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【CEDEC 2006】哲学者、ソフト開発者がまじめに恋愛シミュレーションゲームを分析
【CEDEC 2006】

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●話題は必然的に『ひぐらしのなく頃に』に集約

 技術者向けの話が多いCEDECだが、ゲームを文化的に捉える内容の講義も行われた。"わが国におけるPCゲームの現状と今後の展望-恋愛SLG市場の成熟と家庭用ゲーム機への移植を中心に-"というテーマで、異色の講師陣4名が登壇。東京大学大学院情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムで特任講師を務める吉田正高氏、哲学者の東浩紀氏、アルケミストの代表取締役社長、浦野重信氏、そしてべックの芝村裕吏氏というバラエティ豊かな4名がそれぞれ、PC向け恋愛シミュレーションゲームについて語った。


▲「いま流行語となっているツンデレや属性などは、PCゲームから生まれたものと考えられます」と吉田氏。
 

 PCゲームの歴史を振り返り、文化的価値を見出したのは吉田氏。パソコンがマイコンと呼ばれていた時代からゲームの流行を追っていき、PCゲームの現状として、いわゆる"同人ゲーム"市場が活発化していると分析。現在は、「総"萌え"化の傾向が加速している」として、「個性の基盤となるキャラクター性が、たとえば"メガネっ娘"など記号化されているんですね。本来の個性がなくなっていっている。これによって、今後差別化が不可能になっていくのではないか、と考えます」と問題提起した。


 哲学者の東氏は、自身は哲学を学んだ身でゲームは門外漢だとしながらも、恋愛シミュレーションゲームに対する独自のアプローチを試みた。まず、このジャンルの中から"美少女ゲーム"と呼ばれるカテゴリーを、「`96年に発売された『Leaf』以降に確立され、テキストと立ち絵型のインターフェースに依存している。選択肢以外のプレイヤーの自由度はほとんどなく、シナリオ分岐型の恋愛アドベンチャーゲーム」と定義。東氏はこの美少女ゲームについて以下のような雑感を持っているという。


▲東氏は、「美少女ゲームは、ネットの中のおしゃべり空間が広めた」と分析。
 

 「美少女ゲームは、ほかのゲームとは違うヘンなジャンルなんです。まず、そのインターフェースは、背景は実写と思われるリアルなもの、そこに萌え絵と言われる立ち絵を重ね、テキストを置くという3層の構造になっています。このジャンルが生まれて10年間、このインターフェースには変化がありません。むしろ、選択肢がなくなっていく、つまりゲーム性が失われていく傾向すらあります。PCのスペックは上がっているのにも関わらずです」(東)


 東氏は、いまもっともユーザーにウケているものとして『ひぐらしのなく頃に』を挙げ、「この作品にはほとんど選択肢がないのに、作り手もユーザーもこれを"ゲーム"だと思っている。美少女ゲームのゲーム性というのは、別にあるのでは?」と結論付ける。そして、美少女ゲームのゲーム性についてふたつの可能性を提示した。ひとつは"マルチエンディングな物語の可能性"。『ひぐらしのなく頃に』は選択肢はないものの、8つの章から構成され、すべてをプレイしてはじめて謎が解ける形となっている。このように、1本線のシナリオではないものをゲームと認識しているのではないか、というもの。もうひとつの可能性は、"ユーザーコミュニティーの空間"。東氏は、「ゲームだけではなく、ユーザーによってその二次創作が行われている状況から、ゲームの中ではなく外(ユーザーどうしのコミュニケーション)にゲーム性があるのではないかと考えられます」と説明した。


 アルケミストは、東氏が実例として挙げた『ひぐらしのなく頃に』をプレイステーション2に移植しようとしている会社。PCゲームから家庭用ゲームへの移植について、浦野氏は以下のように語った。


 「移植会社は、お嫁さんをもらう立場だと思うんですね。お嫁さんを幸せにしようという気持ちで、原作ファンを大切にしながら新しいものを作っていく。重要なのは、PCゲーム、とくに18禁の作品にもおもしろいものがあるとわかってもらうこと。『ひぐらしのなく頃に』も、プラットフォーマーさんとの話し合いがいちばん苦労しました。それから、今回のようなメディアミックスの場合は、原作者とアニメ、コミックなど違う商習慣がある人どうしでもめてしまうことが多いんです。それをきちんとコントロールできればプロジェクトがうまくいくので、そこは意識しています」(浦野)


▲浦野氏によると、移植会社にいちばん求められるのは、原作者などとうまく関係性を保つコミュニケーション能力だとか。


 最後にマイクを持ったベックの芝村氏は、それまでの3名の話に対する返答のような形でコメント。とくに『ひぐらしのなく頃に』に見られるゲーム性の喪失については、「作り手もユーザーもおもしろければそれでいいと思っているはず。ゲーム性について気にしてはいないと思います」と、開発者としての立場から発言した。

 4名それぞれが恋愛シミュレーションゲーム観を語るパネルディスカッションとなったが、やはり話題は『ひぐらしのなく頃に』に。浦野氏はプレイステーション2版について、「原作の竜騎士07さんはほんとうは選択肢を入れたかったけれど、ひとりで作っているので限界があってああいう形になったようです。主人公が選択をすることで違う未来があったんだよ、というのを8章でやってるわけですけど、プレイステーション2版では1本でそれがわかるように、選択肢を取り入れてます」と語った。4名の立場の違いからさまざまな意見が出たが、恋愛シミュレーションゲームを文化的に捉えると非常に奥が深く、講師陣もまだまだ語りつくせぬ様子だった。

▲芝村氏(右)は、「ゲームをわかりやすく説明するためにはキーワードが必要です。"美少女じゃなくて、美少年です"とかね。そのキーワードを表現するためにマンパワーを注いでほかの作品と差別化してきました。開発者から見れば、その積み重ねがゲームの歴史です」と、研究者とは違う立場からゲームの歴史を整理した。



 

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