プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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そもそも“Wi-Fi”って何だ?(2)

 前回は、Wi-Fiが一体どのようなものかという、基本的な情報について説明した。今回は、それが携帯電話と結びつき、現在のようにキャリア各社がWi-Fiスポットを多数設置するに至った経緯について説明しよう。

 

 Wi-Fiが携帯電話と結びつくには、Wi-Fiの利用目的の変化が挙げられるだろう。Wi-Fiはもともと、LANを無線化し、ケーブルレスで他の人のパソコンなどとデータ交換ができるようにするために作られた規格だ。だがインターネットの利用が広まったことから、Wi-Fiは“無線でインターネットに接続しやすくする手段”としても認識されるようになった。事実、最近の固定ブロードバンド回線に接続するルーターなどの機器は、Wi-Fiを標準搭載し、パソコンなどを無線でインターネット接続できるようにすることを売りとしたものが増えている。

 

 この方向性を突き詰めたのが、ホテルやカフェなど特定の場所で無線LANを経由し、パソコンなどでインターネットに接続できるサービス、いわゆる“公衆無線LAN”である。Wi-Fiは電波の出力が弱く利用範囲が限定されている上、固定のLANから派生しているため移動中の利用はあまり重視されていない。だがカフェなどの落ち着いた場所でパソコンを利用することが前提であれば、携帯電話より設置コストがはるかに安いWi-Fiを用いて、インターネット接続サービスを提供できる。こうしたことから、外出先でノートパソコンを利用するユーザーのため、特定の場所でWi-Fi経由でのインターネットに接続できるサービスが、提供されるようになったのだ。

 

 以前の公衆無線LANは、外出先でパソコンを利用する人達には知られていたものの、携帯電話によるインターネット利用が普及している日本ではあまり大きな存在には育たなかった。一方、携帯電話よりパソコンでのインターネット利用が広く普及している国(米国など)では、公衆無線LANサービスを提供している店舗や場所が日本以上に多く、より頻繁に利用されている。なお余談になるが、海外では、公衆無線LANのことを“HOTSPOT”(ホットスポット)と呼ぶことが多い。だが日本では「HOTSPOT」の名称で公衆無線LANサービスを提供しているNTTコミュニケーションズが、この名称を商標登録したことからあまり用いられなくなり、現在は“公衆無線LAN”や“Wi-Fiスポット”などと呼ばれることが多いようだ。

 

 利用できるエリアは限られるが、外出先でもWi-Fiで高速にインターネット接続できる公衆無線LAN。それが、場所を選ばずどこでもインターネット接続できる携帯電話と結びついたのには、2つの要因がある。

 

 1つは、スマートフォンの広まりだ。米国などパソコンが主流の地域から生まれ、かつパソコンから派生したスマートフォンは、その多くが外出先でも高速でインターネットが利用できるよう、標準でWi-Fiを搭載している。しかも多くの国では、携帯電話のインフラが日本ほど充実しておらず、携帯電話回線によるインターネット接続は不便を強いられることが多い。そのため、移動中は携帯電話回線を利用し、カフェなどでは携帯電話回線より高速なWi-Fiが利用できる、公衆無線LANを利用するというスタイルが広まったといえる。

 

 だが日本で急速に公衆無線LANが増え、Wi-Fiが大きな注目を集めるようになったのには、別の要因がある。それはソフトバンクモバイルが2009年10月に発表した「ケータイWi-Fi」の取り組みにあるといえよう。

 

 2009年10月頃と言えば、iPhoneの人気がようやく高まり始めた頃であり、日本でスマートフォンの普及は本格化していなかった。だがこの頃はまだウィルコムが経営破たんしておらず、現在ウィルコムの資産を元として、「Softbank 4G」などAXGP方式による高速モバイル通信サービスを提供する、Wireless City Plannning社をソフトバンクグループはまだ所有していなかった。

 

 それゆえ、モバイルWiMAXによる高速通信サービスを提供するUQコミュニケーションズの大株主であるKDDI、LTEへの先行投資を進めるNTTドコモと比べ、ソフトバンクモバイルは高速モバイル通信の分野で後れをとっていたのだ。こうした不利な状況を挽回するべく同社はWi-Fiに目をつけ、スマートフォンだけでなく携帯電話にもWi-Fiを搭載し、さらに公衆無線LANが利用可能な店舗や地域そのものを増やすことで、高速通信を実現する「ケータイWi-Fi」サービスの提供を開始したのである。

 

 その後iPhone、さらにAndroidスマートフォンが急速に人気を高めたことで、スマートフォンからの通信トラフィックが急増して携帯電話回線が混雑しやすくなった。そこで携帯電話回線のトラフィックを、一部Wi-Fiに逃がす“オフロード”という施策が注目を集めるようになったことから、他のキャリア各社が追随して公衆無線LANの提供に力を入れ、結果として携帯電話とWi-Fiの結びつきが強くなったといえる。

 

 次回は、急増した公衆無線LANが抱える問題点について触れてみたい。


 

▲携帯電話からの公衆無線LAN利用に力を入れるソフトバンクモバイルは、
既に24万以上の箇所にWi-Fiスポットを設置

2012年6月20日 16:20