ゲームを学びたい学生たちに届け! 『テイルズ オブ』の吉積氏がゲーム開発における作法を語った
●『テイルズ オブ』シリーズを貫くコンセプトを吉積氏みずから解説!
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▲東京工芸大学のゲームコースを目指す学生たちに、『テイルズ オブ』シリーズのプロデューサー、吉積氏が特別講義を行った。 |
2007年4月から芸術学部アニメーション学科にゲームコースが開設される東京工芸大学。『パックマン』の生みの親としてお馴染みのバンダイナムコゲームスの岩谷徹氏が教授に就任することでも知られるこの大学で、2006年10月7日にオープンキャンパスが実施。その中で、『テイルズ オブ』シリーズのプロデューサーを務めるバンダイナムコゲームスの吉積信氏の特別講義が開催された。
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▲2007年からゲームコースが新設される東京工芸大学。ゲームクリエーターを目指す学生にとっては注目の大学だ。 |
講義のテーマは、"『テイルズ オブ』シリーズの開発作法"。吉積氏は登壇いちばんに、「事前に"開発手法"というテーマでお伝えしていましたが、内容を考えた結果、手法ではなく作法についてお話しすることにしました」と説明。『テイルズ オブ』シリーズの開発における心構えや精神論に近い話が展開された。
講義はまず、吉積氏の自己紹介からスタート。「1964年福岡生まれです」といったプロフィールや、「3人の子供がいまして、ゲーム的英才教育を与えています(笑)。いちばん上の娘には、『テイルズ オブ』シリーズしかやらせてないんですよ。『ジ アビス』は3周しまして、ほかのもやりたいなんて言うもんだから先日発売されたPSP版『ファンタジア』をハードごと渡しました」などのプライベートな話まで、おもしろおかしく語った。そして、1988年にナムコに入社し、最初の7年間は営業に、つぎの7年間は宣伝にいて、それから開発に携わるようになったという職歴も披露された。じつはこの話が、続く講義の本題へとつながっているのだが、吉積氏は以下のように自己紹介をまとめた。
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▲吉積氏は、「もっとも心に残るゲームは『タクティクスオウガ』。松野さんの絵を見ただけでハードごと買っちゃうくらい好きです」、「歌が好きでカラオケによく行くんですが、最近もっとも気持ちよく歌った歌は『箒星』。ミスチル好きなんです」など、プライベートも大公開。 |
「2002年に『テイルズ オブ』のプロデューサーになりました。いままでの話からわかるとおり、私は絵が描けるわけでもシナリオが書けるわけでもありません。私のプロデューサー業は、作品だけでなく、それを作る人たちまで含めて全体を見る仕事。宮崎アニメで言うと、鈴木プロデューサーの立場に近いと思います。商品全体を見ているんですね。で、宮崎駿さんの立場はディレクターの樋口なんかに当たります」(吉積)
吉積氏は、「じつは、めちゃくちゃゲームが作りたいと思ってナムコに入社したわけではない」とも暴露。非常に珍しい経歴ではあるが、営業や宣伝に携わってきたことがプロデューサー業に活かされていることも確かだ。『テイルズ オブ』シリーズが成功を続けている裏にある、吉積氏流のゲーム開発の根幹、コンセプトが講義の本テーマとなった。
ビジョン:人生観を揺るがすようなコンテンツを全世界に向けて提供する
基本方針:CS(顧客満足)第一主義を徹底し、納得感のある製品戦略を実施する
これが、吉積氏が掲げる『テイルズ オブ』シリーズのコンセプトだ。"人生観を揺るがすようなコンテンツ"について、吉積氏は「小説や映画、音楽がそうであるように、人生にインパクトを与えるもの」と定義。「ゲームは消費するだけ、時間の無駄だといまだに思われていますが、映画を観たり本を読むことは人生観を広げるものと捉えられていますよね。ゲームもそうであるべきですし、そういうものを作りたいと思っています」(吉積)。続いて、「RPGなら人生を揺るがせることができる」として、以下のように説明した。
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▲RPGは小説や映画と同じ表現力を持つと強調した吉積氏。 |
「RPGは、語りたいテーマに合わせてキャラやイベントなどを配置することができます。プレイヤーの行動を想定して、それに応じたイベントの分岐や演出を作りこむことも可能です。いいRPGというのは、プレイヤーが自分で選択して進んだものと思わせながら、じつは作り手の意図が100パーセント反映されているもの。完璧な表現力を持ったジャンルだと思っています。だからこそ、表現力や企画力が求められる。できの悪い作品は滑稽なだけですから、『テイルズ オブ』シリーズでは紋切り型のキャラではなくて、血が通ったキャラクターを登場させて、きちんとした人間ドラマを描こうとしています」(吉積)
"CS(顧客満足)第一主義"については、「スタッフにも口をすっぱくして言っている」という吉積氏。「私が『テイルズ オブ』シリーズを作る目的は、そこにプレイヤーがいるから」と言い切り、何のために作るのかを見失ってはいけないと強く語った。何年も開発を続けていると、ひとつの仕様でもどちらがいいのか迷ってしまうことも多いという。だが、「プレイヤーとしてどちらがおもしろいのか」という本筋に立ち返れば、おのずと結論は見えてくる。吉積氏はこれからゲーム業界を目指す学生たちに、「これはどんな立場でも同じ。細かい作業をやっているときにも、全体を見る目を持っていたほうがいいと思います。このゲームを誰に届けるのか、そこを見失うと間違ったものを作ってしまうことになる」と、やや厳しい口調で訴えた。
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▲吉積氏はユーザーからの意見もたいせつにしているとコメント。アンケートはがきはスタッフ全員が読み、公式サイトへの書き込みも保存しているという。さらには、「掲示板や個人のファンサイトなどネットを利用してユーザーの感想をバランスよく見ている」とも。 |
「自分たちの給料は、会社や社長からもらっているものじゃないんです。ゲームを買って、楽しんでくれた方々から頂戴しているものなんです。ものを作る上でユーザーのことをちゃんと見ていないと、手を抜くことにもつながる。ユーザーのことをいちばんに考えて、"どんな人"に"何を遊んでほしい"のかを形にするのがプロの仕事です。また、悩んだときのよりどころでもある。これが、『テイルズ オブ』シリーズにおける開発の作法です」(吉積)
これは、営業や宣伝の仕事に携わってきた吉積氏ならではの感覚と言えるだろう。講義を聞いていた学生たちも、ゲーム開発のテクニカルな話や身近な話題ではなかったものの、吉積氏の熱意が伝わり最後まで真剣に聞き入っていた様子。学生のひとりは、「塾の授業だと90分起きてらんないのに、あっという間だった」と感想を語っていた。
※『テイルズ オブ』シリーズの公式サイトはこちら
※東京工芸大学の公式サイトはこちら
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