●アメリカ人を畳の部屋に連れていったんです(笑)
−−そういえば、日本版のコントローラーも吉岡さんが制作されたとお聞きしたんですが……。
吉岡 日本向けのコントローラーは、私がリーダーシップを取ったという話がないではないではないんですが(笑)。CESで発表したあの欧米向けのコントローラー、思ったよりはよくできているんですよ。ただやっぱりサイズ的にですね、日本のほうがゲームのユーザーさんの層が広いので、老若男女すべての人が使えるものである必要がありますので。最初アメリカのスタッフに「日本ではゲームというのは小学生からおっちゃんまでやるもんなんだよ」って話をすると、彼ら的には軽いカルチャーショックを受けたみたいで。アメリカにおいては元気な男の子がやるというのが、いちばんメジャーなゲームの遊ばれ方だそうですから。
−−ええ、そうみたいですね。
吉岡 日本とアメリカでは当然遊ぶスタイルも違うし、デザインのトレンドも違うし、手の大きさだって違うんだから、違うコントローラーがあるのが当たり前じゃないかという話になってきてですね。逆に言うと、いままでのゲーム機というのはなぜ全世界統一コントローラーだったのだろうと。考えてみると、僕らもちゃんと考えたことがなかったんですよ。でもなんだかおかしな話じゃないですか。だったら。キチッと作りなおすのがいちばん正しいやりかたなんじゃないのって。
−−アメリカのものはガシッと持って使う、というイメージがあったんですが。
吉岡 そうだと思います。アメリカ版のコントローラーの基本思想としては、掌にフィットするというか、ピシッとホールディングして、ちゃんとしたホームポジションで持って遊ぶというのがあるんですね。
−−ええ。
吉岡 でも、日本の場合だとそうじゃないだろうと。僕が開発当初にやったのが、アメリカ人を畳の部屋に連れて行ったんですね(笑)。
−−外人さんを。
吉岡 ええ(笑)。で、日本ではどうやってゲームを遊ぶのかを見せてやるよと。ソファなんてないのよ、カウチポテトなんてないんだからと(笑)。「オレらがいまからロープレ『ドラクエ』やるから見てなさい」って言って、まずタバコに火をつけて、ゴロンと畳に寝転がって、片手でプレイしはじめたんですよ。で、欧米向けのコントローラーではこういうゲームの遊び方はできないでしょと。日本ではこれができないと絶対ダメなんだよって説明したんです。
あと格闘ゲームをやる場合でも、日本だとあぐらをかいて膝のうえにコントローラーを置いてプレイする人もいますよね。そういうふうな遊びかたもできるようにしなくちゃいけない。そういうところからどんどんどんどん追い詰めていった結果が、日本向けのコントローラーには出てますね。
−−おそらくユーザーは、アメリカのものを小型化したのが日本版だと思ってたはずなんですよ。でも実際は、そうではなくて根底から違うものを作ろうという発想で。
吉岡 どこにフォーカスするかという意味では、発想の原点は違いますね。
−−日本人のサイズに合ったものではなく、日本人がどうやって使うかを考えて作ったと。
吉岡 そうです。アメリカ版のコントローラーは、掌にホールディングできること、指が各ボタンにちゃんと届くこと、それからあとデザインとしての美しさが追求されているんです。ただ、日本版のコントローラーの場合は、どういうスタイルのときにどういう指の動きをするのかとか、ユーザーさんがどういう気持ちで遊ばれるのかとか、そういう機能面を徹底的に突っついていって、その結果として出てきたものなんです。
−−なるほど。
吉岡 いうなれば、日本のインダストリアルデザインとアメリカのインダストリアルデザインの違いなのかな?。ま、どっちも作業を行ったのはアメリカ人なんですけれども、その違いは出ましたね。
−−アプローチのしかたがまったく違っていると。
吉岡 ええ。
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