酒缶さん
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【鈴井匡伸氏】10.自分のフィールドで証明したい

 今回のゲスト:鈴井匡伸氏 

インディーズゼロ代表取締役。制作に関わったタイトルは『千年家族』『しゃべる!DSお料理ナビ』『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』など多数。最新作はニンテンドー3DSの『タッチ!ダブルペンスポーツ』。


酒缶 仕事で役立ったゲームって何かありました?

 

鈴井 全部です。『有野の挑戦状』は、ゲーム全部がまんま役に立ちましたし、ファミ通さんとか雑誌を全部読んだことが仕事に生きているんで……生きているというより活かしている、子どもの頃に投資したことを全部活かしていると思うので、メチャクチャ生きていますよね。そういう意味でもっと活かさなければいけないのは、ガンプラとかチョロQとか改造したラジコンとかも大好きだったので、僕が『ダンボール戦機』(※1)を作れればよかったと思うし、本当に言うと「何で日野さん(※2)が実現しちゃったの」と思うし、今の僕やインディーズゼロにあそこまでのパワーとか表現力がないというのもあるんですけど、悔しいんです。『カードヒーロー』と同じくらい悔しいですよね。ああいうことをやられるとね。あぁあ、僕もやりたかったなぁ。

 

 

(※1) 『ダンボール戦機』 2011年にレベルファイブがプレイステーション・ポータブル向けに発売したRPG。公式サイト http://www.danball-senki.jp/

(※2) 日野さん レベルファイブの代表取締役社長、日野晃博氏のこと。

 

酒缶 まだまだやるチャンスはありますから。

 

鈴井 ありますよね。いつかきっとね。自分が楽しかったことを、形を変えて皆にも楽しんでもらいたいですし。何が役立つって難しいですよね。うちの会社、作っているゲームがバラバラじゃないですか? ジャンルも毎回違うし、エンジンとかも毎回共用してないので、手間かかっているんですけど、毎回考える機会があって、企画の出だしをしっかりやろうというのがあるので、毎回、始まる時にしっかり研究をするんですよ。その業界のそれまでの歴史とかジャンルの歴史を頭から追って、どう分岐していったか、系譜まで理解するので、お世話になったゲームはたくさんあるし、全部にお世話になっているとも言えます。業界だけじゃなく玩具とかも。具体的にどれとはおこがましくて言えないくらい。ただ、一つ言えるのは、『お料理ナビ』はファミコンの『美味しんぼ』(※3)が参考になったわけではないです(笑)。

 

(※3) ファミコンの『美味しんぼ』 正式名称は『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』。1989年に新正工業がファミリーコンピュータ向けに発売したアドベンチャーゲーム。

 

酒缶 それはわかります。

 

鈴井 ゲーム業界は、その中で更に生き残ったジャンルが生きていくということもあるし、お互い様なんですよね。僕だって『有野の挑戦状』を何で作ったかというと、みんなの歴史で作ったんだし。それをパクッたと言われたら、何も言えないし。CEDECで講演(※4)をしたことがあるんですけど、講演後に遠藤さん(※5)がわざわざいらして下さって、「ありがとう、僕のゲームをオマージュしてくれて」と言ってくださったんです。かっこいいなこの人は、これくらい余裕の持てる男になりたいな、と思いました。深いなぁ。

 

(※4) CEDECで講演 CEDECとはCESAディベロッパーズカンファレンスのこと。CEDEC2009で鈴井氏は「ノスタルジックなゲームの現代的パッケージング手法 ?『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』の開発事例?」という講演を行っている。

(※5) 遠藤さん ゲームスタジオ代表取締役、モバイル&ゲームスタジオ取締役会長の遠藤雅伸氏のこと。

 

酒缶 そろそろ佳境に入りましょうか。鈴井さんは今後、どのようにゲームと付き合っていきますか?

 

鈴井 どういう意味合いに捕らえたらいいですか? プライベートか仕事か……。

 

酒缶 全部を含めて、ですね。

 

鈴井 好きでありたいし、遊びたいし、実際に遊んでいるし、好きだし。メチャクチャ深いゲームを死ぬほどプレイするのは無理だと思うんですけど、僕、ミーハーなんで、最近だと『ポケモン ブラック・ホワイト』や『ドラクエIX』など、一通りメジャーなものをプレイしています。『ゼルダ』も毎回買うんですけど、難しくて解けないんですよ。ちゃんと解けたのって、『神々のトライフォース』(※6)と『風のタクト』(※7)だけですね。ゲームはこれからもカジュアルにつまみ食いして、今まで通り薄く広く遊んでいきたいと思いますし、何よりもゲームが好きだということを意識していきたい。そして、火が消えないように、薪をくべて、ゲームを遊んで楽しいという気持ちを消さないように、そういう感動を忘れてゲーム作りをするのは嫌なので、自分の中に暖かい火として残したままこれからも付き合っていきたいと思っています。

 

(※6) 『神々のトライフォース』 1991年に任天堂がスーパーファミコン向けに発売したアクションアドベンチャー。バーチャルコンソール http://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_zel_sfc/

(※7) 『風のタクト』 正式名称は『ゼルダの伝説 風のタクト』。2002年に任天堂がゲームキューブ向けに発売したアクションアドベンチャー。公式サイト http://www.nintendo.co.jp/ngc/gzlj/

 

酒缶 ゲーム業界ってゲームが好きで入ってきた割にはみんなゲームをやらなくなりますよね。

 

鈴井 会社のみんなにも言っているんですけど、斜に構えた感じで「最近ゲームをやってないんだ」と言いながらゲームを作るのは絶対許さないからなって。「プライベートではずっとゲームやってないですから」とか言うやつはゲームを作るなよって。どこが楽しかったか忘れちゃっているでしょ? 気持ちがない人に気持ちのこもったゲームは作れないじゃないですか。

 

酒缶 最新のゲーム機用のゲームを作っているのに、最後に買ったゲーム機がプレステ2とか言われるとガッカリしますよね。

 

鈴井 「ゲーム業界を目指しています」っていう新卒の学生が、ゲームで遊ばないで、そのゲームの映像をニコニコ動画で見ているとかね(笑)。僕はゲームが好きだし、遊んでいきたいし、ミーハーなのでオーソドックスでメジャーなゲームをいっぱい遊びつつ、マニアックなゲームも買っていきます。年を取ったからって遊び方を変えたくないし、同じ気持ちで少しでも遊んでいたいな、と思っています。でも、会社でやるゲームと家でやるゲームで全然温度が違うんです。家でやると面白いのに、会社でやると面白くないゲームがたくさんあるんですよ。

 

酒缶 どうしてですか?

 

鈴井 会社でやると慌てているんですね。読みとばしたり、早く進まないと遅いなと思ったり。家でやると楽しいんですよ。自分で作っているゲームも疑わしい時には、家の気持ちでやらないとダメなんですよ。同じゲームが同じゲームに見えないですから。慌てているとゲームは楽しくないです。仕事として見ようとすると、何もかもがうざく見えるんです。会社でみんなが「チュートリアルが邪魔。ない方がいいよね」とか「スキップした方がいいよね」とか言いだすんですけど、それはチェックしたいからでしょ。デバッグしたいからでしょ。一回しか見ないやつがピピピッと飛ばせちゃったら、困るじゃないですか。その辺のバランスは大事なんですけど、難しいですよ。

 

酒缶 でも、2つの目で見ることができるのはすごいですよね。

 

 

鈴井 あるとき気付いたんですよ、家でやったら面白いってことを。「なんでこのゲームは面白くないんだろう」って。会社で遊んでいて、自分のゲームでもそうだったことに気付いて、これやばいなと思って。お客さんが遊んだときの気持ちを大事にしているんだと思います。あのワクワクして買って、それ以上に面白かった気持ちを、今もお客さんに味わってもらいたいし、大事にしたいな、とそれだけです。業界の先輩に楽しませてもらったんだから、自分もご飯を食べさせてもらっているんだし、当然、作ったゲームで、子どもにも同じ気持ちになってもらって、「この業界で働きたいな」と思ってもらったり、「ゲームっていいな」と思う人が増えたら嬉しいじゃないですか。そういう人たちが業界を盛り上げてくれるように、企業としては社会に貢献しないといけないですし。

 

酒缶 業界が死んじゃいますもんね。

 

鈴井 本当にそうなんですよ。ゲームが盛り上がらないと、ゲームを取り上げてくれる雑誌さんが苦しくなっちゃうし、お店がなくなっちゃうし、寂しいです。昔は店によって商品の並べ方やアピールが違って、何か新しいことがあって、新しいことが好きだったのに、今はどこに行っても同じじゃないですか。僕らが子どもの頃は恵まれていたのかな。個人商店がどんどんなくなっているのが、残念で、今からでも助けられるところがあれば、と思っています。そういう人が街でゲームを盛り上げて、ゲームを普段から目にできるようにしてくれているから、ゲームが自然なものと思ってもらえて、僕らがゲームの開発をできるという循環があるので、なくすわけにはいかないです。

 

酒缶 では、最後の質問ですけど、鈴井さんにとってゲームって何ですか?

 

鈴井 あなたにとってゲームって何ですか、って言われたことをあえて自分の解釈で捕らえて、自分がやりたいゲームって何ですか、っていう意味では、やっぱり熱中できるもの。泣きたいわけじゃないし、感動的なストーリーが見たいわけじゃないし、それも入っていたら嬉しいんですけど、まずはゲームとして熱中できないとダメ。熱中できる時間を与えてくれるゲームに会いたい。これは別にクリエイターとしてじゃなくて、お客さん目線なんですけど。『ワンダと巨像』(※8)はものすごく感動しました。家で週末にやっていて、親父が入ってきた時に、「いいところだから、来るなーーー!」って。

 

(※8) 『ワンダと巨像』 2005年にソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンがプレイステーション2向けに発売したアクションゲーム。2011年9月にプレイステーション3でリメイク版が発売される予定。公式サイト http://www.jp.playstation.com/scej/title/wander/

 

酒缶 (大笑)

 

鈴井 「飛んでいる鳥に捕まってやっと乗れたのに、一人にしといてよ」って。こんな体験って人生で初めてしました。『ワンダと巨像』は楽しかったんですよ。一期一会だと思っていて。『風来のシレン』でも、やっとたどり着いたマウンテンの岩場を登っていて終わりかと思ったら、遺跡があって「わーー!」って大興奮して。『キングコング2』でも最後そう思ったし、「何が起きているの!?」というくらいワクワクして、しかもそれが自分の手にゆだねられているんです。やんないと終わんないのがゲームのすごいところでもあり、大変なところでもあるんですけど、そういう出会いをするとよかったなと心の底から思います。そこに原体験とかが再現されても、引き起こされるというか、僕がゲームと呼びたいのは、新しい新鮮な出会いとか、「こんなこともありなんだ」とか、「こういうのもあるんだ」というドキドキ感です。電源を入れてやってみたら、それが思った以上だったと、いい意味で裏切られるのが楽しみなので……僕もそう思われたいし。

 

酒缶 はい。

 

鈴井 『千年家族』なら「やんないのがゲームなの?」、『お料理ナビ』なら料理を作ったことがない人が、「これ、めっちゃうまいじゃん」と言ってくれたら勝ちなんですよね。ナビに言われるがまま、材料を入れていくだけなのに、本当においしく出来上がるんですよ。だからすごいよねっていうところが“ゲーム”だと思ってます。出力されたものに対してビックリする。カートリッジというものに入れてみてやってみたら、「なんじゃこりゃ」という驚きが僕にとってゲームだし、そうなりたい。モバゲーとかも友達がいて、「なんじゃこりゃ」と思ったら、はまっちゃうと思うんですよね。ブームに乗っかって。で、すごいお金を使っちゃういいお客になってしまうタイプだと思うんですけど、できれば自分のやっているフィールドの中で、証明していきたいと思っています。

 

 

酒缶 でも、そういう意味ではこのペンだって驚きですよね。『タッチ!ダブルペンスポーツ』も多くの人に触ってもらえることを期待しています。本日はありがとうございました。

 

 

                  訪 問 後 記                  

会社にファミカセが沢山あることは事前に聞いていたんですけど、まさか取材の時、会議室にあんなに並べられているとは……ありすぎです。今回の取材は午後6時に始まり、「終わったらお食事にでも」と思いつつも、鈴井さんのパワーに押されて、気が付いたら11時を回ってしまい、ダッシュで帰ってしまってすみません。次回から取材時間は2時間以内を目標に頑張ります。


                  ファミ友00002人目達成!                

 

次回の更新は、8月9日(火)の予定です。

 

2011年8月5日 14:52