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【酒缶のゲーム通信】



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【鈴井匡伸氏】4.全てを理解して作る

 今回のゲスト:鈴井匡伸氏 

インディーズゼロ代表取締役。制作に関わったタイトルは『千年家族』『しゃべる!DSお料理ナビ』『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』など多数。最新作はニンテンドー3DSの『タッチ!ダブルペンスポーツ』。


鈴井 これは僕が初めて作ったファミコンゲームの『ばこばこ』と『ムービングボール』です。任天堂電通ゲームセミナーでファミコンのドット絵作りを僕なりに経験したノウハウや思い入れが『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』シリーズでも活かされています。

 

 

酒缶 任天堂・電通ゲームセミナー(※1)というと、確か3期生がディスクシステムで『すってはっくん』(※2)を作ってますよね。もしかして鈴井さんが……?

 

(※1) 任天堂・電通ゲームセミナー 1990年代前半に任天堂と電通が開催したゲームセミナー。

(※2) 『すってはっくん』 1998年に任天堂がスーパーファミコンのNINTENDO POWER書き換えソフトとして発売し、1999年にROMカセット版が発売されたパズルゲーム。バーチャルコンソール http://www.nintendo.co.jp/wii/vc/vc_sh/index.html

 

鈴井 いえ、僕は『ばこばこ』チームで、『すってはっくん』チームは別にありました。『すってはっくん』のメインプログラマーとディレクター兼グラフィッカーは今インディーズゼロで一緒にゲームを作る仲間です。僕はスーパーファミコン版を仕上げるときにコーディネーターという形で参加させていただきました。

 

酒缶 鈴井さんは『ラブ and ベリー』もやってますよね?

 

鈴井 『ラブ and ベリー』は、制作の現場ディレクターとして関わらせて頂きました。あの1年間は『ラブ and ベリー』に捧げた1年でした。開発の後半に「予約が、なんと50万本超えました!」と聞いた時は、喜びよりも先にものすごいプレッシャーに襲われました。「万が一、完成した商品にバグとかあったら、自分達は、どんなことになってしまうんだろう……!?」とか、悪いことばっかり考えちゃって(笑)。

 

酒缶 『ラブ and ベリー』はすごかったですからね。

 

鈴井 すごかったですね。この時初めて、植村さん(※3)とお仕事をさせていただきました。植村さんはゲームに対する情熱やお客さんに対する愛情がすごくて、とにかく勉強になりました。「『ラブ and ベリー』をDSで作りたいが、どんな可能性が考えられるか?」というオーダーをいただいたので、「家で練習してアーケードでお披露目という循環で作りましょう」と提案させていただきました。「子どもたちが一番欲しくて、みんなが買いたいと思うのはこれだ!」という意見で一致でき、現在の『ラブ and ベリー』の形で最終的に制作を行いました。

 

(※3) 植村さん セガの植村比呂志氏。『甲虫王者ムシキング』『オシャレ魔女 ラブ and ベリー』シリーズのプロデューサー。

 

酒缶 熱いですね。

 

鈴井 毎回命がけなので。イチローよりも打率が高くないと生きていけないじゃないですか? バンダイに入社した当時の役員の方の一人が「打率3割を目指せ! バンダイは年間に何万点もアイテムを出すから、その中の3割が当たったら会社は生きていける。そして、その時に神風が吹く」とおっしゃったんです。それは事実で、実際に打席に立っているんですよ。でもゲームはそうはいかないなと思って……。

 

酒缶 パブリッシャーさんは打席に立って、3割当てればペイできるけど、開発会社はその3割しかないヒットを自分で打ちたいですよね。

 

鈴井 自分たちが打たないと生きていけないですから。助っ人外人みたいなもので、2アウト満塁で負けているときに、クライアントさんが「ここでヒットを打ってくれる」と思って相談してくださるので、出塁率100%が当然だと思っています。だから、『ラブ and ベリー』も当時、アーケードゲームを徹底的に遊びました。

 

酒缶 お店のマシンの周りには女の子しかいない状況ですよね?

 

鈴井 子どもがいない時間帯ならいいだろう、とか、いる時には遠くから見て変質者に見えないように、とか、ゲームに興味がなかった娘を無理やり連れて行って、僕の仕事のせいでゲーム好きにさせちゃったり、とか、あらゆる手を使ってそのゲームの面白さ、本当にお客さんが喜んでいるのはどこなのか研究しました。『お料理ナビ』を作った時も、企画検討の当初、開発スタッフ全員にレシピ本と材料を各自で購入してもらって、家で料理した結果を次の日プレゼンしてもらったり……と、実際の体験を通して感じることを大事にしています。

 

酒缶 御社のサイトを見ていたら、サテラビューの『お料理ポン!』(※4)というタイトルがあったんですけど、これは『お料理ナビ』の原型だったりするんですか?

 

 

(※4) 『お料理ポン!』 任天堂サテラビュー放送用の番組で、1997年12月?1998年3月まで、全4回放送された。製品紹介ページ http://www.indieszero.co.jp/work/discography/products/oryouri.html

 

鈴井 『お料理ナビ』の原型になったというよりは、あの時苦労した失敗を繰り返したくない、ということはありました。『お料理ポン!』は僕が任天堂・電通ゲームセミナー時代にディレクターとして関わっていた企画が元で、インディーズゼロでサテラビューのバージョンを作りました。『お料理ナビ』よりも変な形でレシピ中に遊びが入っていて、今思うとまだお子ちゃまシリーズでした。

 

酒缶 ということは、『お料理ポン!』と『お料理ナビ』は全く関係ないけど、お料理のタイトルを開発した経験が後に活きたということですか?

 

鈴井 活きてはいますね。いろんな複雑な意味で。『お料理ナビ』の企画を任天堂さんに提案する時に、社内的には『お料理ポン!』がフックにはあったとは思います。当時、『お料理ポン!』に、冷蔵庫に入っている物を全部登録しておくと、それに適したレシピが出るような冷蔵庫システムを入れようとして失敗しました。あれはすごい大変。

 

酒缶 でも、それって、すごく実用的ですよね。

 

鈴井 アルゴリズムがものすごく難しいんです。『お料理ナビ』でも同じような機能があるんですけど、どう割り切ればいいか、どうすれば使いやすいかは、『お料理ポン!』の反面教師があったので、活きましたね。

 

酒缶 やっぱり過去の経験が活かされているんですね。あとは……『エレクトロプランクトン』(※5)は岩井さん(※6)の作品でしたっけ?

 

(※5) 『エレクトロプランクトン』 2005年に任天堂がニンテンドーDS向けに発売したメディアアート。10種類のプランクトンが収録され、現在、DSiウェアで1タイトルずつ購入が可能。DSiウェアは2タイトル以上購入すると、タイトル画面で他のエレプラが泡として出てくると言う仕掛けが入っている。公式サイト http://electroplankton.com/ DSi版公式サイト http://www.nintendo.co.jp/ds/dsiware/electroplankton/

(※6) 岩井さん メディアアーティストの岩井俊雄氏のこと。フジテレビ系列で放送されたテレビ番組「アインシュタイン」「ウゴウゴルーガ」のCG作品が有名。

 

鈴井 岩井さんです。僕は元々岩井さんの作品が好きで、個人的に展示作品を見に行ったり、『テノリオン』のワンダースワン版(※7)を買ったりして、作品をよく知っていた中で、お仕事のお誘いをいただいて。『エレプラ』は、あくまでも岩井さんの作品を作るのをお手伝いする側として参加させてもらって、基本的に岩井さんが作りたいものをDSでどうやって実現するかということが、僕たちのミッションだったと思います。

 

(※7) 『テノリオン』のワンダースワン版 岩井俊雄さんの個展で販売された120個限定のプレミアソフト。後にヤマハが販売した『テノリオン』の原型。

 

酒缶 『エレプラ』って、まだDSのTouch! Generationsが始まる前でしたよね。時期的にちょっともったいなかったかな、と。

 

鈴井 いえ、『エレプラ』もTouch! Generationsシリーズですよ。『エレプラ』のような独創的なタイトルが発売されることが、DSの市場として次につながっていったと思っています。誰かが道を作ってくれたあとで乗るのは簡単だし、いつも市場が温まってからゲームを出せばいいと思う人もいるかもしれないけど、自分たちがそこを切り開かないと市場が生まれないので、市場に期待して傍観者でいるのではなく、自分たちがこのゲーム市場を作っていくんだという気構えで仕事をしています。

 

酒缶 『Mario Party-e』(※8)の開発にも携わってますよね?

 

(※8) 『Mario Party-e』 北米で任天堂が発売したカードeリーダー専用カードゲーム。

 

鈴井 北米で発売された、カードeリーダー(※9)を使って遊ぶカードゲームです。残念ながら日本では発売されていません。ゲームボーイアドバンスのゲームで、カードゲームのホスト役をアドバンスの方でしてもらって、カードゲームを遊んでいる中の要所で、そのカードの側面についている情報コードをリーダーで読み取って、対戦ミニゲームでバトルして決着をつけるというゲームでした。制作が新鮮でとても楽しい思い出なんですけど、カードeリーダー、どのくらいの日本人が覚えているてくれているのかな?

 

(※9) カードeリーダー 2001年に任天堂がゲームボーイアドバンス向けに発売したカードeリーダー。カードのデータを読み取ると、簡単なゲームやショートムービーを楽しめた。公式サイト http://www.nintendo.co.jp/n08/hardware/card_e/

 

酒缶 ファミ通にもおまけのカードが付いた(※10)ことがありましたし。でも、ほとんどの人が知らない思い出……だから、思い出じゃないという話もありますけど(笑)。

 

(※10) ファミ通にもおまけのカードが付いた 週刊ファミ通に「ピクミンパズルカードe+」や「どうぶつの森+カードe」のファミ通バージョンが付いていたことがある。

 

鈴井 うちはカードゲームが好きだったので、『ファイナルファンタジー アートミュージアム』(※11)シリーズのトレーディングカードもやってますけど、あの時は、古今東西のトレーディングカードを全部買って研究しました。僕らがやる以上、表はカッコよく、裏は情報満載というコレクションとして歴史を振り返れて、収集した気持ちを感じる、当時のファイナルファンタジーの総集編みたいなものを作りたくて。

 

(※11) 「ファイナルファンタジー アートミュージアム」 スクウェア(現スクウェア・エニックス)が発売したトレーディングカード。1st?3rdはそれぞれ、シリーズ作品のI・IV・VII・II・V・VIII・III・VI・IXに分けられて発売された。

 

酒缶 御社のサイトで、商品群のリストが2つにわかれていたじゃないですか。会社設立をしたころから、トイやカードも作ろうと思っていたんですか?

 

鈴井 当時は全く考えてなく、オファーを頂いたことをきっかけに、真剣に考えました。今はスタッフも沢山いますし、日々やらなきゃならない雑務が多いので、自分がそういうところまでなかなか手が回らないんですけど、面白いモノづくりには関わりたいな、という思いは今でもありますし、沢山の人が喜んでくれるなら今でもやりたいです。ちなみにカードには英語表記の部分があるんですけど、それは弟の仕事です。弟は僕よりも長く海外にいた帰国子女なので「当然やってくれるよね。ゲームソフトを1本買ってあげるから」って(笑)。

 

酒缶 えっ? いや、弟さんはそういう年齢じゃないはずなんですけど。

 

鈴井 そうなんですけど(笑)。あらゆる人を巻きこんでモノを作っていました。

 

 

酒缶 でも、何かをやる時のリサーチがとにかくすごいですよね。

 

鈴井 大学時代にアナウンス研究会という放送系のサークルにいまして、そこでシナリオを書いたり、音楽番組を作ったり、演出をしたり、曲や効果音を付けてラジオドラマを作ったりしていたんですけど、やっぱり全部自分で責任を持って調べて、考えて、最後までやらないと何も生まれないし、自分で判断して決着をつけなくてはいけないと感じていて。だから、全てをなるべく理解した上で作らなくてはいけないと思っています。だって、昔のバンダイさんがファミコン時代に出していたクソゲーを作った人たちはキャラクターやその背景、世界観を熟知せずに作ったから、ああなったんですよ。スタッフ全員が正しく愛情を持ってキャラクターを大切にしてゲーム化していれば、ああはならないですよ。ファミコンの『キャプテン翼』はそのツボを得た作りで、完璧だったんで。そういう気持ちは、今でも変わらないです。

 

次回の更新は、7月19日(火)の予定です。

2011年7月15日 14:19