酒缶さん
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【鈴井匡伸氏】5.吉祥寺を愛してる

 

 今回のゲスト:鈴井匡伸氏 

インディーズゼロ代表取締役。制作に関わったタイトルは『千年家族』『しゃべる!DSお料理ナビ』『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』など多数。最新作はニンテンドー3DSの『タッチ!ダブルペンスポーツ』。


酒缶 インディーズゼロさんは1997年に設立されていますが、最初はどんな仕事をされていたんですか?

 

鈴井 インディーズゼロは、プログラマー2人と僕とで始めた会社なのですが、最初はプログラマーの1人が『すってはっくん』の開発を担当していて、僕は『お料理ポン』のデータを作っていました。個人的に最初に関わった製品と呼べるタイトルは、大学時代にアルバイトで企画に関わったヤキソバンのキャンペーンソフト(※1)です。

 

(※1) ヤキソバンのキャンペーンソフト 『日清焼そばU.F.O.』の懸賞品だったスーパーファミコン用ソフト。酒缶は大学の頃、隣のゼミの人が大量に『日清焼そばU.F.O.』を買いこんでソフトを当てようとしていたが、当たったという話は聞かなかった。

 

酒缶 キャンペーンの後で発売(※2)されましたよね。

 

(※2) キャンペーンの後で発売 1994年にアイ・ティー・シーが販売した『UFO仮面ヤキソバン ケトラーの黒い陰謀』のこと。パッケージが実写からイラストに変わり、ゲーム内のデータが一部違うが、ゲーム内容自体は懸賞版と同じゲーム。しかし、コレクターにとってはこの違いが大事で、何とも罪深い。

 

鈴井 ありましたね。『ヤキソバン』では企画原案作成をお手伝いさせてもらったんですけど、言われてやったことなので。自発的に企画をした最初のパッケージタイトルは『電子の精霊ちびっと』です。『電子の精霊ちびっと』(※3)は、デスクトップ上から架空のパソコンの中の世界にちびっとを送り込むと、冒険の先々からちびっとが疑似メールを送ってくれるゲームです。経験値やレベルアップのある育てゲーなんですけど、ちびっとは「どこどこを歩いているよ」とか「変な奴に会っちゃったよ」とかメールしてきて、時には戦って死んじゃうこともあるんです。とにかく細かいところまでこだわりぬいて当時のスタッフ皆で精一杯作り込みました。体験版や雑誌の付録は好評だったんですけど、出荷は1500本程度しかなく寂しかったんです。でも、初めて作ったオリジナルタイトルという意味では大きく、ターニングポイントです。

 

(※3) 『電子の精霊ちびっと』 1998年にバンプレストから発売されたパソコン用ソフト。紹介サイト http://www.indieszero.co.jp/work/discography/products/denshi.html

 

 

酒缶 『ちびっと』のメールがフックになっているところって、『さくらももこのウキウキカーニバル』(※4)と繋がるんですか?

 

(※4) 『さくらももこのウキウキカーニバル』 2002年に任天堂がゲームボーイアドバンス向けに発売したインターネットごっこゲーム。公式サイト http://www.nintendo.co.jp/n08/aclj/index.html

 

鈴井 インターネットごっこですね。アイディアは我々だけのものではありませんが繋がります。そこから『千年家族』(※5)とかも。プレイヤーを待たせてからのイベント……「バックグラウンドゲーム」と呼んでいるんですけど、ゲームを遊んでいない時間にも、ゲームを遊んだように感じられるゲームの可能性を感じていて、合間の時間にやるゲームという路線を狙っていました。

 

(※5) 『千年家族』 2005年に任天堂がゲームボーイアドバンス向けに発売した家族観察シミュレーションゲーム。プレイヤーは神様になって、自分だけの家族を観察し続ける。公式サイト http://www.nintendo.co.jp/n08/bkaj/index.html

 

酒缶 DSになってからの御社が関わっているタイトルと路線が違いますよね。

 

鈴井 確かに。多分、『千年家族』で限界を感じたんですよ(笑)。ものすごいデータ量で、あれ以上あの世界を拡張するとデータが累乗的に増えて、作業が終わらないんです。一つの限界かと。ただ、『千年家族』みたいなイメージで、もうちょっと違う路線でやりたかったんですけど、今は『トモダチコレクション』(※6)があるので。また、人間的な表現部分でトラブルが多くて、職業に「ヤクザ」が出てくるとCEROが上がるため、「闇の組織」にしなくてはならないとか。

 

(※6) 『トモダチコレクション』 2009年に任天堂がニンテンドーDS向けに発売したそっくりトモダチコミュニケーションゲーム。いつの間にかトリプルミリオンを達成して、今ではニンテンドーDSを代表するソフトの1本。公式サイト http://www.nintendo.co.jp/ds/ccuj/index.html

 

酒缶 リアリティがなくなりますよね。

 

鈴井 自由度がなくなっちゃうんですよ。文章だけに頼ったような、文字で世界を作っていくような世界は変えていってもいいだろう、というのが今の流れです。

 

酒缶 実は『千年家族』をはじめから遊んでみようとして、年数を選んでいたら、2010年の12月31日までしか設定ができなかったんです。

 

鈴井 えーーーー! 知らなかった。マジですか!? あれは大人が子どもの頃の時代を遊べるように、過去はそれなりに作れるようにしていたんですけど、未来に関しては何だろうな……まさかその先を遊ぶことを考えてなかった、いや、違う。2010年までだったんですか。それはショックですね。今日初めて知りました。その話が今日一番大事な話かもしれない。『千年家族』には、ゲームの楽しかった思い出をネタとして入れていますし、デフォルメした世界にメジャーな出来事を要約して入れていくのは、『有野の挑戦状』で年表を作ったことと同じ発想で楽しいんです。

 

酒缶 その部分は今も変わらないんですね。

 

鈴井 その発想を第三者の視点で切り出して伝えていくみたいな。『ちびっと』もそういうゲームですもんね。今、38歳ですけど、多分、20代の時の方が、そういうことが好きだったんですよ。最近は作ってないですもんね。

 

酒缶 作ってないのは限界を見たのが原因ですか?

 

鈴井 大変だったんですよ。当時の企画スタッフの人数が少なかったこともありますが、『千年家族』も『ちびっと』も本当に大変だったんですよ。イベントを作っても作っても終わらなくって。

 

酒缶 多分、限界を見たということは、そのテーマに満足して、違う目標ができて、現在の開発に昔の経験が活きている、ということじゃないですか?

 

鈴井 そうかもしれないですね。楽しませたいという本質は変わってないんですけど、どうやったら楽しんでもらえるか、という手法とか見せ方とか手段とか、自分の中でこなれてきつつも変わっていて。あと、『ちびっと』は1作目だし、『千年家族』の頃はうちのスタッフが15人くらいで1本のゲームしか作れなかったので、当時はゲームのアイディアを出すのと同じくらい、うちのスタッフの個々の能力が一番活きる企画を考えるのも僕の仕事だったんですよ。それがマッチしないと企画が成立しなく、且つアイディアとしても面白く確実に作れるものをやろうという大事なテーマがあり、最後に自分が無理すれば終わるモノを作っていた気がするんですね。

 

酒缶 (笑)。

 

鈴井 でも今は30人以上の仲間がいて、うちは新卒で10年前に入った子が10年目で普通に残っている会社なんですね。ずっと一緒にやってくれているので信頼関係もあって、力量をそこまで気にしなくてもよくなったんです。例えば、自分がパラメータ調整をして面白さを見つけなくても、目指す方向性を正しく伝えればモノが作れるというのがわかってきたので、前と違ってきているんじゃないかな? ホントちっちゃな話で、外の人から見たら「はぁ…?」っていう話かもしれないですけど。

 

 

酒缶 でも、本来のディレクターとかプロデューサーというところに専念できるようになったということは大きいですよね。

 

鈴井 そういうところもありますけど、ディレクターは映画監督と同じで、スタッフの力量も作品作りの一つだと思っています。こういうスタッフがいるからこういうモノをやろう、と。今は、前よりも自由度が増して技術的な安定感が出ています。他の会社さんだと、M&Aで買ったり、プロジェクトごとに会社にないスキルを中途採用で補充されたりしてますけど、うちは時間をかけて作ったチームワークでモノづくりをよくしていきたいというコンセプトがあるので、同じメンバーを中心にちょっとずつだけどスキルアップしたスタッフに加えて、新しいスタッフが集まり、そのメンバーで業界に貢献できるのがいい形かと思っています。

 

酒缶 社名のインディーズゼロの「ゼロ」は、ゼロから積み上げていくという意味合いのゼロという解釈でよろしいでしょうか?

 

鈴井 その意味もあります。社名は70案くらい出して、3日4日話し合って、疲れ果てたときにインディーズゼロという名前が出てきました。藤子不二雄のスタジオ・ゼロ(※7)のゼロをお借りしたところもあって、インディーズというところから始めていきたい、ということもあって。僕たち名もないしお金もなかったので、人に知ってもらうことが難しいと思ったので、会社一覧を見た時にあいうえお順で最初にあった方が知ってもらえるチャンスがあると思ったり、そういう色々を考えた中で、インディーズゼロという社名に決まりました。わかりやすいストーリーはなく、疲れ果てた中で決まったということしか覚えてないんですけど(笑)。

 

(※7) スタジオ・ゼロ 藤子不二雄など、トキワ荘出身の漫画家が設立したアニメーション製作会社。

 

酒缶 でも、本当にいいことを考えているときってなかなか決まんないで、すんごい極限に行ったときにいきなり出てくる、その時しか出て来ないタイミングってあるじゃないですか?

 

鈴井 そうなんですよね。不思議ですよね。若いうちなら失敗してもやり直しがきく、というところから会社を始めて、最初はお金がなかったので、仲間の一人が住む部屋と仕事場を兼任するアパートを借りて仕事を始めたんですけど、サテラビューの『すってはっくん』の仕事が入ったので、法人化する際に吉祥寺に事務所としてもう1個のマンションを借りて、3人が2ヵ所でバラバラに仕事をしていました。その状態で話し合って、みんなが納得した結論がそれだったというのは、言葉にない不思議な何かがあったんだと思います。今でもこの会社の名前は大事にしたいと思っていますし。

 

酒缶 いい名前ですよね。

 

鈴井 インディーズレーベルでモノを出しているわけではないのですけど、気持ちはそこからなので、『タッチ!ダブルペンスポーツ』のチャレンジしているところとかは、うちらしいなという気がします。

 

 

酒缶 吉祥寺という立地もインディーズのイメージが強いですね。

 

鈴井 はい。ずっと吉祥寺を大事にしています。でも、ホームページのアクセス率は「吉祥寺、ランチ」で来られる方が多いんです。

 

酒缶 それは、そういうページを載せているからじゃないですか!(笑)

 

鈴井 「ランチマップ」と「じゃんけん必勝法」の2つのページ(※8)のアクセスが特に多いんです。

 

(※8) 「ランチマップ」と「じゃんけん必勝法」の2つのページ 

ランチマップ http://www.indieszero.co.jp/kichijoji/lunch/index.html 

じゃんけん必勝法 http://www.indieszero.co.jp/janken/index.html

 

酒缶 それはアクセスを伸ばすためのプロデュースだったのでは?

 

鈴井 違います(笑)。吉祥寺を愛しているということを伝えたかったんです。吉祥寺はオアシス的な井の頭公園もあってすごく生活しやすいですし、ヨドバシも近いし、開発するには丁度いい環境だな、と思っています。ただ、だんだん規模が大きくなると、横にフロアが広い場所がないんですね。新しいビルができてないし、事務所というと今のビル辺りが限界。

 

酒缶 人数が増えすぎると、作れるものが変わってきますよね。

 

鈴井 それもあるけど、新しい人が多くなるとイズムが伝わらなくて全然違う感じになるし、それがいい悪いじゃないんですけど、今いるメンバーをコアメンバーとして、新しい仲間にもうまく継承してやっていきたいと考えています。そうやって、確実に一緒に作っていけるメンバーを増やしていっていいゲームを作りたい、と思っているんですけど、世の中の動きの方が早いです。新しいゲーム機は開発規模がだんだん大きくなっているので、今は考え方が変わって、必要であれば、新しい仲間や協力会社さんをどんどん外に求めるのはありだと。最初の考えに固執し過ぎて、そこを恐がらないようにしようとか思っています。

 

次回の更新は、7月22日(金)の予定です。

2011年7月19日 11:00