「プレイステーション4」は感動さえ覚えるハード

 この奇妙なまでの心地よさはどこから来るのだろう。

 

 「プレイステーション4」が、とにかく気持ちがいい。家庭用ゲーム機に触れているだけで、こんなに気持ちのよい物だっただろうかと、驚きを感じている。ハードを1週間近く触り続けていて、自分が持っていた常識を完全に覆された。今まで、デモを何度も見てきたが、自宅に置いて使い始めると、どんどん印象が変わっていく。

 

 PS4は、本気ですごいハードだ。

 

 ここまでの製品になるとは、昨年2月のニューヨークでのお披露目のプレスカンファレンスで最初に発表されたときには、全く予測できなかった。曖昧な点が多く、決定的な驚きはなかった。北米のゲームメディアの知人が、「失望した」と述べていたのを思い出すが、それがまるで嘘のようだ。

 

 PS4は、発売を開始したばかりなのに、潜在的な可能性を明瞭に垣間見せてくれる。

 

■これって本当にソニー製品?

 

 PS4は、ユーザーインターフェイスの完成度がすばらしい。シンプルでわかりやすく、きびきびと動く。他のゲームへの切り替えや、中継動画を見られる「Live from PlayStation」の表示も一瞬だ。過去に発売されたあらゆる家庭用ゲーム機で、最高の物ではないだろうか。ゲーム機以外でも使える普遍性を感じる。

 

 コントローラーのDualShock4の完成度も、本当にすばらしい。握りやすさが半端ではなく、重さも心地よい。それぞれのボタンも使いやすく、「Share」ボタンもちょうどいい位置にある。

 

 全体的に、かゆいところに手が届くように、様々な工夫がこらされていることが、使えば使うほどわかってくる。

 

 自分の過去の体験から、あえて例えるなら、08年に「iPhone3G」を初めて手に入れたときの感触に近い。言い過ぎかもしれないが、デザインした人々の「愛情」が込められた製品であることがわかり、暖かささえ伝わってくる。

 

 失礼ながら、「これって、本当にソニー製品?」とさえ思う。

 

 もちろん、対応したゲームは、まだまだ全然足りないし、それなりに真価を見せるタイトルが揃うまでには、時間がかかるだろう。

 

 ただ、「iPhone3G」が登場したときのように、今後の未来を楽しみにさせるエネルギーがある。ハードウェアのOSのアップデートだけで、「次は、どんな進化を見せてくれるのだろうか」と楽しみに感じてしまう。

 

■PS4がヒットした理由を考えてみる

 

 昨年の欧米のクリスマス商戦で、PS4はマイクロソフトのXboxOneよりもヒットした。PS4は420万台だったのに対し、Xbox Oneは300万台だった。1月に入ると、欧米のメディアではPS4がXbox Oneに勝ったというニュースが駆け巡った。その差は、現在も広がり続けており、この新ゲーム機世代での争いを有利さは決定的になりつつある。

 

 ヒットの要因がいくつもあげられるのだが、ビジネス面から思いつく限りのことを上げてみる。


・06年にプレイステーション3やXbox360が発売されてから、すでに7~8年が経過し、新ハードを求めるコアゲーマーが存在していた。

 

・任天堂のWii Uがタイトル不足で苦戦し、Xbox事業の責任者だったドン・マトリック氏が、7月にフェイスブック向けのゲーム会社大手の米ジンガに移ったために、マイクロソフトの戦略に混乱があった。それらの理由から、地滑り的に有利な位置に立てた。

 

・アップルのiPadの新製品といった、競合するゲーム機以外の魅力的なハードの発売がなかったこと。そのために、ゲーム機の販売競争により、欧米の一般メディアも含め注目度が高まり報道が多かった。

 

・販売価格を400ドルに設定し、Xbox 0neの500ドルよりも安く設定したことで、値段に魅力を感じたユーザーが多く出た。

 

・SCEのプロモーション戦略が効果的に機能した。2月のプレスカンファレンス後、6月の米ロサンゼルスのE3では対応するAAAタイトルを発表し、8月のドイツのGamescomではインディゲームに焦点を合わせた発表、9月の東京ゲームショウでは予約が好調であることを示すなどで、新しいニュースが途切れなかった。

 

・12月に入って、Xbox Oneが供給不足に陥ったのに対して、PS4は最後まで供給の途切れを最小限に抑えることが出来たため、販売の機会損失が生まれることがなかった。日本発売を2月にした決定は、供給面での成功につながった。

 

・SCEが、従来の家庭用ゲーム会社だけでなく、多くのインディゲーム会社や、アイテム課金方式のデベロッパーに対しても門戸を開く姿勢を鮮明にし続けたことで、ゲーム会社が支持する意見表明が出た。それがユーザーの期待感を高めた。


 そして、さらに重要な理由があることが、私自身の自宅のリビングに置いてみてよくわかった。そもそも、「PS4というハード自身がとても魅力的な製品だった」ということだ。友人に思わずアピールしたくなるような力を持っており、それが口コミとして広がっていったものと思われる。

 

■家庭用ゲーム機ならではの体験を再認識

 

 PS3から移植されたダウンロードタイトルの「Flowery(フラワリー)」(米thatsgamescompany、840円)を遊んだ。オリジナルのゲームは、09年に発売され、インディゲームの傑作として高く評価されたゲームだ。花びらとなって、空を舞う。

 

 DualShock4でより改善されたジャイロセンサーに反応する動きの気持ちよさを通じて、PS3版より、移植版の方が、評価が高いという理由も納得させられた。画面いっぱいに飛び回ることが、とにかく気持ちいいのだ。

 

 このゲームを通じて、家庭用ゲーム機でないとできない体験があることを再認識させられた。いきなり、天井をぶち抜かれた気分がしている。

 

 今後、本当に楽しみなのが、新作タイトルも当然だが、PS3のゲームが移植されてくることだ。PS4に移植するだけで、体験が変わるゲームがたくさんあるように思える。

 


 PS4は買いか?

 

 もちろん、新しい世界と、今後の進化を体験したいなら、今すぐ絶対に買いだ。

 

 待っている必要は全然ないと、誰に対しても勧めたくなる。

2014年2月27日 20:53