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ゲーム音楽界のカリスマ任天堂の近藤浩治氏のGDC初講演に、会場はスタンディングオベーション
【GDC 2007 リポート】

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●ゲームファン必読! 近藤氏が『マリオ』や『ゼルダ』のゲーム音楽の秘密を解き明かす

 スーパーマリオという言葉を耳にした瞬間、勝手にアタマの中で鳴り出すおなじみの音楽。その『スーパーマリオブラザーズ』の音楽を作った人こそ、この近藤浩冶氏(任天堂 サウンド統括グループ マネージャー)その人であり、『スーパーマリオ』シリーズや『ゼルダの伝説』シリーズをはじめ、ゲーム史に残る数々のゲーム音楽を生み出してきたサウンドクリエーターである。そんな近藤氏によるGDC 2007待望の初講義ということで、当然会場は超満員。心地よい熱気と緊張感の中、静かに講義はスタートした。

▲マリオとゼルダの任天堂二枚看板を筆頭に、同社の名作ゲームの数々を音楽の面から支えてきた近藤氏。作品と同様、非常に楽しく分かりやすい講義内容に、会場は熱心に耳を傾けていた。


 "インタラクティブな音風景を描き出す"と題して、近藤氏はファミコンの時代から一貫して心がけてきたゲーム音楽に大切な3つのポイント――(1)リズム、(2)バランス、(3)インタラクティブ性――を紹介。順番に解説しながら、誰もが知っている同氏の音楽をゲーム画面と合わせて聞き直し、そこに込められたアイデアや工夫をひとつひとつ確認していくという非常に楽しいスタイルで講義は進められた。

 ひとつめの"リズム"とは、ゲームに現れてくるリズムを的確に捉えること。ゲームは通例、キャラクターの動きであったり、ボタンを押すタイミングであったりと特定のリズムを持っており、そのリズムがゲームプレイの気持ちよさにつながるという。ファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』では、マリオの走る姿やジャンプしている姿を感覚的に捉えた結果、あのような音楽となり、特有のドライブ感につながったという。ゲーム特有のリズムを捉えたうえで、そのリズムをより活かすメロディーの作曲に移るわけだが、さすがの近藤氏も、印象的で飽きのこないメロディーを作るのは至難の業とのこと。「いつも製作には時間がかかり、終盤までスタッフを焦らせてしまいます」と会場の笑いを誘っていた。

 ちなみに『マリオ』シリーズの曲は、アクションや操作感の気持ちよさを感じてもらえるように心がけ、他方『ゼルダ』シリーズでは、情景や場所ごとの空気感を重視した曲にしているという。共通点としては、それぞれの曲を聞いたときにすぐ何の曲か分かるように、曲ごとの違いをわかりやすく出すようにしているそうで、それは新しい場所に来たときのワクワク感を演出すると同時に、どこまで来たかということをプレイヤーにすぐに知らせる記号的な意味も持っているという。

 続いて、ふたつめのポイントである"バランス"について。これは、効果音と曲のバランス、音量や音の高さのバランス、左右のバランスなどを意味する。たとえばゲームの主人公がつねに中心に位置していることが多い作品では、効果音を画面の中心で鳴らし、楽器は左右に割り振って配置するというバランスを取るという。また、「ゲーム1本で1曲とするような意識」(近藤)のもとで、ゲーム全体を見渡したときの各曲のバランスや、各曲のつながりの重要さにも留意。音楽によってゲーム内容を整理することも可能で、たとえば『マリオ」』シリーズでは、スターを取ったときの無敵の音楽はずっと同じテーマを使っており、「一定時間パワーアップする」という効果がわかりやすくなっているそうだ。そのほか、多人数での音楽製作においては、チーム間の綿密な意識統一がゲーム全体の質を左右するという点にも触れた。

▲実例として紹介された音楽は、参加者の誰もが知っているおなじみの名曲ばかり。ゲーム画面の映像と合わせて聞くことで、いかに同氏の音楽がゲームと一体となっているかも再確認させられた。


 そして、3つめの"インタラクティブ性"こそ、近藤氏が最重要と考えているポイント。

 「ゲームがほかのメディアと違うのはリアルタイムに反応がある点で、このインタラクティブ性を活かしたサウンドのアイデアを盛り込むことが、いちばん大事だと考えています。たとえばファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』では、残り時間が短くなると曲のテンポが速くなりますが、これはゲーム音楽というメディアだからこそ可能なアイデアですね」(近藤)

 そのほかにも、プレイヤーの状況によって音楽が変化する例として、「プレイヤーがいる場所によって演奏される楽器編成を変える」、「サラウンド機能を利用して、目標がいる方向から曲が流れてくる」といった氏が過去の作品で実践したユニークなアイデアをつぎつぎと披露。「曲のフレーズがランダムに変わる」というアイデアを盛り込んだニンテンドウ64版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の例では、実際に変化していくハイラル平原の曲を聞き比べた参加者から、思わず感嘆の声がもれていた。その曲は「広大なフィールドで何時間も聞く曲なので、飽きのこないようにしたかった」との配慮から、8小節12パターンのメロディーがランダムに変わっていく構成になっているとのこと。同時に、戦闘時は激しく、立ち止まっているときは穏やかに曲を変化させていくことで、フィールド曲としての統一感を保ちながら、戦いの緊張感や休息のやすらぎ感を表現したとのことだ。

 まとめとして近藤氏は、「ゲームというメディアは、CDや映画などのメディアとは違って、リアルタイムにインタラクティブな変化ができる点が本当におもしろい」と述べ、インタラクティブな変化を取り入れる利点として、「飽きのこないように、同じ音楽でもプレイするたびに変化するような曲を作ることができる」、「同じ曲内で曲想が変わることによって、多彩な演出ができる」、「曲の変化により新しい驚きを与えて、ゲームをより楽しく遊んでもらう」、「音楽側のアプローチにより、ゲームの楽しみを増やせる」の4点を挙げた。

 最後に「ゲーム音楽はいろいろなジャンルの音楽を作ることができるし、またいろいろなアイデアを盛り込めるところが本当に楽しいと思っています。ゲーム音楽は映画やテレビドラマなどの単なるBGMではなく、リアルタイムにプレイヤーの状況によって変化する音楽、特有なゲーム音楽ジャンルを確立できるよう、皆さんもいっしょにがんばっていきましょう」と、世界中から集まった参加者へのメッセージで締められた本講義。穏やかな語り口の中にも、"ゲームのための音楽"=ゲーム音楽への強い愛情とこだわりが感じられた近藤氏に、最後は満場のスタンディングオベーションが贈られたことは言うまでもない。

▲講義後、世界中から集まった大きいゲームボーイ(ガール)たちのサイン攻めに合う近藤氏。CDとかTシャツとかノートPCとか、いろんなものにサインを要求されてました(笑)。

 

 

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