総合プロデューサー・名越稔洋氏が語る『龍が如く 見参!』
●京都を舞台に描かれる、新たな『龍が如く』!
熱き大人のドラマを描き、幅広い層から多大な支持を集めた『龍が如く』シリーズ。その待望のシリーズ最新作『龍が如く
見参!』がプレイステーション3で登場する。物語の舞台は、関ヶ原の戦いから数年後の京都。プレイステーション3の性能によって、美しく描き出される京都で、プレイヤーは主人公・桐生一馬之介となり、男を魅せることになるのだ。
本誌週刊ファミ通2007年9月28日号(2007年9月14日発売)では、同作の総合プロデューサーである名越稔洋氏のインタビューを敢行。ファミ通.comにてその模様を映像配信したが、今回はそのインタビューの全文を掲載するぞ。誌面でも映像でも語られなかった内容も含まれているので、注目してくれ。
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総合プロデューサー |
言わずと知れた『龍が如く』シリーズの総合プロデューサー。株式会社セガ R&Dクリエイティブオフィサー。 |
――『龍が如く
見参!』の制作に至ったきっかけは?
名越稔洋(以下、名越) 『龍が如く』というタイトルは、ゲームに対してのチャレンジで作ったものです。『2』は『龍が如く』を評価してくれた方へのお礼というか、責任でした。ある意味『2』までは、『龍が如く』が評価されたことによる波の中で生まれたもので、”続編”というのは、その時点で頭の中にはありませんでしたね。じつは”ここで終わりにする”ということもある種の選択肢としてあったのですけれど、シリーズが評価されたことに対して、ファンの皆さんの期待に応えなければいけない、と感じて。
――いろいろと逡巡があったようですが、発売は2008年春と非常に早いタイミングですね。
名越 『龍が如く』から『2』になったときに、もっともいい仕事をしたと僕自身感じたのは、ちょうど1年後に『2』を発売できたことでした。自分としては、いいものを作るのは当然のことで、いいタイミングで出すということがサービスだと思うんです。だとすれば、3作目の発売までに時間をかけるのもどうかと思いました。そんな中で、企画の部分が難航しつつもプレイステーション3での実験は先行して進んでいて、できることというのがある程度分かってきていて。それを見るたびに焦りもしましたね。一時は『龍』の名前がつかないものもおもしろいのではないか、と考えもしましたが、桐生一馬というキャラクターは使いたかった。試行錯誤の末に、「桐生一馬はどこにいてもおもしろいのではないか?」という結論に至って。それこそ過去でも未来でも。そのポテンシャルに気がついたとき、「桐生一馬が持つポテンシャルそのものを証明したい」と思ったんです。
――そこで、江戸時代という設定がアイデアとして生まれたわけですか。
名越 『龍が如く』は、もともと日本を意識した作品ということもあったので、日本人が日本人らしかった時代というものが、キレイに収まるかな、と考えたんです。桐生を江戸時代に当てはめた状態でモノを考えていくと、意外なほどハマっていって……。
――桐生一馬之介という名前も、予想以上に違和感がありませんよね(笑)。
名越 江戸時代というだけでもおもしろいんだけれど、もうひとつ何かがほしかった。そこで「伝説の日本人と絡めたほうがいいのではないか」という話になって。そのチョイスをしたら、けっこう早い段階で宮本武蔵というものが出てきました。宮本武蔵伝説って、いろいろとフィクションの作品が世の中にはありますが、従来のものとは違う、桐生だからこそできるフィクションというものに挑戦したかったんです。
――ふたりの人物の交錯を考えていくうちに、同一人物というアイデアに至ったのですか?
名越 そうです。桐生一馬之介は、祗園という町の”掛廻(かけまわり)”という、現代で言うと用心棒というか。面倒を処理する仕事をしています。ドラマの中ではワケあって剣を捨てていて、その日暮しの生活をしているキャラクター。でも、その正体は誰もが知っている剣豪、宮本武蔵なんです。宮本武蔵というキャラクターは皆さんのイメージどおり、大剣豪で、剣によって”己とは何か、剣とは何か”に挑んでいくという人。それがドラマの中の状況によってどちらかに切り替わっていくんです。ふたりのコントラストが生まれたときに、手応えを感じましたね。また、結果的には物語に深みを与えてくれたと思います。
――舞台を祗園にしたのは、どんな意向から?
名越 宮本武蔵という人物が出たときに、架空の町ではなくて実在の都市のほうが自然だろう、と考えました。宮本武蔵にたどり着いた時点で、”桐生を過去に持っていったらおもしろい”から、”コレは絶対におもしろいな”という核心に変わりました。
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――今回は剣豪ですから、バトルでは刀がメインになるわけですよね? ヒートアクションなどのシステムにも変化はあるのでしょうか?
名越 ヒートアクションという概念はいっしょですけれど、従来のものに加えて、剣戟のアクションを追加することで、演出の効いたカッコよさを追求しました。もちろんシリーズを象徴する、シリアスとバカバカしさの共存という部分も強く表現しています。
――時代劇になったことで、多くの新要素が加わりましたが……。
名越 注目してほしいのは、”我、天啓を得たり”ですね。従来作にも、新技のヒントをビデオから得るという要素がありましたが、それをもっと時代劇という舞台にマッチさせようと思いました。しかも、思いついてすぐ使えるわけじゃなくて、そのあとにミニゲームのようなものがあって、それに成功することで具体的な技になる、という感じになっています。失敗すれば思いつけない。そのあたりは、アドベンチャーのアクセントとしてはおもしろく仕上がったと思います。
――天啓を得る場所というのは?
名越 今回はいままでと違ってフリーカメラなので、辺りを見回すことができます。でもそれだけじゃダメで、何かができるようになったということは、何かがおもしろくならなきゃいけないわけです。辺りを見回すことによって、自分が強くなる何かが見つかるならば、見回すという行為に意味も出てきますし、見回すことでおもしろいシーンも見せられるようになりましたね。もちろん、従来シリーズのように、師匠から学んだりということもありますが、時代が違うこともあって、いままでにない要素が中心になっています。
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――祗園という町は、『龍が如く』という作品にぴったりですね。
名越 歓楽街であったり色町であったりという場所ではあるのですが、作り手としては”毎日お祭りが行われている町”というイメージで作っています。期せずして、歓楽街とも違う展開にできましたね。サブストーリーなども、『龍』とは違ったテイストで楽しめると思います。また、キャラクターの2面性のほかに、ステージも祗園という外界と隔絶された色町の中と、その外の町といったようにエリア分けがされています。桐生と武蔵、それぞれのキャラクターが活躍できる場を作りたかったんです。祗園は桐生、外では武蔵という線引きをすることで、ドラマもわかりやすくなり、遊びとしても理解がしやすいものになったのではないかと。ゲーム性とドラマ性が、2部構成にうまく溶け込んでくれたと思います。
――祗園以外の場所も登場するのでしょうか?
名越 修学旅行で行ったようなところは出てきます(笑)。あと、宮本武蔵が好きな人が予想できるような場所も出てきますね。
――出演キャストは映画やテレビにも引けを取らない、豪華な面々が集まっていますよね。
名越 キャスティングに関しては過去最高に豪華ですね。今回は、声だけではなくて、キャストの方々の顔を実際にキャプチャーし、キャラクターモデルとして使用しているので、使いかたも豪華でした。先行して脚本がアップしたときというのは、誰に演じてほしいかを考えて、イメージどおりのところから当たっていくつか断られて落ち着く……という作業になるのですが、今回は、ほとんど当初の思惑通りのキャスティングになりました。ありがたいというか、幸運でしたね。それは『龍』というタイトルが受け入れられたという結果ですので、非常にうれしかったです。中には「『龍が如く』だったら話を聞いてもいい」という方もいらっしゃいましたし。マネージャーさんが遊んでいたり、ご本人がクリアーされていた方もいらっしゃいました。1作目のときはゲームの説明をするだけでもたいへんだったんですけどね(笑)。本作は、ナンバリングタイトルではなくて、『見参』というタイトルにしているので、外伝的な印象を持たれたら嫌だな、と思っています。決して箸休めではなくて、本気で作っていますので。本気感をアピールするためには、すべてにおいて『2』を超えて作らなければいけない、と思っています。すべての要素が公開されれば、過去のシリーズもぶっ飛ぶくらいのスケールになりますので、そういう意味では完全新作で、かつ過去のシリーズ以上に勢いのあるものになっていると思います。
――皆さん本当にそっくりですよね。
名越 現場に行って思ったのは技術の進歩はすごいな、と。以前はキャプチャーに数分掛かったものが、いまは数十秒で終わってしまうんです。キャストの方々に仕事を依頼するとき、撮影時間が長いと頼みづらいですよね、やっぱり(笑)。作業の時間が短いことでデータ的なブレも少ないですし、できたモノも現場で見せられるので、ほとんどの方は喜んで帰っていただけました。寺島さんなんかは、「これがあったら、俺はもういらないね」なんて冗談で言ってしまうくらいで(笑)。実際にテレビや映画で見たことのない組み合わせになりましたね。このキャストが発表されたときに、タレントさんの名前を見た人が「これはいったい何なんだ?」と思うようなキャスティングにしたかったんです。読めちゃうのは僕の中であまり好きじゃないんですよ。今回はそういう意味でも、いいキャスティングができて、非常に満足していますね。メディアの究極のエンターテインメントは、ゲームにあるということを、本作で証明したいですね。
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――ナイトスポットについてですが、遊郭とキャバクラでもっとも大きな違いは何ですか?
名越 女の子を頭を使って口説く、という流れは同じですね。お座敷遊びというものがあって。それがうまいと当時は粋と言われた。扇子を投げる遊びとか。そういう、ゲーム的にいうならばミニゲーム的なものも盛り込んでいます。でも、いちばん大きいのは、プレイステーション3の性能によって女の子たちが格段にかわいくなったことだったりするんですけれどね(笑)。さらに、遊廓には登場しませんが、別のミニゲームには、皆さんがあっと驚く方が登場しますので、楽しみにしていてください。詳細は続報で(笑)。
――(笑)。ミニゲームの種類も豊富ですよね。
名越 博打関係のミニゲームでは、チンチロリンのように、江戸時代にやっていておかしくないものを入れるようにしました。流鏑馬(やぶさめ)も何種類か入れていますし。個人的に入れてほしいと言ったのは、あるものを育てるというミニゲームです。まだ詳細は言えませんが、従来作にはない楽しさがあり、いい味が出ていると思います。
――シリーズでは、実名店が登場したり、実名の商品が買えたりしましたが?
名越 収集する楽しみ、お店に行く楽しみはもちろんあります。いままでの作品から目減りしている部分はないと思います。
――桐生のほかにも、遥や真島などが登場しますが、これはシリーズのファンに向けての要素でしょうか?
名越 そうですね。もちろん、過去作品を知らなくても楽しめるようにはしてあります。『見参』のみでキャラが立っている人ももちろんたくさんいますし。ですが、シリーズのファンの方の期待もありますから、真島や遥といったキャラクターはなるべく登場させたかったんです。真島の目が両方あったりとか、シリーズとは逆の設定を入れて興味をひく設定にしてみたり、逆に遥の謎めいた部分など引き継ぐべきところは引き継いで、シリーズで培ったキャラクター性を活かしつつ、登場させるよう考えましたね。『龍が如く』と『2』をやってきて、ひとり歩きできるようになりました。物語がハマるとすごく生き生きするキャラクターたちですね。逆に、キャラに物語がダメ出しされることもあります。キャラクターと自分たちが双方向の意識で物語を作っている感じがして、楽しかったし、うれしかったです。
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――シリーズを通して、そのドラマ性が高い評価を得ていますが、今回はよりスケールアップしているのでしょうか?
名越 『龍が如く』には”生きることは逃げないこと”というキャッチコピーがありましたが、『2』も同じ内容でした。最近のニュースを見ていると、とてつもなさ過ぎてリアリティーがない事件が多いですよ。「日本ってこんな国だっけ?」と思うようなことが多い。でも、本来の日本人というのは、もっと勢いもあったし「心のモラルが高かったんじゃないか?」って、個人的には感じているんです。時代劇を作っていて改めて発見できたのは、剣で斬り合いをする野蛮さの中にも、剣の道に対しては真摯に挑むという部分ですね。魂だけは美しい部分がある、と。そんな部分を表面だけでなくて、リアルにドラマにしていくことで、現代に生きる人たちへのメッセージにできるんじゃないかと思ったんです。このメッセージを意識して、会話のやり取りの中に入れ込んでいきました。昔、西洋人が日本に来たときに、「法律が稚拙なのに、なぜこんなに犯罪が起きないのか?」と疑問に思ったというエピソードがあったらしいのですが、僕は精神的なモラルが高かった結果なんじゃないかな、と思うんです。剣で斬り合うという野蛮で稚拙な部分だけじゃなくて、そんな日本人の清廉さをゲームの中でも表現しようと。今回のコンセプトの一部分をひと言で言うなら、「人間は背負った宿命をまっとうすることが正しいんじゃないだろうか?」ということ。夢は宿命を背負いつつ、つかんでいくものだ、と。背負ったものに潰される人生だってあるけれど、それは格好悪いものではないと思う。宿命や運命といった悩みから逃げずにがんばっている人って、僕は格好いいと思う。そういう人はいま減っている気もするけれど。ですから今回は、宿命に抗って前に進んでいく人間の生き様を楽しんでほしいですね。
――それは一馬之介と武蔵の両方で感じられる命題でしょうか?
名越 ふたりはもちろん、真島だったり、そのほかのキャラクターからも得られるものが今回は多いと思います。ふたりの視点から世界を見ることで見えてくるものもありますね。
――最後に期待しているユーザーに対して、メッセージをお願いします。
名越 今回は時代劇ですが、『龍が如く』というシリーズを継承している以上は、単なる時代劇で終わらせるつもりはありません。伝えたかったドラマのメッセージと、桐生一馬というキャラクターのポテンシャルを違う角度から発揮させたいという2点を満たすために時代劇という形を取っただけです。ただ、ゲームのおもしろさと、メッセージ性を含んだ大人向けのドラマの完成度を同時に楽しむというスタイルは変わらない。あえて言うと、シリーズの中でもっとも気合の入っている作品と言っても過言ではないので、自信を持ってオススメします。現代劇にはない興奮が味わえると思いますので、ぜひご期待ください。
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