第2回 序章 死闘は『プロローグ』から始まっていた(中編)
「残り半周、今回は3位で終わるのか……」
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2009年10月下旬。オレは『グランツーリスモ 5 プロローグ』(以下、『GT5プロローグ』)を使い、海外のプレイヤーと対戦していた。
最大の目的は、海外のプレイヤーがどの程度のスキルを持っているのかを確かめたかったから。
とくに、『グランツーリスモ』熱が高いといわれている欧州勢のスキルが、どの程度なのかを見てみたいという動機で、コントローラーを握っていた。
『GT5プロローグ』の発売から約3年の歳月が経過していたが、欧州のプレイヤーはこの時期でも『GT5プロローグ』のネット対戦に興じていたのだ。
欧州のプレイヤーがログインするピークタイムは、パリやロンドンが午後9時を迎えたころ。日本時間では午前4時あたり。
この時間帯になると、イギリス、フランス、スペイン、フィンランドといった欧州のプレイヤーたちが数多くログインしてくる。
これらの国は、スポーツカー文化が根強い国ばかりだけに、オレが想像していた以上の腕前を持っていた。
意外だったのが、フィンランドのプレイヤーが、かなりの腕前を持っていたこと。
フィンランドは、プレイステーションネットワークのアカウント人口が決して多いとはいえない国なのだが、どのサーキットでも上位を占めていたのは、彼らだった。
さすがはF1のミカ・ハッキネン、キミ・ライコネンやWRCのトミ・マキネンといったワールドチャンピオンを輩出している国だけに、現実だけでなくバーチャルの世界でもクルマを速く走らせる才能は、生まれたときから持ち合わせている人たちなのかもしれない。
だが、「どんな状況でも冷静に判断を下して走れるのか?」というと、決してそうだとはいえない一面もある。
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鈴鹿のスプーンカーブでオレの前方を走る2台のクルマ。
先頭を走るのはイギリス人ドライバー。クルマはフェラーリF430。
その背後をぴたりとつけているのは、フィンランド人ドライバー。こちらもクルマは、F430だ。
その差は、クルマ1台分もない。
フィンランド人が操るF430が肉薄するが、イギリス人ドライバーの巧みなブロックで、なかなか前に出られない。
だが、この先はしばらくストレートが続く。フィンランド人ドライバーは前方を走るクルマの直後を走れば、スリップストリームを使って前に出られる。
高速で走るクルマの後方には、空気が薄くなる場所が発生する。後方のクルマがそこに入ると空気抵抗が減り、速度が上がる現象をスリップストリームと呼ぶのだ。
オレもストレートで2位を走るクルマの背後につき、スリップストリームを使って速度を伸ばす。だが、差は徐々に縮まるものの、2位を走るクルマの直後を衝くまでには、至りそうにない。
2位を走行していたクルマは、先頭を走るクルマを追い抜こうと走行ラインをコース左に変えるが、2台のクルマの目前には"130R"と呼ばれる左コーナーが迫っている。彼らを後方から見るかぎり、2位を走るフィンランド人のF430のほうが、先頭のF430よりもスピードが乗っているように見えた。
2台がほぼ同時に130Rに突っ込む!
アウト側にいたイギリス人のF430が少しだけ外側に走行ラインを膨らむ!
オレが130Rを曲がりきったときには、フィンランド人のF430が少しだけ先頭に出る!
最後のシケインが迫る! 左右の走行ラインに分かれた2台は、どのタイミングでブレーキを踏むのか!?
自分のドライビングよりも、前方を走る車同士のバトルを見ていたほうがおもしろいと感じるシーンは少なからずあるが、ファイナルラップの最終シケインで白熱したバトルに遭遇するのは滅多にないことである。ドライビングスキルが接近した者同士でないと、こうしたバトルにはならないからだ。
「オレは3位で終わるが、いいものを見せてもらった」
……と勝つことをあきらめかけた瞬間……!?
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2台とも本来のブレーキングポイントから奥の位置でブレーキランプが灯る。
両者とも減速するタイミングが遅れている!!
オーバースピードで最終シケインに入れない!!
アウト側にいたフィンランド人のF430が、イン側にいたイギリス人のF430に覆い被さるように激突!
2台のF430はグルグルとからまるようにスピンしながら最終シケインの先にあるショートカット防止ブロックに激突した!!
ブロックに突き刺さった彼らの脇をオレが通過……。
最終シケインをゆるゆると立ち上がり、あっけなくコントロールラインを通過。
……結局、棚ぼたで1位になってしまった……。
本物のモータースポーツや、冬期オリンピックのスピードスケート・ショートトラックでたまに見かけるような勝因だけに、勝った心地が全然しない。
一方、最終シケインで絡み合った2台のドライバーは、さぞや憤慨していることだろう。コントローラーの中央にあるプレイステーションのマークが書かれたボタンを押し、メール機能を立ち上げて「F●●k」だの「S●●t」だの、罵詈雑言を書き綴って、お互いに送信しまくっているかもしれない。
本物のモータースポーツなら、こんな光景になっていたかも……。
実際のレースではドライバー同士だけでなく、ときにはピットクルーも入り混じって大乱闘になることもある。
動画の最後にあったシーンのように、観客の怒りを買ってウイニングランのさなかに物が投げ込まれることもあるのだ。
今回のレースのようなアクシデントも、現実と同じようにモータースポーツの一部だと割り切らないと、カーレースのネットワーク対戦を長く楽しむことは難しい。
欧州のプレイヤーがログインするピークタイムに合わせ、明け方まで『GT5プロローグ』をプレイしていると、そんな基本的なことを再確認させてくれた。
この時期で『GT5プロローグ』は卒業。欧州のプレイヤーのスキルは、ある程度わかったからね。
"本編"が発売されれば、『GT5プロローグ』よりも数多くのサーキットで、今回のようなバトルが繰り広げられるだろう。
2010年に登場する”本編”の発売を、かなり気長に待つことにしよう……。
2011年6月7日 20:27
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