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『デッドライジング』制作秘話も! カプコンの稲船氏がクリエーターの卵たちにメッセージ

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●ゲーム開発は、いかに壁を乗り越えるか!

▲毎年恒例、デジタルエンタテインメントアカデミーの入学式特別講演会に、カプコンの稲船氏が登場! 新入生にメッセージを送った。


 ゲームクリエーターを育成する専門学校、デジタルエンタテインメントアカデミーの入学式が、2007年4月5日に都内で開催された。この学校の入学式では毎年、入学式のあとに特別講演会が催され、著名クリエーターが新入生や在校生、保護者にスピーチを行っている。今年は、カプコンの常務執行役員で、開発統括本部長を務める稲船敬二氏が出演した。

 稲船氏の講演のテーマは、"次世代機に見るゲームの将来"。じつはこれ、2007年3月にアメリカで開催されたGDC2007での同氏の講演と同じタイトルなのだが、今回はゲームクリエーターを目指す若者に向けて、よりメッセージ性の高い話が展開されたのだ。稲船氏が新入生たちに伝えたかったことは、「ゲーム作りにおいての壁をいかに乗り越えるか」というテーマに集約された。


▲稲船氏は学生時代、じつは同じ関西にあったKONAMIに入社したかったのだとか!

 「僕はこれまで、たくさんのゲームを作ってきましたが、いろいろな壁を乗り越えてやってきました。企業というのは利益を追求するもの。つまり、売れるゲームを作るのが目的なんです。クリエーターは、おもしろいゲームを作りたいと思うものですが、おもしろいゲームと売れるゲームは、必ずしも一致しないんですね。たとえば、いまゲーム業界では続編モノが多いですよね? カプコンのようなサードメーカーは、新しいハードに参入する上で、どうしても続編に頼ってしまう。ハードが売れなかったら、どんなにソフトがおもしろくても売れないわけですから、続編というリスクヘッジをしてしまうんです。でも僕は、新しいハードを買う人は、新しい何かに期待して購入しているんだと思う。新しいものを作っていかなくちゃいけないと思っています。それが、ゲーム作りにおいてのひとつの壁なわけです」(稲船)
 

 稲船氏は順を追って、自身がいかにその壁と戦ってきたかを語った。カプコンにキャラクターデザイナーとして入社して、班長から係長、課長へと社内の地位が上がっていったときのこと。上司に呼ばれて、「稲船君はキャラクターデザイナーだよね? でもがんばれば、部長待遇にしてあげる」と言われたのだそうだ。当時、社内ではプログラマーやプランナーのほうが地位が高く、キャラクターデザイナーでは部長になれなかった。上にいくためには、デザイナーからプランナーに「いわばジョブチェンジ」(稲船)をする人がほとんどだったのだという。しかし、稲船氏は、この壁に対して、キャラクターデザイナーで部長になってやろう、と決意。ジョブチェンジをすることなくデザイナーを続けながら、同時に企画の仕事もこなして部長職を勝ち取ったのだそうだ。


 壁にぶち当たったとき、選択肢はふたつある。それは、乗り越えるか、乗り越えないか。「乗り越える方法は、最終的には根性しかない」と稲船氏。ゲーム開発の上では、辛抱強く話し合いをしたり、相手が納得のいく方法を提示して、自身のやりたいことを勝ち取っていかなくてはならない。稲船氏は新入生たちに向かって、「戦うゲームを作るのだから、ゲームを作る人も戦わないと。闘争心だけは持っていてください」と語りかけた。


 一方、壁を乗り越えないとはどういうことか? 「乗り越えないというのは、つまり避けること。壁を越えずに道を戻ってしまうことです」(稲船)。ゲームクリエーターが壁を乗り越えずに陥りやすいことのひとつに、転職があるという。2〜3年もクリエーターをやっていると自信がつき、自分の活躍に対して給料が安いと不満を持つようになる。いまでこそ少ないそうだが、そんなときに別のゲームメーカーから「給料を2倍にするから」などと誘われ、入社したときの夢や将来目指しているものすべてを忘れて、飛びついてしまうのだそうだ。稲船氏は、「カプコンひと筋20年の僕ですら、何度も浮気しそうになりました。いまでもありますよ(笑)。でも、そこで踏みとどまる気持ちが大切。隣にいる人の給料とか、あまり周りを見ないほうがいいです。まずは自分がどういう実力をつけるかが重要なんです」と、アドバイスを送った。
 

▲『鬼武者』を作ったときも会社の反対に会い、稲船氏は「これは『戦国バイオハザード』です。『バイオ』だから売れます!」とウソをついて企画を進めていたのだとか!

 最近、稲船氏が壁を乗り越えた例としては、Xbox 360用ソフト『デッドライジング』と『ロスト プラネット』の開発が挙げられた。この2タイトルは、稲船氏に言わせると三重苦を背負っていたとか。「Xbox 360は日本では売れない」、「『ロスト プラネット』のようなシューターゲームは日本では売れない」、「海外市場を視野に入れたゲームは失敗する」という、ゲーム業界の3つのお約束だ。当然、社内でも猛反対に会ったが、稲船氏はここで、「日本国内のデベロッパーだけではなく、海外のメーカーをも見なくてはだめだ」と考えた。「『バイオハザード』がいくら売れたと言っても全世界で450万本、『グランド・セフト・オート』は1000万本以上売れているという状況の中、いかにしたら海外で売れるかをチャレンジして、学んでいかなくては」(稲船)。そこで、「新しいハードを買ったとき、ユーザーは新しいものを求めている」という考えに支えられて、Xbox 360という新ハードにそのチャレンジを託したのだ。


 『デッドライジング』と『ロスト プラネット』は同時期に開発されたが、とくに『デッドライジング』は最後まで「ヤバい」と言われ続けたとか。開発チーム内では、「いや、これはおもしろい。日本人にはこのおもしろさはわからないけど、俺たちと外人にだけはわかる」と慰めあっていたのだそうだ。海外では発売まえから好感触だったが、稲船氏は、「ゾンビの手がちぎれたり、首が飛んだりという表現は、僕は笑ってほしかったんです。でも、日本人は残酷なものを笑わない」と分析。同じ表現でも、外国人ならバカ笑いするところを日本人はひいてしまうのだ。年齢別レイティングの問題とともに、こうした背景もあって日本版のソフトでは残酷な表現が削られた。結果的には、そんな日本人の中でも「Xbox 360ユーザーはわかる人が多くて」(稲船)、国内でも高評価を得た。『デッドライジング』については、海外の営業から続編の話もきているという。開発をしているかどうかについては明言しなかったが、ファンは期待して待ちたいところだ。


 自身の体験談を織り交ぜながら、いかにゲーム作りにおける壁を乗り越えていくかについて熱く語った稲船氏。最後は、以下のような言葉で新入生にメッセージを送った。


 「壁をどう意識して乗り越えるか、それには目標や目的が大切です。まずは、この学校を卒業する、辞めないという目標を立てて、がんばってください。その壁を乗り越えると、ゲームクリエーターという目標が現れます。そこで、カプコンという目標を持ってもらえたらありがたいですね。僕はいま、夢を持っています。それは、カプコンを世界一のゲーム会社にしたい、ということ。そのためには、皆さんのような若い才能が必要なんです。僕の夢のためにも、この学校を卒業していっしょに夢を見ましょう」(稲船)
 

▲講演の最後に、新入生から「ゲームクリエーターはモテますか?」と質問が飛んだ。稲船氏はこれに対し、「モテたいと思っちゃだめ。仕事ができる男は結果的にモテる」と持論を展開。「クリエーターがキャバクラに行って、ゲームを作っていると言うとモテるんです。でも、『バイオ』は知ってるけど、『ロックマン』は知らないと言われる。だからみんな、『バイオ』を作るようになって、最近子供向けのゲームがなくなっちゃったんですよ」と業界に警鐘を鳴らし、「キャバ嬢にモテてもゲーム業界の未来はないです!」と力説していた。


 

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