カプコンやセガなど大手メーカーのクリエーターが開発の真髄を語る
【ゲームツール&ミドルウェアフォーラム 2007】
●『ファンタシースターユニバース』キャラエディットとマップ生成のヒミツ
「開発の具体的な事例が知りたい」というクリエーターの要望に応える形で、今回の"ゲームツール&ミドルウェアフォーラム 2007"では、開発現場の最前線に身を置く複数のクリエーターが登壇。ゲーム開発者にとってはこのうえもなく興味深いだろう講演を行っている。極めて実践的な講演の数々に、会場では熱心にメモを取る姿が多く見られた。ここではそんなセミナーのなかから、いくつかをピックアップして紹介することにしよう。
オンラインRPGとして人気も高いセガの『ファンタシースターユニバース』。今回のセッションでは、第三GE開発事業部デザインセクションの北村耕生氏と池谷章氏が登壇。同作のなかでもとくに評価の高いキャラクターエディットとマップ作成についてレクチャーを行った。
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▲もっとも基本的な部分であり、重要な部分でもある、キャラクターとマップ制作を北村氏(左)と池谷氏(右)が語る。 |
まずは、キャラクターエディット制作事例の解説を担当したのは池谷氏。池谷氏は、ひとつのキャラクターのエディットパターンができあがるまでを、テクスチャーの貼り付けから、色調・バリエーション作成、体型の設定まで、開発現場で実際に利用されたツールを使って順を追って丁寧に実演。オンラインPRGにおいては、キャラクターエディットは自分の分身を作る作業でもあるだけに、豊富なエディットを実現するためには池谷氏も相当の注力をしたよう。とくに、ドット単位での描き込みに始まり、陰影とハイライトの挿入まで、バラつきが出ないよう丹念に行われるテクスチャー貼り付けの実演映像からは、執念にも似た開発者のこだわりを感じることができた。
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▲開発者のこだわりが、エディットの完成度にそのままつながるテクスチャーの貼り付け作業。 |
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▲キャラクターの体型は"ボーン"と呼ばれる骨組みのようなものが伸縮することで変化する。ただし、腹部だけは"太鼓腹"など特徴的な体型を表現するため特別なボーンが使用される。 |
すでに十分なレベルまで作りこまれたキャラクターエディットだが、池谷氏はさらなる高みを目指していることを明かした。それは物理演算の導入だ。複数のプレイヤーキャラが一度に登場するオンラインゲームでは、髪の毛など細かい表現に物理的な計算にもとづく動きを取り入れるのは難しい。「しかし、次世代機の登場により状況は変わりつつあるのではないか」と池谷氏は言う。キャラクターに物理演算を取り入れることで、パターン化されてはいない、よりリアルな表現が可能になる。さらなる進化を遂げる『ファンタシースターユニバース』の今後のキャラクターエディットにも注目が集まるところだ。
一方の北村氏は、マップの作成手順を解説した。『ファンタシースターユニバース』では、マップ作成のツールとして自作の"ダンジョンエディター"が使用されている。この"ダンジョンエディター"を作成した理由について北村氏は、「オンラインとオフラインどちらでもプレイが可能なため2倍の量のダンジョンを作る必要がありました。それにともなってデザイナーだけでなく企画の人間でも簡単にマップを作れたら便利だろうという発想があったんです」と説明した。手軽さを実現したことで、バラエティーに富んだマップを実現した"ダンジョンエディター"は、結果として作業の効率化も図ることになった。スクリーン上で披露されたマップ作成手順は、正方形のマップパーツをパズルのように並べていくといった内容で、高低差の調整にはパーツの4隅に設定されている数値を変更するだけで自動的に最適化される"モーフ変形"機能が実装されている。北村氏は今後この"モーフ変形"に改良を加え、高低差の調整だけでなくグラフィック表現の変更もできるようにしたいと語った。
現状に満足せずにあくまでも進化と効率化を求めた北村氏と池谷氏。その"どん欲"とでも言うべき開発の姿勢に、『ファンタシースターユニバース』人気の秘密を垣間見た思いがした。開発への取り組みの秘訣を明かしてくれたふたりに、参加者からは惜しみない拍手が送られた。
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▲パズルを組み合わせるようにマップモデルを並べる。モデルは屋内用と屋外用でサイズが異なっていて、室外用モデルのほうが若干大きめとなっている。 |
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▲北村氏がさらなる改良を予定しているモーフ変形。実現すれば、効率とクオリティの両方をアップさせることができる。 |
●サラウンドはゲームユーザーのために何ができるか?
ゲームの表現がリアルになるにつれ注目を集めているのがゲームの"音"。カプコンのソフトウェア技術部 サウンド技術チームに所属する増田智裕氏は、"感じて作るゲームサラウンド〜聴き手のために何ができるか?〜"という魅力的なタイトルで、近年のゲームでは標準仕様になってきている"サラウンド"の効果的な活用方法について講演をした。「"聞いた感じがよければいい"などの認識から、ときとしてサラウンドは誤解した使われかたをしています」と切り出した増田氏は、"聴く側の感じかた"の重要性を強調。続けて、サラウンドがユーザーに与える感覚としては、"包まれる"、"囲む"、"発見する"、"安心"、"不安"、"予測不可"の6つがあり、「それらが効果的に使用されてこそサラウンドとしての意味があります」(増田)とした。
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▲人間の知覚(聴覚)といった音に関する根源的な部分についても触れられた。 |
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▲誤解した使われかたのサラウンドは「人間の聴覚があまり意識されていない」と語る増田氏。 |
とはいえ、ゲームというインタラクティブ性の高いメディアにおいては、送り手の意図を的確に伝えるのは困難な作業。その問題点を克服するために開発者の取るべき姿勢が、"感じて作る"ことにあるのだと増田氏は主張する。増田氏の言う"感じて作る"とは、自分の感覚と一般ユーザーとのズレを理解し、それらをどう適切に使い分けるかということ。「科学的、心理的に人間というものを予測して、遊び心を大切にしながら、"なぜそう聴こえるのか?"というギモンを大切にしてほしい」と増田氏は講演を締めくくった。聴き手(ユーザー)のことを第一に考えるという増田氏の姿勢は、すべてのゲーム開発者にとっての基本姿勢だと言えるだろう。
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▲セミナーでは終始、聴き手側を理解することの重要性が語られ、ユーザーを第一とする増田氏のポリシーを伺うことができた。 |
●『押忍!闘え!応援団』を救った開発ツールとは?
最近では、ニンテンドーDS用ソフト『押忍!闘え!応援団』の開発元としておなじみのイニス。今回のセミナーでは、制作統括ディレクターの富士貴史氏とアニメーションリードの鈴木一徹氏が、"『押忍!闘え!応援団』『ELITE BEAT AGENTS』開発事例セミナー"と題する講演を行った。いっぷう変わった音楽ゲームとして、海外でも高い評価を得た『押忍!闘え!応援団』(英語タイトル『ELITE BEAT AGENTS』)。今回の講演では、その完成に至るまでのプロセスが紹介された。シナリオ→絵コンテ→レイアウト→モーションコンテ→オーサリング(データを編集して1本のソフトにまとめること)というプロセスを経て完成されたという『押忍!闘え!応援団』だが、もっともネックになったのは、容量の問題だという。
「『押忍!闘え!応援団』では音の容量が全体の半分を占めます。一方で、物語には分岐もあり、クオリティーの高い絵を大量に用意する必要もありました。5月に発売されたばかりの『燃えろ!熱血リズム魂 押忍!闘え!応援団2』では、1800カット8000枚のグラフィックを使用しています。そこで求められたのが、いかに画像の容量を抑えるか……ということでした」(鈴木)
そこで鈴木氏は、ウェブテクノロジー社の"OPTPiX iMageStudio for NINTENDO DS"というツールを使って、いかにオリジナルの絵と遜色なくグラフィックデータを減色していくかを紹介してくれた。効率化できる作業は効率化しつつ、「オーサリングなどには綿密な時間をかけます」(富士)という徹底した品質管理が『押忍!闘え!応援団』を生み出したようだ。
以上駆け足でいくつかの講演を追いかけてきたが、本来はあまりオープンにされない各社の開発ノウハウが惜しみなく披露されたということで、今回のセミナーは来場者にとってもかなり貴重な機会だったようだ。国内ゲームメーカーの開発力の底上げを促す意味でも、今後もこうした"技術交流の場"を積極的に設けてほしいものだと思う。
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▲イニスの制作統括ディレクター、富士貴史氏(右)とアニメーションリード、鈴木一徹氏(左)。個性的な『押忍!闘え!応援団』を熱く語る。 |
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▲グラフィックツールで作ったオリジナルの画像を"OPTPiX iMageStudio for NINTENDO DS"で減色。限られたスペックのなかで、いかにいいものに仕上げるかもゲーム開発者にとって大切なスキルと言えるだろう。 |
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▲実機プレビューでは、自社ツールを使って1カットごとに確認しているという。細かい心配りが結果としてユーザーの支持を受けることになる。 |
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