうれしいですね。
押井 この作品は”マヌーヴァ”(タクティカルマヌーヴァコマンド)がいいですね。マヌーヴァに入った途端に、すごく楽になる。慣れてきたら敵機とすれ違うときに撃墜するという、渋い戦闘もできるしね。
加藤 『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』というテーマをいただいたときに、ミサイルを使わずに爽快な空中戦を実現するにはどうしたらいいのか、いろいろ悩んだんです。その結果、やはり"後ろを取る"ということをやりたいよね、と。そこから、マヌーヴァのシステムを考えました。
押井 これを使って連続で倒せるとホントに気持ちがいいんだよね。あとは地上攻撃ができるといいな(笑)。サディスティックに撃ちまくるのは、地上攻撃のほうが楽しいと思う。実際の戦闘だとすぐに死んじゃうパターンだけど、ゲームだと自分が死ぬリスクがないから、ヤバいところに行きたくなるんだよね。
――スリルがあるほうがいいと。
押井 このゲームは対空砲火も敵の弾もあんまり当たらないみたいなんで、安心して攻撃できるけどね(笑)。
加藤 それはいろいろと工夫をしているんですよ(笑)。最初の『エースコンバット』のころは対空砲火をけっこう真面目に作っていたんです。でも「地上からの攻撃でやられてしまう」ということをよく言われていまして。「ホントはそういうものなんだけどねぇ」と思いながらも修正していきました。
押井 ホントはそうなんだよね。とりあえず、ウチはいまWiiぐらいしかやっていないんで、ちょうどよかった(笑)。
――ホントですか(笑)。Wiiはいま何をプレイされているんですか?
押井 ウチではずっと『WiiFit』をやってた。人が集まると楽しい。ひとりではやらないね。僕は『ドラクエ』もひとりでやらないもん。誰か見てないとやらない。そういう見せる楽しさというのを感じているみたいで、ひとりではできないですよ。
――Wii版『スカイ・クロラ(仮題)』はとくにひとりでやるより、周囲の人に自分のプレイを魅せたくなるようなゲームですよね。
押井 そうそう。ギャラリーがいないと燃えないよ(笑)。
加藤 一応、ギャラリーも少し干渉できるような要素を入れようと考えています。
押井 見せ場というか、『バーチャ』(※2)もそうだったけど、まわりに魅せる要素というのがあったほうがいいですよね。ひとりでやるゲームって言ったら『テトリス』みたいなヤツ? あれはやってると自分を追い込んでいっちゃうんだよね。「自分はスゴいだろ!」というよりは、「なんてダメなんだろう……」ってなっていっちゃう。
――ちなみに押井監督は『エースコンバット』はご存知だったんですか?
押井 ええ、もちろん。
――プレイをされたことは?
押井 何度かありますね。ただ、何が起こったかわからないうちにやられていました(笑)。デモとかはすげぇな、と感じていましたね。我々もこういう仕事をやっていますから、ゲームのデモというのは、アメリカ映画を観るのといっしょで、僕らが仕事をするうえでの基礎的なお勉強のひとつだから、目に入れば必ず観るようにしていますね。集めて観るほどではないですけれど、アニメーターはみんなゲーム好きだからさ、遊んでいるところを覗いたりとかね。それぐらいのことはやりますよね。ただ、ゲームそれ自体をプレイすることはほとんどないですね。忙しいっていうのもあるけれど、だいたい手に余るというか。ファミコン世代のオヤジにとってはほとんど手におえない。ましてスティックふたつ使ってボタンもいくつも使ってなんて、基本的にダメだと思う。ダメっていうか、よほどモニターで起こっていることと、自分の体がシンクロしないと使いきれない。そういう意味ではこの作品はよくできてると思うよ。
※1:プロペラによって推進力を得る飛行機。 |
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お客さん的には満足できると思う |
――『エースコンバット』シリーズの持つシューティングゲームとしての爽快感というのは、本作にも継承されているのでしょうか?
加藤 そうですね。シューティングゲームの興奮度、プレイしたときに集中していくおもしろさは残しています。ただ、昔のシューティングゲームの神視点とは違って、その世界の中に自分がいるという感覚、臨場感を感じてもらえるように心がけています。
――実際、押井監督も相当集中してプレイされていましたよね。
押井 おもしろかったですよ。気がついたらやられていたっていうことがなかったのがうれしいね(笑)。あとは地上に突っ込んでいくときの快感っていうのがあればね。
――もう、監督がかなり要望されているんで、地上戦をぜひ入れてください(笑)。
加藤 了解しました(笑)。
――今回は劇場映画とゲームで『スカイ・クロラ』という作品が描かれていくわけですけれども、メディアが違うことで描かれるテーマが変わったりはするのでしょうか?
加藤 テーマが変わるというより、それぞれのメディアの持ついちばん得意なところから描いていく感じになるだろうな、と思います。
押井 映画はキャラクターだからね。キャラクターに感情移入してドラマに共感してもらうわけだから。空中戦のシーンもあるんだけれども、それは世界観の一部として入れてあるだけでね。ゲームの場合は、飛行機がメインだから、飛行機が持っている爽快感というものを活かすべきだし。
――ゲームと映画のマルチメディア展開に期待することはありますか?
押井 いままで僕も、『攻殻』とか『パトレイバー』とかで、ゲームと映画を連動してやることがあったんだけどさ、だいたいうまくいかないんだよね。だから今回も「やめとけば?」って言ったんだけど(笑)。映画が終わって忘れたころにゲームができてきたりっていうことがいっぱいあったわけじゃないですか。だから映画は映画、ゲームはゲーム、それでいいじゃんと思っていたんだけれど、今回は鵜之澤(※3)って男に説得されたんですよ。「スゴいチームがいるんだ」と。「アンタが想像してるのとは違うんだ」ってね。それで実際の開発現場に行って見せてもらったら、たしかにすげぇなって。会社のデザインもすごいけれど、やっていることもすごかった(笑)。
加藤 すごくユニークな建物というか、なんというか。
押井 これまでにも鵜之澤ってオヤジにはずいぶんだまされたんだよね(笑)。でも、今回はそうじゃなかった。このゲームはたぶん、お客さん的には満足できると思うよ。久しくゲームをやらなかった僕が楽しかったから。僕はハッキリ言ってゲームから脱落した人間だからね。どこかで「昔に戻らないかなぁ」って、じつは思っている人間ですよ。ワイヤーフレームでいいじゃんってね。でもそうはならないことがわかっている。逆にWiiぐらいになると、もう1回ヤル気が出てくる。だから、ゲームも1周してるのかな、と思うよね。アニメーションだってデジタルで進めてきたけれど、最終的にはある種の手触り感っていうのに戻ってきている。『スカイ・クロラ The Sky Clawlers』は、そういう意味ではのんびりとした映画ですよ。デジタルでギトギトっていう映画じゃないです。嫌になっちゃったんですよ(笑)。またいずれ『攻殻』(※4)みたいなものはやると思うけど、とりあえず1回、草っぱらと空しか出てこない映画を作ろうかなと。でも戦闘機はバリバリでね。
加藤 いやぁ、でも、先日公開されたトレーラーの第2弾はすごかったです。最近はメカを描かせたらゲームのほうがうまいかも、という思いがちょっとだけあったと思うんですが、このトレーラーで、「ぜんっぜんレベルが違います」というところを観させていただいて。スタッフ全員で息を飲んで観ました(笑)。
押井 空中戦のシーンはね、けっこうイケたかな、という感じはありますよね。3DCGに慣れてきたというか、今回のポリゴンさん(※5)のスタッフが優秀だったから、僕が想像したよりもある意味いいものが上がってきたし。アニメーションもゲームもそうだけど、やっぱり現場の力量以上のことはできないですよ。優秀な現場でしかいいものはできない。企画がどうだろうがね、そして優秀な現場なんてものはそんなに数があるわけじゃないです。アニメーションでまともな映画が作れる現場は片手で数えられるぐらいなんだろうな。そういうところで仕事をしていれば、絶対外せないっていうプレッシャーもあると思う。すばらしいスタッフを抱えている、日本でふたつとないチームで仕事を、監督をするっていうプレッシャーがね。そんな中でゲームを作っている加藤さんにも、絶対成功させなきゃいけないとか、外せないっていうプレッシャーがあると思うんだよね。でも、基本的に自分が楽しまないと、絶対にいい作品にはならない。義務感でやるとどうしてもやっててつまらないし、逆に自分がおもしろがりすぎちゃってもね、マズイけどね(笑)。今回は、そのバランスがよかったと思うんですよ。”ドラマ”を作るということをしばらくやっていなかったから、そういうプレッシャーはあったけれど、大好きな飛行機とつき合えるっていう楽しさは満喫できたし。その大義名分があるから飛行機を見に行ったり乗りにいったりできて、飛行機の模型で遊んでいても誰もとがめないしさ(笑)。それも含めてこういう仕事をやっているよさですよね。自分の趣味を満喫しながらお金をもらって仕事ができる。作ったものを観てもらって喜んでもらえる。うまくすれば全員がハッピーになる。でも、下手をすると全員が不幸にもなるんだけれどね。監督っていうのは、作品の落としどころ見極める役割なんじゃないかな。「ここまでにしましょう」って。現場が優秀であればあるほど、監督にとっては辛かったりするんです。「もうちょっとイケるんじゃない?」と思いながらも落としどころを見極めなきゃいけない。アニメーションとゲームはよく似ていて、ほっとけば終わらない(笑)。ここで終わるんだって強い意志を持って監督が止めないとね。
※3:鵜之澤 伸氏。バンダイナムコゲームス代表取締役副社長。コンテンツ制作本部長も兼務している。かつては、『機動警察パトレイバー』など、人気アニメのプロデューサーを務めていた。 |
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ゲームを卒業した方に戻ってきてほしい |
加藤 今回、音もすごくいいですよね。
押井 今回はスカイウォーカー(※6)の威力がいちばん出た作品かもね。
加藤 あれは実際に録音されているんですか?
押井 録れるものはほとんど録りましたね。劇中にベスパとかポルシェなんかも実車を捜してきて、敷地の中で走らせて録りましたね。エンジンに関してはスカイウォーカーに膨大なバンクがあって、あらゆる形式のエンジンの音があるんだけれどね。あとは鉄板をを徹甲弾で打ち抜く音とか、そういったものは改めて録ったみたい。いちばん苦労したのは、劇場映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の世界のエンジンの音がノーマルでいいのか、という話があって。もっとファンタジックな要素があってもいいのではないか、と。それでちょっと変えています。これがよかった気がする。ただ、いちばんいいなと思ったのが、飛翔感というか、空気の音っていうんですかね。翼がぶるぶる震えるフラッタリングの音とか、補助翼の舵面のバタつきの音とかね。そういうリアル系の音ですね。これはやっぱりスカイウォーカーは威力があるな、と。あそこはおもしろいことにリアル系もやるけど、ファンタジック系の音も必ず入れたがるんですよ。そのままやってもしょうがないんだ、って。フィクションとしてどこを見せるか、っていうキモを作ってくるところはやっぱりスゴい。あとはひたすら地味に風音とかさ(笑)。犬が「ワンワン!」とか、延々とやっていましたよ。
※6:スカイウォーカー・サウンド。劇場映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の音響効果を担当している。 |
――それでは最後に、劇場映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』と、Wii版『スカイ・クロラ(仮題)』を期待している読者の皆さんに、ひと言ずつメッセージをお願いします。
押井 ゲームから脱落した映画監督が久々におもしろいと思ったゲームです。ゲームに必要なリアリズムだけを残して、あとは潔くデフォルメしていて。いいゲームになりそうなので、期待したいと思います。あとは、映画のほうも観てねって(笑)。
加藤 一旦ゲームを卒業した方に、このゲームで戻ってきてほしいな、という思いを込めて作っています。また、ゲームにちょっとだけしか慣れていないという人も、このゲームでゲームらしいゲームを遊ぶ楽しさを知ってもらえたらな、と。もちろんゲームで興奮して楽しんでもらって、心の中に染み入るような情感の世界というのは映画を観て味わっていただくというのが、『スカイ・クロラ』という世界に入ってきてもらう、最高の足がかりになると思います。さらに深い、真の世界は小説でどうぞ。
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スカイ・クロラ(仮題) |
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発売日 |
2008年秋発売予定 |
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価格 |
価格未定 |
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テイスト/ジャンル |
ドラマ・戦闘機/シューティング |
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備考 |
原作:森 博嗣、ディレクター:加藤正規 |
※劇場映画『スカイ・クロラ
The Sky Crawlers』公式サイトはこちら
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