第38回 ファミコン:その23(『ハイパーオリンピック』後編)
ゲーム人生回顧録 - 乱舞吉田
2002/11/24
前々回、前回に続いて、コナミの『ハイパーオリンピック』の話です。連打に特化したこのゲームでは、ゲームセンターに登場してすぐに、さまざまな連打方法が編み出されてきました。ですが、その究極とも呼べる連打方法がついに登場。それが、鉄定規を使った連打方法だったのです!!
それではさっそく、鉄定規を使った連打方法のやりかたについて説明しましょう。これを言葉で説明するのは難しいのですが、わかりやすく説明すると、鉄定規をなびかせ、その振動を利用してボタンを連打する仕組みです。使用する鉄定規は、文房具屋さんで売っている10〜15センチメートルくらいの鉄でできた定規。これを、『ハイパーオリンピック』のコンパネにセットするんですね。けっして、道具こすりのときのように、コインや100円ライターの底、ガチャガチャのカプセルの代わりに使用するのではありません。それらとはぜんぜん異なる方法……というか、着眼点からしてまったく違っています。いまでも、「これを最初に考えついた人はスゴイなぁ!」と思うほどに、とんでもない、独特のやりかたなんですよ。まず鉄定規を、コンパネに対して垂直になるようにボタンの上に置きます。そして自分から見て、鉄定規の奥(筐体側のほう)を左腕の指で押さえつけて固定します。このとき、鉄定規の手前(自分側のほう)を筐体のコンパネからハミ出させます。その鉄定規のだいたいまん中くらいの下に、ボタンがくる感じ。そして右腕を使って筐体からハミ出ている鉄定規部分を、叩く……というか鉄定規が「ビヨヨーン」としなるように弾くのです。この弾くというのは、デコピンのように指先を使うではなく、腕を上から振り下ろすような感じで、ある意味チョップするような感じで鉄定規に腕を振り下ろして弾くわけです。そうすると、1回鉄定規を弾いただけで、鉄定規が「ビヨヨーン」としなり、ものすごい勢いで振動して、結果、鉄定規の下にあるボタンが猛連打されるんです。もう、たった1回弾いただけで、何10回もボタンが押されるんです。なので、プレイヤーは「ビヨヨーン」、「ビヨヨーン」、「ビヨヨーン」と、リズミカルに定規を弾くだけ。非常に簡単です。たったそれだけで、いままでに編み出されてきたボタン連打方法を楽々と凌駕する記録が出せてしまうのです。やりかたがとても簡単で、見た目も斬新で、コンパネにもあまり傷をつけない。鉄定規を使った『ハイパーオリンピック』攻略法は、まさに完璧といってもいい連打方法だったのです。
前回書いたように、僕は行きつけのゲームセンターで、あまりよく知らない学生グループが鉄定規連打で『ハイパーオリンピック』のハイスコアを更新するのを始めて目撃しました。やりかたは、観察して覚えたわけです。そうしたら取る行動はひとつですよね。ゲームセンターから文房具屋へチャリンコを猛スピードで飛ばして、鉄定規を購入。そしてさっきとは別のゲームセンターへ行って、鉄定規連打を試してみたんです。なぜ別のゲームセンターへ行ったかというと、「なんだよアイツ、俺たちのマネしてるぜ」とか、イチャモンつけられるのを避けるため。いまのようにインターネットや雑誌による情報公開がなかったため、当時はゲームの攻略法や情報は仲間内で教え合うだけだったんですね。ゲームセンターには、派閥というか微妙なグループ勢力があって、仲間じゃないヤツに聞いたり教えたりすることは基本的になかったんです。『ドルアーガの塔』のときの宝箱の出しかたのときなんて、その最たるものでしたから。けっこう閉鎖的な世界だったんです。まぁ、そんなわけで、別のゲームセンターで試してみたんですよ、鉄定規連打のパワーを。そうしたら、スゴイのなんの。いままでの連打方法とは別次元のレベルですよ。『ドラゴンボール』でたとえるなら、いままでの連打方法がサイヤ人なら、定規連打はスーパーサイヤ人っつ〜くらい(笑)。スカウターで見たら、絶対にそれくらい戦闘力(連打力)の数値が違っていたハズです。定規連打のパワーに魅了された僕は、やりかたを実践してマスターして、翌日友だちに教えてあげよう(自慢しよう)と、学校へ鉄定規を持って行ったのでした。しか〜し、同じクラスには、僕と同じように鉄定規を持っている者がすでにいました……。ガックリ。しかも数人。まぁ、冷静に考えてみれば、当然のことなんですけどね。あのゲームセンターに出入りしていたのは、僕だけじゃないわけですから。で、結局その日のうちに、クラス中のゲーム好きな男子に鉄定規の情報が知れ渡りました。初めて鉄定規のことを知った僕の友だちは、放課後に速攻で家へ帰っておこずかいを持って舞い戻り、学校前の文房具屋で鉄定規を購入。その日から、僕の学校の付近のゲームセンターでは、鉄定規を使った『ハイパーオリンピック』プレイが大流行しました。そして2〜3日後、学年は関係なく、学校中の男子のあいだで鉄定規が大流行。子供の情報網はものすごい。あなどれない。とんでもないモノなんですよね。昔から。そして、いまも。で、そんなこんなで、学校前の文房具屋では鉄定規はすでに品切れ状態。品切れで買えなかった人や、おこずかいが足りなくて買えなかった人は、自宅からプラスチックの定規を持ち出し、それを代用する始末。でも、プラスチックだとすぐ折れちゃうんですよね。鉄定規と同じ感覚で、「ビヨヨーン」て調子に乗ってやってると、「ボキッ!」ってまっぷたつに……。で、親に怒られるわけです(笑)。一時期は、男子はみんな胸ポケットに、鉄またはプラスチックの定規を差していましたから。調子に乗って休み時間に鉄定連打を練習して、先生に見つかって定規を没収される生徒もいたりしてね(笑)。さらにしばらくすると、鉄定規の代わりに糸ノコの歯を使い出すヤツが登場しました。技術室にあるノコギリの種類のひとつ、糸ノコ。それの歯の部分です。ノコギリの歯ですから、片面にはビッシリとギザギザがついていて、非常に危ないアイテム。ウッカリすると手を切って流血しちゃうんですよ。それでも、糸ノコの歯は鉄定規よりも固くてしなりがよく、イイ記録が出やすかったので、危険を冒してでも使う人がいた、と。さすがに糸ノコの歯を使う人は、僕のまわりでもごく少数派でしたけれど。まぁ、このようにして『ハイパーオリンピック』の連打は鉄定規の登場でピークを迎え、逆にそれを越える連打方法が出ないままブームが去っていきました。コナミの開発者も、こんな鉄定規を使ったドーピング方法が編み出されて大流行するとは、予想しなかったに違いない。だって、当時の100メートル走の実在の世界記録が、男子で9秒93です。なのにゲームでは、みんな6秒台を軽く出しちゃってましたから……(笑)。

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▲ファミコン版『ハイパーオリンピック』の画面。ファミコンでも連打競争が勃発! |
今回は、ファミコン版の話ではなく、アーケード版の連打にまつわる話となりましたが、いちおうファミコン版の話もしておきますね。ファミコン版は、アーケード版の登場後、約1年後に移植されました。収録された競技は、100メートル走、走り幅跳び、110メートルハードル、槍投げの4種目。ハンマー投げはカットされました。で、ファミコン版の特徴が、ハイパーショットという専用の連打コントローラでしか遊べない点。当時は、ソフトとハイパーショットがセットで6500円で売られていました。僕は、アーケード版を飽きるほど遊んでいたので、ファミコン版は買わず。友だちの家で、対戦して盛り上がっていました。アーケード版を体験していないユーザーにとっては、連打という要素がすごく斬新で、ハマった人が多かったみたいです。

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▲これが専用のコントローラーのハイパーショットです。 |
あと、ファミコン版『ハイパーオリンピック』を語るうえでハズせないのが、『殿様バージョン』の存在でしょうか。これは、プレイヤーキャラクターのグラフィックが、志村けんのバカ殿になっているというものでした。TBSの人気テレビ番組『8時だよ!全員集合』(当時はフジの『オレたちひょうきん族』に人気&視聴率の面で押されていましたが……)のバカ殿のコントの中で使用されたソフトです。僕は、リアルタイムで実際に志村けんが番組中でプレイしているのを観ました。たしか、当時の『8時だよ!全員集合』の番組スポンサーがコナミで、そのタイアップ用に製作された特別バージョンだったと記憶しています。たしか、この『殿様バージョン』は、番組放送後に限定発売(?)されたんですよね。

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▲『殿様バージョン』のカートリッジ。パッケージやソフトの外見、マニュアルの作りなどは通常版と同じ。限定版のシールが貼ってあるのが目印です。 |

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▲バカ殿が走る。基本的なゲーム内容は同じですが、こちらはゲームスタート時に種目選択ができました。 |
(c)1985 Konami