プロフィール
佐野正弘

東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では携帯電話業界事情から、スマートフォン、モバイルマーケティング、若者のケータイ文化に至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。著書にXperia入門ガイド(翔泳社)、SEO対策のウソ・ホント(毎日コミュニケーションズ)など。

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2011年、携帯電話・モバイル業界に何が起こったか?

 2011年も残すところあと4日と、間もなく終わりを告げようとしている。そこで今回は今年の締めくくりとして、執筆した記事と共に携帯電話・モバイル業界に起きた出来事を振り返り、来年起きるであろう変化についても予測してみたいと思う。

 今年大きな注目を集めたのは、なんといってもスマートフォンであろう。中でも今年は、既に高い人気を博しているiPhoneだけでなく、Androidを搭載したスマートフォンが本格的にブレイクした年だったといえよう。垂直統合で独自の世界観を貫くiPhoneに対し、複数のメーカーから幅広いバリエーションの端末が提供され、ワンセグ・おサイフケータイなど日本向けの機能・サービスにも柔軟に対応できるなど、Androidならではの特性を生かすことでその勢力を伸ばすこととなった。

 スマートフォン人気が急速に加速する一方、スマートフォンに向けたマルウェアや問題をもたらすアプリケーションの出現、スマートフォン利用者の急増による回線の混雑、携帯電話と比べ操作の分かりにくさからくるユーザーの混乱など、さまざまな問題も浮かび上がってきている。キャリア各社がスマートフォンの普及を本格化させようとしている今後は、従来のようにスマートフォンの“自由度”や性能の高さをアピールするだけでなく、より快適に、分かりやすく、かつ安心して使えるようにする取り組みが求められるといえよう。

 モバイルとクラウドの理想と現実(1)
セキュリティリスクをもたらすスマートフォンアプリ(1)

 ソフト面で注目を集めたのがソーシャルゲームだ。MobageやGREEなど、携帯電話を中心に展開するソーシャルゲーム・プラットフォームの人気が急速に高まり、現在ではゲームメーカーの収益を左右するほど大きな存在へと変化した。さらにGREEは東京ゲームショウに大規模ブースを出展、Mobageを運営するディー・エヌ・エーは横浜ベイスターズを買収するなどして大きな話題を集めたほか、両社はさらなる市場拡大のため本格的な海外進出も進めている。

 もう一つ注目を集めたのが“アプリ”だ。携帯電話と比べ自由度が高いことから注目を集めたスマートフォンアプリだが、今年はエンタメ系アプリが急増し、幅広い層へその利用が広がるきっかけとなった。無料アプリが氾濫するなどビジネス面では依然として課題が多いが、“アプリ内課金”によって先に上げたソーシャルゲームが高い売上を見せるようになるなど、問題解決の道筋も見えつつある。来年は盛況を見せるソーシャルゲームなどの影響を受け、アプリビジネスが離陸できるかどうかという点にも、注目が集まる所だ。

 盛り上がっているけど盛り上がっていない、スマートフォンの“アプリ”

スマートフォンの広がりで笑う企業、泣く企業(2)

 来年の動向を占う上ではもう1つ、インフラ面にも注目しておきたい。既にスタートしているNTTドコモの「Xi」やUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」に加え、来年はソフトバンクモバイルが2月にAXGP方式を採用した「Softbank 4G」を開始するほか、イー・アクセスやKDDIもLTE方式によるサービスの提供開始を予定するなど、キャリア各社の高速モバイルブロードバンドサービスが出そろうと考えられるからだ。LTEやWiMAXを搭載したスマートフォン、タブレットデバイスも今年以上に増加すると見られ、インフラ、端末、サービスを含めた各社の総力戦が予想される。

 また、来年7月の800MHz帯再編終了と同時に予定されている900MHz帯の割り当ても、注目すべきポイントだ。この帯域は、特にソフトバンクモバイルとイー・アクセスが獲得に熱心な姿勢を見せているが、どのキャリアに割り当てがなされるかによって、各社の戦略が大きく変化してくる可能性があるだろう。

 高速通信を実現する「LTE」と「モバイルWiMAX」、一体何が違うのか?(1)
 700/900MHz参入希望調査から見える、キャリア各社の目的とは? (1)


 そして今年、携帯電話だけでなく、日本全体に大きな影響をもたらした出来事といえば「東日本大震災」であることに間違いはない。東北地方に甚大な被害をもたらした震災に加え、直後に発生した福島第1原子力発電所の事故は、携帯電話のインフラにも大きな被害をもたらし、復旧に時間を要することとなった。携帯電話は災害時の貴重なライフラインの1つにもなっていることから、災害に強いインフラの整備と、素早く復旧できる体制、そして誰でも簡単に、緊急時の連絡ができる環境の整備などが、今後強く求められるだろう。

 話は本筋から離れるが、筆者は東日本大震災の被災地の1つであり、今なお原発事故の影響に苦しむ福島県の出身だ。震災から既に数カ月を経過し、震災に関する報道も少なくなりつつある昨今だが、福島をはじめ被災地の多くでは、今なお震災の影響に苦しんでいる所が少なくない。復旧・復興に向けた活動を継続していくためにも、引き続き多くの方々に、募金をはじめとした支援活動に協力願えればと思う。

 震災復興支援のため、ケータイで募金をしよう!
 改めて災害時の携帯電話活用法を考える(1)

 昨年末からスタートした本連載も、読者の方々や多くの人達の支援もあり、無事1年を迎えることができた。今年も激しい動きを見せた携帯電話・モバイル業界だが、毎年大きな変化のある世界だけあって、今後も想像を超えたさまざまな動きを見せることが予測される。本連載では来年も引き続き、変化の激しい携帯電話・モバイル業界で起こっている出来事について、詳しく解説していきたいと思うので、引き続きご愛読願えれば幸いだ。

2011年12月28日 18:44