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【鈴井匡伸氏】7.自由な風土

 今回のゲスト:鈴井匡伸氏 

インディーズゼロ代表取締役。制作に関わったタイトルは『千年家族』『しゃべる!DSお料理ナビ』『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』など多数。最新作はニンテンドー3DSの『タッチ!ダブルペンスポーツ』。


鈴井 当時は、パソコンやアーケードにはお兄さんというイメージがあって、ファミコンが自分でした。パソコンはインテリ系の“お兄さん”がやっていて、アーケードはヤンキー系のお兄さんがやっているイメージで、憧れの対象だったんですよ。

 

酒缶 同級生でもお兄さんがいるような家に遊びに行くと、パソコンがありましたよね。

 

鈴井 AppleII(※1)があったり、NEC系のPCがあったりして、『ザナドゥ』(※2)を見せてもらって、なんでこんなにカッコイイんだろうって。でも、『ザナドゥ』が大好きで買った『ファザナドゥ』(※3)が6時間くらいで僕でもクリアできちゃって「なんだこれは!」って。

 

(※1)  Apple II 1977年にアップルが発売したマイコン。

(※2) 『ザナドゥ』 1985年に日本ファルコムがパソコン向けに発売したアクションRPG。

(※3) 『ファザナドゥ』 1987年にハドソンがファミリーコンピュータ向けに発売したアクションRPG。バーチャルコンソール http://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_fxd/index.html

 

酒缶 「ファ」ですから……難易度を落としたんですかね。

 

鈴井 「ファ」ですからね。しかも、コロコロに載っていた「こんなすごいモンスターが出る」っていう何ヵ月か前に載ったデカキャラが最後まで出て来なかったんですよ。「おかしい、あの画面は何だったんだろう」っていまだに思っていて。どこの会社の誰が作ったか知りたいタイトルです。どんな事情があったのか教えてほしい。

 

 

酒缶 高橋名人なら教えてくれるかもしれませんね。

 

鈴井 とにかくファルコムとか憧れの的ですよ。中学、高校の頃はメッチャ就職したかったですもん。木屋さん(※4)がすごく好きで。電波新聞社の「チャレンジ!パソコンAVG&RPG」(※5)を全部読んで、パソコンのゲームに憧れていて、やっと買ってもらえたのがMSX2だったので、ティーアンドイーソフトの『ディーヴァ』(※6)はMSX版とMSX2版とファミコン版をやりましたけど、他はできませんでした。

 

(※4) 木屋さん 当時、日本ファルコムに所属していたプログラマーの木屋善夫氏のこと。

(※5) 「チャレンジ!パソコンAVG&RPG」 パソコンのアドベンチャーゲームやロールプレイングゲームのヒントや楽しみ方を紹介する書籍のシリーズ。山下章著。

(※6) 『ディーヴァ』 ティーアンドイーソフトがパソコンやファミリーコンピュータ向けに発売したアクション&シミュレーションゲーム。7種類のハードで別々のストーリーが進行し、パスワードを使って他機種に艦隊を持っていくことができた。

 

酒缶 普通、無理ですよね。

 

鈴井 FM-7版とか無理ですよ。PC-9801版だけ1年後に発売されて、全然違うゲームで。ティーアンドイーも就職したかったですよ。『ハイドライド』(※7)とか夢の会社ですよ。かっこいいな。内藤さん(※8)ってすごい人なんだなぁって。

 

(※7) 『ハイドライド』 1984年にティーアンドイーソフトがパソコン向けに発売したアクションRPG。

(※8) 内藤さん 当時、ティーアンドイーソフトに所属していたプログラマーの内藤時浩氏のこと。

 

酒缶 開発者の名前がポンポン出てくるってことは、当時の開発者はスターだったんですか?

 

鈴井 スターでしたね。木屋さんとか、ログイン(※9)とかでは常連で、ものすごく取り扱われていましたし、堀井雄二さんは「虹色ディップスイッチ」(※10)を連載していましたし、そういうのを熟読して、「自分もこの業界に入ったらこういう仕事をするんだ」と思いながら中学高校を生きてたんで、思い入れが深くて。パソコンを買えなかったからこそ、パソコンのゲームを作った人に対して憧れが強くて。ファミコンって高橋名人と宮本さん以外、顔が見えなかったですよね。

 

(※9) ログイン エンターブレインから発売されていたパソコンゲーム雑誌。2008年に休刊。

(※10) 「虹色ディップスイッチ」 かつてログインに連載されていた堀井雄二氏の連載エッセイで、その後、ビジネスアスキーから書籍化されている。

 

酒缶 高橋名人は……。

 

鈴井 作ってないですよね。当時は顔がすごく出てましたけどね。ファミコンはあんまり開発者の顔が出なかったですね。パソコンはインタビューが多かったんですけど、ファミコン誌はクリエイターさんが前に出ることがなかったのでわかんなかったんです。

 

酒缶 BEEP(※11)とか、広報系と思われるディレクターさんがよく出ていましたよね。その方が本当に開発していたかはわかりませんけど。

 

(※11) BEEP 日本ソフトバンクから発売されていたゲーム雑誌。現在、ソフトバンククリエイティブから発売されている「ゲーマガ」の前身。

 

鈴井 わからないんですよね。ひとつショックを受けたのは、「パソコン業界ってすごいと思われているけど長靴業界と市場規模は同じなんですよ」とおっしゃっている方がいて、長靴業界がどんなかわからないんですけど(笑)、「パソコン業界ってちっちゃいんだ、やっぱ俺、ファミコン作ろう」って思いましたもんね。「大きいところでやりたい。みんなが買ってくれるものを作りたい」って。

 

酒缶 パソコンのゲームで影響を受けたゲームって何かありました?

 

鈴井 『キングコング2』(※12)ですね。ファミコン版の『キングコング2』(※13)は弟に買ってもらって(笑)。気持ちよくて面白いんですけど、MSX2版はもっと地味なんですね。『ゼルダ』(※14)みたいに画面を切り替えながら進んで行くタイプで、最後、黄金の神殿の中に入って、最後にヘリコプターが出てきてクリアなんですけど、黄金の神殿のドット絵がメチャクチャきれいで興奮したんです。冒険することにロマンを感じるという意味合いで本能的に影響を受けていて、作りたいと思うんですけど、自分の中でハードルが高く、踏み込めてないんですけど、思い入れのあるタイトルです。

 

(※12) 『キングコング2』 正式名称は『キングコング2 甦る伝説』。1987年にコナミ(現KONAMI)がMSX2向けに発売したアクションRPG。人間のミッチェルがレディコングを探すために活躍する。

(※13) ファミコン版の『キングコング2』 正式名称は『キングコング2 怒りのメガトンパンチ』。1986根にコナミ(現KONAMI)がファミリーコンピュータ向けに発売したアクションゲーム。キングコングがレディコングを助けるために暴れる。

(※14) 『ゼルダ』 正式名称は『ゼルダの伝説』。1986年に任天堂がディスクシステム向けに発売したアクションRPG。マップの移動は画面単位で行われ、画面の端まで行くと隣のマップに切り替わった。

 

酒缶 MSXというと、誰と話していてもコナミのゲームは必ず出てきますよね。

 

鈴井 MSX2のコナミのゲームはメチャクチャ面白んですよ。『F-1スピリット』(※15)は神のように面白いゲームです。MSXにはサウンドカートリッジがあって、スロット2にカートリッジを入れるといい音が鳴るんですけど、コナミさんのカートリッジには専用にSCC音源チップというのを搭載していて、そのオマージュを『有野の挑戦状』でもやっていますけど、泣けるぐらいにいい音なんです。『グラディウス2』(※16)はファミコンよりもこっちの方が好きです。この時のコナミのMSXチームはすごくいいチームなんですよ。

 

 

(※15) 『F-1スピリット』 1987年にコナミ(現KONAMI)がMSX向けに発売したレースゲーム。

(※16) 『グラディウス2』 1987年にコナミ(現KONAMI)がMSX向けに発売したシューティングゲーム。アーケードやファミリーコンピュータで発売された『グラディウスII』とは別モノ。バーチャルコンソール http://www.konami.jp/products/dl_wii_gradius2_msx_vc/

 

酒缶 小島さんの『メタルギア』(※17)とか。

 

(※17) 『メタルギア』 1987年にコナミ(現KONAMI)がMSX向けに発売したアクションゲーム。バーチャルコンソール http://www.konami.jp/products/dl_wii_mg_msx_vc/

 

鈴井 そうそうそう。そして、『スナッチャー』(※18)も。自由な風土がMSXのチームにあったんじゃないですか。だからすごいこだわりがあって職人っぽくて媚びてなくて、すごく質のいいものがあって。『激突ペナントレース』(※19)が好きで、このスタッフがX68000版の野球ゲームを経て『パワプロ』(※20)に流れていくんですけど、『激突ペナントレース』と『ファミスタ』を足したようなゲームを作りたいという企画書を高校生くらいから考えていました。ピッチングもバッティングもAボタンとBボタンを、緩急の差を付けた使い方をするボタン仕様にしたいんですよ。その緩急の駆け引きの中でバッティングとピッチングをするゲームを作りたいんです。

 

(※18) 『スナッチャー』 1988年にコナミ(現KONAMI)がMSX向けに発売したアドベンチャーゲーム。

(※19) 『激突ペナントレース』 1988年にコナミ(現KONAMI)がMSX2向けに発売した野球ゲーム。

(※20) 『パワプロ』 1994年にコナミ(現KONAMI)がスーパーファミコン向けに発売した『実況パワフルプロ野球’94』から始まるシリーズ。パワプロ通信 http://www.konami.jp/gs/game/pawa/

 

酒缶 この2本のタッチペンでやれば……。

 

 

鈴井 『タッチ!ダブルペンスポーツ』では、違う意味でこれは実現しています。バッティングのアナログ感とか。だからこれは野望の第1歩なんです。

 

酒缶 『タッチ!ダブルペンスポーツ』のベースボールが一試合遊べるような感じに?

 

鈴井 したいなぁ。というか、「『ファミスタ』を僕にも作らせてください!」と相談すればいいんでしょうけど、バンナムさんとはあまりにも近い関係なので、読まれるとややこしいことになる(笑)。でも、打球が飛ぶとか放物線を描くとか難しいんですね。野球のことを詳しいプランナー、グラフィッカー、プログラマーを見つける旅が終わってないんです。全員揃ってから作らないと理想の野球ゲームにはならないんですよ。

 

酒缶 旅ですか?

 

鈴井 その旅がまだ続いています。面接でファミスタ命っていう……よくわかんない人が来ないかな。僕はそういう人たちと出会えたらいつか作りたいと思っています。

 

酒缶 長い旅になりそうですよね。話を戻しますが、MSXで遊んでいたのはファミコンと同時期だったんですか?

 

鈴井 そうです。中学3年の時にプログラムを勉強したいとお願いして、初めて親父が買ってくれたパソコンが、ソニーのMSX、HiTBiT。パナソニックのイメージキャラが恐かったので、ソニーにしたんです。

 

酒缶 パソコンって、その当時の選択としてはMSXが普通だったんですか?

 

鈴井 モニタを買ってもらうような選択肢もなかったので、値段的にはMSX2しかなかったんです。ディスクドライブもなく、2スロットカートリッジ(※21)しかなくて、セーブができないんですよ。で、カセットのセーブできるヤツを買って、ピーガーで保存して(※22)、『ハイドライド3』(※23)もテープでセーブしてクリアしましたし。『地球戦士ライーザ』(※24)はテープ版をプレイしました。懐かしいです。

 

(※21) 2スロットカートリッジ MSXには複数のカートリッジを差せるスロットがある機種があり、複数のカートリッジを同時に差すと特殊なことができることがあった。

(※22) ピーガーで保存して カセットテープに録音されているプログラムを読み取る時に「ピーガー」という音が鳴った。

(※23) 『ハイドライド3』 1987年にティーアンドイーソフトがパソコン向けに発売したアクションRPG。

(※24) 『地球戦士ライーザ』 1985年にエニックス(現スクウェア・エニックス)がパソコン向けに発売したRPG。任天堂がファミリーコンピュータ向けに発売した『銀河の三人』は『地球戦士ライーザ』の移植作品。

 

酒缶 テープでゲームができたなんて話は今の若い人にはわからないでしょうし。

 

鈴井 コーエー(現コーエーテクモゲームス)さんに入社される方は、社長さんがゲームを作って、奥さんがラベルを貼って通販してたこととか知っているんでしょうけど。

 

酒缶 この時代のゲームの話ってゲームそのものの話だけしか知らないんですよね。

 

鈴井 制作秘話とかないんですよね。取引先の会社さんで、ファミコンのゲームのプログラマーを経験されて今はプロデュースをやっている方とかとお会いすると、急に子ども時代に戻っちゃうというか、不思議な感じになります。

 

酒缶 そういう人を見つけ出して話を訊きたいんですよね。

 

鈴井 それって難しくないですか? 探偵並みですよね。とりあえず『ファザナドゥ』を作った人を見つけたら教えてください。僕も一緒に取材に行きますので。

 

次回の更新は、7月29日(金)の予定です。

2011年7月26日 11:59