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IGDA、"ゲーム開発者セミナー in 関西"を詳細リポート

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●GDCの内容をゲーム開発者の視点で紹介

 

 4月23日、IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本支部)主催による"ゲーム開発者セミナー in 関西"が大阪の会場で開催された。

 

▲開場にはIGDAのメンバーのほか、ゲーム開発者を目指す学生など一般の参加者の姿も見られた。

 この協会は世界的なゲーム開発者のコミュニティーを作ることを目的として`93年に設立された国際NPO。現在、全世界におよそ85の支部を持っており、日本支部のIGDA 日本は同協会でも最大規模の約150人のメンバーを有する組織に成長している。IGDA日本は年に数回"ゲーム開発者セミナー"を開催しているが、関西地域で行われるのは今回が初めてだ。なお、このセミナーの開催を機に、同協会は関西支部の活動が正式にスタートしたことを4月24日付けで発表している。
 

 今回のテーマは、3月7日から米国サンフランシスコで開催された"ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス 2005(GDC 2005)の概要。3人の関係者が講演を行った。
 

 

●新清士氏、"GDCの概要と2005年のトレンド"

 始めにIGDA日本の代表を務める新清士氏が"GDCの概要と2005年のトレンド"というテーマで講演。新氏はまず、「(今年のGDCは)E3に向けた次世代ハード発表の前哨戦の様相を呈していた」と、GDCの全体的な印象についてコメントしたうえで、「今年のGDCを通底していたテーマ」として「ソフト開発の大規模化と肥大化」という側面を取り上げ、以下のように語った。
 

 「次世代ハードの登場によってゲーム開発の規模がこれまで以上に大きくなることはあっても、小さくなることはない。技術、マネージメントの両面で、コスト上昇の圧力は確実に存在している」(新)
 

 GDCで『ラチェット&クランク』のディレクター、ブライアン・アルゲイヤー氏が、プレイステーションの時代は7名で開発していたのが現在の『3』では92名にふくれ上がったことを語っていたことを、新氏は紹介した。アルゲイヤー氏は、ゲームデザインよりも調整に苦労していることをコミカルに語っていたという。また、ソフトメーカーの経営者が集まる"CTOトークス"という会合では、「プレイステーション2では50人が標準だった体制が、新ハードでは100人がふつうになってくるのではないか」や、「開発者からマネージャーになるのではなく、MBA(経営学修士号)などのマネージャーの専門スキルを最初から持った人が増加してくるだろう」といった発言が聞かれたという。

▲新氏は3大ハードメーカーの次世代機にも言及。次世代プレイステーションに関しては「ソフト開発がたいへんそうだ」との発言。


 さらに新氏は、「ソフト開発のコストが上がったときに単独のプロジェクトでは収益が上がらない。シリーズ作品をセットで開発することで開発費、マーケティングコストが大幅に圧縮される」というGDCでの開発者のコメントを引用したうえで、「次世代ハードではミドルウェア(ソフトウェアを開発するツール)の成熟度が高い企業ほど優位になる可能性が高い」と指摘。また、「新ハードでは独自の様式を持ったハードという障壁が崩れるため、『Unreal』、『Doom3』エンジンといったPC系のテクノロジーが流入してくる可能性が高い」ことを予言した。
 

 新氏は「そうなったときに、アメリカの企業は体力があるからなんとか対応できるだろうが、日本のゲーム会社は対応できるのか?」と、ソフト開発の大規模化に伴う危惧を述べ、以下のように警鐘を鳴らした。
 

 「日本のソフトメーカーにとって北米市場でのアドバンテージはほとんどないのではないかと思う。北米では巨大パブリッシャーの潤沢な資金を背景にした、インディペンデント企業の買収合戦が進んでおり、技術力を持った企業、大学への投資も積極的に行われている。ゲーム開発関連書籍も盛んに刊行されている。この、集約された高度な開発力にどう対抗していくのか? 日本のソフトメーカーにも開発ラインの見直しが求められている。ただし、次世代ハードで日本市場を完全に取られるというシナリオは、ソフトのセンスという点から考えにくいのだが」(同)


●ゲーム開発者、"GDC 2005  ゲーム開発 技術トレンド"
 

 続いてマイクを握ったのは、某ゲームメーカーに勤務するゲーム開発者。本人の希望により、名前や素性、写真など、本人を特定するものすべてが公表できないので、ここでは仮にA氏(イニシャルとは無関係)としておく。
 

 A氏はゲーム開発者の立場から、GDCで発表された技術的な内容を紹介。新氏と同じく"ゲーム開発の大規模化への対応"という点に関し、「年々ゲーム開発のコストが増え続けていますが、マネージメントに関する議論が多いように思います」と前置きしながら、「技術的な問題では、開発ツールの高性能化とプロシージャルな生成が増えてきていることが挙げられます」とコメント。

▲このように作成中のデータがグラフィックで表示される。

 「とくに開発ツールでは、WYSIWYGなどのように、グラフィカルにデータを生成、管理できるものが目立ちます。グラフィックスに限らず、NPCの動作なども最終出力を確認しながら作れるので、全体像の把握が容易になりますね。また、ユーザーにもコンテンツ生成を楽しんでもらいたいということから、プロシージャルな生成を行うプログラムが増えています」
 

 "プロシージャル"とは、リアルタイム演算によりディティールを自動生成する方法のこと。ゲームの作り手がすべてを用意せず、ユーザーの関与によりゲームの細部が決定するグラフィック生成のことだ。A氏は、マイクロソフトのストラテジーゲーム『エイジ・オブ・エンパイヤ III』の地形自動生成、『The Sims』のデザイナーで知られるウィル・ライト氏が発表した『SPORE』の歩行モーションの生成を例に挙げ、「大量のデータを簡単に生成できる、データをランダムに生成できる、超圧縮技術としてデータの格納、配信に有利といった動機もある」と語っている。

▲"プロシージャル"とはやや聞き慣れない言葉だが、ゲーム開発のキーワードになる?

 

 またA氏は「次世代ハードでは、CPUのマルチコア化が進むと言われていますが、多くのプロセスが走っているPCならともかく、ゲームではどうやって使えばいいのか? すべてをフルに活用するには設計がたいへん。デバッグはもっとたいへん。プログラマーにはますます受難の季節が……、ということにもなりかねません」ともコメント。さらに、まとめとして以下のように語っていた。
 

 「今後、ゲームのプラットフォームの性能はあらゆる面でPCと変わらなくなっていきます。さまざまなことが可能になる一方、開発はますます厳しくなる。多くのことをするには、多くの時間と予算、知識が必要でしょう。そのため、ソフト制作者としては、生産性の向上に力を入れることが必要になってくるはずです。ツール・ライブラリの作成に予算と人員を割り振る、コードや素材の共有、再利用を進める、ミドルウェアを活用するといった技術的なこととともに、積極的に外から知識を取り入れる姿勢が重要になるはずです。ウェブサイトなどで情報を集めるとともに、GDCなどの機会を利用することも大切です」(A氏)
 


●中村彰憲氏、"GDCの発表から見るゲーム産業の国際分業とプロジェクトマネジメント"

 

 3人目の講演者は、立命館大学政策科学部、助教授の中村彰憲氏。"GDCの発表から見るゲーム産業の国際分業とプロジェクトマネジメント"というテーマで、研究者の立場からふたつの発表を紹介した。
 

 中村氏はまず、アーネスト・W・アダム氏の"インタラクティブストーリーテリング:10年の調査でわかった事"という発表を紹介。アダム氏は「ゲームデザイナーとして、物語を語ることがわたしたちの仕事ではない。むしろ、私たちの仕事は、主人公であるプレイヤー自らが物語を語れる世界を作り上げることだ! 人の心が遊びに没頭できる遊園地を作り上げることだ」と語ったというが、中村氏によると、これは10年まえにアダム氏が提示した3つの問題から主張が変化していないという。アダム氏が提示した3つの問題とは以下のようなものだ。

・物語世界での統一性を維持できない
 主人公であるプレイヤーがユーザーの支配下にあるなかで、物語をいかにして論理的、精神的、そしてナラティブに統一させるのか?
・ストーリーテリングの流れに関する問題
 物語が一定の方向に動いていくなかで、プレイヤーがクライマックスの瞬間に臨めるよう準備するには、どうすべきか?
・主人公はつねに記憶喪失の状態にある
 設定として主人公は物語世界のすべてを知っているのに、ユーザーはその世界に対して無知、という状態をどうすべきか?

 

▲第1次世界大戦中の兵士と商人をたとえに、ゲームのインタラクティブ性とストーリーの関係が説明された。


 中村氏によると、「インタラクティブ性とストーリーの矛盾に関して、現行のパッケージゲームのほとんどはプレイヤーがゲームを進行させたところでプロット(ストーリーの一部分)も進行させるという手法で解決を図っているが、これは機械的でスリルが少なくなってしまう。MMORPG(多人数参加型RPG)などのオンラインゲームは、ある意味でインタラクティブ性を達成しているが、パッケージゲームではいまだにその問題の解決がなされていないのではないか?」という。
 

  つぎに中村氏は、エピック・ゲームズの開発者、クリフ・ブレジンスキー氏の"インタラクティブデザインを解剖する"という発表を紹介。ブレジンスキー氏はゲーム業界に伝わる通説を取り上げ、それに反証を加えているという。

迷信1 グラフィックはゲームデザインの肝ではない
事実:人間はビジュアルに魅了される存在。つまり、グラフィックデザインそのものがゲームの肝。しょぼいグラフィックは敗因のもと

 

迷信2 ゲームにおけるストーリーはほとんど意味をなさない
事実:ストーリーそのものが、プレイヤーを動かす原動力になりうる

 

迷信3 ゲーム業界には『市民ケーン』のようなエポックメイキングなゲームはいまだ存在しない
事実:ゲーム業界にも『市民ケーン』なみのエポックメイキングなゲームは多種にわたって存在する

 

迷信4 ゲーム業界には"イベントムービー"のようなゲームは存在しない
事実:欧米では『グランド・セフト・オート』、日本では『ドラゴンクエスト』、『ファイナルファンタジー』などがイベントムービーのようなゲームになっている

 

迷信5 ゲームデザインには従わなければならないルールがある
事実:例外だらけだ 『バーンアウト3』では、できるだけかっこうよくクルマをぶつければポイントに。『バイオハザード4』では、一撃で殺されることがある

 

 ブレジンスキー氏は何を言いたいかというと、「ゲームデザイナーはすべての先入観を排除し、あらゆる決定事項について、その妥当性を確認しなければならない」のだという。さらにブレジンスキー氏は、「ゲームデザインの核心はシンプルなものでいい。このシンプルなコアに必要な技術を付加していくべきだ」として、"ループ"という概念を提示している。
 

 中村氏によると、「このループは、小さな驚きの経験の連続から、より大きい目標を達成するという状況を示したもの」とのこと。ゲームをプレイする際のモチベーションが、重なった同心円によって表されている。下のように、中心に近いほどよりシンプルなモチベーション、外になるほど複雑なモチベーションになっており、このループが存在することで、ゲームが単なる"お使い動作"でなく"楽しみ"になるという。
 

▲『グランド・セフト・オート』のほか、『バイオハザード4』、『テトリス』、『Halo(ヘイロー)』などのループが紹介された。

 

 以上が、今回の"ゲーム開発者セミナー"のおもな内容だ。IGDAでは今後もこういったセミナーを開催する予定とのことなので、ゲーム開発者に限らず興味がある方はいちどセミナーに出席されてはどうだろう。
 


※IGDA日本の公式サイトはこちら

 

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