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【D.I.C.E.リポート】『ワンダと巨像』の上田氏が独特の手法を公開

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●最初に目標となるプロトムービーを作る

 

 ラスベガスで開催されている開発者向けの講演会、D.I.C.Eサミット2006。最終日の2月10日(現地時間)のトリを務めたのは、『ICO』や『ワンダと巨像』でおなじみの上田文人氏と海道賢仁氏(両名ともソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン)。ほかのゲームにはない独特の世界を持つその作品は、日本はもちろん、海外でも高い評価を受けているが、今回の講演では作品を作り上げるうえでの独特の手法が明らかになった。

 

 この講演のみスピーカーが一方的に話す講演形式ではなく、司会の質問に両氏が応えるインタビュー形式で行われた。以下、そのやりとりをお届けする。

 

▲通訳が入ったのもこの講演だけ。なお、右から上田氏、通訳、海道氏、司会者の順。

 

−『ワンダと巨像』での上田さんと海道さんの役割は?

 

上田文人氏(以下、上田) ボクはリードデザイナーとゲームデザイナー、アートディレクターをやりました。

 

海道賢仁氏(以下、海道) プロデューサーとしてチームのマネージメントをしました。上田さんのアイデアをゲームに実現する仕事ですね。

 

−上田さんは仕事が多そうですね。

 

上田 ちょっと厳しい話になりますが、ボクが求める仕事をできる人が少ないので、どうしてもひとりでいろいろやることになってしまうんです。

 

−スタッフは何名くらいなんでしょう?

 

上田 『ICO』のときは20名くらい。『ワンダ』はピークで35人前後ですね。

 

−多くはないですね。

 

海道 『ICO』が終わって、『ワンダ』のプロジェクトをスタートさせるときにスタッフを募集したら、500人くらいの応募があったんですよ。10人前後採用したんですが、そのなかで上田さんの求めるクオリティーを満たせる人は、ひとりかふたり……。そんな状況で頭数だけ増やしてもしかたがなかったんです。本当は、優秀な人がたくさんいたほうがいいですね。もしも上田さんが3人いたら、『ワンダ』は2年で作れたかもしれません(笑)。

 

−長期間の開発でモチベーションは下がりませんか?

 

海道 4年間、つねに高いモチベーションを保つのは無理なので、定期的に社内でプレゼンテーションをやって、スタッフのモチベーションを上げていました。モチベーションが下がるのは、何か問題を抱えているとき。たとえば、上田さんが大きな変更を指示したときとかです。変えたほうがよくなることはみんなわかっているので、いったん下がりかけてももとに戻るんですけどね。

 

−ゲーム制作で変わっている点は?

 

上田 ボクらの作りかたで変わっている点は、最初に完成形を作ること。こういう方向で見せたいんだ、というビデオをまず作るんです。ボクはもともとCGのアニメーターだったので、そのような方法しか持っていなかったんですね。ところが、意外といいということで、『ワンダ』もそのやりかたでいきました。

 

海道 『ICO』のときには、ほとんど上田さんひとりでパイロットムービーを作っていました。4ヵ月くらいで完成しましたが、'97年当時のレベルで考えれば、飛び抜けていた映像でした。"こういうゲームが作りたいんだ"ということが、ボクにもすぐにわかりました。


 ここで、『ICO』と『ワンダと巨像』のパイロットムービーが放映される。ともに3分ていどの短い映像だが、ゲームのオープニングムービーに使われていてもまったく違和感がないほどの完成度だ。なお、どちらの映像も、ほとんど同じ物が『ワンダと巨像』の予約特典DVDに収録された。


海道 最初に、目標となる最終クオリティに近い映像を作っておくんですね。完成したゲームと比べて、ブレていないところが特徴だと思います。

 

−主人公の少年に角が生えているのが、変わっていますよね?

 

上田 最初は深い意味はなかったんです。『ICO』は敵がたくさん出てくるゲームだったんで、操作するキャラクターのマークとしてつけたんですよ。

 

−どちらもほかのゲームにはない独特のものを感じますが。

 

上田 『ICO』のときには、まずほかとは違う物を作りたかったんです。経験がないチームでしたんで、作った物が評価されて商業的にも成功させるには、それしかなかったんです。ボクのゲームが評価されるのは、ほかと違うから。新しいことにチャレンジして、「ゲームっておもしろいんだよ!」ってことを示していかないと、市場がどんどん小さくなってしまうと思うんですよね。

 

−技術的な部分でのチャレンジはありますか?

 

海道 いかに自然にキャラクターを動かすか、ということを実現するために、"モーションブレンド"という技術を使いました。たとえば馬の動きを作る場合、走っているモーションと回っているモーションをブレンドすることで、自然な動きが作れるんです。また、巨像は大きいので少しでも変な動きがあると目立ってしまうんです。細かい動きを制御するシステムを入れてあります。

 

上田 リアルさを上げていくために、不自然な動きを取り除いていく。これがなかなか終わらないんですね。

 

−『ワンダと巨像』は、巨像というボス戦だけのゲームである点も特徴的ですね。

 

上田 それにはいろんな理由があるんですが、もっとも大きな理由は、細かい敵をたくさん出すことによって、チームの労力がそこに割かれてしまうことがいやだったんです。ボクがプレイヤーだったら、早くボス戦がやりたいと思う。ユーザーもそう思っているんじゃないですかね。

 

−続編の構想は?

 

上田 具体的に続編というのは考えていません。新しいことにチャレンジしたい。それがボクの使命だと思っていますんで。

 

−次回作についてはどうでしょう?

 

上田 まだスタートはしていませんが、構想自体はいくつか持っています。


 インタビューが終了すると、何人かのクリエイターが上田氏と海道氏にサインを求めたり、ファンであることを告げにきたりしていた。自らゲームを制作しているクリエイターたちからの評価が高いことが再確認された。開発者向けの講演会であるD.I.C.E.サミットのトリを務めるのにふさわしいふたりだったと言えるだろう。

 

▲すべてのプログラムが終了して、会場では撤収作業が進むなか、撮影をお願いした。ちなみに左の人物はD.I.C.Eサミットの主催者であるジョセフ・オーリン氏だ。

 

 

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