桜井政博
1970年8月3日生まれ。有限会社ソラ代表。独立したゲームディレクター。代表作は『星のカービィ』シリーズ、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。最新作はニンテンドー3DSの『新・光神話パルテナの鏡』。さまざまなジャンルのゲームを日々研究しつつ、ユーザーに新たな楽しさをもたらすゲーム開発に注力している。

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05 教えてくれるな

週刊ファミ通2004年12月24日発売号掲載
VOL.86

収録巻はこちら!

桜井政博のゲームについて思うこと2


 

05 教えてくれるな

 

 わたしがゲーム業界に入り、ひとつのソフトを完成させたあと。「こういうところをちゃんとしているゲームは、いまどきなかなかないんだよねぇ」と宮本茂さんにほめられたことがあります。
 シリーズ最初の『星のカービィ』は、ゲームボーイ用ソフト。ゲームを始めるとすぐ、カービィが"飛行"しないと越えられない高いカベが出てきます。飛行とは、カービィが風船のようにふくらんで空を飛ぶこと。これでカベを越えるわけです。このカベは、飛行の操作がわからないとき、狭い空間で少し迷えば、カベを超えるための工夫をするだろう、と考えて配置したもの。狭い空間で行く手を妨げられることで、自然なチュートリアル、つまり操作説明をふまえていたのです。
 カービィが最初のカベを越えたあとも、扉、回復アイテム、ジャンプで越えられる程度の穴、ワープスター、中ボス……と、順序立ててゲームシステムがわかるように考慮したマップ配置が続きます。もちろん、遊び手の学習と理解を 念頭に置いたつもりです。
 そんな意図を込めた配置を見抜かれて、宮本さんにほめられたのでした。わたしが言うのもおこがましいけれど、そこをちゃんと汲み取る宮本さんはサスガなのです。そのハナシがあったのは『星のカービィ』が完成してからしばらく経ったあとでしたが、開発中、あるいは開発終了後にもその部分を指摘してきた人は、宮本さんのほかにはいませんでした。
 それが'92年ですか。歳はとるもので……。
 ゲームの操作説明は、ゲームの複雑化、大容量化にともない、めざましい進歩を遂げました。チュートリアルモードがあり、ゲームを実際に動かしながらにして操作方法をガイドしてくれます。場合によってはそれが凝った訓練仕立てになっていたりして。親切丁寧。
 だけど、わたしはわざわざ用意してあるチュートリアルがあんまり好きではありません。あれこれと指示を受けていると、授業かテストみたいで。あとで困るのはイヤなので、ひととおりやらざるを得ませんしね。かと言って説明書を読むかと言えば、クリアーまで目をとおさないことも多いわたし。ゲームでは遊びたいが、授業は受けたくないっていうのはわたしの単なるワガママですかね? 自然な考えだと思いたいですけれども。
 ゲームをするなら、ルールを理解しなければハナシが始まらない。それは事実だけど、もっとおおらかな収めかたがないものかなぁとつねづね思います。一例として"配置"を挙げましたが、それ以外にも、いろいろな方法があるハズ。操作をよりシンプルにまとめよう! とか、ちょっとぐらい操作方法を知らなくても破綻がないゲームデザインにしよう! とか。
 プレイヤーにとっては、ゲームの操作がわかった瞬間というのも、楽しいもののハズなんですよ!! 操作に慣れていく、習熟する過程。思ったことがズバッとできるようになる瞬間、キモチイイ。ゲームにしかない快感。パズルが解けたような楽しさや快感は、操作ひとつにしても存在しうるわけです。
 これがたとえば、見ている友だちから「こうしろ」、「ああしろ」と横ヤリを入れられるのは、萎えることもありますよね。操作のネタバレとでも言うべきか。
 苦痛と快感はなぜかいつも紙一重。ゲームって不思議ですなぁ。

 

※転載にあたり、コラム本文に付随していた写真や解説、スーパーヘルプ、ふり返って思うことは割愛しております。あらかじめご了承ください。

 

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2012年3月30日 12:03