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コラム:水口哲也が語る"『N3』の世界"
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第1回 『N3』の背景にある思い
コラム:水口哲也が語る"『N3』の世界"

文責:週刊ファミ通編集部 大塚角満

 

 

 

●コンセプトを語るまえに

 

 マイクロソフトから発売予定のXbox 360用ソフト『ナインティナイン・ナイツ』(以下、『N3』)。週刊ファミ通誌上で"Xbox 360用ソフトで、もっとも期待するタイトルは?"というアンケートを取ると、必ず上位に食い込む大作だ。プロデュースするのは、キューエンタテインメントの水口哲也氏。いま韓国でもっとも力があると言われる開発会社、ファンタグラムとコラボレーションし、キューエンタテインメントの日本、ファンタグラムの韓国、そしてマイクロソフトの米国と、3国のクリエーターたちが手を結んだ壮大なプロジェクトとして日本のみならず世界中のゲームファンから注目を集めている。

 

 そんな『ナインティナイン・ナイツ』のプロデューサー、水口哲也氏と、じっくりと話をする機会を得た。『セガラリー』の制作者として華々しくゲームクリエーターとしてデビューして以来、『スペースチャンネル5』、『Rez』、『ルミネス』、『メテオス』と、時代の先を見通した斬新なゲームをいくつも世に送り出してきた水口氏。そんな彼が"ゲームの王道"とも言える"ファンタジー"、"戦争"をテーマにした作品をプロデュースするのは、これ初めてのことだ。ゲーム業界のトレンドセッターである水口氏は、どんな思いを抱きながら『N3』のプロジェクトを進めてきたのか? このファミ通.com誌上において、水口氏に『N3』のすべてを語ってもらおうと思う。隔週連載コラム-水口哲也が語る"『N3』の世界"-、いよいよスタートだ。
 


 

 連載の1回目ということで、コラムのテーマは"『N3』のコンセプト"に据えようと思っていた。この作品の根底にあるものは何なのか? 『N3』を通じてユーザーに何を伝えたいのか? 非常にオーソドックスだが、とても重要な質問。どんな答えが返ってくるのか期待しながらその通りに水口に話を向けると、彼はちょっと目の色を沈めながらこう言った。

 

 「"9.11"。あの悲劇が、『N3』を生んだ最初のきっかけなんです」

 

 2001年9月11日。ハイジャックされた4機の大型ジャンボ旅客機が、ニューヨーク州の貿易センタービル、ワシントンD.Cのアメリカ国防総省・ペンタゴン本庁舎などに激突。多数の死傷者を出し、史上最悪のテロ事件として世界中の人々にその悲劇が伝えられた。この悪夢のような事件の一報を聞き、水口は身体の震えが止まらなくなったという。

 

 「あの瞬間に、ものすごくリアルに"対立"というものを感じたんです。誰かが不満を持ってて、その不満をぶつける方法がないことが続くと、こういうことが起きてしまうんだな、って。世界の危うさ。そのことに対して、足が震えてしまったんだと思う」

 

 それまで水口は、戦争や戦いをテーマにしたゲームはいっさい作ってこなかった。その理由を彼は"戦争をテーマにするには、ゲーム機はあまりにも表現力不足だったから"と断言する。戦争をテーマにする以上、敵対関係にあるものをどうしても殺さなければならない。ゲームは映画や小説と違って実際にプレイヤーが体験できるメディアゆえに、そればかりに偏ると非常に殺伐としたものになってしまう。なので水口は9.11の悲劇が起こるまで、戦争をテーマとしたゲームからは1歩引いていたのだ。しかし、その思いは大きく揺らいだ。

 

 「世界中の国を見れば見るほど日本ほど平和なところはないなって思うんですけど、現実の世界は違いますよね。そんな現実から、ゲームはあまりにもかけ離れてしまった気がしたんです。このままいくと、ゲームがものすごく気持ち悪い存在になるか、とっても浮世離れした人たちの限られた遊びになってしまう……。なのでゲームは、踏み込まないといけないんです。ほかのものになろうとするか、別の力を持たないと生きていけない。僕は作り手として、その階段を1歩上ろう、って思ったんですよ

 

 水口は、自らの中でタブーとしていた戦争をテーマにしたゲームを作ることを決心する。しかし、何をどうすれば階段を上がることができるのか? アクションとしての爽快感だけを求めたら、けっきょく水口が恐れる殺伐としたゲームになってしまうだろう。ではどうするのか? じつはこの点において、水口は一切の逡巡がない。

 

 「"ドラマ"を表現する。アクションゲームとしての生理的な気持ちよさだけではない、プレイヤーの感情的なものを喚起させる方法は、僕が思いつく限り、それしかないんです」

 

 時は2001年末。このとき、まだXbox 360はその片鱗すら見せていない。当時のハードでは、水口の頭の中に漠然とあった戦争とドラマを表現したゲームを再現することは、技術的に難しかった。しかし9.11で受けた啓示を形にするには、「ゲームしかない」と水口は思っていた。そしてここを出発点として、次回で語ってもらう『N3』のコンセプトが生まれるのだ−−。

 

 

◆記者の目

 

 水口氏の過去の作品を見渡すと、"たまごが先かニワトリが先か"ではないが、技術の進歩と彼の頭の中にあるアイデアは、つねに激しい競争をしているのがよくわかる。『Rez』のアイデアを形にするには、最低でもプレイステーション2の性能が必要だった。『ルミネス』のアイデアを具現化するには、PSPのハードコンセプトが必要だった。そして『N3』。RPGではなく、アクションゲームの形をとりながら、戦争とドラマ性を両立させるには、Xbox 360という次世代のマシンパワーが必要だったのだ。

 

 話していていつも思うことだが、水口哲也ほど問題意識を持って作品に向き合っているクリエーターはなかなかいない。

 

 彼は哲学者だ。

 

 次回のコラムでは、彼がゲームで本当に表現したかった"本質"に迫れると思う。
 


  

水口哲也(Tetsuya Mizuguchi)

セガにおいて、実車が登場するレースゲームの走りとなった『セガラリー・チャンピオンシップ』 をプロデュース。以来、『スペースチャンネル5』、『Rez』など、数々の斬新な作品を世に送り出す。セガの開発子会社であるユナイテッド・ゲーム・アーティスツ代表を経て、2003年10月キューエンタテインメント株式会社を設立。同社代表取締役チーフ・クリエイティブ・オフィサー。

 

 

ナインティナイン・ナイツ

マイクロソフト

対応機種

Xbox 360

発売日

4月20日発売予定

価格

7140円【税込】

ジャンル

アクション / 戦争・ファンタジー

備考

開発:キューエンタテインメント/ファンタグラム


 

※『ナインティナイン・ナイツ』の公式サイトはこちら

 

週刊ファミ通1月27日号(1月13日発売)において、『N3』の最新情報が掲載!

 

 

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