HOME> インタビュー> 『.hack//G.U. TRILOGY』の劇場公開が決定! 松山洋氏に直撃インタビュー!!
●松山 洋氏が語る『.hack//G.U. TRILOGY』
|
2006年5月にプレイステーション2で発売されたアクションRPG『.hack//G.U.
Vol.1 再誕』。この作品を軸に、さまざまなメディアで展開したプロジェクト『.hack//G.U.』の新たな展開、そして開発を手掛けるサイバーコネクトツーの新たな挑戦として進められているのが、映像作品『.hack//G.U.
TRILOGY』(以下、『TRILOGY』)だ。DVDとBlu-ray Discで発売される同作は、原作となるゲーム『.hack//G.U.
Vol.1』、『Vol.2』、『.hack//G.U. Vol.3』をもとに、全カットHD解像度による完全新作として描かれる長編CGアニメーションとなっている。
この作品が、劇場公開されることが決定した! 東京・池袋のテアトルダイヤにて、2007年12月22日(土)より、レイトショー(21時10分〜)、さらに大阪・テアトル梅田でも2008年1月よりレイトショーでの公開となる。HD解像度、そして5.1chに対応しているだけに、劇場の環境で視聴すれば『TRILOGY』を存分に楽しめることは間違いないぞ。
そんな『TRILOGY』を制作するサイバーコネクトツーの代表取締役社長・松山
洋氏に、ファミ通.comではインタビューを敢行した。改めて『TRILOGY』制作のきっかけや内容に迫るほか、新たにビッグな情報も飛び出したぞ! 以前より、「展開も結末もゲーム版とは違うものになる」と公言してきた松山氏から、どんな言葉が紡がれるか、注目してほしい。
松山
洋 |
|
|
|
株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長。多彩なメディアミックス展開を成功させた『.hack』シリーズや『NARUTO-ナルト- ナルティメットヒーロー』シリーズなどを手掛け、『.hack//G.U. TRILOGY』では監督を務める。 |
3本が1本に入った非常においしい映像作品 |
|
――『TRILOGY』は1本で、『.hack//G.U.』の物語すべてを描くものになっているのでしょうか?
松山 洋(以下、松山) そうです。なぜ、日本語で”三部作”という意味を持つ”TRILOGY”というタイトルをつけたかというと、ゲームの全3巻をまともにプレイしようとすると100時間ぐらいかかっちゃうんです。1本だいたい30時間ぐらい。100時間も使うことなく、『.hack//G.U.』という作品をしっかりと楽しむことができる、そんな3本が1本に入った非常においしい映像作品ですよ、ということを伝えるために、これ1本で三部作ですという意味合いを持って”TRILOGY”とつけさせてもらいました。
――なるほど。なぜ映像作品を作ろうと考えられたんですか?
松山 じつは『.hack//G.U. Vol2 君想フ声』を制作しているときから構想はあったんです。
――あ、そうだったんですか?
松山 はい。そこから実験も含めて並行して動いていたのが、この映像作品だったんですよ。そもそも『.hack//G.U.
Vol.1』を発売した2006年5月の段階で、いろんな方に言われていたことがあるんです。「『.hack//G.U.』おもしろそうだね、すごそうだね」と。「アニメもやっているし、コミックもやっている、シェーディングや絵作りなども含めてゲームの中でおもしろい演出をしている」、といろんな評価をいただいたあとに、「あれさー、映像の部分だけDVDに焼いてちょうだい☆」って(笑)。身も蓋もない話なんですけれどね。「ちょ……ちょっとゲームやってくださいよ!」ってなりますよね(笑)。でも「30時間はちょっと無理」と言われてしまうんですよね。
場面カット |
――たしかに平日ずっと仕事をしていて、週末にしか時間がない、という人は多いと思います。
松山 そうなんですよね。そんな中でちょっとずつゲームをしてもらう。でも、ゲーム以外にももちろんやることはいくらでもあるじゃないですか。それをこなしながら、また1週間後に続きをやるってなると、「何やるんだったっけ?」ってなっちゃいますよ。30時間プレイするってたいへんなんです。そんなわけで、大人になればなるほど、子供のときあんなに夢中になって遊んでいたRPGというものからだんだん離れていってしまう。
――離れますよねぇ。
松山 それって、いまの大人に限った話じゃないんですよ。小学生、中学生、高校生、いわゆる子供たちも実際は忙しいですよね。いろいろやらなきゃいけない。そう考えたときに、RPGでまとまった時間が取れないがゆえに、興味もあるし、やってみたいのだけれどもなかなか機会がなくてやれないと思っている、”大人”だけじゃなくて”子供”もいるんじゃないかな、と。そう思ったのが、そもそものきっかけだったんです。だったら、”『.hack//G.U.』のよさ”はそのままに、映像として感情を破裂させるようなものを作ればいいんじゃないか、と考えました。
――なるほど。
松山 ゲームにはゲーム機本体を買わなきゃいけないというハードルがそもそもありますけれども、DVDだったら、プレイステーション2でも観られますし、家庭用のDVDレコーダーやハードディスクレコーダーでも観られるじゃないですか。台数で言うとものすごい数の人に、観て楽しんでもらえるんじゃないかな、と思うわけです。ただ、作品が長すぎてもダメだと思うんですよ。180分の映像だって言われたら「をーーーーい!」ってなるじゃないですか(笑)。
――休憩が必要ですよ(笑)。
松山 だから、もともと『TRILOGY』は72分で作ろうというプロジェクトだったんです。ぶっちゃけた話をすると、ゲーム全3巻をコンパクトにギュッと濃縮して1本の話にまとめましょうということだったんですけれども、早々に「まとまらん!」となりまして。そもそも100時間が72分にまとまるか! っていう話ですよ(笑)。
――(笑)。それにゲームと映像では、作りかたはもちろん、見せかたも変わってくるでしょうしね。
松山 そうなんです。ゲームソフトとして料理すると全3巻という形になったのですけれども、映像として『.hack』を手掛けた我々がみずから料理すると、やりかたが違うと感じました。それで『.hack//G.U.』という作品の要素を一度全部分解したんです。分解して、映像エンターテイメントとして再構成するときに持ってきたものは、じつは半分以下で。残りはオリジナルで作ったんですよ。結果的に、本編も膨らみに膨らんで90分を越えました。
場面カット |
――90分と聞いても、まだ本当にまとまるのか? という気がしてしまうのですが。
松山 この1作品で完全に完結しています。最初から最後まで、1本の映像作品として終わっています。この93分を大きく分けると1部、2部、3部ってパートが分かれているんです。1部は『.hack//G.U.』をプレイされた方は、「あ、そうそう、こうだった」ということを感じてもらえる内容になっていると思いますし、初めて『.hack//G.U.』という作品に触れる方は「こういう話だったんだー」と感じてもらえると思います。ただ、第2部、第3部に関しては、誰も知らない展開と結末が待っていますんで。
――おお!
松山 『.hack//G.U.』をご存知のファンの方々は、導入は知っているところから始まるので、基本的な設定の入り口は同じなんですよ。ですけれど、油断しているとやられますよ。「おいおいおい、どこ行くの!?」って。この映像作品のためだけの結末を用意したので、そこに向かって物語が進んでいきます。だから、新フォームも出てくるんです。
――B-stフォームですよね。先日公開されたPVで、すごい攻撃をしていましたが。
松山 ええ(笑)。
――これも『TRILOGY』のための新しいアイデアであると。
松山 そうなります。我々としても、ゲームで一度描いたものを映像で焼き直しというのは許せなかったんですよ。とにかくやりたいことをやるって決めたときに、全部構成をし直して。ホントに全カット、全シーン、ハセヲのキャラクターモデルひとつとってもそうですし、背景グラフィック、エフェクト、全素材を作り直しました。だから、ゲームから転用しているところは一切ないですね。
できれば、ぜひBlu-ray Discで観てほしい |
|
――今回、サイバーコネクトツーとしては初めての映像作品になるわけですけれども、制作するうえでの苦労はありましたか?
松山 ものすごい苦労の連続でした。まず実験を始めたころに、つねに話の焦点にあったのが、SDサイズ(640ピクセル×480ピクセル)と言われている通常の画面サイズで作るか、HDサイズ(1920ピクセル×1080ピクセル)で作るかということでした。程なくしてHDサイズでやろうということになったのですが、HDはやっぱりなめちゃいかんですよ。ゲーム製作とはわけが違います。
――そういう理由もあって、映像制作チーム”sai-サイ-”が結成されるわけですか?
松山 そうです。いままでウチでは、さまざまなRPG、アクションゲームを作ってきましたけれども、映像パートって必ずあるんですよね。『NARUTO-ナルト-』シリーズだと奥義のシーンとか。『.hack』シリーズだとイベントムービーや必殺技とか。いずれもすごく迫力があって、演出的にも評判がいいんですけれども、そういう映像の部分を作ってきたスペシャリストだけを集めて作ったのがチーム”sai”なんですよ。その彼らといっしょにHDの映像化に挑戦しました。これがとにかくいちばん苦労しましたね。チェックに時間がかかるんですよ。
――チェック? どういうことでしょう?
松山 ほかのアニメ会社さんとは作りかたが違うと思いますし、ウチはもともとゲーム会社なので、ゲーム会社が作る映像の作りかたをしていると思うんですけれども、『TRILGY』は全部で1670カットありまして、それを43シーンに分けたんです。その43シーンをそれぞれアクションが得意な人間とか、微妙な表情が得意な人間とか、地味なんだけれども歩きが得意な人間とか、パートごとに担当を割り振る、分業体制でやったんです。編集はまたべつの人間がやりますし、エフェクトを入れるコンポジットもべつの人間がやったりしてはいるんですけれども。基本的なシーンの担当というのは43ブロックで分けたんです。それで、1個1個のシーンを、必ず私がチェックしていくんです。
――それだけでも、たいへんそうですね(笑)。
松山 そこでカットのつなぎが気持ち悪いということがあるので、「もう少しホワイトを重ねよう」とか「もう少しキレイにクロスフェードさせよう」とか、「手をパーンとついたところで、カットを切り替えよう」といった指示をして「もう1回見せて。いつ観れる?」と聞くと、「9時間後です」って言われちゃうんですよ。尺で言うとたかだか3分ぐらいのものですよ? なんで9時間もかかるんだと(笑)。ゲームだったら簡単なものならその場でプログラマーがちょっとイジると直るようなレベルのことなんですよ。それが9時間。「なんでなの、そんなにかからないでしょ?」って聞いてみたら、映像を吐き出すのに9時間かかるということなんですよ、HDサイズだと。
――そんなに!? スゴいですね。
|
松山 しかも、非圧縮のAVIっていうものを再生できる環境がものすごく少ないんです。ウチもかなりハイスペックのマシンを入れていますけれど、まともに再生ができないぐらい重いんですね。だから非圧縮のAVIだとそのまま確認できないから、劣化はしますけど、結局のところMPEG-2とかにダウンコンバートしなきゃいけないんです。仕方ないのでMPEG-2にして、画像は劣化するけれど解像度はフルHDの解像度で再生できる状態にするんです。でも、それをPCで確認しようとしてもやっぱりコマ落ちしたりするんです。それで最終的に我々がたどり着いたすばらしいハードっていうのが、プレイステーション3だったんですよ。
――えええ!? そこで、その名前が出てくる!?
松山 ええ(笑)。プレイステーション3にMPEG持っていって再生してみたら、めっちゃスムーズに再生できて。ウチもプレイステーション3の作品作ってますけれど(※2008年11月現在、”NARUTO-ナルト-
PS3 PROJECT”が発表されている)、その制作チームよりも誰よりもさきに、映像チームがプレイステーション3のすごさっていうのを体感しましたね(笑)。PCで、”もももももも……”ってやっていたのが、プレイステーション3だとすごい快適でしたから。
――プレイステーション3はすごいんですね、じつは。
松山 すごいですよ。だからぜひBlu-ray
Disc版はプレイステーション3で観てほしいですね。
――なるほど。ちなみにBlu-ray
Disc版とDVD版で何か違いってあるんですかね?
松山 作品の中身的な違いはないです。再生機が違うということと、解像度が違うということぐらいですかね。ただ、ぜひBlu-ray
Discで観てほしいな、という気持ちはあります。ぜんぜん違いますよ。
――実際、どのぐらい違うのか想像がつかないんですが。
松山 そうですねぇ。じつは確認に9時間もかかるので、途中から「確認は小さいサイズでやろう」ということになって、SDサイズで確認していたんです。カットのつなぎの確認はHDじゃなくてもいいじゃないですか、タイミングの話なんで。それで開発の後半になって、そろそろHDサイズで出し直してプレビューしようとなったときに、SDサイズじゃわからない微妙〜なズレとか、SDサイズのときは点のように見えていたものが、何かのバグだったことが判明したりとか。最後の1ヵ月は延々その確認作業で。まさか映像作品でデバッグすることになるとは思いませんでしたね(笑)。確認用として開発室に52インチのBRAVIA<ブラビア>が置いてあるんですけれども、最後は、その前で「俺このへん担当するわ」、「じゃあ俺このへん!」って再生しながら間近でずーっと観てゴミを取り除く作業をしていましたね。
――また、それはスゴい光景ですね(笑)。そういう苦労もあるんですね、CGの映像作品を作るっていうのは。
松山 結局、CGなんでゲームとちょっと似ていて、モデルとなる背景があって、その上に画面効果というのが入りますので、ものすごい数のレイヤーが貼ってあるんですよ。カットが切り替わるたびにその効果が変わるので、ものすごい量の命令をしているんですね。それを作るのは人間なので、まえの処理が残っていたりとか、組み合わせが悪くて、おかしな現象が起こるということがCGだとあるんですよね。
驚きの展開! |
|
――さらに今回、非常に大きな発表があるとのことですが。
松山 じつは『.hack//G.U. TRILOGY』が劇場公開されることになりました!
――スゴいですね! おめでとうございます!!
松山 ありがとうございます! いや、もう、とにかくうれしいですね。これは文字を太めにしてほしいんですけれども、ファンの皆さまのお力添えもあっておかげさまで『.hack』シリーズ、足掛け7年になるんですけれども、ようやく劇場作品として公開されることになりました! たぶん最後のメディアじゃないですか? ゲーム、アニメ、コミック、小説、ラジオとか、本当にいろんなメディア展開をしてきましたから。最後の砦、いよいよ劇場でございます。ホントにウレシイですね。
――これは映像化が決まったときから、劇場公開の話があったんですか?
松山 決まったのいつだっけ? 先々週ぐらい?
――えええええええ(笑)。
松山 (笑)。もっとまえから製作会社の方たちは動かれていたんですよ。劇場公開が決まったことの何がうれしいかというと、そもそも劇場用に作っていたわけじゃないということなんですよ。もともとはオリジナルビデオアニメーションとして計画されていたわけです。ただ、完成に近づいた映像を観たうえで製作、配給の方々が「これなら劇場いける」って判断された結果、劇場公開が決まったということだと思うんです。だからモノが正当に評価をされて劇場に上りつめた。これ以上うれしいことはないですよね。
――楽しみですねぇ、劇場のスクリーンで『.hack』の映像を観られるなんて。
松山 劇場公開はホントうれしいですよ。サイバーコネクトツーはゲームでもいままで5.1chってやっていなかったんですよね。それが今回ドルビーサラウンドの5.1chで、フルHDに対応させていただいたので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいな、と思いますね。……その代わりといっては何ですが、商品のほうはもう少しだけお待ちいただくことになってしまいました。その分お楽しみもちゃんと用意しておきましたので、少しだけお待ちいただければと思います。
――ええ!? そうなんですか? ちなみに変更後の発売日はいつになるんですか?
松山 (2008年)3月25日ですね。
――うれしいお知らせと、残念なお知らせが重なってしまいましたね。でも、劇場に行けば、商品の発売よりもずいぶん早く映像を観ることができるという見かたもできますよね。
松山 一部の方に限られてしまいますけれどね。ただ、実際、我々としてはBlu-ray Disc版で観てほしいんですけれども、ほとんどの人がDVD版を買われると思うんですよ。それが、劇場に足を運んでいただければ確実に我々が観てほしい環境で『TRILOGY』を観てもらえるので、お金を払ってでも観る価値が劇場にはあると思います。
少年マンガを映画に |
|
――音楽面に関しても、サウンドユニットの”LieN-リアン-”を結成されて、『TRILOGY』の音楽を制作しているんですよね。
松山 『.hack』シリーズをいままでやってきて、ウチのサウンドチームのサウンドそのものも評判はいいんですけれども、その中でも、ウチの作曲家の福田考代と、三谷朋世さんという歌い手さんのコンビがすごく評判がよかったんですね。ですので、このタイミングでちゃんとユニット化して、コンビとして好きになってもらえるようにユニットを組ませてもらいました。それで、やるんだったら、この映像作品をもって改めて1発目のデビューという形でやりたいな、というのがあって。最初から『TRILOGY』の中には、主題歌と劇中で流れる挿入歌、この2曲歌を作ると決めていました。サウンドチームにはそのイメージを最初から伝えていたので、イメージどおりの、ものすごくいい形で入っています。泣けますよー。たまんないです。
――BGM関連もゲームで使っていたものではなく、新規のものになっているんですか?
松山 楽曲も、今回の映像作品のためにすべて作り直しました。ゲーム『.hack//G.U.』からの転用は一切ありません。
――もちろん、声も全部録り直しで。
松山 当然です。ゲームと映像の収録は違いますからね。
――収録は、できあがった映像をその場で流して行われたんですか?
松山 そうですね。掛け合いで全部録っています。ゲーム『.hack//G.U.』は、映像の一部分に関してじつは掛け合いで録っているんです。ただ、ゲームってさきが長いじゃないですか。だから声もかなり早い段階で収録してしまっているので、掛け合いで録音しなくてはいけないところだけさきに映像を作って、掛け合いではないところは音だけ録音して、映像はあとづけにしていたんですよ。でも今回は、映像を現場に持ち込んで収録しました。
――そうすると、声優さんの演技にもより熱が入りそうですよね。
松山 やっぱり違いますね。感情の流れというか、起伏というのがすごく観ていて気持ちいいですよ。とくに毎回ハセヲ役の櫻井さんには絶叫してもらってますが、今回は吐いてもらいました。「うぇっ」って(笑)。
――キービジュアルを観ると、やはり『TRILOGY』でもハセヲ、アトリ、オーヴァンの3人を軸に進んでいくのかな、と思うのですが、ほかのキャラクターというのは?
松山 出てはきます。出てはきますが、あれもこれもって手を出すと詰め込みすぎちゃって、「結局何の話だったんだ?」ってわからなくなってしまうので、ポイントを絞っています。主人公・少年ハセヲ、ヒロイン・少女アトリ、そして謎の男・オーヴァン。言い換えると、この3人が主人公だと思ってもらえればいいです。とくにハセヲとアトリの関係性というのは、『.hack.//G.U.』の先入観で観るとちょっと違うんじゃないかな、と思います。いままで知らなかったアトリ、いままで知らなかったハセヲが観られるんじゃないかなと。
――ここに注目して観てほしいというところは?
松山 CGアニメ作品って、世の中にはたくさんあるんですけれども、たぶんどの映像作品と見比べても似ていない作品になったと思います。セルアニメーションともちょっと違いますし、いわゆる典型的なCGアニメーションという感じでもないし、サイバーコネクトツーらしい映像作品になったんじゃないかな、と思っています。基本的には『.hack』って難しそうなイメージがあるじゃないですか。
――ああ、わかります。設定が難しくてとっつきづらいイメージがありますね。
松山 ちょっとハードルが高そうなイメージで見られていると思うんです。設定的には、そうかもしれない。そもそも、世界一売れているMMORPG『The
World』というところが舞台で、その中のキャラクターが主人公で、その向こう側にはリアルの人がいて……って、たしかにややこしいかもしれない。ただ、この映像作品に関して言えば、90分なんの前準備もなく観てもらっても十分楽しめる、少年マンガを映画にしたと思ってもらえればわかりやすいと思います。ホント、ひとつのエンターテイメント作品として、少年マンガのノリで我々は作らせてもらいましたので、燃えますよ。
――おお〜! 燃えもあり、……萌えはあるんですかね?
松山 萌え……も……え……モ……萌えは、ないわー!(笑)
――なかった!(笑)
松山 ある意味、ずっと燃えていますけど(笑)。もちろん、ヒロインもいますし、女性キャラもいるんですけれども、それよりも何よりも、観た方はみんな間違いなくハセヲに夢中になると思います。
独自の映像で魅せる |
――以前ゲームのお話を伺ったときに、表情とか、映像の見せかたという点で、シーンによっては、じつは人の形をしていないっていうことを仰られていたと思うのですが、今回もそれはつきつめていらっしゃるのですか?
松山 そうです。弊社が『.hack』を作るときに編み出した”スーパーフェイシャル”という手法を、さらにパワーアップさせましたね。完全に原型がわけわかんなくなっています。それこそ拳を前に突き出しているときっていうのは、ホントにものすごく拳が大きくなっていますから(笑)。CGアニメーションはおもしろいですよ。
――あと、今回モーションキャプチャーを使っていないというのも、映像作りとしておもしろいな、と思って。逆に使わないんだって。
松山 少年マンガのノリのCGアニメーションを作りたいと思ったときに、モーションキャプチャーは頭から最初に切り離しましたね。だって、そもそもモーションキャプチャーで拳大きくできないですもん! 「こっちの目だけちょっと大きくしてください」って言われてもできないですよね(笑)。だからホント、アニメーションの動きに関してはキャプチャーは一切使用していません。すべて人間が頭の中で考えた動きになっています。すべて手付けの、いわゆる手付けアニメーションになっています。
――そのほうが迫力のあるものに仕上がるということですよね。
松山 もともと我々は2Dのセルアニメーションが大好きで、ゲーム作りをする上でも、アニメも観ますし、マンガも読みますし、映画も観ますし、小説も読むんですけれども。セルアニメーションの作りかたというか、”情熱”とCGのテクノロジーというのをうまく融合させたひとつの答えだと、我々は思っていますね。
――ホント、独特ですよね。『.hack』だけじゃなくて、サイバーコネクトツーさんの作る映像というのは。ほかにないものを見せてくれるんで。
松山 ありがとうございます。カッチョいいッスよ(笑)。
今後の展開は……? |
|
――今回、映像チームとして”sai”が結成されて、これからさらにほかの作品という展開はあるんですか?
松山 これからさきはね、まだわからないところではありますけれど、チーム”sai”の『TRILOGY』プロジェクトは、一旦終了です。ここからチーム”sai”の第2弾プロジェクトがスタートしてどういったことをやるのか、というのは、それこそ劇場に足を運んでくれたお客さんの応援次第ですね。そして3月のDVD発売、その応援次第であると! 大人の世界で応援っていうのは何を指しているか、よい子はわかっているよね?
――(笑)。
松山 買うんだったら、ぜひとも予約をして買う! と、これが応援ですから。ハッキリしていることはですね、予約をしてもらえると、間違いなく私が喜びます。予約すればするほど喜びますんで。
――その喜びが何につながるのか、ってことですね。
松山 そういうことです。ぜひ喜ばせていただきたい。「発売日にプラッとお店に行って買えばいいや」というのは、どうだろうな〜、それ!(笑) 予約してから買って! お願い!!
――(笑)。映像特典とか何かついたりするんですか?
松山 ”パロディモード”がついています。『.hack』のファーストシーズン、いわゆる4部作にはクリアー後のお楽しみとして、セリフが全部べつのものに切り替わるっていう、わけのわからない電波シナリオがあったんですよ。それが、もんのすごい評判悪かったんです。電波すぎて意味がわからんって(笑)。それでものすごく怒られたので、『.hack//G.U.』のときにはパロディモードをやめて、その分、本編に分量を割いたんですよ。その結果、『.hack//G.U.』をプレイされた方から「パロディモードがないから物足りません」って言われて、どっちやん! って(笑)。そういう、昔のファンだったらピンと来るようなものが入っています。特典映像は、本編中のいくつかのシーンがまるで違う設定とセリフになって、抱腹絶倒の内容になっていますね。
――おもしろそうですねぇ。
松山 しかもね、絵をちょっと足したりとかしちゃってるからね、特典じゃなくなってるやんって。あ、あと、そこには萌えがあるかも(笑)。
――楽しみです!(笑) それでは、最後に『TRILOGY』を楽しみにしている方々へ、ひと言メッセージをお願いします。
松山 『.hack//G.U.
TRILOGY』は、皆さまの応援を持ちまして劇場公開が決まりました。今回は、ゲーム制作会社サイバーコネクトツーの新しいチャレンジ、映像作品の第1弾として、我々的にやり残したことはないです。93分の中に、ひとつの作品として、すべてを詰め込みましたので、これ1本でしっかりと堪能していただける作品になったと思っています。ぜひ、劇場に足を運べる人は運んでもらって、そして3月の発売を楽しみにしていただくと同時に、予約を忘れないように、と(笑)。今後も応援よろしくお願いいたします!
STORY |
西暦2017年、世界最大規模で運営されるネットゲーム『The
World R:2(ザ・ワールド リビジョンツー)』。あまりにもリアルなそのゲーム世界で、”AIDA”と呼ばれる不思議な現象が起こりつつあった。 |
スタッフ |
監督:松山 洋 脚本:新里裕人 パッケージデザイン・デザイン監修:貞本義行 キャラクターデザイン:細川誠一郎 演出:入川慶也 アニメーションディレクター:伏見 直 キャラクターモチーフモデラー:竹田奈央 美術監督:高木 聡 撮影監督:二塚万佳 編集:古賀理恵 音楽:福田孝代 録音演出:なかのとおる アニメーション制作:サイバーコネクトツー 製作:バンダイナムコゲームス・バンダイビジュアル |
キャスト(一部) | |
キャラクター名 |
声優名 |
ハセヲ |
櫻井孝宏 |
アトリ |
川澄綾子 |
オーヴァン |
東地宏樹 |
八咫 |
山崎たくみ |
パイ |
小林沙苗 |
クーン |
三木眞一郎 |
志乃 |
名塚佳織 |
.hack//G.U. TRILOGY |
2007年12月22日(土)21:10より、東京・池袋テアトルダイヤにてレイトショー |
.hack//G.U. TRILOGY |
|
発売日 |
2008年3月25日発売予定 |
価格 |
Blu-ray Disc版:8190円[税込]/DVD版:7140円[税込] |
収録内容 |
本編約83分+特典約25分 |
制作 |
サイバーコネクトツー |
発売元 |
バンダイナムコゲームス |
販売元 |
バンダイビジュアル |
※『.hack//G.U.
TRILOGY』公式サイトはこちら
※サイバーコネクトツー公式サイトはこちら
この記事の個別URL
ソーシャルブックマーク
その他のニュース
原案・萩原一至のハクスラRPG『QUESTER | OSAKA』が本日(3/19)正式リリース。水の都・大阪を舞台に『QUESTER』の前日譚を描く
ハックアンドスラッシュに特化したダンジョン探索RPG『QUESTER』の前日譚を描いた新作『QUESTER | OSAKA』のSteam版が2024年3月19日に配信開始された。
『アウトキャスト 新たなる始まり』日本語字幕付きトレーラーと動画投稿ガイドラインが公開。美しい惑星へと旅立つオープンワールドSFアクション
THQ Nordic Japanは、『アウトキャスト 新たなる始まり』(Outcast - A New Beginning)の日本語字幕付きのリリーストレーラーと、動画投稿に関してのガイドラインを公開した。
Switch『おさんぽひこにゃん』2024年春に配信。滋賀県彦根市のマスコット・ひこにゃんが彦根城や琵琶湖をお散歩するジャンプアクションゲーム
アミューズメントメディア総合学院は、Nintendo Switch用ソフト『おさんぽひこにゃん』を2024年春に配信する。価格は980円[税込]。
『メタルギア』新作の予定は「まずはリメイクを作ってから」。シリーズの最新情報をお届けする番組のプレ配信版が公開
『メタルギア」シリーズの最新情報を制作者自らお届けする番組“METAL GEAR - PRODUCTION HOTLINE”のプレ配信版が公開された。
宝石加工シミュレーター『LAPIDARY: Jewel Craft Simulator』Steamストアページが公開。原石を加工して美しい宝石を生み出そう
シンク・アンド・フィールは、PC(Steam)向けの宝石加工シミュレータゲーム『LAPIDARY: Jewel Craft Simulator』を近日中に発売する。価格は780円(税込)。
警察官の仕事を体験できる『Highway Police Simulator』が9月に発売予定。交通違反の取り締まりや車両事故、危険な銃撃戦などの任務を遂行
AerosoftとZ-Softwareは、PCとPlayStation 5、Xbox Series X|S対応の法執行シミュレーションゲーム『Highway Police Simulator』を2024年9月に発売する。
『アナザーエデン』7周年記念! 推しキャラに想いを伝えるファンレターを募集します
週刊ファミ通2024年4月25日号(2024年4月11日発売)では、『アナザーエデン 時空を超える猫』の7周年をお祝いする特集を掲載予定。この特集内の企画として、『アナデン』プレイヤーの皆さんからの、推しキャラクターへのファンレターを大募集!
『ワンピース』×プーマのコラボアイテムが3月23日より発売。新四皇モチーフのスニーカーをはじめ、Tシャツ、リュックなどが登場
インフォレンズは、世界的エンターテインメント作品ONE PIECE(ワンピース)のコラボレーション商品をを2024年3月23日(土)より発売する。
『呪術廻戦』虎杖悠仁のPVが3月20日0時にYouTubeジャンプチャンネルで公開。ドット絵作業用BGMも3月21日20時より登場
漫画『呪術廻戦』の主人公・虎杖悠仁のPVが、2024年3月20日(水)0時よりYouTubeジャンプチャンネルにて公開される。また、3月21日(木)20時からは『呪術廻戦』ドット絵作業用BGMも公開予定となっている。
『ドラゴンズドグマ 2』発売記念特集。旅立ちの時は来た! 冒険の世界や人物、ジョブに加え戦闘のコツなど攻略に役立つ情報をお届け【先出し週刊ファミ通】
『ドラゴンズドグマ 2』発売記念特集を16ページでお届け。冒険の舞台や旅で出会う重要人物、そして多彩なジョブなどの情報で冒険序盤は完璧! さらに戦闘で勝利するためのポイントなども解説します。