プロフィール
中村彰憲

立命館大学映像学部 教授 ・学術博士。名古屋大学国際開発研究科後期課程修了 早稲田大学アジア太平洋研究センター、立命館大学政策科学部を経て現職。 日本デジタルゲーム学会(DiGRAJapan)副会長、太秦戦国祭り実行委員長 東京ゲームショウ2010アジアビジネスフォーラムアドバイザー。 主な著作に『中国ゲームビジネス徹底研究』『グローバルゲームビジネス徹底研究』『テンセントVS. Facebook世界SNS市場最新レポート』。エンターブレインの ゲームマーケティング総合サイトf-ismにも海外ゲーム情報を中心に連載中。

最新エントリー

話題にしたゲーム

タグ

月別アーカイブ

最近のコメント

Kick Starterで日本人クリエイターの新境地を切り開いた稲船敬二氏。

たった3日で110万ドル強(約1億円強)を調達! 
Kick Starterで日本人クリエイターの新境地を切り開いた稲船敬二氏。


 稲船敬二氏率いるコンセプトが、日本人ゲームクリエイターの潜在力を改めて世界に示した! 2013年8月31日(米国時間)、米国Kick Starterにて、新プロジェクト『Mighty No.9』を目標金額9000万ドルで始動したところ、たった3日間で19000人強の人から110万ドル以上(約1億円以上)の調達に成功したのだ。今後は、このプロジェクトの募金総額が250万ドルに達し、PC版のみならず、家庭用ゲーム機版の製作まで到達するかが注目されている。

 

 

 

 稲船敬二氏は、カプコンから独立して以降、『YAIBA:Ninja Gaiden』『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』などのAAAプロジェクトから、『みじんこパズル』などのソーシャルゲーム。さらには『おっさん☆たまご』の中国展開など、ゲームタイトルのみならず、ビジネス展開(ビジネスモデル)についても常に先端の試みを続けている。さらに稲船塾を開講したり、立命館大学などをはじめ各専門学校で講演をおこなったり、ビジネスに関する書籍も多数執筆したり、後人の育成にも取り組んだりと、同氏の一挙手一投足は常に注目に値する。

 

 そのような中でのKick Starterというのも、当然の流れだったかもしれない。Kick Starterとは、クリエイティブなプロジェクトを1ドル以上というわずかな金額から、気軽にサポート出来るというウェブサービス。ウェブサイトを介して不特定多数の人から少額の献金(投資ではない)を行うことから、「クラウド・ファンディング」と呼ばれる。投資家や金融業界からの借用金、または投資信託とは違った新たな資金調達方式としてここ数年の間、注目されてきた。

 

 稲船氏は、『Nintendo Entertainment System』が展開された当初、『スーパーマリオ』シリーズと並んで愛されたキャラクターゲームである『ロックマン』から、PlayStation2最初のミリオンセラーとなった『鬼武者』シリーズ、Xbox 360ローンチ時を牽引した、『デッドライジング』シリーズや、『ロストプラネット』シリーズなどのキャラクターデザイナー、ディレクター、並びにプロデューサーとしてカプコン時代から常に第一線で活躍してきたクリエイターとして世界中で知られているだけに、独立後、いつでもクラウドファンディングにチャレンジできる基盤はあった。つまり今回のプロジェクトが満を持してのチャレンジとなる。

 


稲船氏の情熱が

プロジェクトスタート初日で9000人近くものファンを動かす!


 Kick Starterで稲船氏は、自身のファンの多くが、稲船氏に往年のアクションゲームを作ってもらいたいとの声をもっていること、「昔の心をもった新しい作品を作ることは可能」と述べていたこともあり、『Mighty No.9』のデザインや、世界観は、『ロックマン』シリーズなど、これまで稲船氏が携わってきたアクションゲームのそれを彷彿とさせる部分もある。特に『Mighty No.9』の作品のキーワードとして、「科学者」「横スクロールアクション」「敵の能力を奪う」などが含まれている事や、開発陣の多くが『ロックマン』シリーズに携わっているからなおだろう。

 

 だが、Kick Starterにて、「昔やれなかったこと」「ハードの限界で出来なかった事」「若さ故に出来なかったこと」を取り入れていくのと同時に、「表現方法も現在の基準に合わせたもの」「新しいキャラクターでありながら昔の匂いのするゲーム」をつくっていきたいと述べていたことから往年の横スクロールアクションゲームを単純に再現するといった作品にはならないはずだ。


「サポート」する時からエンターテインメントがスタートする時代に


 本プロジェクトにおいてさらに重要なのが「クリエイターとユーザーがともに力をあわせて作品をつくる」という点だ。企画段階から積極的にゲーム開発に参加できるというのは国内においては『モンケン』でも行われてきたが、実は稲船氏も『ロックマン2』のときから、敵キャラクターデザインを募集するなどして進めてきた同氏長年のテーマでもある。

 

 今回は、サポーターが500ドル以上募金することで開発に「参加」できる仕組みを取り入れており、1000ドル以上だと自身の声が、2500ドル以上だと自身の顔がゲーム内に登場。5000ドル以上だと敵キャラクターのデザインに、9999ドル以上だとボスキャラクターのデザイン開発に「参加」出来るとしている。既にボスキャラデザインの開発参加権を得たサポーターは、このプロジェクトが始動した2日目にして2名もいる。

 

 ただ、おそらく稲船氏は、ユーザー参加については、参加者が「エンターテインメント」として実感できるようなしくみを取り入れている事だろう。

 

 それは、自身が立命館でおこなった特別講演において『ロックマン2』の敵キャラクター応募企画を進めた理由として「(ファンの)当事者意識が重要」を上げていたことからも明らかだ。

 

 

 つまり、サポーターの「コンセプト」をプロのクリエイターによって「形」にすること自体をエンターテインメント化するといった施策だ。本作はサポーターになる段階から、エンターテインメントが始まっているのだ。今回は、筆者も40ドル程を投入してサポーターになることにした。その段階で、既に13500人以上のサポーターにより、目標金額である90万ドルの90%を越える81万ドル弱が調達されていたが、その数時間後には目標金額を飛び越え、100万ドルを軽く突破してしまった。これが、世界中で愛されるコンテンツを作り上げてきた日本人クリエイターの「力」であると言えるだろう。

 

 稲船氏によるこの成果は、世界で名を馳せた日本人クリエイターのたどるべき新たな道を示しているのかもしれない。

 

 

参考URL

『Mighty No.9 』Kick Starterのサイト(日本からでもサポートが可)
http://www.kickstarter.com/projects/mightyno9/mighty-no-9

 

Comceptの『Mighty No.9』紹介ページ
http://www.comcept.co.jp/mightyno9/

 

稲船氏の立命館大学での講演
http://www.famitsu.com/guc/blog/108583/8169.html

2013年9月3日 12:06