HOME> インタビュー> 『忌火起草』開発陣にその魅力や制作秘話を語ってもらった
●ゲームの見どころや制作秘話まで語り尽くす!!
ついに発売された、サウンドノベルシリーズ最新作『忌火起草』。プレイステーション3の能力を活かし、実写とCGによるグラフィックと、5.1chに対応したサウンドで、サウンドノベルの原点である”恐怖”を色濃く描き出した作品だ。すでにこの恐怖を体験した方はどのような感想を抱いているだろうか? そんな『忌火起草』について、本誌週刊ファミ通2007年11月2日号(2007年10月19日発売号)では、開発陣にインタビューを敢行した。そのインタビューの全貌を、ファミ通.comでお届けしていくぞ。
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プロデューサー イシイジロウ氏 |
監督 中嶋康二郎氏 |
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チュンソフト開発部ゲーム企画セクション所属。『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』を監督。同作で第9回CESA GAME AWARDS優秀賞を受賞。ほかに、Windows95用ソフト『リトルラバーズ』のディレクションも担当している。 |
チュンソフト開発部サウンドセクション所属。『不思議のダンジョン』シリーズ、『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』など、チュンソフトが誇るタイトルのサウンドを担当。『かまいたちの夜』では加藤恒太氏と共同で作曲も手掛けた。 |
――まず最初に、実写を採用された経緯を伺えればと思うのですが。
イシイジロウ(以下、イシイ) 企画当初、CGと実写、その他の表現というものでいろいろと検討しました。さまざまな作品を観たのですが、圧倒的にジャパニーズホラーの、女優さんが演じている幽霊のほうがあとに残るんですよね。夜、眠れなくなる率が高いというか(笑)。手をひとつ取っても、CGで作った手と、女性が実際にだらんと下げている手とではぜんぜん違う。
――動画もすごく雰囲気がありますしね。
イシイ 人の髪の毛の重さとか、情念みたいなものが、CGには宿っていないのではないかな、と思いますね。「この人に呪われたら、一生呪われ続けられるだろう」という表情とか、仕草、芝居というのは、CGにはまだ無理なんじゃないかな。
――ちなみに、キャストの方はどういう基準で決められたのですか?
イシイ シルエット重視ですね。主人公はユーザーの方が感情移入しやすい、中肉中背というイメージ。ヒロインは、誰もが「こういう女性いたらいいな」と思えるようなシルエットだったり、仕草だったりを持った方を選びました。『かまいたちの夜』のときの、ブルーのシルエットと同じで、シルエットだけ見て誰なのかがわかる、ということを意識しています。あと、幽霊役の方は、パーツにキレイさとか、女性の美しさプラス怖さがある方を選びました。
中嶋康二郎(以下、中嶋) 幽霊役の方は、非常に日本的な方でしたね。
イシイ 着物が似合うような。
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――ボイスシステムを採用した理由は?
中嶋 当初、プレイステーション3でできる映像表現を最大限までやって、音の演出もいろいろと仕込んでいたんですが、もうひとつ怖さが感じられなかったんです。新しさがないな、と。そんなときに中村(※1)から「映像もキレイだし、音も非常にいいんだが、何かが足りない。声が聞こえてこないのがおかしいんだ」と。「1回声を入れてやってみてくれないか」ということを言われたんです。我々としても決め手に欠けていたところはありますし、実写を使ったこともあって、声を入れたらどうだろうと思っていたところはあったので、1度テストでやってみようかと。
――その結果として、ボイスシステムが誕生したわけですね。
中嶋 サウンドのスタッフと、中村とで、文章とセリフを同時に出そうという話が出まして。相手の声を聞くことによっても、自分は何かを思うだろう、その思ったことをテキストで出していこうと。実際にやってみるとこれが快感なんですよね。以前の作品では、ボタンを押すごとに1行文章が出て、という感じだったのが、ボタンを1回押すと文章が出て、セリフも出る。これが気持ちいいテンポで進んでいくんですよ。
――実際にやってみると、弘樹=自分という感じで、物語に没入していきますよね。
中嶋 弘樹は自分でボタンを押すことでしゃべるんですけれど、まわりの人は勝手にしゃべるというのもポイントです。そうすることで、ライブ感が出たと思います。いま思うと、これがすごく自然で、こうじゃないほうが不自然な感じがしていますね。
――ほかに、中村さんのほうからリクエストというのはあったんですか?
イシイ 「幽霊をあまり見せないで」とか。
中嶋 コンテ段階では、幽霊を見せたりショッキングなシーンなどを見せてはいたんです。ただ、表示された映像よりも、想像のほうが数段怖いものをイメージしてしまうんですよ。だから、幽霊などは、はっきりと見せないようにしています。
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※1:中村光一氏。チュンソフト代表取締役社長。サウンドノベルを生み出し、ダンジョンRPGを広めたクリエーター。 |
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――シナリオについてですが、今回ピンク編(※2)がついに公開されましたね。
イシイ これがホントにいいデキで。先日も打ち上げの席で中村が「あれ(※ピンク編)はいいよね。あれのために本編があるようなものだ!」ということを言っていたぐらい(笑)。ホントに、会心のデキだと思います。
中嶋 内容は、セルフパロディーになっています。Hなほうへはなかなか行きづらい時代になってきたので、”お笑い”っぽいピンク編という形に仕上げました。本編は真面目に怖いシナリオをやっているのですが、同じ絵に違うセリフを乗せたらおもしろいんじゃないかな、と(笑)。
イシイ すごく怖いシーンを絵として出してすごくバカなことを言っているとか。そういう物語の作りかたをしています。もちろん、Hなほうに行っていないとは言いながらも、いろんなセリフが5.1chで右から左から後ろから聴こえてきますので、若い人にはちょっと刺激が強いかも(笑)。
中嶋 あと、ピンク編はテキストがまったくないんですよ。音のみで。ラジオドラマっぽい感じなんですけれども、それに合わせて本編と同様に絵が表示されます。
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※2:サウンドノベルシリーズおなじみのシナリオ。『忌火起草』製品版にはピンク編の一部しか収録されておらず、物語の続きは、製品発売後に発表されるキーを入力するか、ムービー配信や本作の体験版ダウンロードなどを行っているPlayStation Storeでダウンロードすることで読めるようになる。 |
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――ゲーム中に多彩なシナリオが用意されているということですが、その内容は?
イシイ メインシナリオはジャパニーズホラーの王道的な心霊の恐怖を追及したシナリオです。それ以外のシナリオは、幽霊の怖さではなくて人間の怖さを追求したシナリオや、自分が壊れてしまう怖さを描いたシナリオになっています。怖さにもいろいろありますので、そこをカバーするために、いろんな怖さのシナリオを用意しました。
――シナリオもかなり練り込んでいる?
イシイ じつは、シナリオの制作期間は半年の予定だったんですが、1年かかってしまいました。ホラーを作るということが、最初に思っていた以上に難しくて。怖いものを作るだけなら難しくないんですよ。ただ、よくあるホラーの形式はサウンドノベルに向いていないんです。
――それはなぜでしょうか?
イシイ サウンドノベルというのは、論理的でなければいけないんです。Aという選択肢を選んだら、幽霊が出てきてバッドエンドになってしまった。ならばBを選べば、先に進むことができる。でも、よくあるホラー映画はAにもBにもバッドエンドが潜んでいるんです。これではサウンドノベルは成立しない。『リング』という作品は非常に論理的で、謎解きでありながら、ホラーでもある。ふつうは、物語が進むにつれて幽霊の正体や、なぜ呪いがあるのかということがわかってくると怖くなくなってしまうんです。それが『リング』は、説明されればされるほど、新たな怖さが生まれるんですね。この作りがサウンドノベルに合っているな、と。そこで『リング』のフォーマットを目指してシナリオを制作しました。結果として、作家さんも僕たちも納得できるようなシナリオができました。ただ怖いだけじゃなくて、おもしろいシナリオになったと自負しています。サブシナリオが開けば開くほどに、どんどんおもしろくなっていって、どんどん違う怖さが生まれてくる。ここは自信があるので、ぜひプレイしていただきたいですね。
――メインとは別に百八怪談というシナリオが用意された理由は?
中嶋 小さい怪談を仕込むことで、ユーザーさんにいろいろな楽しみを見出してもらえれば、と。あとは怪談を集めるというようなゲーム的な楽しみもありますね。
イシイ 作家陣に、怪談を得意とする加藤一さん(※3)がいたというのがポイントで。加藤さんはずっと”実話怪談”というのをやられていて、得意分野は短い怪談、都市伝説的な怪談なんですね。今回、大きなストーリーを作っていただいたんですが、得意なのは短い怪談だと仰られていて、書きたそうな雰囲気もあったので(笑)。そこでぜひお願いします、と。その後、いくつぐらい怪談を入れるか話合っているときに、「108つっていいですよね」とご本人が言ってしまって(笑)。それで108つの怪談を書いていただきました。
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※3:加藤一。実話怪談作家。著書に『「超」怖い話』、『とっても怖い携帯メール』などがある。 |
――豪華なスタッフが今回制作に携わられていますが、これは企画の段階から、この人にお願いしようと決めていたんですか?
イシイ まず、実写でやることが決まったときにホラー映画の資料などを観たり、集めたりしたんです。そうすると、日本がいちばんノウハウがあることがわかりました。そこで、このノウハウを持ったスタッフの方々といっしょに仕事をしようと。僕らが勉強して一夜漬けでやったところで勝てるわけがないですから(笑)。そこで、黒澤清さん(※4)の映画『CURE/キュア』の照明をやっているスタッフや、撮影をやっているスタッフの方にコンタクトして、撮影をお願いしました。また、実写を撮影してそれをそのまま使っただけではゲームに合わないので、1枚の写真として恐怖を表現するために庄野さん(※5)にVFXを依頼して。庄野さんは『かまいたちの夜2』にも参加していただいていまして、そのときにすばらしい信頼関係を結べていましたし、映画の『CASSHERN(キャシャーン)』でも、すばらしい映像表現を実現されていたので、参加していただきました。
中嶋 音楽は上野耕路さん(※6)ですね。もともとこちらでも『帝都大戦』の音楽がいいな、と言っていたところはありました。庄野さんといっしょに仕事をされていらしたので、庄野さんにご相談して上野さんをご紹介していただいたんです。
イシイ あるサブシナリオの音楽は、中嶋さんのこだわりの人選なんですよね。
中嶋 それはバイオレンスな激しいシナリオになっているんですけれども、このシナリオにはぜひヘヴィメタルを使いたいな、と思いまして。長年の夢が叶ったわけなんですけれども(笑)。もともと、いろいろなゲーム音楽をギターで弾こうというオムニバスCDの中に『弟切草』が入っていて、ルーク篁(※7)さんがギターを弾かれていたんです。そんな中で聖飢魔IIルートを探っていくと、サウンドスタッフの友だちのお兄さんが聖飢魔IIに関係のある方だということがわかりまして、それでご紹介いただいて松崎さん(※8)に曲を作っていただいて、太鼓を湯澤さん(※9)に叩いてもらったりとかして、激しい曲に仕上がりましたね。
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※4:黒澤清。『CURE/キュア』、『回路
Pulse』、『アカルイミライ』などを代表作に持つ映画監督。 |
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――最後に、発売を心待ちにする読者の皆さんにひと言メッセージをお願いします。
イシイ PlayStation Storeで体験版ダウンロードを開始しています。プレイしていただけましたでしょうか?(※10) 怖いシーンのみを5.1ch、ハイビジョンで体験できるような内容になっていますので、まだプレイされていない方は、ぜひ製品の発売まえに楽しんでみてください。『忌火起草』は、キャッチフレーズにある"最恐"のゲームソフトであるとともに、いままでのサウンドノベルと同じような形で、分岐があってゲーム性の高い作品に仕上がったと思っています。"怖さ"だけではなくて、"おもしろさ"という部分も楽しんでください。
中嶋 今回は初めての試みとして、ボイスを入れて、しかもテキストとのシンクロに挑戦しました。ぜひ新しいプレイ感覚を楽しんでいただきたいと思います。また、プレイステーション3なので、ハイビジョンで、ドルビーデジタル5.1ch対応というところにも力を入れていますので、ぜひ環境を揃えて遊んでいただきたいと思います。
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※10:このインタビューは、週刊ファミ通2007年11月2日号(2007年10月19日発売)を再構成したものです。 |
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