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【CEDEC 2005】『大航海時代Online』、『甲虫王者ムシキング』開発の意図とは?

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●優れた表現を実現したとしても、プレイしてもらえなければ意味がない
 

 8月29日から開催されているゲーム開発者向けの講演会、CESAデベロッパーズカンファレンス。2日目の8月30日もさまざまなセッションが行われた。ここではふたつのセッションの内容を紹介するぞ。

▲コーエーのオンライン事業を取り仕切る松原健二氏。

 ひとつ目は、コーエーが3月から正式サービスをスタートさせたPC用MMO(多人数参加型)RPG『大航海Online』に関するセッション。タイトルは"『大航海Online』における3Dクライアントの開発"。コーエーの松原健二執行役員と、ソフトウェア事業部ソフトウェア5部の門脇宏氏による講演だ。
 

 まずは松原氏から『大航海時代Online』のゲーム内容とサービス展開の概要が説明された。同タイトルは2002年春に開発がスタートし、2004年11月にβテストが開始。今年3月から正式サービスが始まっている。国内のほか、韓国でもβテストが始まり、台湾、中国、北米、欧州での展開も予定されている。現在の累計アカウント数は18万人。この『大航海時代Online』が好調なスタートを切った理由はどこにあるのか? 松原氏は「ハイパフォーマンスなPCを必要としないこと。それが国内のオンラインゲームの普及につながり、世界各地でもサービス可能になった」と語る。

▲PC用ゲームには珍しく『大航海時代Online』には推奨操作環境が設定されていない。これは、バリュークラスのPCでも十分な品質のグラフィックを保証し、ハイパフォーマンスPCならさらなる高画質を約束しているからなのだ。

 

 松原氏は、「サービス開始時点で市場に出回っているPCの8割で動かしたかったので、動作を保証するチップセットをどこに定めるか、ということをまず念頭に置きました」と、開発当初の目標を語った。熟慮の結果、『大航海時代Online』は、2004年度末時点の既存のノートPCでも動くことを基準に開発が進められたと言う。

▲門脇氏は「PC自体の普及数は限りなく多い。しかし、PCをゲーム目的で使用する人は少ない。そこに潜在的なターゲットが確実に存在している」と語る。

 メインプログラマーの門脇氏は「優れた表現を実現したとしても、ゲームをプレイしてもらえなければ意味がない。そのために、ターゲットスペックを3つに階層化しました」と語る。"ターゲットスペックの階層化"とは、PCのスペックをハイスペックと低スペック、中間のスペックの3つに分類すること。そのうえで開発陣は、分類したスペックそれぞれに見合ったグラフィックを制作したのだ。完成した『大航海時代Online』ではオプションでグラフィックの質を切り替えられるようになっている。
 

 その結果、『大航海時代Online』はグラフィックボードを必要としないのはもちろん、ノートPCでもプレイできるMMORPGとして完成。しかし、多用なスペックのPCを対象としたために、動作確認の検証には多くの労力を要したとのこと。門脇氏の「ゲーム開発は気合いと体力。センスなんて二の次ですね」というコメントがその苦労を物語っているようだ。

▲ゲーム開発者向けの講演だったため、幅広いスペックのPCでの動作を実現するための具体的な方法も紹介された。

 


●『甲虫王者ムシキング』、アーケードとコンシューマの連動を植村氏が語る
 

 続いて、セガの植村比呂志氏による『甲虫王者ムシキング』に関する講演、"ムシキングにおけるアーケードとコンシューマのアナログ的連動"の内容をお届けする。

▲植村氏は「『ムシキング』は開発当時、経営危機に陥った会社の中で、私たち7人のチームが生き残りをかけて考えた起死回生の企画だった」と、開発当時の思い出を語った。

 『甲虫王者ムシキング』は2003年1月にアーケードに登場。子供を中心に爆発的な人気を博し、7月末現在で360万人がプレイし、カードの販売枚数は2億300万枚に到達。植村氏は「実際のユーザー数は150万人ぐらい。ひとりあたり150枚、つまり15000円使ってくれている。そんな状況のなかで5000円しないコンシューマーのソフトを発売することになった。ソフトの発売後もアーケードを存続させるにはどうしたらいいのか。大金を使って集めてくれた子供たちのカードを紙くず同然にするようなことは絶対にできない。アーケードと共存できるようなコンシューマーのソフトを作ることが課題だったんです」とコメント。
 

 すでに6月23日にゲームボーイアドバンス用ソフト『甲虫王者ムシキング グレイテストチャンピオンへの道』が発売されており、植村氏も「年末までに60万本いってくれる」と語るヒット作となっている。しかし、下のグラフに示されるように、ゲームボーイアドバンスの発売後もアーケードの売上は落ちなかった。なぜ、同ソフトの発売はアーケードに影響しなかったのか?

▲黄色の線がゲームボーイアドバンス版の販売本数、赤の線がアーケード版の売上げを表す。

 

 その問いに答えるまえに、植村氏はアーケードでの成功の秘訣を、"虫を変にいじらなかったこと"と"ゲーム大会を積極的にしかけたこと"の2点を挙げる。前の点に関しては、「重要なのは親に嫌われないこと。虫を合体させたり、武器をつけたりしたら、親に"なんじゃこりゃ"と思われる。こんなくだらないものにお金を払いたくないと思われたらおしまいです」と植村氏。またゲーム大会に関しては、「ゲーム大会は、親もいやいや参加しているのではなく、家族で一致団結して運動会のようなノリでやっている。カードやゲーム自体の魅力だけでは人気を引っ張れません」(植村氏)とのことだ。
 

▲親を巻き込んだゲーム大会を全国的に多数開催。さらに、筐体には"リーダー"という指導員を派遣することで、地域的なコミュニティーを作り上げた。

 

 ゲームボーイアドバンス版では、ゲーム内での目標をゲームセンターで開催される大会で優勝することに設定された。プレイヤーはその目標に向かってバトルの腕を磨き、自信をつけていく。ゲームボーイアドバンス版で優勝を達成し自信をつければ、アーケード版でのバトルにも参加したくなる。そして、さらにバトルの練習をするためにゲームボーイアドバンス版をプレイする……。植村氏は「このループを狙っている。強くなって自信をつけた子供たちに、またアーケードに戻ってきてほしいんです」と、ゲームボーイアドバンス版に込めた秘密を語ったのだ。

▲植村氏は「コンシューマーとアーケードの連動は、アーケードならではの強みを発揮するようにしないとダメ。地域的なコミュニティーを形成するような下地を作っておかないと、コンシューマーの発売で、アーケードは下火になってしまう」ともコメント。

 

 こうしたアーケードとコンシューマーの連動を植村氏は"アナログ的な連動"と呼ぶ。これまでに大会を30300回も開催したり、ムシキングリーダーというゲームの指導員を全国に90人配置するなどの、地道な運営が勝ち取った成功への自負が、この"アナログ"という言葉に込められている。


 

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