第36回 ファミコン:その21(『ハイパーオリンピック』前編)
ゲーム人生回顧録 - 乱舞吉田
2002/11/3
'85年に発売されたファミコンソフトの話。今回取り上げるのは、コナミの『ハイパーオリンピック』。このゲームはアーケードからの移植作なんですが、僕は『ハイパーオリンピック』に、ほかのゲームとはまったく違う特別な体験があるんです。どちらかというと、ファミコン版よりもアーケード版のほうに。今回は、そんなお話を中心に書きたいと思います。
『ハイパーオリンピック』のアーケード版は、'83年に登場しました。同年に開催されたロサンゼルスオリンピックに合わせて作成されたゲームです。オリンピックがテーマということで、100メートル走、走り幅跳び、110メートルハードル、槍投げ、ハンマー投げといった競技が収録されていました。これらの競技に挑戦して、"クオリファイ(予選通過基準)"を満たせば、つぎの競技へ進める内容でした。で、このゲーム最大の特徴が、ボタン連打ッ! とにかくボタン連打が重要なゲームだったんです。このゲームの(専用)コンパネがチョット変わっていました。テーブル型のアーケードゲームの筐体にはお約束だった、レバーがなかったんです!? ボタンが3つあるだけ……。そのボタンも、ランボタン、ジャンプボタン、ランボタンと並んでいて、ふたつのランボタンは同じ役割でした。どちらかひとつだけ使用しても、両方使用してもオーケーというわけです。すなわち、最低限ランボタンとジャンプボタンのふたつしか使わなくてもいい。逆にいえば、このふたつのボタンの役割がとても大きかったわけなんです。なかでもランボタンの使用頻度は、もう尋常じゃなかった。たとえば第一競技の100メートル走は、ランボタンのみ使用します。スタートの合図の瞬間から、ランボタンをひたすら叩くだけ。速く叩けば叩くほど、ゲーム中のキャラクターが加速していき、いい記録(スコア)が出せるのです。ほかの競技でもランボタン連打はとても重要な要素で、基本的にランボタンを連打して加速したりパワーを溜めたりして、タイミングに合わせてジャンプボタンを押すというルールのゲームでした。そんなわけなので、このゲームを攻略するいちばん重要な要素は、"連打力"。とにかくボタン連打ッ! なにがなんでもボタン連打ッ!! もう、「ボタン連打命!」なんです。『ハイパーオリンピック』以前にも、ボタン連打が必要なゲームは多々ありました。たとえば、シューティングゲームとか。でも、ハイパーオリンピックにおける連打は、それらとはレベルがぜんぜん違っていたんですよ! シューティングゲームの連打が「タン、タン、タン、タン!」という連打だとすると、『ハイパーオリンピック』の連打は「ドガガガガガガガガガガガガガガッ!!」という感じで。とにかく全力を出して連打する……というか、しなきゃいけないんです。1回プレイしたあとは、もう腕が疲れて疲れて、続けてプレイすることなどできないくらいに。それくらい気合いを入れてボタン連打をするゲームだったんですよ、『ハイパーオリンピック』は。
当時のゲームセンターでは、『ハイパーオリンピック』で「誰がいちばん早く連打できるか?」という熾烈な争いが発生していました。ですが、当時はまだ連打未開拓時代。連射機能なんて、もちろん存在しません。そんな時代、『ハイパーオリンピック』を通じて、連打の歴史が急速に進化していったんですね〜。『ハイパーオリンピック』でハイスコアを叩き出そうと、みんな必死になって連打を研磨し始めたんです。まず、ふつうの人は人差し指をできるだけ早く動かしてボタンを叩いていました。指先だけを動かすのではなく、腕全体を動かしてボタンを押す。連打と呼ぶよりは、ボタン連続押し。そんな表現に近い方法がこれでした。続いて、注目を集め出したのが、ピアノ連打です。ピアノでいう"顫音(せんおん)"または"トリル"という奏法の応用で、本来はピアノのふたつの鍵盤を、2本の指先で交互にす速く叩くテクニックです。それをゲームでは、人指し指と中指を交互に動かしてひとつのボタンを叩くわけ。「ピロピロピロピロッ」って感じですね。そのピアノ連打と同じくらいの時期に台頭してきたのが、痙攣打ち。肘から先の腕を固定して筋肉を痙攣させることで、小刻みな震えを生み出し、その振動を指先から伝えてボタンを連打する方法です。これはのちに、『スターフォース』などでハドソンの高橋名人が全国的に広めた連打法として有名ですね。「タタタタタタタタッ」って感じです。ピアノ連打、痙攣打ちとほぼ同じタイミングで、意外な方法による連打も登場しました。"こすり"です。これは、ボタンに対してほぼ直角にツメを立て、ツメをボタンの左右の端を通過させるように、腕をす速く左右に移動させるテクニックでした。高速ワイパーというか。正直、ボタンを"押して"ないんですよ。でも結果として高速でボタンが押されるという……。ゲームセンタ−で、この"こすり"を始めてみたときは衝撃でしたね。「なんだよ、それ!?」って。そんな感じで、『ハイパーオリンピック』登場直後は、ピアノ連打、痙攣打ち、こすりと、3種類の連打方法がゲームセンターで凌ぎを削っていました。まさに、三国時代。ただ、ピアノ連打はかなりの慣れとテクニックが必要なので達人は少なく、痙攣打ちは腕にかなりの負担をかけるため連続使用は難しく、こすりはツメが割れたり指先を痛めたりとダメージがデカかった。どれにも、一長一短があったんです。そんな三国時代が続くかに見えたのですが……。人間は進化します。猿は道具を使い、火を使い、人間に進化した。そして人間は、さらにつぎつぎと新しいモノを発見、発明して、いまに至った。こう書くと大げさな感じですが、『ハイパーオリンピック』は連打の歴史において外せないできごとを刻み込んだのです。
それが、10円玉や100円玉といったコイン、100円ライターの底、ガチャガチャのカプセル。そして……。そう、アイテムの使用です。おっと、連打について書いていたら、ついつい長くなってしまいました。今回は、『ハイパーオリンピック』の前編ということでとりあえず終了して、次回へ続きます。連打の話は、いよいよ佳境に突入。あの歴史的アイテム、○○○の登場だぁ〜ッ!!(笑)