HOME> インタビュー> 『忌火起草』の恐怖について、中村光一ゼネラルプロデューサーが語り尽くす!
●すべては、恐怖を表現するために
文章と音とで物語を”体感”するサウンドノベル。その最新作としてセガとチュンソフトの手で開発が進められているのが、プレイステーション3用ソフト『忌火起草』だ。同タイトルは、プラットフォームをプレイステーション3にしたことで、これまでのサウンドノベルを遙かに上回る映像や音の表現、そして何よりサウンドノベルの原点である”恐怖”を色濃く演出可能となった。
そんな『忌火起草』のサウンドノベルとしての進化について、週刊ファミ通2007年8月17日号(2007年8月3日発売)では、ゼネラルプロデューサーを務める中村光一氏にインタビューを敢行。その模様は、映像インタビューという形で、ゲーム中の映像とともにファミ通.comでも掲載した。しかし、そこでは語られなかった内容もあるので、今回その全容をファミ通.comにて公開するぞ!
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『忌火起草』 |
株式会社チュンソフト代表取締役社長。サウンドノベルを生み出したクリエーターであり、『不思議のダンジョン』や『風来のシレン』などを代表するダンジョン探索型RPGの伝導者でもある。 |
――『忌火起草』は『弟切草』の続編的な作品になるのでしょうか?
中村光一(以下、中村) 続編ということではないですね。完全新規のお話になっています。
――”草”シリーズみたいな感じで、捉えられているのかな、と思ったのですけれども。
中村 たまたまですね(笑)。
――『忌火起草』の対応ハードをプレイステーション3にした理由というのは?
中村 サウンドノベルシリーズは映像とサウンドが重要です。そういった意味で、プレイステーション3のハイビジョンの美しい映像を使って、新しい恐怖の映像というのを作りたかった。また、本格的な5.1chへの対応もやりやすいという点ですね。このふたつの要素を含めて非常に映画に近いというか、映画を越えるものを作れるのではないかということで、プレイステーション3を選びました。
――映像もまた、すごく進化しましたよね。この映像表現に至った流れというのは?
中村 実写をベースに加工していくというのは、『かまいたちの夜』シリーズなどのタイトルでやってきていますので、チュンソフト自身がある程度実写を使い慣れていると言いますか(笑)。やはり人間の怖さを表現するには、人間をベースとした映像にする。そのほうが”怖さ”を表現しやすいという部分がありますね。
――ちなみにテレビのハイビジョン化が進んできていますが、ハイビジョンだからこその苦労というのはあるんでしょうか?
中村 そうですねぇ……、どうしても細かく表示されてしまいますから、あまり誤魔化しは効かないですよね。実際の作業において扱う容量などが大きいですから、制作の工程が増えたりということはあります。ただそれ以上に、できあがったときの美しさといった部分は、従来の比ではないですから。そういう点で言うと、作り手としてはハイビジョンのほうがおもしろいですよ。たいへんですけど(笑)。
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――映像もそうですけれど、音の演出もこだわっていらっしゃるな、と感じました。5.1chへの対応もやはり演出力を高めるために?
中村 音が後ろから聞こえてくるといったことは、ホラーでは必須という感じですからね(笑)。プラス、サウンドノベルですから、臨場感のある音を作りたいということですね。
――”音”についてもうひとつお伺いします。新たにボイスシステムが搭載されましたが、これはどのようなきっかけで生まれたアイデアなんでしょうか?
中村 ゲームを構成する素材がある程度出てきたときに、試しに素材を組んでテスト版を作ってみたんです。でも映像がきれいになってリアルになった分、何かちょっと物足りない、と感じたんですね。それからいろいろと考えまして、やはり生の声が聞こえてくるほうが、怖さという部分でも、実際にプレイをスムーズにできるという部分でもいいのかな、という結論に達しました。そうは言っても実際に声を当てていくと、いろんな問題点が出てきたんですけれども、試行錯誤をくり返して、いい状態に仕上げられましたね。
――ボイスシステムの制作に入ってみて、苦労した点というのは?
中村 いちばん最初は単純に、セリフも表示された状態で、セリフの部分に音を乗せていたんです。ただ、それだけだと読むほうが明らかに早いものですから、セリフのほうが邪魔になるんですね。せっかく臨場感を出すために声を入れているのに。そこで今度は完全にセリフのテキストを取って、そこに音声を入れてみる、という実験をしました。
――いろいろと実験されているんですね。
中村 やってみてわかったんですが、従来どおりにやったのでは問題点がいろいろ出てきてしまうんですよ。たとえばセリフによっては、投げかける側と受ける側のセリフがワンセットになっていないと、会話が成立しないものがあるんです。従来どおりの作りかたをしていると、投げかけに対しての受けのセリフが、間合いがありすぎておかしくなってしまったりという部分ができてしまったりするので、そういった部分も試行錯誤しました。あとは、当初はボイスシステムを入れる予定はなかったので、シナリオ自体が、テキストを読むことを前提に書かれているわけです。そうすると、そのまま文章をセリフでしゃべった場合に、「そんなしゃべりかたしないよね」という部分が出てきてしまうんですよ。ですから、ボイスシステムを入れるという方針に変わってからは、より通常のしゃべりかたになるようにテキストも書き直しました。間合いが開きすぎないようにセットを作ったり。そういった苦労というか、手間や時間が余計にかかっていますね。
――でも、そのおかげですごく快適に遊べるようになったと思います。新しいスタイルが確立されましたよね。
中村 いちばん最初にセリフを当てたときに、耳からの情報と目からの情報がまったく違うものでも、すんなりと理解できて、それを楽しむことができる。そこがおもしろいなと思いました。この感覚というのは、テレビのバラエティー番組などで、セリフに被ってテロップが出たり、プロモーションビデオなどでメッセージが被っているものというのはよくありますよね。それに近いのではないかと。映像+文字+音声を同時に理解して楽しんでしまえる能力がみんなにあるわけです。それをつきつめていったら、従来のサウンドノベルとはひと味違う心地よさができるんじゃないかな、と思いましたね。
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――シナリオのライターさんが複数いらっしゃいますが、ということはシナリオも複数あるということですか。
中村 そうですね。ご存知のとおり、サウンドノベルはきっかけとなるメインのシナリオがあって、そこからどんどんいろんなお話に展開していきますので、何種類か……これ以上は言えません(笑)。
――ちなみに、中村さんご自身は”恐怖”に対して、どのような考えをお持ちなのでしょうか?
中村 ホラーにはいろいろなジャンルがあるんですけれど、私自身はどちらかと言うとサイコ系の、人間が気が触れてしまう怖さのほうが、怖いなと思っています。「ちょっとありそうだよね」というもののほうが私は怖いですね。だから作品自体も少しそういう傾向にあるかなと思っています。
――最後に『忌火起草』に注目している読者の皆さんにひと言メッセージをいただければ。
中村 プレイステーション3で体験する、いままでにない新たな恐怖というものを作れるかと思いますので、ぜひプレイしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
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※本インタビューは、週刊ファミ通8月17日号に掲載されたインタビューを再構成したものです。
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