さくらインターネット社長・笹田氏が語る LOTRO世界同時期発売の狙い
【AOGC 2007 Tokyo】
●欧米製オンラインゲームタイトルを成功させるカギとは?
2007年2月22日の"アジア オンラインゲーム カンファレンス 2007 東京(AOGC 2007 tokyo)"では、さくらインターネット代表取締役社長・笹田亮氏による講演も行われた。テーマは"『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン アングマールの影』(以下、LOTRO)世界同時期発売の狙い"。過去、日本でも欧米発の大型オンラインゲームは多数くサービスの提供が行われてきたが、軒並み撤退に追い込まれてきた歴史がある。そんななか、2007年の超大型タイトルとして期待されてるLOTROを、さくらインターネットが欧米と同時期にサービスインさせると発表されている。そこに込められた意図や事業戦略などが語られたのだ。
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▲さくらインターネット代表取締役社長兼最高経営責任者・笹田亮氏。 |
講演ではまず、さくらインターネットの事業内容が説明された。現在、さくらインターネットはデータセンター事業を主管としており、102ギガbpsという国内最大のバックボーン(データ通信力)のもと、ウェブサイトやメールといったインターネット上のコンテンツ配信を行っている。また、個人・事業者向けのレンタルサーバーやネットワークの運営、データ配信など、日本国内でインターネットを経由して利用されているコンテンツの約10パーセントほどが同社のデータセンターから配信されているとのこと(データリサーチ社調べ)。
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▲さくらインターネットの主管業務はデータ配信。家庭で見られているウェブサイトの10個にひとつは、同社のサーバーから配信されている計算だ。 |
●2007年を代表する大作オンラインゲームLOTRO
そんなさくらインターネットが、2007年にサービス提供を予定しているのがLOTRO。全世界で1億部の発行部数を誇る『The Lord of the Rings(邦題:指輪物語)』を原作に持つタイトルで、オンラインゲーム化されるのは本作が初の試みだ。アメリカのTurbine社がトールキンエンタープライゼスの協力を受け、原作の世界観を忠実かつ緻密に再現したMMO(多人数参加型)RPG。物語の主要キャラクターたちもゲームに登場し、原作に忠実に作られていること、また非常に美しいグラフィックが楽しめることが特徴。アメリカで制作され、2007年にサービスインを予定しているオンラインゲームの中では、大作のひとつに挙げられている作品でもある。
今回、さくらインターネットがLOTROを日本で提供するあたり、笹田は「日本でサービスされた著名な欧米タイトルがユーザーの獲得に苦しんできた。日本市場で欧米のゲーム(を成功させること)は厳しいのではないか?」といった話を、よく耳にする機会があったと言う。しかし、笹田氏は「そうではない」と語る。では、なぜ日本人に欧米のオンラインゲームが広く受け入れられないのか?
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▲LOTROはアメリカで制作されるオンラインゲームの中で、2007年サービスインするものとしては、もっとも期待されている1本。 |
●これまで欧米タイトルの失敗理由とされてきたもの
笹田氏は欧米タイトルの失敗の理由として、よく挙られる問題をふたつ提示した。ひとつは、キャラクターの問題。日本で提供されているキャラクターと欧米製のゲームで、キャラクターの造形に大きな隔たりがある。日本を含むアジア圏の市場では、アニメやマンガ文化が先行してきた背景を持つ。「こうした市場にとって、欧米のキャラクターがそぐわない(愛着が薄くなる)のではないか?」という問題だ。もうひとつは、課金体系に関して。欧米のオンラインゲーム(大型のMMORPG)は、ほとんどが月額課金が基本となっている。一方、日本国内ではアイテム課金に代表される、基本プレイ無料の運営スタイルが主流になりつつある。こういった、課金に対する文化・習慣の違いも、現在の日本市場にそぐわないと言われている。
しかし笹田氏は、欧米タイトルが日本国内で失敗してきた本当の理由は、これだけではないのではないか? 欧米タイトル失敗の理由は、「"コミュニティーを形成できなかった"ことに起因するのではないか?」と語った。
●欧米タイトルが失敗する本当のワケとは?
オンラインゲームにおいて、ユーザーが本当に求めていることは"友達といっしょに遊ぶ"という点。プレイヤーが単体で遊ぶ家庭用ゲームと異なり、実際に目の前にいるキャラクターはすべて別の人間が操作しているといった点が、オンラインゲームの最大の特徴である。それゆえ、プレイヤーはその世界でのコミュニティーをもっとも重要視する。またゲームに"はまった"理由では、"特定の友達ができた"や"助けてくれた・教えてくれた・親切にしてくれた"といった項目が大きな割合を占める。その反面、"グラフィックのよさ"などを挙げるユーザーの割り合いは少なく、前述の欧米製オンラインゲームが失敗する理由の"キャラクターの問題"は、必ずしもあてはまっていないとした。
これまで、国内で欧米製オンラインゲームの日本語版サービスが行われるまでには、本国版と大きなタイムラグがあった。そのため、コミュニティーが形成される過程は、まずゲームのファンや有志が日本語のファンサイトを立ち上げる。その結果、英語があまり得意でないユーザーも、ファンサイトの情報をもとに英語版のままゲームを楽しむ。そういった人々が、英語圏のゲーム内でローマ字チャットなどで意思の疎通を図るコミュニティーを形成する。そして、こういった英語のままでもゲームを遊ぶコアなユーザー層には、早くて1年後から数年かけて日本語版のサービスが始まったとき、すでに英語版で育てたキャラクターやコミュニティーをすべて捨て去ってまで、日本語版でプレイすることを望まない人々も多い。そのため、日本語版がサービスインした際、当初はライトユーザーを多く獲得できるが、毎日ゲームをプレイしギルド活動などを牽引するコアユーザーが不在なため、ゲーム内のコミュニティーが育ちにくい。笹田氏は、「こうした流れが、欧米のオンラインゲームが成功に結びつかない実情ではないか」と語った。
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▲アンケート結果では、ユーザーはキャラクターグラフィックや課金体系よりも、ゲーム内で形成されるコミュニティーを重視する傾向が現れている。 |
●ゲームの成長とコミュニティーの発展が成功につながる
日本で成功を収めている国産ゲームは、コアユーザーとライトユーザーが同じタイミングでゲームに触れることができる。また昨今、韓国で開発された多くのオンラインゲームが日本市場に流入してきており大きな成果を上げているが、韓国語版をプレイするにはWinodwsをハングル語に対応させなければならない。そして、国民番号の登録制度などの問題から、日本からアクセスすることは困難だ。結果として、コアゲーマー層も国内サービスを待たなければならない。コアユーザーとライトユーザーを問わず、そのゲームに興味のある人々が全員一斉にゲームを遊び始められる。こうした点が、国内で成功しているタイトルと欧米発のゲームのいちばんの違い。
LOTROは、世界ほぼ同時にサービスインする。英語版が発売されたときに、日本語版がプレイできる環境にあれば、多くの日本人プレイヤーは日本語版を選択してくれるはずである。実際には英語版よりも数週間の遅れてのリリースとなると思うが、βテスト中でいう状態でもプレイヤーにゲームを遊べる環境を提供したいと考えている。こうすることでコアユーザーが国内外で分散されることなく、日本国内のサービスに参加してもらえる。また、先日発表した『LiVo』との提携によって、これまでコアユーザー主体にコミュニティーを形成してきた欧米製MMORPGにライト層を取り込み、双方のコミュニティーの活性化を図る。また、プレイヤーに無料のブログサービスなどを提供する予定で、これらのサービスは日本の運営元であるさくらインターネットが主動で行う予定であるとのこと。LOTROは原作、映画、ゲームなどすべてのファンに訴求できるタイトル考え、ゲームの成長とリンクしたコミュニティーの生成・発展を期待したいと語った。
さくらインターネットの目指すLOTROの新しいサービス展開によって、"欧米製ゲームは国内で受けない"といった風潮が払拭されることを期待したい。
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▲世界同時にサービスを提供することによって、ゲーム内コミュニティーを積極的に牽引するコア層と、自分のペースでプレイするライト層が同時にスタート。これにより、コミュニティーの生成・活性化を図ることが最大の目的。 |
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