シリコンナイツ直撃取材! 『Too Human』キーパーソンインタビューをお届け
カナダ・シリコンナイツ取材記・第3回
●「プレイしたユーザーが何かを考えてくれるような作品にしたい」(デニス)
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▲壮大な物語性と圧倒的なグラフィック力、そして考え抜かれた操作性を持つ『Too Human』。開発者へのインタビューからそのヒミツに迫る! |
『Too Human』のプレスツアーでは、シリコンナイツの社内を見学させていただくことができた。すでにお話したシアターのほかにキッチンなどもあり、「クリエーターに気持ちよく仕事をしてもらおう」というサポートの姿勢が万全という印象だ。社内には中世の騎士を思わせる甲冑や模型なども見られ、プレジデントであるデニス・ダイアックの遊び心も見える。そんななかとくに印象に残ったのが、一部のスタッフの部屋に飾られている"剣"。まるで表札のように飾られているのだが……。
「これは勤続10年以上のスタッフに送られるものなんですよ」と、記者の疑問を解消してくれたのが、プレスツアーをアテンドしてくれたフェス尚香さん。「功労賞みたいなものですね。シリコンナイツは'92年に設立されたのですが、剣を持っている者は現在8人いるんですよ」とのこと。勤続10年を越えるスタッフに剣をプレゼントするというのは、さながら"忠誠の証"といった趣き。転職があたりまえと言われる北米にあって、長く勤めることを称えるのは、ある種日本企業的なありかたなのかもしれない。デニスは、そんなところも日本のゲームメーカーと付き合っていくうちに学んだのだろうか……。実際、社内の雰囲気は非常に和気あいあいとしており、チームワークはばっちりといった感じだった。
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▲勤続10年以上の社員に送られる剣。剣マニアのデニスらしく、実在の剣がモチーフになっているようだが……。 |
▲こちらもデニスの趣味らしい、中世の騎士の甲冑。遊び心が社内のいたるところにちらほら。 |
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▲キッチンもある。こんなところで働いたら、家に帰る気がなくなりそうなほど快適! |
と、そんな挿話を前置きにして、取材記の締めは『Too Human』を開発したキーパーソン3人のインタビューをお届けすることにしよう。今回インタビューさせていただいたのは、シネマティックとゲームプレイを担当したヘンリー・ストレッチ氏と、アートディレクターのカーマン・ディックス氏、そしてプレジデントにしてプロデューサーのデニス・ダイアック氏だ。3人のコメントから、いまだ謎に包まれた『Too Human』の一端が見えてくるのでは?
●ゲームプレイ&シネマティック担当 ヘンリー・ストレッチ氏
本人が明言するように、ヘンリーはコアゲーマーだ。何かを説明しようとするときに、比喩として『ストリートファイターII』や『NINJA GAIDEN』などのゲーム名がぽんぽんと口から飛び出すことを見ても、それは明らかだ。そんなヘンリーは、"初心者にもプレイしやすいように"、『Too Human』では直感的な操作感覚を作り上げることに腐心している。
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▲ゲームプレイとシネマティック効果を担当するヘンリー・ストレッチ氏。 |
――本作で心がけていることは?
ヘンリー 『Too Human』では、いろいろなレベルのユーザーに興味を持ってもらおうと思っていて、ストーリー、美しいグラフィック、そしてクールなアクションを重視しています。とくに重視しているのが操作性で、簡単な操作でクールなアクションができるように工夫しています。プレイヤーが攻撃したい敵に向かってボタンを押すだけで、自動的にアクションを起こしてくれるようにしているんです。ある程度敵を追尾してくれるので、流れるようなアクションを決めることもできますよ。アクションは、いままでになかった操作感覚だと自信を持っています。
――初心者に楽しめるのは納得できるのですが、上級者にとってはどうでしょう?
ヘンリー 敵を倒すというゴールは初心者でも上級者でも同じなのですが、初心者がふつうに敵を倒すのに対して、上級者は華麗な動きやコンボで敵を倒すことになります。クリアー時間もそれだけ短くて済むわけで、上級者がプレイすれば、『Too Human』のゲーム性の深さがわかってくれると思っています。もちろん、あまり上手ではないプレイヤーでもちゃんとクリアーできるようになっているし、そういったプレイヤーは上級者のプレイを見て、「自分もあれくらい華麗なアクションをキメてみたい」というふうに、モチベーションを高めることもできる。ゲームを作るにあたっては、上級者以外はやる気をなくさせるような難易度だけは避けようと思っていました。
――カメラアングルは独自のシステムを採用しているとか?
ヘンリー バーチャルディレクターシステムですね。これは、カメラアングルはすべてAIが制御するというものです。たとえば、主人公が建物の中に入ってくると、建物の中に設置されたすべてのカメラが主人公の動きを追いかけて、AIはそのときどきの最適のカメラアングルを採用します。テレビのスポーツ中継のようなものだと考えてもらうとわかりやすいかもしれません。
――バーチャルディレクターシステムを搭載したきっかけは?
ヘンリー 最初は、「3Dのゲームは2Dのゲームに比べて、なぜ難しいのだろう?」という疑問が入り口になっています。3Dのゲームだと宝捜しひとつにしても、いろんな角度からグルグル見ないといけないので、それだけで時間がかかってしまいますし……。それを改善するためにカメラアングルのことは一切考えないで、プレイできるようにしたかった。
――具体的にはどのような点を心がけていますか?
ヘンリー とにかくプレイヤーが遊びやすく、というのが大前提ですね。ある程度カメラアングルによってゲームに対する情報をユーザーに与えてあげないといけない。たとえば、敵がプレイヤーの後ろから近づいてきたら、カメラアングルを変えてそれを見せてあげるとか……。サッカーを例にするとわかりやすいと思うのですが、サイドラインから深く入ってセンタリングを上げるときは遠めのカメラアングルでフォローして、ヘディングシュートのときは選手をアップにするとか、そのときどきで最適のカメラを選択することで、その場で何が起こっているか、プレイヤーは瞬時にわかるわけです。
――ゲーム画面にパラメーターなどがありませんが、それは見栄えのよさを考慮してのこと?
ヘンリー そうです。まるで映画を見ているかのような、自然な感じでゲームをプレイしてほしいと思っています。ただ、どれだけダメージを食らったか、主人公のいまの状態はどれくらいか、というのがわかるようにするのは重要視していて、『ファイティングバイパース』のように、ダメージを受けたら、体が光るようにするといったエフェクトを考えています。ダメージを受けたら、鎧がボロボロになるとか……。主人公のバルダーは神様なので、「痛い」と言うことはないのですが(笑)、見た目でそれがわかるように、いろいろな表現方法を考えています。
――武器は何種類くらいありますか?
ヘンリー いまはヒミツです(笑)。ただ、プレイスタイルは12種類あるとだけは言っておきます。そこに刀やガンなどの武器が加わることで、コンビネーションになっていきます。それだけ攻撃のバリエーションが増えていくわけです。本作ではXbox Liveによる協力プレイなども可能なのですが、協力プレイをすることで、さらに多彩なコンビネーションが生まれたりしますよ。
――協力プレイは何人まで?
ヘンリー 4人ですね。もちろん、4人によるスペシャルな連携攻撃も用意していますよ。戦略性も必要になりますので、それだけゲーム性の幅は広がりますよ。
●アートディレクター カーマン・ディックス氏
柔らかい受け答えをしてくれるカーマンは、いかにも"アーティスト"といった印象を受ける。こちらの質問ひとつひとつに対して丁寧な受け答えをしてくれた。数十人にも及ぶアーティストを統括する立場にあるカーマンだが、『Too Human』の独特な世界観に統一性を持たせるという意味からも、本作に果たす役割は相当大きいと言えるだろう。
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▲数千枚にもおよぶアートワークを統括したカーマン・ディックス氏。 |
――アートディレクションでもっとも重要視したことは?
カーマン いちばん大事なことは継続性ですね。『Too Human』では、いろんなアーティストが携わっているのですが、全体の世界観に合致することが大事になります。いくら単体でよくでもダメで、バランスを考えて統一性を考慮しないといけない。そのため、統一のルールブックを作って、それに準拠して制作するようにしました。トータルでのアートワークは数千枚を越えているんですよ。
――北欧神話をベースにしているとのことですが、デザインをするうえではやはり念頭に?
カーマン 主人公のイメージを作るときは、けっこう参考にしましたね。衣装の布の雰囲気とか、けっこうバイキングのテイストが出ていたりします。もちろん、本当のバイキングはこんな感じではありませんが(笑)。
――デザインをするうえで、念頭にあったことは?
カーマン デザインだけに限らず、トータルで見て、映画や文学作品と比較できる作品を目指しました。そういった意味では、映画『ロード・オブ・ザ・リング』はけっこう意識しましたね。『Too Human』はデザイン的な面で言えば、『ロード・オブ・ザ・リング』と『ターミネーター2』が出会った……といったところでしょうか(笑)。人間と機械の相克という意味において。『Too
Human』は壮大な世界観を持っているので、ものすごく大きな世界を作らないといけない。そのために、いろいろな映画からさまざまな要素を参照していますね。
――では、いちばん苦労した点は?
カーマン ゲームの世界観がものすごく大きいので、それに負けないくらい繊細なデザインに仕上げないといけないことですね。ふつうだとスケールを取るか、ディテールを取るかのどちらかになってしまうのですが、本作ではスケール感と緻密さを両立させたいと考えていました。たとえフィールドが広くても、ひとつひとつのオブジェを緻密に描くようにしています。
――それはXbox 360だからこそ可能だった?
カーマン そういう部分はありますね。Xbox 360の技術をつかって、かなりの部分を追求することができました。これは過去のハードではできなかったことではありますね。この6〜7年の成果をやっとお見せできるわけで、期待していただきたいですね。
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▲カーマンのオフィスにはアートワークがずらり。壮観のひと言。 |
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▲主人公バルダーのデザインの一部。どことなくバイキングを思わせる? |
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▲主人公はカスタマイズ可能。かなり神様らしい感じ!? |
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▲カーマンがとくにお気に入りのステージだという"AESIR"。人間が住んでいるステージだとか。 |
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▲こちらは"サイバースペース"だとか……。幻想的な雰囲気。 |
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▲レリーフなどもしっかりと作りこんでいる。ダイナミックとディテールの融合とは、こういったことなのだろう。 |
●プレジデント デニス・ダイアック氏
最後に『Too Human』の生みの親であり、シリコンナイツのプレジデントでもあるデニスに話を聞いた。ダイアック氏のインタビューをお届けしよう。任天堂の宮本茂氏とコナミの小島秀夫氏という、日本を代表するふたりのクリエーターとの共同作業の経験を持つデニスは、「日本のゲームから多くのことを学んだ」という。これだけスケールの大きな作品を、デニスはどのように作り上げたのか?
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▲プロデューサーのデニス・ダイアック氏。大の日本びいきである氏は、自身の名前の読みかたをあてて、"大悪"と称している。もちろん、ご本人はとっても気さくでおやさしい方です。 |
――すいぶん長いプロジェクトのようですが、どのようなきっかけから『Too Human』は生まれたのですか?
デニス きっかけとなるゲームのコンセプトを考え出したのは、'94年くらいかな。当時はちょうどテクノロジーが花開き始めたころで、人々のあいだでテクノロジーの進化による影響が誤解されていた。多くの人が「PCに仕事を取られるのでは?」と心配になっていたんだ。それで、「これをゲームにしたらおもしろいのではないか……」と思ったんだよ。実作業に着手してから6〜7年経つが、やっと皆さんにお見せできる段階まで来た。
――コンセプトの実現には、Xbox 360というハードが必要だった?
デニス それはあるね。私たちはハリウッドの映画に負けないようなゲームを作りたいと思っていて、そのためにはXbox 360は不可欠だったね。
――『Too Human』というタイトルには、どのような意味が込められているのですか?
デニス ゲームのなかでプレイヤーはつねに、「お前は人間的過ぎる。もっとサイボーグ化して自分を強化しなくてはダメだ」と仲間に言われ続ける。もし自分の腕をサイボーク化した腕に取り替えて強化することができたら、我々はどうするだろう? そのことを通して、「人間とは何か?」、「人間とマシンとの違いは何か?」といったことを考えてほしかった。そんな思いを込めて、このタイトルをつけたんだ。
――なぜ、この作品の世界観のベースに、北欧神話を採用したのですか?
デニス 北欧神話のおもしろいところは、神々がすべて不死身ではないということ。神々は運命を信じており、自分たちが死ぬことを認識しているが、それで延命しようとするのではなく、名誉な死を迎えたいと思っている。これは、我々が知る世界中の神話のなかでも、非常にユニークなところだ。それでこの作品のテーマを考えた場合、北欧神話をベースにするのが最適だろう……と思ったんだ。北米では北欧神話はほとんど知られていないので、新鮮に感じてもらえるだろうしね。
――"簡単な操作"が特徴のようですが、その理由を教えてください。
デニス ゲームが2Dから3Dに移行する段階で、ゲームの楽しさが失われてしまったと感じているんだ。ゲームが3Dになることにより、プレイヤーはカメラアングルを気にしなければならなくなり、複雑さのレベルが一挙に上がってしまった。ゲームが難しくなったために、ゲームをやめてしまった人も多い。だから誰でも気軽に遊べて、楽しめる『パックマン』や『スーパーマリオブラザーズ』のようなゲームを作りたかったんだ。それで直感的な操作と、カメラアングルを意識しないで済む"バーチャルディレクターシステム"を取り入れたんだ。
――現在の開発状況は?
デニス 半分以上はできていると思うけれど、今日お見せしたのは、そのほんの一部だよ。2006年末発売(北米市場)を目指して開発中だ。
――宮本さんや小島さんといっしょに仕事をすることで得たものは?
デニス ふたりともすばらしいクリエーターだ。私もシリコンナイツのメンバーも、彼らといっしょに仕事ができたことは大きな喜びだったし、毎日が学ぶことの連続だったよ。宮本さんからはゲームプレイの大切さを、小島さんからはスペクタクルな演出方法を学んだ。ほとんど学校に行って学んでいるような感覚だったよ(笑)。もっともすぐれたテレビゲームは日本で作られている。そして、そうしたノウハウを日本からアメリカへ橋渡しをするのは我々の役目だと思っているので、彼らが教えてくれた要素を『Too Human』の開発や将来やっていくことに活かしていきたいと思っているんだ。我々は業界を次のレベルへ持っていくために最大限の努力をしたいし、彼らといっしょに仕事ができたことで、それが実現できる下地ができた。そういった意味では、真のパイオニアである彼らと仕事ができて本当にラッキーだった。
――本作は3部作とのことですが、具体的にはどのような内容に?
デニス いい質問だね(笑)。3つの作品にはそれぞれテーマがあるんだ。1作目の『Too
Human』は"ディスカバリー"。つまり、自分の世界がどうなっているのかを発見するのがテーマだ。そこでは、モンスターの存在や、なぜマシンが人間を襲うのかという謎を解明していくことになる。2作目は"リベンジ(復讐)"。そして3作目が"エンライトメント(悟り)"となる。それぞれの作品はひとつひとつで完結しつつも、壮大なストーリーを紡ぐことになる。
――壮大なサーガとなるわけですね。発売時期が気になるところですが……。
デニス 『Too Human』の発売は、欧米では2006年末を予定しているが、それ以降については、いまは言えないな(笑)。それほど間隔は空けないつもりではいるけれど……。ちなみに、2作目はすでに開発に着手しているよ。
究極のエンターテインメントとは、それを鑑賞したあとに何かを考えさせられるものであったり、さらにはそこから何かを学べるものだったりする。私たちはこのトリロジー(3部作)で、レベルの高いものを目指しているし、プレイした人たちが何かを考えてくれるような作品にしたいと思っているんだ。
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▲三部作を予定している『Too Human』。1作目は発見、2作目が復讐、そして3作目は悟りがテーマになるという。ゲーム史上類をみない壮大なドラマの行く末に注目したい。北米では年末にも発売が予定されている本作だが、日本でもいち早く遊べる日が来ることを期待したい! |
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