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edeathさん
元週刊ファミ通編集者。現在はフリーライターとしてゲームを含む多方面で活躍中。毎年『パワプロ』シリーズの攻略スタッフとして、数々の伝説を残してきた。




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第16回 あとに残ったもの

とにかく一日も早く
英語が聞き取れるようにならないと
『World of Warcraft』の
レイドに参加できなくなると思っていた。
だから、必死だった。
それだけのために、死にもの狂いだった。

我がことながら、ばかげた理由だなあと
いまでは思う。

でも、そのばかげた理由のおかげで
曲がりなりにも英語が聞き取れるようになった。
音の暴力だった英語の洪水が、
意味を持つ言葉として理解できるようになった。

この経験を通して、再確認したことがある。
少しでも何かに興味を持ったり、
やってみたいと感じたなら、
たとえどんなに先が見えなくても
断じて挑戦してみたほうがいいということだ。
これは英語に限ったことではない。
試してもみないで無理だとあきらめたり、
忙しいだの時間がないだのと
自分に都合のいい言い訳を並べているうちは
何も起こらない。
始めるきっかけや理由、動機は何でもいいし、
方法なんて多少無茶なものでかまわない。
問題は、やるかやらないかであって、
やればいつかできるようになる。
やらなければいつまでたってもできない。
ただ、それだけのことだ。
世の中は複雑なことだらけだけど、
本当に大事なことは意外なほどシンプルだったりする。

さて、突然自分に変化が訪れたあの日から、
かなりの時間が経った。
現在のおれの英語力はというと、
集中して聞き取ろうとすれば
相手のいわんとするところは
おおよそ把握できるくらいである。
勉強していた時期と比べると
見る影もないくらい落ちているけど、
それは当然だろう。
継続的な努力なしに、
何かを維持することは難しい。

英語力が落ちてしまったことは残念だけど、
そんなに落胆してはいない。
いつか英語が必要なときがきたら
また勉強すればいいのだ。
また器に水を溜めればいい。
そのときには、以前よりは少しだけ、
うまくできると思う。
目に見える形としては何も残っていないけれど、
少なくともそう思えるようになった分だけ、
自分の中の何かが変わったのかもしれない。

ただ、『24』でさんざん聞いたセリフだけは
いまだにはっきりと頭に残っている。
銃を置け。手を頭の後ろで組め。
膝をつけ。地面に腹ばいになれ。
そのほか、いろいろなバリエーションはあるが、
何をどう命令されてもはっきり聞き取って、
即座に対応できる自信がある。
英語を勉強した結果、
ジャック・バウアーに追い詰められたときに
怒鳴られた内容がわからなくて
射殺されてしまう恐れだけはなくなったのである。

2011年10月31日 14:22

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