水口哲也氏が東京工芸大学のオープンキャンパスで語る! その創作の極意とは!?
●「つねに新しい表現の可能性を捜していきたい」
この4月よりゲームコースを開設した東京工芸大学だが、受験志望生に同校の特徴をアピールする“オープンキャンパス”を2007年8月25日に実施した。今回のオープンキャンパスの目玉となる催しは、キューエンタテインメント代表取締役 COO、水口哲也氏による特別講演“Inspiration led creativity〜想像力が創造を導く〜”。今回の講演は、『パックマン』を手がけたことで知られる東京工芸大学の岩谷徹教授と水口氏が旧知の間柄だったことから実現したもの。「水口さんはいろんなことにチャレンジされている方で、ゲームクリエーターとして世界で活躍されています。今回は貴重なお話が聞けると思いますよ」と岩谷氏の紹介により始まった水口哲也氏の講演は、自身のゲーム開発暦を足がかりに、“モノ作り”に対する心構えを教示するという、クリエーター志望者にとても有意義な内容となった。
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▲自身の手がけたきた作品の映像を交えながら、当時の秘話などを織り交ぜ語った水口氏だった。 |
まず水口氏は、大学時代のエピソードから話を始めた。格別目的のないままとある大学の経済学部に入学した水口氏は、大学の門をくぐったとたんに「間違ったことをしているのでは?」と思い入学式の日に休学届けを出し、夜は新宿歌舞伎町の居酒屋でバイトをしながら、昼は映画館をハシゴして1日2〜3本の映画を見るという生活を始めることになる。
「自分が見た映画の感想をノートに綴ったんです。何がおもしろくて何がおもしろくないか、自分が感じたことをとにかく書き綴っていくことにしました。ノートは何冊も溜まってきたのですが、当時は意識していたわけではないのですが、それは自分が何を感じているのか、自分の欲求のメカニズムを確認していく作業だったような気がします」(水口)
あるいはそれは、水口氏自身による自分捜しの旅だったのかもしれない。そこで“表現をする作業”というものに心惹かれた水口氏は、日本大学の芸術学部に入学することになる。
「それまで人生のなんたるかなんて少しも考えたことはなかったのですが、自分が刺激されてこじ開けられて、何を糧にして生きていくべきかを大学の4年間で学びました。自分の生涯でもっとも真剣に勉強をした4年間でもありましたね」(水口)
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▲「音楽とゲームの融合はライフワークにしていきたい」と水口氏。 |
そんな水口氏が、大学4年間の勉強の後で就職先に選んだのは、ゲーム会社のセガ。「インタラクティブな遊びを作って世界中の人を楽しませることに意義を感じていた」という水口氏は、セガ以外の就職先を考えていなかった。水口氏がセガに入社したころは、まさに3Dが技術的に注目され出したとき。以後水口氏は『セガラリーチャンピオンシップ』(’94年)や『マンクスTT』(’95年)、『セガラリー2』(’98年)といった、アーケード向けのレースゲームを手がけることになる。
「そのころから自分の中に大きなモヤモヤが出始めたんです。歌舞伎町でバイトを見ながら映画をしていたころのことがふと思い出されました。当時僕は映画を見ながら“これはおもしろい!”などと書いていたわけですが、そう書くからにはちゃんとした理由があるんです。僕がおもしろいと思うものは、多くの人に共通する感覚でもあった。最大公約数的な“おもしろさ”というものがあるんですね。なぜおもしろいんだろう……という本質をクリアーしないといけないなと思ったんです」(水口)
エンターテインメントには“もてなす”という意味が含まれているらしいが、そこから発想すると、モノを作ってもてなすという行為には、従来とは違うもっと違った領域があるのではないか……と感じた水口氏は、「1999年に思い切って仕事の内容を変えてみようと」思い、家庭用ゲーム機の分野に活動の場を移すことになる。そこから生まれてきたのがドリームキャスト用ソフト『スペースチャンネル5』(‘99年)であり、プレイステーション2用ソフト『Rez』(2001年)だ。以後の水口氏の活動を方向づける音楽とゲームの融合したこれらの作品は、日本よりもむしろ世界で高い評価を得ることになる。
「ゲームと音楽の融合は僕のライフワークのようなもの。細く永く続けていきたいです。この手のソフトは爆発的に売れるわけではないので、やりながらいろいろと探っていく感じですね。音とゲームの融合が、世界の垣根を越えてどこまでつながっていくか、非常に楽しみです」(水口)
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▲水口氏の代表作のひとつである『スペースチャンネル5』。主人公のうららはゲームから飛び出してさまざまなシーンで活躍した。 |
もう一方で、水口氏の大きなテーマとしてあるのが、ドラマ(映画)とゲームの融合で、その代表格が全世界で80万本を越えるセールスを記録した、Xbox 360用ソフト『ナインティナイン・ナイツ(N3)』(2006年)だ。
「『N3』は別な意味で大きなチャレンジでしたね。僕はそれまで戦争をテーマにした作品を作るのを封印してきました。人を殺すという行為はポジティブなものではないので、人を殺すゲームは最初はスカッとするけど、けっして後味のいいものではない。そんな僕の考えを変えたのが、2001年9月11日に起こったニューヨークのテロでした。9.11の映像をテレビで見た瞬間に、背筋が凍って足が震えました。そしてその後の世界中の報道を見るにつけ、争いは不毛ではあるけれど、それぞれの国にはそれぞれの価値観があり、それぞれの正義があるということに気付かされたんです。そういう意味では、戦争は主観の正義と主観の正義のぶつかりあいですよね。映画は勧善懲悪で、ヒーローが悪を倒して爽快な気分になっておしまい……なのですが、ゲームはインタラクティブだから両方の立場に立てる。ふたつの勢力がぶつかって、両方の立場に立てたら何かがあるのではないか?という直感があった。それが『N3』ですね」(水口)
『N3』では人間族とゴブリン族のぶつかりあいが描かれるのだが、人間族の数キャラをクリアーすると、あるときからゴブリンの少年が選択できるようになる。そのゴブリンをプレイすると、それまでは「ゴブリン憎し!」でプレイしてきた感情が、「人間は許せない!」という感情に逆転していく……。
「ゴブリンの少年をプレイして、最初の1分くらい映像を見ただけで、あっさりとスイッチが切り替わる。人間ってそういう存在なんです。補完する能力を持っているので感情移入ができる。それが、ゲームを含めすべてのエンターテインメントの原点ですね」(水口)
「つねに新しい可能性や表現を捜している」という水口氏は、最近では音楽ユニット“元気ロケット”のプロデュースを手がけたり、世界規模のライブイベント“ライブアース”のオープニングアクトの演出を担当したりと、ゲーム以外の分野にもそのクリエイティビティーを発揮しようとしている。「人が感動するということで何かを作れるのであれば、関わっていきたい」と“モノ作り”に対する姿勢は極めて貪欲だ。
「自分のできることの範囲を限定せずに、先人のしたことを超えるくらいの気概を持ってとりくんでほしい」と最後にクリエーター予備軍にエールを送った水口氏。それは取りも直さず、自身の足跡の再確認でもあったかのようだった。いずれにせよ、来場者には、そんな水口氏の熱い思いはしっかりと伝わったようだった。
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▲水口氏自身がプロデュースを手がける音楽ユニット“元気ロケット”の映像なども流された。 |
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▲旧知の仲という岩谷徹氏(左)、と水口哲也氏(右)。「若い人たちの可能性は計り知れない」と水口氏もクリエーター候補生たちにエールを送る。 |
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▲オープンキャンパスではゲームなどを遊ぶこともできた。 |
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▲モーションキャプチャーを体験することも。 |
▲ゲームキャラクター制作の体験も可能だった。 |
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